バラの農薬「ローテーション散布」に使う薬剤を選ぶ際に必要な、農薬の系統を一覧にしてまとめました。農薬初心者が扱いやすいオススメ薬剤も紹介しているので、参考にしてください!
バラの農薬を系統で把握して「ローテーション散布」しよう!
▲株数が増えたら希釈タイプの農薬を使って 写真提供/天女の舞子
バラの株数が増えてきたら、希釈タイプの農薬を使って「ローテーション散布」するのがコスパ的にも、病虫害をしっかり防除する意味でも重要です。
「ローテーション散布」とは、異なった系統の農薬をいくつか用意しておき、順番に散布すること。「ローテーション散布」することで、特定の農薬に耐性をもった耐性害虫や耐性菌が発生しにくくなり、農薬の効果を落とさず病虫害を防除することができます。
▼耐性害虫が発生してしまう仕組みや、ローテーション散布の正しい考え方はこちらをどうぞ
でも、農薬の系統ってとても分かりにくいです。農薬のラベルにも表示がないし、メーカーによっては公式サイトで調べても表記されていないことがあって、調べようにも調べきれないことが多いです。
さまざまな農薬の系統一覧を載せているサイトもありますが、有料だったり、あまりに膨大すぎてそこから必要な情報だけを拾い出すのが困難だったりします。専門的な論文では、難しすぎて読み切れない場合も・・・。
そこで、バラによく使われる主な薬剤だけで分かりやすい系統一覧表をつくりました。ローテーション散布の薬剤を選ぶさいの参考にしてください!
バラの農薬「系統一覧」
赤文字は、農薬初心者にも使いやすい薬剤を示しています。青文字は、注意を要する点を示しています。たとえば扱いにくい剤型の「水和剤」、大容量販売しかない商品、劇物指定のものなどです。
殺虫剤
商品名・年間使用回数 | 効果 | 有効成分 | 系統 | 備考 |
オルトラン水和剤 5回以内 |
アブラムシ類、アザミウマ類、ヨトウムシ類 | アセフェート | 有機リン系 | |
オルトラン液剤 5回以内 |
アブラムシ類 チュウレンジハバチ |
アセフェート | 有機リン系 | |
スミチオン乳剤 6回以内 |
アブラムシ、フラーバラゾウムシ | フェニトロチオン(MEP) | 有機リン系 | |
トクチオン 5回以内 |
アブラムシ類、フラーバラゾウムシ、アザミウマ類、ハダニ類 | プロチオホス | 有機リン系 | 乳剤・水和剤アリ、大容量商品のみ |
マラソン乳剤 6回以内 |
アブラムシ類、ハダニ類、アザミウマ類 | マラソン | 有機リン系 | |
スミソン乳剤 6回以内 |
アブラムシ類 | マラソン・MEP | 有機リン系 | スミチオン+マラソン |
アクテリック乳剤 |
アブラムシ類、カイガラムシ類、ケムシ類 | ピリミホスメチル | 有機リン系 | 2017年製造中止(販売はまだある) |
モスピラン 5回以内 |
アブラムシ類、アザミウマ類 | アセタミプリド | ネオニコチノイド系 | 液剤、水溶剤、粒剤アリ |
ベニカ水溶剤・ダントツ水溶剤(容量が違うだけ) 4回以内 |
アブラムシ類、ミカンキイロアザミウマ、コガネムシ成虫 | クロチアニジン | ネオニコチノイド系 | 顆粒の水溶剤、ニオイがない |
アントム顆粒水溶剤・アルバリン顆粒水溶剤(容量が違うだけ) 5回以内(但し、土壌混和は1回以内) |
アブラムシ、スリップス、コナジラミなど | ジノテフラン | ネオニコチノイド系 | 新しい薬剤なので耐性害虫がいない、アントムは販売中止(?) |
アドマイヤー | アブラムシ類 | イミダクロプリド | ネオニコチノイド系 | フロアブル、水和剤、粒剤・顆粒アリ、劇物、バラに適用ナシ |
ベストガード水溶剤 4回以内 |
アブラムシ類、コナジラミ類、ミカンキイロアザミウマ | ニテンピラム | ネオニコチノイド系 | 100g850円 |
ベニカR乳剤 6回以内 |
アブラムシ類、ハダニ類、チュウレンジハバチ、ハスモンヨトウ、クロケシツブチョッキリ、コガネムシ類成虫、ヒラズハナアザミウマ | フェンプロパトリン | ピレスロイド系 | |
アディオン乳剤 6回以内 |
アブラムシ類、ヨトウムシ類 | ペルメトリン | ピレスロイド系 | 同名の除草剤があるので注意・100ml2000円弱 |
アファーム乳剤 5回以内 |
コナガやヨトウムシ、オオタバコガなどのチョウ目害虫 | エマメクチン安息香酸塩 | マクロライド系 | 速効性、100ml2500円 |
マシン油 | カイガラムシ類 | マシン油 | 気門封鎖剤 | 混用しない |
ゼンターリ顆粒水和剤 | ヨトウムシ類、ケムシ類 | BT菌 | 生物系 | バラに適用ナシ |
アブラムシ類に効果のある扱いやすい赤文字だけを系統別に抽出してみると、下記の3系統9農薬があります。このあたりが、農薬初心者にも使いやすい薬剤です。
1、有機リン系/オルトラン液剤・スミチオン乳剤・マラソン乳剤・スミソン乳剤
2、ネオニコチノイド系/モスピラン・ベニカ水溶液・ベストガード水溶剤
3、ピレスロイド系/ベニカR乳剤・アディオン乳剤
殺菌剤
商品名・年間使用回数 | 効果 | 有効成分 | 系統 | 備考 |
ダコニール1000 6回以内 |
黒星病、ウドンコ病の予防 | TPN | 有機塩素系 | フロアブル剤、25度以上で薬害が出やすい、耐性菌が発生しにくく連用できる、木酢液・竹酢液との混用は避ける |
オーソサイド水和剤80 8回以内 |
黒星病の予防 | キャプタン | 有機塩素系 | 薬害が出にくい、耐性菌が発生しにくく連用できる |
ポリキャプタン水和剤 |
ウドンコ病・黒星病の予防 | ポリオキシン複合体+キャプタン | 有機塩素系 | |
ルビゲン水和剤 |
ウドンコ病の防除 | フェナリモル | ピリミジン系 | 製造中止 |
サルバトーレME 7回以内 |
ウドンコ病・黒点病の予防・治療に | テトラコナゾール | EBI系 | 液剤 |
サプロール乳剤 5回以内 |
黒星病、ウドンコ病の予防と治療 |
トリホリン | EBI系 | 暑い時期に薬害が出やすい |
ラリー乳剤 5回以内 |
ウドンコ病、黒星病の治療 |
ミクロブタニル | EBI系 | |
トリフミン水和剤 5回以内 |
ウドンコ病、黒星病の治療 | トリフミゾール | EBI系 | |
ベンレート水和剤 6回以内 |
黒星病、ウドンコ病の予防と治療 | ベノミル | ベンゾイミダゾール系 | |
トップジンMゾル 5回以内 |
黒星病の予防と治療 | チオファネートメチル | ベンゾイミダゾール系 | フロアブル剤 |
サンヨール 8回以内 |
ウドンコ病、灰色かび病、黒星病、アブラムシ類、ハダニ類、チュウレンジハバチ | DBEDC | 有機銅剤系 | 乳剤&液剤・薬剤耐性がつきにくい、葉汚れが少ない |
エムダイファー水和剤 8回以内 |
灰色かび病、炭疽病、ベと病、さび病の予防 | マンネブ | ジチオカーバメート系 | 耐性菌が発生しにくく連用できる |
ジマンダイセン 8回以内 |
黒点病、ウドンコ病、べと病の予防 | マンゼブ | ジチオカーバメイト系 | 水和剤・フロアブルアリ、耐性菌が発生しにくく連用できる |
フルピカフロアブル(メパニピリム水和剤) 5回以内 |
ウドンコ病、黒星病、灰色かび病の予防 | メパニピリム | アニリノピリミジン系 | |
パンチョ顆粒水和剤 5回以内 |
ウドンコ病の予防と治療 | ジフルフェナミド+トリフルミゾール | アミドキシム系+イミナゾール系 | 2つの農薬の混合剤・ドライフロアブル剤 |
ストロビーフロアブル |
ウドンコ病、黒点病、黒星病、べと病の防除 | クレソキシムメチル | ストロビルリン系 | ウドンコ病予防に効果が高い、バラに適用ナシ |
パレードフロアブル 3回以内 |
ウドンコ病、黒星病の防除 | ピラジフルミド | SDHI系 | 天敵や有用昆虫、環境生物への影響が少ない・250ml約6000円 |
家庭園芸用カリグリーン 回数制限なし |
ウドンコ病、灰色かび病の治療薬 | 炭酸水素カリウム | 炭酸水素塩剤系(天然系成分) | 水溶剤・効果は即効・耐性菌の心配なく連続使用できる |
ボトキラー水和剤 回数制限なし |
納豆菌 | 天然系 | ダクト内挿入で散布・500g約9000円 |
ウドンコ病・黒星病予防に効果のある扱いやすい赤文字だけを系統別に抽出してみると、下記の7系統9農薬があります。このあたりが、農薬初心者にも使いやすい薬剤です。
1、有機塩素系/ダコニール1000
2、EBI系/サルバトーレME、サプロール乳剤、ラリー乳剤
3、ベンゾイミダゾール系/トップジンMゾル
4、有機銅剤系/サンヨール
5、ジチオカーバメイト系/ジマンダイセン
6、アニリノピリミジン系/フルピカフロアブル
7、アミドキシム系+イミナゾール系/パンチョ顆粒水和剤
年間使用回数にも気を配ってローテーション薬剤を選ぼう!
▲「ダコニール1000」の年間使用回数は6回以内 出展/グリーンジャパン
ローテーション薬剤を選ぶさいには、農薬の系統ともうひとつ、その農薬が年間何回まで使えるかを確認しましょう。
少ないものなら「ベニカ水溶剤」が年間4回まで、多いものなら「サンヨール」や「ジマンダイセン」が年間8回まで使えます。
これらの情報をもとに、ローテーション薬剤を選んでください。ほかにも希釈タイプの農薬を扱う際の注意点はいろいろあります。次のページにも目を通してくださいね!
▼希釈タイプの農薬を選び組み合わせる際の基礎知識は、こちらから
▼実際に薬液を作り散布する方法は、こちらから
まとめ
今回は、希釈タイプの農薬をローテーション散布するさいに必要な、バラに使われる主な薬剤の系統を一覧にしてまとめました。
これらの情報をもとに、殺虫剤を3~4種類、殺菌剤を3~4種類、選んでローテーション散布しましょう。それぞれ年間5回ずつ使える農薬として計算すれば、殺虫剤・殺菌剤ともに年間15~20回散布することができます。
ご自身のローテーション散布の計画づくりに役立ててください!
▼病気と害虫対策の記事一覧は、こちらからどうぞ
そうそう。上手くローテーションしないとダメなんですよね~ ここんところ。長雨が続いてるので皆。ミニドッグランへ避難させてます(笑 あ~もう、虫も動き出してるし・・・ 田舎は困る。。。 この長雨が終わったら。まずは家の周囲にぐるりとムカデの殺虫剤をまかなくては。。。 カニさんも動き出してます(笑 昨年は小指の爪ほどのカニさんがバラの新芽をむしゃむしゃしてたのを見て。頭がクラクラしました(笑 ま。バッタさんと同じでいたちごっこですね~
ORCAさん、こんばんは。
我が家のベランダでもコバエを見かけるようになりました。
バラ鉢には防虫マルチしたのでいないんですが、
いつもつくっているチューリップとビオラの半分こ寄せ植えが
防虫マルチしにくくてそのままだったので、
そこにコバエが寄ってきてるんですよ(--
しかしムカデにバッタにカニ・・・。
まさかカニがバラの新芽を食べるとは思いませんでしたよ(笑
あいびー
はじめまして
昔は薬と言ったらオルトランみたいな感じでやっていましたが、
オウトウやリンゴを本格的にやっていくうちに適用とか真面目に見る様になって
今では適用外は使わない、そばにある場合はかからない様にするといった感じで使っています。
その中でアルバリンも持っているのですが、
バラにアルバリン??
って思って調べてみたら、バラとボタンは樹木であるにもかかわらず、「花き&観葉植物」に入ることが分かってまた一つ知識を得ました。ありがとうございます。
今までバラにアルバリンがかからない様にしていましたが、バラ、リンゴ、オウトウ全てに
マラソン乳剤・ベニカ水溶剤・アルバリン顆粒水溶剤が使えることになりますね。
液剤って個人邸で使い切るのってとても厳しいと思うので、個人的には
GFオルトラン水溶剤の方が使いやすいかなとも思いました。
成瀬川ゆうきさま、コメントをありがとうございます。
おぉ! 成瀬川さまは果樹農家さんなんですか!
そんなプロの方に見ていただいているとは・・・ちょっと緊張します。
今回取り上げたバラ用農薬たちは、専門書籍やバラの先生方の動画、
バラの先生方の過去の講習会などで取り上げられた薬剤を
ピックアップしてリスト化したものです。
大容量商品やバラに適用外の農薬、はては劇物まで入っているのは
そういった理由からです。
意外と適用を気にされてなかったり、素人に勧めるには危ないものまであって
少し驚きました。
アルバリンは、たしかバラの先生の過去の講習会から拾ってきた情報です。
成瀬川さまのお役に立てて良かったです^^
オルトランには水溶剤もあったかと思い調べなおしたのですが、
住友化学園芸の「GFオルトラン水和剤」のことでしょうか?
オルトラン液剤は100mlと、やや容量が大きいのですが、
やはり水和剤はドリフトが気になります。
まつお園芸さんもオルトラン液剤を押していらっしゃるので、
ここでは液剤の方をオススメとさせていただきました。
農薬には使用期限もあるし、じつは使いきれない大容量は処分に困るんですよね。
実際に使っていらっしゃるからこそのご意見ありがとうございました^^
あいびー
こんばんは
いえいえ、私はプロ農家では有りません。
昔は適用外の果樹にもオルトラン粒剤使っていたのですが、実がなるようになったのを
きっかけにその辺はきちんとしなければならないと思って、農家さんの「令和○年度 さくらんぼ病害虫防除基準」等見ながら色々本格的に取り組み始めたということでしたw
すみません、勘違いさせてしまいました。
オルトラン水和剤についてはそうです。GFオルトラン水和剤です。
先日、ニンニクにかけましたが、1回分ずつに分けられているので家庭園芸でも使いやすいかなと思いました。
1回分ずつと言えば、元々ベニカ水和剤を使ってて、果樹にはGFオルトラン水和剤の適用が無かったので買ってなかったのですが、ニンニクに使えたので買ってみました。
確かにこういう粉系統は風で飛散するのが心配ですね。私は室内でスプレーボトルにいれて調合して外に持って行っています。
今度マラソン乳剤(浸透移行性あるので)買おうと思いますが、こういうボトルの液剤、使い切るの難しいですよね。
マラソンはまだ1ml使うのでまだ減るかもしれませんが、ダインみたいに0.1mlずつ使ったりするのってどうやって使い切るのでしょう?
成瀬川ゆうきさま。
わざわざ返信をありがとうございます。
「本格的」を勝手にプロ農家さんと勘違いしてしまいました。
ごめんなさい。
「さくらんぼ病害虫防除基準」というのがあるんですか。
それならと、バラで病害虫防除基準を検索してみると・・・
おぉ、出ました! 寒河江市のもののようです。
これをデータに補完しましょう。
こちらこそ、良い情報をありがとうございます^^
GFオルトラン水和剤は1回ずつの分包になっているんですか。
住友化学園芸のだし、家庭園芸用になっている感じですね。
水和剤はドリフトともうひとつ、溶けにくいのも問題で、
それもあってオススメから外したんですよね。
そこも改善されているのかな?
少し詳しく調べてみますね。
粉末の水和剤はほかの剤型より長く保管できるというメリットもあって
じつは悪いところばかりでもないんですよね。
やはり農薬は大規模散布するプロ用を基準につくられている
ケースが多いから、大容量商品が多いですよね。
展着剤はアビオンEが雨流れを防ぐのでオススメですが、
500mlの商品しかないんですよ(^^;
使いきれなかった農薬は、農協にもっていくと処分してくれるそうですが、
処分料がかかります。
あいびー