外に出るのが億劫になる冬の時期、鉢植えでバラを育てている人にはやらなければいけない大切な作業があります。それは、植え替えです! 面倒なので、つい今年はやめておこうかなぁと思いがちですが、もしかしたら1年で1番大切な作業かもしれません! 今回は、鉢植えバラの植え替えの仕方を紹介します。


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鉢植えバラの植え替えが毎年、必要な4つの理由

が家は狭いベランダでバラを育てています。ベランダなので、もちろん鉢栽培です。鉢栽培の場合、定期的に土の入れ替えをしなければいけません。大きな鉢で、しかもつるバラだったりすると、とても面倒な作業なのですが、わたしは毎年がんばって植え替えをしています。毎年、植え替えが必要な理由を4つ紹介しましょう。

 

理由その1、状態の良い土に入れ替えるため

ラは、ほとんどの水分や養分を根から吸収して生きています。庭植えのバラならどんどん根を延ばして水分や養分をバラが自分で探しに行くことができますが、鉢栽培では限られた土からしか水分や養分を得ることができません

 

よほど大きな鉢ならともかく、通常サイズの鉢では、1年もすればすっかり土の状態は悪くなっています。肥料分はなくなり、PHバランスも崩れ、土も砂のように細かい土が多くなってしまいます。砂のような土では水分を保つことができません。

 

こういう悪い状態の土を、新しい状態の良い土に入れ変えるのが第一の目的です。

 

理由その2、根を切り詰めるため

1年間しっかり生育したバラは、根もよく伸びています。鉢の中で行き場をなくした根がぎっちりと絡み合っていることも多いものです。これをほどき、伸びすぎた根は適宜切り詰めます。こうすることで、次の1年またしっかりと根を延ばすことができるのです。

 

本によっては「なるべく根を切らない」と書かれている場合もありますが、程度問題です。鉢の中が根でぎゅうぎゅう詰めになっている状態では、良い生育は見込めません。こんなときにはある程度、切り詰めます。

 

逆に、貧弱な根しかない場合には、今ある根を大切になるべく切らないように植え替えます。

 

理由その3、土に潜む害虫を駆除するため

▲これが憎っくきコガネムシの幼虫!

ラにつく害虫は何種類もいますが、トップクラスに厄介なのがコガネムシの幼虫です。

 

コガネムシは土の中に卵を産み、幼虫は植物の根を食べて育ちます。土の中にいるので発見することが難しく「何だかバラの調子が悪そうだなぁ」と思っている内に、枯れてしまうこともあります。

 

わたしもかつて、ピエール・ドゥ・ロンサールとアイスバーグの2鉢を枯らされてしまいました。

 

年に1回、鉢土を点検して、コガネムシの幼虫が入り込んでいないか、チェックするのはとても重要です! もしいるのを発見したら、もちろん捕殺します。

 

理由その4、バラの根に病気がないか確認するため

ラがかかる病気に「根頭がん腫病」という、株元や根に大きなコブができるものがあります。これを放置すると、根からの養分の吸収が悪くなるのでやがて樹勢がなくなり、バラが弱ってしまいます。

 

がん腫を見つけたら、ナイフで切り取っておけばバラは問題なく生育します。ただし、感染力が強いので、がん腫が発生した鉢の土はもう使えません。がん腫を切り取ったナイフや、土をさわったシャベルも厳重に消毒してから他のバラに使うようにします。

 

がん腫と共存しながらバラを栽培することは可能ですが、とても面倒になるのは確かです。いつ他のバラに感染するかと心配が絶えません。バラ栽培に慣れた中級以上の方なら、それもアリですが、初心者はがん腫が発生したバラは廃棄処分にするのが賢明です。

 

植え替え適期は木立バラなら12月中旬~2月いっぱい、つるバラなら12月中旬~1月初旬

▲1月下旬になると、つるバラの芽はこんなに膨らんでいる!

え替え適期は関東以西基準でバラの休眠期の12月中旬~2月いっぱいです。この時期なら、土を替えたり根を切り詰めたりと、多少バラに負担のかかる作業をしても大丈夫です。木立ち樹形のバラなら、休眠期のいつ作業しても大丈夫です。

 

つるバラは芽の動き出しが早いめなので、できれば1月上旬までに、遅くとも1月中旬までに作業を終えるようにしましょう! 芽が膨らんでから作業すると、せっかくの芽がぽろぽろ落ちてしまいます。

 

木立ちバラの植え替え方

ングリッシュローズのレディ・エマ・ハミルトンを例に、木立ちバラの植え替え方を紹介します。

 

この方法で植え替えできるのは、ハイブリッド・ティー系統のバラフロリバンダ系統のバラ、イングリッシュローズなどのシュラブ系統のバラのなかで枝先が長くならないタイプのバラパティオローズや木立ち樹形のミニバラです。大型にならないオールドローズも、同じように植え替えすることができます。

 

木立ちバラの植え替え方その1、準備するもの

▲レディ・エマ・ハミルトンの鉢植えを植え替える

備するものは、植え替える前の鉢植え、新しい植木鉢、培養土(肥料入り)、鉢底石です。鉢底石は、通常のものでも、赤玉土(中粒または大粒)で代用しても構いません。

 

これ以外に、適宜、ガーデングローブ、水やり用のバケツ、土入れ、シャベルなどを用意してください。1~2鉢の植え替えなら、わたしは使い捨てのビニール手袋を使っています。

 

植え替える鉢植えは、できれば2日ほど水やりしてない方が、土離れが良く作業がしやすいです。

 

木立ちバラの植え替え方その2、鉢植えからバラを引き抜く

▲鉢に沿ってシャベルで1週する

さいめの鉢や、しっかり根が張っているバラは、うまく鉢から抜けないことが多いので、シャベルで鉢と土の間をつつきながら1週すると、抜きやすくなります。

 

▲拳で鉢を叩いて1週する

それでも上手く抜けないときは、鉢の周りを拳でトントン叩いて1週すると、上手く抜けてくれます。

 

木立ちバラの植え替え方その3、根をほぐして害虫や根のチェック!

▲根についた土を落として状態をチェックしよう

からバラの木が抜けたら、根をほぐして、根にがん腫がないか、土の中に害虫が侵入していないか、根が伸びすぎていないかなどをチェックします。

 

▲バラの根を食い荒らすコガネムシの幼虫

もしもコガネムシの幼虫を見つけたら、殺します。コガネムシの幼虫は、バラの根を食い荒らす、とても厄介な害虫です!

 

以前わたしは白い鉢底石を使っていたのですが、白い鉢底石とコガネムシの幼虫が見分けにくいので、最近では鉢底石のかわりに大粒や中粒の赤玉土を使っています。

 

▲根頭がん腫病のコブ 写真提供/天女の舞子

 

バラの根頭がん腫病は、バラの株元や根に芋のような塊(コブ)ができる病気です。がん腫はバラの養分を吸い、株を弱らせてしまいます。がん腫を見つけたら、初心者さんは、そのバラも、そのバラが植わっていた土もすべて廃棄処分してください。鉢はしっかり洗ってから消毒を! そのままにしておくと、細菌感染で広がるので、他のバラにもうつってしまいます。

 

中級以上の方は、がん腫を切り取り経過観察でもいいと思います。ただし、切り取ったナイフや土を触ったシャベルなど、しっかり消毒してから他のバラに使ってください。がん腫を切り取ったバラでもちゃんと咲いてくれますが、がん腫は完治することはなく治ったように見えても再発しやすいようです。他のバラが被害に遭わないよう、細心の注意を払ってください! 自信がないなら迷わず処分を(涙

 

▼根頭がん腫病の詳しい知識はこちらをご覧ください

 

▼根頭がん腫病の治療のしかたはこちらをご覧ください

 

▲伸びすぎた根はカット

長く伸びすぎている根は、鉢におさまるよう切り詰めます。ここまで根を触っていいのは、バラの休眠期だからこそです。この時期なら、多少、根に負担のかかる作業をしても枯れる心配はありません。

 

木立ちバラの植え替え方その4、鉢底ネットと鉢底石を!

▲細かい排水用の穴が開いたプラスチック鉢の底

え替える新しい鉢がプラスチック鉢で、底穴が細かいタイプなら、鉢底ネットはいりません。

 

▲大きな底穴には、鉢底ネットを!

底穴が大きなタイプの鉢なら、なめくじなどの害虫が侵入するのを防ぐために、鉢土の流出を防ぐためにも鉢底ネットをかぶせます。

 

▲鉢底石か、代用品の大粒または中粒の赤玉土を入れる

さらに鉢底石または、鉢底石がわりに赤玉土(大粒または中粒)を2cmほど入れます。

 

木立ちバラの植え替え方その5、バラの木の高さを調節しながら培養土を入れる

▲接ぎ口が鉢の縁から2cm下になるよう調節して培養土を入れる

底石の上に培養土を5~6cm入れたら、バラの木を置き、バラの接ぎ口が鉢の縁から2cm下になるように高さを調節して培養土を足します。

 

*半分だけ古土を利用する方法は、下で紹介している「つるバラの植え替え方」を参照してください。

 

木立ちバラの植え替え方その6、葉摘みと冬剪定(適期は2月)

▲冬の剪定のしかた

っている葉をすべて摘み取り、冬剪定を行います。葉をすべて摘み取ることで、バラはすんなり休眠に入ります。

 

(ただし、できれば冬剪定は、バラが休眠から目を覚ます直前の2月に行うのが適期です。冬剪定を後回しにする場合は、葉をすべて摘み取り、つぼみが残っているようならつぼみもすべて摘んでおきます。その後、水やりして植え替え作業は完了です。)

 

冬剪定のしかたは、

 

赤い線A/まず細すぎる枝や枯れ枝をつけ根から切り取ります。

 

青い線B/ハイブリッドティー系統のバラは、この位置でカット。春から伸びた枝の1/3の高さで切ります。剪定した後は、春から伸びた枝が10~15cm残っている状態になります。パティオローズやミニバラもこの方法で剪定します。

 

紫色の線C/フロリバンダ系統のバラは、この位置でカット。春から伸びた枝の1/2の高さで切ります。もっと長く枝を残し、2/3の高さで切っても構いません。なるべく1番花が咲いた花枝で切ります。

 

シュラブ樹形のバラ/イングリッシュローズなどのシュラブ樹形のバラは、フロリバンダ系統のバラと同じ剪定(紫色の線C)ができます。2/3の高さを目安に、枝をやや長く残します。細枝でもよく咲くので、あるていど細いものも残します。

 

オールドローズ/ほとんどのオールドローズがシュラブ樹形のバラなので、フロリバンダ系統のバラと同じ剪定(紫色の線C)ができます。こちらも2/3の高さを目安に、枝をやや長く残します。ただし、古い枝や細枝にもしっかり花が咲く品種が多いので、シュラブ樹形のバラよりもたくさんの細枝を残す感じにします。

 

木立ちバラの植え替え方その7、水やりして完了

後に鉢底から水が流れ出るまで、しっかり水やりします。根の活着を促すため、活力剤(マイローズバラの活力剤、メネデール、HB-101、リキダス、土母など)を水に薄めて使ってもいいですね^^

 

▼活力剤については、こちでまとめてあります。

 

つるバラの植え替え方

ビング前に設置しているバルコニーアーチに誘引しているつるバラのピエール・ドゥ・ロンサールを例に取り、鉢植えのつるバラの植え替え方を紹介します。

 

つるバラの植え替え方その1、全体を軽く剪定する

▲幹として残す枝とカットする細枝

を中心に、鉛筆よりも太い枝は残し鉛筆よりも細い枝は10cmほどの長さにカットします。残した枝先も10cmほど切り詰め、葉が残っているならすべて取り除いておきます。

 

つるバラの植え替え方その2、それまで誘引してあったビニールタイや麻紐を取り除く

れまでバラの枝を誘引してあったビニールタイや麻紐をすべて取り除き、フェンスやアーチから外します。この後の作業がしやすいように、全体を麻ひもでゆるく束ねておいてもいいでしょう。

 

つるバラの植え替え方その3、鉢からバラを引き抜き、害虫や根のチェック!

▲根や土に異常がないか、しっかり根をほぐしてチェック!

を床に寝かせてバラを鉢土ごと引き抜きます。根にがん腫がないか、土にコガネムシの幼虫が入り込んでいないかチェックします。

 

がん腫があれば他のバラに感染する恐れがあるので初心者ならその株も植わっていた土も廃棄処分が基本です。中級者以上の方で、しっかり管理できるならがん腫を切り取り経過観察も可です。コガネムシの幼虫がいれば捕殺します。

 

つるバラの植え替え方その4、バラの根を適宜カット

▲伸びすぎた根は、適宜カットする

まりに窮屈そうに折れ曲がって伸びているバラの根や、鉢の底まで届いてしまっている長い根は適宜カットします。

 

つるバラの植え替え方その5、土を改善する

▲状態の良い古土なら、元肥などを加えて再利用もできる

ラの土を良い状態にします。すべて新しい培養土に変えるのが理想ですが、ベランダガーデナーのわたしは古土の処分も大変なので、基本は半分だけ新しくするようにしています。

 

ここでは、ごく簡単なリサイクル方法を紹介しています。古土をきちんとリサイクルするなら、別のページを参照してください。

 

古い土には元肥となる化成肥料を混ぜ新しく追加する培養土と混ぜます。化成肥料の分量は、肥料の容器に表示されている分量を参考にしてください。

 

通常、元肥には堆肥や腐葉土などの有機質肥料が適しているとされていますが、家の側に置く鉢植え栽培の場合には、化成肥料の方が臭いが気にならずコバエなどの温床にならずに済むので良いと思います。(ただし、ほとんどの培養土には有機質肥料が入っていますけどね・・・)

 

▼古土をきちんとリサイクルする方法はこちらをご覧ください。

 

つるバラの植え替え方その6、新しい土に植えこんで水やり

に鉢底ネット、鉢底石を敷き、新しい土(培養土半分+元肥を混ぜた古土半分)を入れてつるバラを植えこみます。

 

鉢底からしっかり水が流れ出るまで水やりを! 根の活着を促すため、活力剤(マイローズバラの活力剤、メネデール、HB-101、リキダス、土母など)を水に薄めて使ってもいいですね^^

 

つるバラの植え替え方その7、枝を誘引し、仕上げ剪定して完了

をなるべく地面に水平になるように誘引します。去年のシュートがしっかり育っているので、これを主役に、古い細い幹は株元から切り取りました。こうすることで、また新しいシュートが出るのを促します。

 

バルコニーアーチの左側に鉢を設置しているので、写真のように枝を右に右にと誘引しているのですが、どうしても左側にいきたい枝もあるので、鉢にオベリスクを立てて、左側に向かう枝を留めつけました。

 

最後に通路にはみ出している枝や、逆に壁側にはみ出している枝を整理(仕上げ剪定)して完了です。

 

まとめ

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鉢植えのバラは、基本、毎冬に植え替えます。土を新しいものに入れ替えるだけでなく、害虫駆除や根の状態をチェックする意味もあるので、ちょっと大変ですが、きちんと行いたい作業です。「あまりに作業が大変なら鉢土の上部1/3だけでも掘り起こして土替えを」と書いてある本もありますが、我が家はコガネムシの幼虫被害があるので、必ず毎年植え替えています。

 

作業適期はブッシュ樹形のバラなら12月中旬~2月いっぱい。つるバラなら12月中旬~1月中旬までです。

 

植え替え手順は、我が家のベランダで育てているショートシュラブ樹形のレディ・エマ・ハミルトンと、つるバラのピエール・ドゥ・ロンサールを例に紹介しました。次の春にはまたどんな風に咲いてくれるか、とても楽しみになります^^

 

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