つるバラの春花が終わったら、ぜひやりたい手入れがあります。これをすることで、来年の主幹となるシュートが出やすく、もう出ているシュートをより健康に育てることになります。参考にしてください!
つるバラの春花が終わったら、お楽しみはシュートの発生!
▲美しく咲く「フランボワーズバニーユ」の春花
つるバラは、とにかく春が華やかです。まさに爆咲きと呼べるほど、たくさんの花を豪華に咲かせます。春花以降、2番花や秋花が咲く品種もありますが、その花数はぐっと減ります。
写真の「フランボワーズバニーユ」も少しは返り咲きしますが、こんなにたくさん咲くのは春の1番花だけ。ピンクと紅色の絞りの花がたっぷり咲いて美しいですね。
一年で一番楽しみなつるバラの春花が終わったら、ロザリアンにはもうひとつお楽しみがあります。それが、シュートの発生です。
シュートは来年の春に爆咲きしてくれる大切な主幹になる枝です。確実に出して、しっかり育てましょう。今回は、つるバラのシュートを出やすくし、しっかり育てるために必要な手入れについて紹介します。
▼木立ちバラのシュートを出やすくする手入れは、こちらの記事を参考にしてください
つるバラの3タイプのシュートを理解しよう!
▲つるバラの3タイプのシュート
つるバラのシュートには3つのタイプがあります。株元から発生する勢いの良い新しい枝が「ベイサルシュート」。「ベーサルシュート」と表記される場合も多いです。枝の途中から出るシュートは「サイドシュート」。もうひとつ、台木から発生するシュートを「サッカー」と呼びます。
この中で重要なのはベイサルシュートとサイドシュートです。これに対してサッカーは駆除すべき対象です。それぞれどんなものか、写真で紹介します。
▲株元から発生するのが「ベイサルシュート」
ベイサルシュートは、株元から発生する勢いの良い新しい枝です。
この枝が来年以降、たっぷり花を咲かせてくれる主幹となります。この時期に元気なベイサルシュートが発生すれば、それはもう来年以降の花付きが約束されたようなもの。切ったり曲げたりしないで、真っすぐ長く育てましょう。
▲枝の途中から発生するのが「サイドシュート」
サイドシュートは枝の途中から発生します。写真でみて分かるとおり、枝の途中から出ているのに、まるでベイサルシュートかと思うほど元気で立派な枝です。
これも来年以降の主幹となる重要な枝です。切ったり曲げたりせず、真っすぐ長く育てましょう。
▲日本の台木に使われる「ノイバラ」”Rosa multiflora”
サッカーは台木のベイサルシュートです。サッカーを放置しておくと、やがて台木の品種の花が咲きます。日本でつくられた苗木なら、台木は「ノイバラ」です。ノイバラは細かい7枚葉で、やがて一重の白い花を房状に咲かせます。
台木はとても樹勢の強い品種なので、サッカーを育ててしまうとそちらに養分が取られ、いずれ接ぎ木した園芸品種の方が枯れてしまいます。サッカーを見つけたら付け根から切り取り、駆除するのがセオリーです。
続いて、つるバラのシュートを出やすくする手入れについて紹介します。
つるバラのシュートを出やすくする春花後の手入れ6選!
1、混み合ったところの「出開き」を間引く
▲葉が数枚開いて生長を止めた「出開き」
つるバラに「出開き」はつきものです。出開きとは、数枚の葉が開いてそれっきり生長できなかった芽をいいます。芽吹きから春の開花までの間、少しでも光合成に役立てるために、出開きはそのまま放置するのをオススメしています。
でも、春花が終われば話は別です。春花後は出開きを間引いて、そのエネルギーをシュートを出す方に使ってもらいましょう。
▲葉が混み合ったところの出開きを取り除く
出開きを間引くのは、写真の赤丸のところ。葉が混み合ったあたりです。葉が混み合ったところの出開きをそのままにするデメリットを3つ挙げます。
1、葉が混み合った場所の出開きは、他の葉の下になって日光を受けることができません。つまり光合成の役にたっていません。春花が咲くまでの葉が少ないうちは出開きも光合成に役立っていましたが、この時期になるともう役立っていない不要な葉です。
2、薬剤散布する場合、葉が混み合った場所はすべてにキチンと薬剤がかからないことが多いです。そうすると病虫害が発生しやすくなります。葉を間引いて薬剤がかかりやすくしましょう。
3、出開きは、光合成に役立っていないのに、維持するために養分を必要とします。出開きに養分を取られていると、シュートが発生しにくくなります。
これら3つの理由から、枝葉が混みあっているところの出開きを適切に間引いて減らすといいのです。
▲出開きをつまんで下に引いて取り除く
出開きを取り除くときにはハサミを使いません。出開きを指でつまんで、下に引き下ろす要領で取り除きます。こうすることで、その場所から再び芽吹くのを防いでいます。
▲間引いた出開き
ただし葉は光合成して養分を作り出す、バラにとって大切な器官です。いわばソーラーパネルのような役割を持っています。減らしすぎは厳禁。込み合ったところを間引くていどに留めましょう。
2、夏の整枝
▲色の悪い枝は付け根からカット!
どんなつるバラも、じょじょに枝が老化していきます。老化した枝は芽吹きも花付きも悪くなり、やがて枝自体の色も悪く黄色っぽくなっていきます。上の写真の上下の枝を見比べてください。明らかに上の枝が黄色っぽく、老化しているのが分かります。
こういう枝を春花後に株元から切り取ることで、ベイサルシュートの発生が促されます。
▲「紅玉」は世代交代が早い品種
品種によりますが、枝の老化がとても早い品種があります。我が家の「紅玉」がまさにそうで、去年出たベイサルシュートはよく咲きますが、2年目にはだいぶ減り、3年目の枝は花付きがぐっと落ちます。
その分シュートはよく発生するので、どんどん主幹を新しいものに更新して育てています。
▲シュートはよく発生する
赤い矢印がベイサルシュート、青い矢印がサイドシュートです。もっと多くのベイサルシュートが発生したのですが、誘引できるスペースが限られているので3本に減らしました。
これだけのシュート枝があれば十分なので、シュートが2mくらいまで育ったら3年目の古い主幹は株元から切り取ってしまいます。こうすることで、よりシュート枝に養分を回すことができます。
どちらの方法も、冬に誘引しなおすタイミングで行っても良い剪定です。自信のないかたは冬に行ってください。原理がよく理解できている方なら、春花後に行うのがオススメです^^
これ以降は木立ちバラと共通する手入れです。やや駆け足で紹介します。
3、株元に日が当たるようにする
▲株元に日が当たるとベイサルシュートが出やすい
株元にしっかり日が当たっていると、ベイサルシュートの発生がしやすくなります。株元を暗くしている草花を整理したり、周りに置いている鉢を動かしたりして日当りを確保しましょう。
4、黒星病で葉を落とさない
▲薬剤散布で黒星病を防除する
上でも書いたように、バラの葉はいわばソーラーパネルのようなものです。ソーラーパネルが多く機能していればいるほど、バラは養分を作り出すことができます。
ところが、夏になると黒星病が蔓延してすっかり葉を落としてしまうバラも多くあります。黒星病に弱い品種は、しっかり薬剤散布して黒星病を防除しましょう。
シュートが発生しやすくなったり、発生したシュートを健全に育てるためにも黒星病の防除は重要です。
5、お礼肥え+腐食酸資材を利用する
根を育てる肥料 1kg プレミアローズセレクション ※土セットと同梱可※(2個まで) ZIK-10000
一般に1季咲きのつるバラにお礼肥えは必要ないと言われますが、シュートを確実に出したいときにはお礼肥えしましょう。このときに使う肥料に「腐植酸」の入った資材もプラスして与えるとより効果的です。
わたしはバラの家の「根を育てる肥料」を使っています。これ、分かりにくい商品名ですが、腐食酸資材なんです。
ほかにもホームセンターで良く見かけるものでは「驚くほど根がぐんぐん伸びる素」(PIC-BIO ピィアイシーバイオ)、「高濃度フルボ酸活力液アタックT-1」(花ごころ)、「ストレスブロック」(ハイポネックス)にも腐植酸(フルボ酸)が含まれています。さらにおなじみの活力剤「リキダス」(ハイポネックス)にもフルボ酸が含まれています。
夏も肥料分を切らさないことで、黒星病が防げるという側面もあります。試してみてください。
6、軒下で鉢栽培なら雨でも水やりを!
▲軒下で鉢栽培なら梅雨時期も水やりが必要
シュートが発生し生長する時期はほぼ梅雨と重なります。雨が降っているとどうしても鉢土の乾きに気づきにくくなりますが、軒のある環境で育てているなら雨でもしっかり水やりを。
せっかく発生したシュートの芽を乾かしてダメにしてしまわないよう、注意してください!
まとめ
今回は、つるバラのシュートを出やすくする手入れについて紹介しました。
つるバラは、本来とても手入れが楽なバラです。樹勢の強い品種が多いし、木立ちバラのように剪定が必要なわけでもありません。手入れが楽でよく咲いて、満足感が高いバラ。それがつるバラです。
ただしシュート、とくにベイサルシュートを出して適宜、枝を世代交代させるのが美しく咲き続けさせるポイントです。
今回紹介した方法をなにもしなくても、ほとんどのつるバラはよく咲いてくれます。でも、よりよく管理したいなら、手入れに取り入れてみてください。来年の春がきっともっと楽しみになりますよ^^
おまけ
▲壁いっぱいに咲く「ピエールドゥロンサール」
つるバラに剪定が必要ないと書くと、あれ? と、首をひねる方が多いかもしれません。この写真のように、十分なスペースがあるなら、剪定などせずのびのびと育てることができます。
が、一般家庭ではこんなに広いスペースに咲かせるのは難しいですよね。
▲家庭サイズのアーチでは、つるバラのジャングルになりやすい
たとえば家庭サイズのアーチにつるバラをのびのび育てると、こんな感じに収集がつかなくなってしまいがち。多くの家庭では、つるバラをコンパクトに維持するテクニックが必要になるのです。
「夏の整枝」のところで紹介した方法は、家庭サイズの庭でつるバラをコンパクトに管理する方法でもあります。これについて詳しくは、また別のページで紹介します。
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