木立ち樹形のバラを新苗から育てる方法を紹介します。それぞれの月に必要な手入れを写真やイラストつきで説明しているので、初心者さんにもかなり分かりやすいと思います。じつは新苗は初心者には難しい面もありますが、大苗でちゃんと育てられるようになったら、ぜひ新苗でもトライしてみてくださいね!
木立ち樹形(ブッシュ樹形)のバラを、新苗から鉢で育てる方法
バラの育て方の基本を、初心者にも分かりやすいよう、樹形別にていねいに紹介します。今回は木立ち樹形のバラを、新苗(しんなえ)から鉢植えで育てる方法です。ここでは基本の育て方を紹介していますので、さらに細かく知りたい方は、それぞれについて詳しく書いているページを参照してください。
木立ち樹形のバラはほとんどが四季咲きで、春~秋まで年に3~4回も花を咲かせてくれる嬉しいバラです。しかも樹高1mちょいにおさえて育てることができるので、鉢植えで育てやすいというメリットがあります。
本来なら、初心者には晩秋~冬の間を中心に流通する大苗、または鉢苗から育てることをおすすめしますが、今回は春バラのシーズンに流通する新苗から育てる方法です。
▼苗の種類について詳しくは、こちらをご覧ください
バラを新苗から育てるメリットとデメリット
▲ほとんどの新苗は、1本の枝先につぼみや花が1輪の姿
新苗は、台木に接ぎ木をしてから半年ほどの若い苗です。通常は台木からひょろりと1本の枝が伸びただけの頼りない姿をしています。ちょうど春バラが咲く5月ごろに流通します。
新苗のメリット
新苗の枝先には花が咲いていることがあります。このため、実際の花を見て品種を選べるのが大きなメリットです。また、新苗は大苗や鉢苗に比べて値段が安いので、上手く育てられるようになればお金をかけずにバラが楽しめるようになります。
新苗は鉢が小さいので、持ち運びしやすいのもメリットです。イベント会場で購入しても、車なしで持ち帰りやすいですね。
新苗のデメリット
新苗は、苗としてはまだ大人になれていない、赤ちゃん苗です。すぐに花を楽しむことはできません。枝先についているつぼみや花は切り落とし、秋まで適切な管理を続ければ、秋花から楽しむことができます。
新苗を購入して以降、病気や害虫被害の多い梅雨時期や、多くのバラが苦手とする高温多湿な日本の夏をきちんと管理しなければいけないので、新苗は初心者向きではないと言われます。
木立ち樹形(ブッシュ樹形)のバラとは、こんなバラ
▲ブッシュ(木立ち)樹形
木立ち樹形は、ブッシュ樹形とも呼ばれる樹形です。枝が硬く、上に上にと伸びていく性質があり、支柱などがなくても自立することができるタイプです。どれくらい横に広がるかにより、さらに細かく「直立タイプ」「半横張りタイプ(または半直立タイプ)」「横張りタイプ」に分けている場合もあります。
木立ち樹形のバラは、今年伸びた新しい枝に花を咲かせます。ほとんどの木立ち樹形のバラは、1年に何度も花を咲かせる四季咲き性のバラです。
系統でいえば、ハイブリッド・ティー系統【HT】、グランディフロラ系統【Gr】、フロリバンダ系統【F】が木立ち樹形のバラです。(グランディフロラ系統は独立した系統と認められず、性質が近いハイブリッド・ティー系統と表記されることが多いバラです)。ほとんどのミニバラ【Min】や一部のポリアンサ系統【Pol】も木立ち樹形ですが、育て方がやや特殊なので、別のページをもうけて説明します。
と、いうことで。今回は、ハイブリッド・ティー系統(含グランディフロラ系統)またはフロリバンダ系統のバラを、鉢植えで育てる方法を紹介していきます。
▲シュラブ樹形
最近ではシュラブ系統のバラがとても多くなっています。シュラブ系統のバラは、シュラブ樹形をしています。シュラブ樹形は、枝先が長いタイプだと自立できず支柱が必要です。枝先が短いタイプだと花がややうつむき加減に咲くていどで、ブッシュ樹形のバラとあまり変わりません。枝先の短いタイプのシュラブ樹形なら、今回、紹介するブッシュ樹形の育て方とほぼ同じ方法で育てられます。
鉢植えで育てる木立ち樹形の、初心者向けバラ品種を選ぼう!
▲春のバラ祭りに並ぶ新苗 写真提供/天女の舞子
木立ち樹形のバラは、主にハイブリッド・ティー系統とフロリバンダ系統のバラです。ハイブリッド・ティー系統のバラは、花数は少ないものの花径10cmを超える大輪で色鮮やかなインパクトの強い花を咲かせるバラ品種が豊富です。大型の株に育つものが多いのですが、剪定でコンパクトに管理することで、鉢で育てることができます。
フロリバンダ系統のバラは、花径7~8cmの中輪の花を房咲きにする特徴があります。ハイブリッド・ティー系統のバラよりも1株あたりの花数が多く、コンパクトに育つものが多いので鉢栽培にはぴったりです。
バラは品種により耐病性の強いものや弱いもの、樹勢の強いものや弱いものがあります。初心者は、耐病性が強く、樹勢の強い品種のなかから好みの花を選びましょう。初心者におすすめの育てやすいバラを一覧にまとめていますので参考にしてください!
▼初心者向けのバラ・花色別一覧
▼初心者向けのバラを選ぶポイントをまとめています
良い新苗の選び方
バラの苗をお店で購入する場合は、バラの苗を多く扱っている店で、良い苗を選ぶことがだいじです。悪い苗を購入してしまうと、きちんと管理しても上手く育たなかったり枯れこんだりすることがあるので注意しましょう。
新苗は、ひょろりとした枝が1本だけ出た、ちょっと頼りない姿をしています。確認ポイントは次の4つです。
1、同じ品種のほかの苗に比べて少しでもがっしりした葉が下の方から密によく茂った株を選ぶ
2、病気や害虫の発生がない株を選ぶ
3、枝の枯れこみや、葉が黄色くなっているものは避ける
4、接ぎ木テープが外れていない、きちんと巻かれている株を選ぶ
5、品種名や販売会社名のタグがついているものを選ぶ(新苗に限りませんが)
もし自分で選ぶ自信がなければ、お店の人に声をかけて選んでもらうのも手です。なるべく状態の良い株を選んでもらえるはずです。
ネットで購入する場合は、苗選びはお店まかせになってしまうので、専門知識のあるバラの専門店で購入するのが安全です。オークションサイトでは、あまり状態の良くないものや病気もちの苗が出品されていることもあるので、あまりおすすめできません。
万一、状態の良くない苗が送られてきた場合には、購入したお店に相談してください。お店によりさまざまですが、2日以内、1週間以内などの期限を設けて返品・交換に応じてもらえます。苗の状態をスマートフォンやデジタルカメラで撮影してメールで送付すれば、相談しやすいですよ!
新苗を育てる鉢を選ぼう!
▲サイドまで長い切れ込みが入るスリット鉢
新苗は、どれも仮植えの状態で販売されています。売られていた鉢のまま育てることはできません。そのため、必ず育てるための鉢が必要です。口径と高さが同じくらいの上のような形の鉢がバラには適しています。
鉢の素材は素焼きでもプラスチックでも構いません。それぞれにメリット、デメリットがあるので、自分の使いやすいものを選びます。バラ愛好家によく選ばれているスリット鉢は、側面まで長い切れ込みが入ったもの。根が生長しやすいといわれています。
鉢の大きさは6号(口径18cm)と、8号(口径24cm)の2種類を用意します。新苗は、生長するに従いじょじょに大きな鉢に変えていくので、2つのサイズの鉢が必要になるのです。
▼植木鉢についてさらに詳しくは、こちらをご覧ください。
4~5月の作業/購入してすぐに始める手入れ「鉢増し」「病虫害対策」
ここからは、1年間の作業を順に説明していきます。まず購入してすぐに行う作業は「鉢増し」です。さらにこの時期は、バラにつく病気や害虫に注意しなければいけない時期です。「病虫害対策」についても紹介します。
4~5月の手入れ1、新苗を購入したらすぐに「鉢増し」を!
▲6号鉢と、ビニールポットに仮植えされた新苗
まず鉢増しのしかたから紹介します。新苗を入手したら、さっそく鉢増ししましょう。新苗を鉢増しする適期は苗を購入してからすぐです。
新苗が植わっている鉢はとても小さく、そのまま育てられる鉢ではありません。きちんと植えられているわけではなくて、「仮植え」の状態です。購入したら、または届いたら、なるべく早く作業しましょう!
準備するもの
バラの新苗(接ぎ木テープは取らないこと)
植木鉢(6号鉢)
培養土(元肥入り)
オルトランDX(土置きタイプの殺虫剤)
鉢底ネット
鉢底石
土入れ(深型シャベル)
支柱と麻ひも(またはビニタイ)
剪定ばさみ
水やり用のバケツ(またはジョウロ)
▼初心者のための培養土と肥料の選び方は、こちらをご覧ください
鉢増しのしかた1、鉢底ネットと鉢底石を入れる
植木鉢の底穴に鉢底ネットをかぶせ、その上に鉢底石を1層入れます。さらに、鉢底に培養土を少し入れておきます。
鉢増しのしかた2、新苗をポットから抜く
新苗をポットから抜きます。新苗の株元を人差し指と中指で挟んで持ち、ポットごとひっくり返して抜きます。このとき、根鉢を崩さないよう注意しましょう。
*撮影のときは気づかなかったけれど、この苗、接ぎ木テープがありませんね。なるべく接ぎ木テープがきちんと巻かれている苗の方がいいですよ。
鉢増しのしかた3、6号鉢に植えつける
6号鉢に新苗を入れて植えつけます。写真のように、根鉢を崩さず、もとの土のまま植えつけましょう。
鉢増しのしかた4、隙間に培養土を入れる
土の表面が鉢の縁から1cmほど下になるように調整し、苗と鉢の隙間に培養土を入れます。鉢の縁から控えた1cmの部分を、ウオータースペースといいます。
鉢増しのしかた5、オルトランDXをまく
土の上に撒くタイプの殺虫剤「オルトランDX」をまきます。アブラムシなどの、この時期に出る害虫から新苗を守ってくれます。効果は約1ヵ月です。
鉢増しのしかた6、花やつぼみをカット
新苗の先についている花やつぼみはカットして取り除く。
▼なぜ新苗の花や蕾をカットするのか、理由を知りたい方はこちらをチェック!
鉢増しのしかた7、支柱を立て、たっぷり水やりして完了
台木から枝がはがれるのを防ぐため、支柱を1本立て、品種ラベルをつけます。最後に鉢底から水が流れ出るまで、しっかり水やりして鉢増しは完了です。
水やりの水に、発根を促すため活力剤(マイローズバラの活力剤、メネデール、HB-101、リキダス、土母など)を混ぜてもいいですね。
鉢増し後の管理
植物にとって、根を触られるのはとてもストレスがかかる作業です。鉢増し後1日くらい、直射日光のささない明るい日陰に置いて養生します。その後、直射日光のさす場所に移動して育てます。
鉢土が乾いたら、しっかり鉢底から水が流れ出るまで水やりを。鉢が小さいので、水切れには注意です!
4~5月の手入れ2、「病虫害対策」で苗を健康に保つ!
初心者におすすめの使いやすい病虫害対策では、3本の農薬を紹介しています。土に置くタイプの殺虫剤「オルトランDX」、スプレータイプの殺菌剤「マイローズ殺菌スプレー」、発生してしまった害虫駆除や病気対策に「ベニカXファインスプレー」。
害虫防除の基本は「オルトランDX」
オルトランDXは、土の上にばら撒いて使う農薬です。水やりで溶け出たオルトランDXの成分は、根から吸収され、バラの木全体に行き渡ります。この状態のバラの樹液を吸ったアブラムシなど葉につく害虫を駆除し、土に潜むコガネムシの幼虫も駆除します。
人間が害虫に気づく前に勝手に駆除してくれるので、とても使い勝手のいい農薬です。
効果の持続期間は約1ヵ月。「オルトランDX」は、年間の使用回数が5回以内と決められているので、年間計画を立てて散布するようにしてください。鉢増しで散布したら、次はその1カ月後です。
病気予防の基本は「マイローズ殺菌スプレー」
病気予防の基本になるのは「マイローズ殺菌スプレー」です。バラにかかる代表的な病気に「ウドンコ病」と「黒点病」(=黒星病)があります。「マイローズ殺菌スプレー」は、「ウドンコ病」と「黒点病」予防に、さらに、発症してしまってからの治療にも効果的な農薬です。
「マイローズ殺菌スプレー」は使用回数制限の表記がなく、気軽に使えるところが魅力です。
発生してしまった害虫や病気の駆除に「ベニカXファインスプレー」
マイローズ ベニカXファインスプレー(950ml)【マイローズ】
それでも害虫や病気をみつけたら、スプレータイプの殺虫殺菌剤「ベニカXファインスプレー」で駆除しましょう。「ベニカXファインスプレー」は、病気にも害虫駆除にも効果を発揮する農薬です。
「ベニカXファインスプレー」は、とても効果の高い農薬ですが、より確実に病気を治療し害虫を駆除するためには、見つけたらすぐに使うことが大事です。蔓延した病気を治すにはたくさんの農薬が必要になりますし、育ちすぎた害虫には効果が薄くなってしまいます。
「ベニカXファインスプレー」には、バラの絵のついたボトルの他に真っ赤なボトルの商品もあります。どちらの商品も内容は同じです。
「ベニカXファインスプレー」の年間の総使用回数は4回以内と決められています。よく効くからといって、むやみに使わないよう注意してください。
農薬を使うときの注意
農薬は、日本の厳しい基準で認可された安全性の高い薬品です。とはいえ、皮膚に付着したり吸い込んだりすると人体に悪影響を及ぼすおそれがあります。
農薬を使うさいには、農薬用マスク、手袋、長袖・長ズボンの作業衣を着用し、体調の悪いときには使わない、風の強い日は使わない、周囲の壁や自動車、洗濯もの、おもちゃ、ペットなどにかからないよう注意するなどの配慮が必要です。
土に撒くタイプの「オルトランDX」は、ここまで厳重な装備は必要ないと思いますが、最低でも使い捨て手袋くらいは用意したいですね。
農薬を使うのは、初心者にはちょっと抵抗があると思いますが、適切な使用でバラをじょうぶに育てましょう!
5~6月の作業/木を育てるための手入れ「つぼみのピンチ」「2度目の鉢増し」「ベイサルシュートのピンチ」「病虫害の防除」
この時期、バラは春花の最盛期です。が、新苗は春花を咲かせません。つぼみが上がってきたら「つぼみをピンチ」して取り除きます。
最初の鉢増しから1ヵ月ちょっと。ほとんどの新苗は「2度目の鉢増し」が必要になります。
また、株元から元気なベイサルシュートが出てくる時期でもあります。ベイサルシュートはとても大事な枝です。これを育てるために、「ベイサルシュートの処理」をします。これらは、どれも木を育てるための手入れです。
前月に引き続き病虫害が多い時期です。「病虫害の防除」も行います。それぞれの作業について紹介します。
5~6月の手入れ1、「つぼみのピンチ」で、春花は咲かせない!
わたしたちはバラの花を気軽に楽しんでいますが、植物にとって花を咲かせるのは子孫を残す重要な仕事です。そのため、すごいエネルギーを消費して花を咲かせているのです。
新苗はまだ花を咲かせるための十分な体力がないので、春~夏の花を咲かせないようにします。つぼみが上がってきたら、枝先をポキリと指で折り取り、つぼみを摘んでしまいましょう。
ハサミで切ってもいいのですが、指で折り取った方が簡単で、バラに負担がかかりません。この「指で折り取る」やり方を、バラ栽培の専門用語で「ピンチ」といいます。
最初の年の春~夏の花だけは咲かせませんが、秋花から咲かせることができますよ♪
5~6月の手入れ2、鉢底から根がのぞいていたら「2度目の鉢増し」を!
新苗が順調に育っていたら、鉢の裏をのぞいてみてください。底穴から根が見えてきていると思います。これはつまり、6号鉢ではもうきゅうくつに思えるくらい根が育っている証拠です。こうなったら2度目の鉢増しのサインです。
2度目の鉢増しでは、6号鉢(口径18cm)から8号鉢(口径24cm)に鉢をサイズアップします。
2度目の鉢増しのしかた
2度目の鉢増しのしかたは、新苗を購入してすぐに行った最初の鉢増しと、基本的に同じです。注意点としては、6号鉢のなかで根がびっしり育っているので、苗を鉢から抜きにくくなっているところです。
鉢と土の間にシャベルの刃を差し込み一周させる、鉢の側面を握りこぶしでトントン叩くなどして、なんとか苗を抜きましょう。苗をもつときには、必ず株元の台木部分を持ちます。
8号鉢に鉢底ネット、鉢底石を敷いたら少し培養土を入れ、6号鉢から引き抜いた苗を根鉢を崩さずに植えつけます。写真では、ちょっと根鉢が崩れてしまっていますが、このまま8号鉢に植えつけます。
根鉢と鉢との隙間に培養土(元肥入り)を詰めて、鉢底から流れ出るまでたっぷり水やりしたら2度目の鉢増し完了です。
最初の鉢増しから1ヵ月以上たっているなら、害虫防除のため土の上に「オルトランDX」を撒いておきましょう。
5~6月の手入れ3、ベイサルシュートが伸びてきたら「ベイサルシュートのピンチ」を!
だいたい5月下旬頃から株元からニョッキリと元気のいい枝が出てきます。この枝を「ベイサルシュート」と呼びます。これは、秋以降に花を咲かせる大切な枝です。「ベイサルシュート」がある程度の高さにまで育ってきたら、「ベイサルシュートのピンチ」をします。
どれくらいの高さになったら最初のピンチをするかは、品種により違います。
ハイブリッド・ティー系統(HT)の品種なら30cmになったら、フロリバンダ系統(F)の品種なら20cmになったら最初のピンチをします。
写真の苗はノヴァーリス(ハイブリッド・ティー系統のバラ)なので、30cmになったら最初のピンチをします。
折り取る場所は、わたしは若葉(写真では赤い葉)のすぐ下にある5枚葉の上で折ります。しばらくすると、葉の付け根から新芽が1~2本伸びてきます。
5~6月の手入れ4、「病虫害の防除」で、元気な木を育てる
梅雨の時期は、1年で一番、病虫害の多い時期です。ウドンコ病にアブラムシ、チュウレンジハバチの幼虫、ハダニなどなど。先月に引き続き、「オルトランDX」「マイローズ殺菌スプレー」「ベニカXファインスプレー」などを使って、病虫害を適切に防除しましょう。
7~8月の作業/暑い夏の手入れ「夏場の鉢の置き場所とマルチング」「つぼみのピンチ」
梅雨が明けると暑い夏がやってきます。この時期、バラはどんどん生長しています。枝先につぼみをもったり、2本目のベイサルシュートが発生したりしてきます。
この時期の注意点は「鉢の置き場所」です。また、木を生長させるために、引き続き花を咲かせないのも重要です。高温多湿な日本の夏は、バラにとって厳しい環境ですが、上手に乗り切りましょう。病虫害の防除もこれまで通り行います。
7~8月の手入れ1、/日本の夏を乗り切るために考えたい「夏場の鉢の置き場所とマルチング」
▲夏はできれば半日陰で管理を
ほとんどのバラにとって、高温多湿の日本の夏は過ごしにくくて苦手です。強すぎる直射日光で葉が日焼けしたり、鉢土の温度が高くなりすぎて根を傷めたりしがちです。このため、あまりに陽当たりの良い場所はさけ、1日3時間ていどの日照がある場所(半日陰)に鉢を移動させるか、遮光ネットを使って陽ざしを和らげてあげるといいですね。
水やりにも注意が必要です。鉢土がよく乾く環境にあるなら、朝夕2回の水やりが必要になるでしょう。
鉢土の温度を上げないための工夫
盛夏はバラの鉢を半日陰に移動すればいいとはいうものの、そんな置き場所がないというときに考えたい工夫をいくつか紹介します。
ポットフィート
ポットフィート テラコッタ(1個) ≪植木鉢/おしゃれ/テラコッタ/素焼き鉢≫
鉢の下に敷いて、鉢の通気をよくすることで鉢土の温度が上がり過ぎないようにするのが「ポットフィート」です。
マルチング
自然応用科学 まくだけで薔薇を守るマルチング材 5L 関東当日便
鉢土の上に乗せて、土の温度が上がり過ぎないように、乾きすぎないようにするのが「マルチング材」です。雑草が生えるのも防いでくれます。
セダム 細葉黄金万年草 3号ポット苗 ホソバオウゴンマンネングサ イングリッシュガーデンドライガーデン向き 耐寒性多肉植物
乾燥防止にわたしがよく利用しているのが多肉植物の「マンネングサ」です。夏に長期旅行をするときにも重宝しています。根が土の深いところまで入り込まないので、バラに影響が少なく、不要になったらすぐにはがせるので使いやすいですよ。
7~8月の手入れ2、どんどん上がる「つぼみのピンチ」
バラのつぼみがどんどん上がってきますが、この時期のつぼみは小さいうちにピンチで折り取ります。
ベイサルシュートの先のつぼみも、同じように小さいうちにピンチします。上の図は大苗用のイラストですが、シュート処理のしかたは新苗でも同じです。
梅雨と夏をどう乗り越えたくさんの良い葉を残せるか、さらにベイサルシュートを適切に管理できるかが、バラをじょうぶに育てるカギです。ていねいな観察と適切な手入れで乗り切りましょう!
9月の作業/日本独自の手入れ「追肥」「夏剪定」は9月10日までに行う!
新苗を購入してから4~5カ月たちました。せっかくのつぼみを摘み続け、病虫害の防除や夏の暑さをしのぐなど、地味な作業の繰り返しでしたが、ここから先はようやく大苗などほかのバラたちとほとんど同じ作業になります。
秋花からは咲かせられるので、9月はそれに向けての作業を行います。「追肥」と「夏剪定」について紹介します。
9月の手入れ1、「夏剪定」の1週間前に行いたい「追肥」のしかた
▲使用する肥料の効果の持続期間を確認!
良い花が見込めるほど気温が下がる10月中旬に、一斉に秋花を咲かせるために行うのが「夏剪定」です。そして、夏剪定を行ってからの芽吹きがスムーズになるようにあらかじめ施しておくのが「追肥」です。
「追肥」を行うのは「夏剪定」の1週間前が適しています。夏剪定は9月1日~10日が適期なので、追肥は8月下旬~9月に入ったらすぐに与えます。
追肥には、効果の持続期間が1~2ヵ月の固形の化成肥料を使います。
固形の化成肥料にはさまざまなタイプがあります。「1ヵ月間効果が持続する」というタイプが多いのですが、なかには5~6カ月、場合によっては2年も効果が長く続くタイプもあります。こういう効果の持続期間が長いタイプの肥料をこのタイミングで使ってしまうと、冬の休眠期までずっと肥料効果が続いてしまい、バラがすっきり休眠に入ることができなくなります。使用する肥料の効果の持続期間を確認してください。持続期間が1~2ヵ月ていどなら問題なく使えます。
上の写真の右端は、「花ごころばらの肥料」の裏書きです。「月1回」施肥するという表示から、この肥料の効果期間が1ヵ月だと分かります。(ちょっと分かりにくい表示のしかたですね!)
9月の手入れ2、秋に良い花を咲かせるための開花調整「夏剪定」は9月10日までに行う(シュートも同じように剪定します)
▲9月初旬の新苗
バラは暑さが苦手で、夏に良い花を咲かせることができませんが、涼しくなる秋にはまた良い花を咲かせることができるようになります。このため、ちょうど良い花を咲かせやすい10月中旬に開花させるよう開花調整する目的で行うのが「夏剪定」です。
上の写真は、ベイサルシュート2本が出て大きく育ってきた新苗です。この苗に、秋花を咲かせるために「夏剪定」を行います。「夏剪定」は、花を咲かせたい10月中旬から逆算して、9月10日までに行いましょう。
▲「夏剪定」では「2番花の花枝」の半分から少し上でカット
このイラストは大苗での「夏剪定」で切り戻す場所を示したものです。これを参考に、新苗も同じようにハサミを入れてください。「2番花の花枝」と書かれた枝の半分よりやや上の位置で枝を切ります。右端に描かれている枝がシュートです。シュートのカット位置は、これを参考にしてください。
▲「夏剪定」後の新苗
図に赤く印した位置より高い位置で切れば、早く花が咲くけれど小さい花になります。逆に、図に赤く印した位置より低い位置で切れば、本来の大きさで花が咲くけれど咲く時期が遅くなります。
9月の手入れその3、鉢の置き場所
夏の間、強すぎる陽ざしを避けて半日陰に移動していた鉢は、天気と相談しながらじょじょに日向にもどします。
10月~11月の手入れ/秋バラが開花してから
▲新苗「ノヴァーリス」の秋花
10月中旬、ようやく新苗の秋花が開花します。購入してから約半年、やっと花が見られます。枝数が少ないので、花数も少ないのですが、待ちに待った開花です。嬉しいですね^^
この時期は気温もぐっと涼しくなり、病虫害の被害も少なくなる季節です。新苗の購入からずっと忙しい毎日でしたが、10月~11月はホッと一息つけます。
ただし、ホソオビアシブトクチバなどの蛾の幼虫(イモムシ)が出るので、オルトランDXの効果が切れていないか、前回散布した日を確認しておきましょう。
新苗の秋花は、木を育てる意味でしばらく楽しんだらカットして、室内に飾って楽しみましょう。
12月~2月の手入れ/バラの休眠期の手入れ「植え替え」「冬剪定」
12月に入ると、バラは生長を止めて休眠に入ります。「新苗」から育ててきたバラは、この段階で「大苗」と呼ばれる株に生長しています。
バラの休眠期はたしょうバラに無理をさせてもだいじょうぶなので、植えつけや移植を行う適期です。翌春からしっかり花を咲かせてくれるよう、「植え替え(土替え)」と「冬剪定」を行います。
12月~2月の手入れその1、植え替え(土替え)
これまで「新苗」と呼んできたバラの苗は、これから以降はもう「新苗」ではありません。立派な「大苗」です。
バラが休眠しているこの時期に、次の1年しっかり育てるよう土を総取り換えする植え替え(土替え)作業をします。同時に、根に病気が発生していないか土に害虫がもぐりこんでいないかなどのチェックもします。植え替えは、これからの1年間、しっかりバラが育つために重要な作業です。寒い時期ですが、必ず毎年行いましょう!
これまで6号鉢⇒8号鉢と2度の鉢増しをしてきましたが、冬の植え替えでは今まで通り8号鉢で育ててもいいし、もう一回り大きな10号鉢(口径30cm)にしてもいいですね。
木立ちバラの植え替え手順を順に説明します。
木立ちバラの植え替え方その1、準備するもの
▲大苗の鉢植え、培養土、鉢底石などを準備
準備するものは、植え替える前の鉢植え、培養土(肥料入り)、鉢底石、鉢底ネットです。鉢底石は、通常のものでも、赤玉土(中粒または大粒)で代用しても構いません。肥料入りの培養土を使うなら、さらに肥料をプラスする必要はありません。肥料なしの培養土や古土をリサイクルする場合は、適宜、肥料をプラスしてください。
これ以外に、適宜、ガーデングローブ、水やり用のバケツ、土入れ、シャベルなどを用意してください。1~2鉢の植え替えなら、わたしは使い捨てのビニール手袋を使っています。
植え替える鉢植えは、できれば2日ほど水やりしてない方が、土離れが良く作業がしやすいです。
木立ちバラの植え替え方その2、鉢植えからバラを引き抜く
▲鉢に沿ってシャベルで1週する
小さいめの鉢や、しっかり根が張っているバラは、うまく鉢から抜けないことが多いので、シャベルで鉢と土の間をつつきながら1週すると、抜きやすくなります。
▲拳で鉢を叩いて1週する
それでも上手く抜けないときは、鉢の周りを拳でトントン叩いて1週すると、上手く抜けてくれます。
木立ちバラの植え替え方その3、根をほぐして害虫や病気がないかチェック!
▲根についた土を落として状態をチェックしよう
鉢からバラの株が抜けたら、根をほぐして、根にがん腫がないか、土の中に害虫が侵入していないか、根が伸びすぎていないかなどをチェックします。
▲バラの根を食い荒らすコガネムシの幼虫
もしもコガネムシの幼虫を見つけたら、捕殺します。コガネムシの幼虫は、バラの根を食い荒らす、とても厄介な害虫です!
以前わたしは白い鉢底石を使っていたのですが、白い鉢底石とコガネムシの幼虫が見分けにくいので、最近では鉢底石のかわりに大粒や中粒の赤玉土を使っています。
バラの根頭がん腫病は、バラの株元や根に芋のような塊(コブ)ができる病気です。がん腫はバラの養分を吸い、弱らせ、いずれ枯らしてしまいます。がん腫を見つけたら、初心者さんは、そのバラも、そのバラが植わっていた土もすべて廃棄処分してください。鉢や、そのバラが植わっていた土を掘ったシャベルなどはしっかり洗ってから消毒を! そのままにしておくと、細菌感染で広がるので、他のバラにもうつってしまいます。
中級以上の方は、がん腫を切り取り経過観察でもいいと思います。ただし、切り取ったナイフや土を触ったシャベルなど、しっかり消毒してから他のバラに使ってください。がん腫を切り取ったバラでもちゃんと咲いてくれますが、がん腫は完治することはなく治ったように見えても再発しやすいようです。他のバラが被害に遭わないよう、細心の注意を払ってください! 自信がないなら迷わず処分を(涙
どうしても処分したくないがん腫発症バラには、専用活力剤を利用するという手もあります。
▼活力剤については、こちらのページをご覧ください。
木立ちバラの植え替え方その4、根の整理!
▲伸びすぎた根はカット
長く伸びすぎているひげ根(ひげのように細い根)は、鉢におさまるよう切り詰めます。ここまで根を触っていいのは、バラの休眠期だからこそです。この時期なら、多少、根に負担のかかる作業をしても枯れる心配はありません。
木立ちバラの植え替え方その5、鉢底ネットと鉢底石を!
▲細かい排水用の穴が開いたプラスチック鉢の底
植え替える新しい鉢がプラスチック鉢で、底穴が細かいタイプなら、鉢底ネットはいりません。
▲大きな底穴には、鉢底ネットを!
底穴が大きなタイプの鉢なら、なめくじなどの害虫が侵入するのを防ぐために、鉢底ネットをかぶせます。
▲鉢底石か、代用品の大粒または中粒の赤玉土を入れる
さらに鉢底石または、鉢底石がわりに赤玉土(大粒または中粒)を2cmほど入れます。
木立ちバラの植え替え方その6、バラの木の高さを調節しながら培養土を入れる
▲接ぎ口が鉢の縁から2cm下になるよう調節して培養土を入れる
鉢底石の上に培養土を5~6cm入れたら、バラの木を置き、バラの接ぎ口が鉢の縁から1~2cm下になるように高さを調節して培養土を足します。
木立ちバラの植え替え方その7、葉やつぼみをすべて摘んで水やりして完了
▲まだしっかりついている葉はハサミでカット!
最後に、バラの葉をすべて摘み取り、たっぷり水やりして作業は完了です。つぼみがついていたら、つぼみもカットしておきます。
葉をすべて摘み取るのは、葉に付着している病原菌を翌春に持ち越さないためです。また、葉を摘むことで強制的に光合成できなくし、すっきり休眠に入るのを促す効果もあります。
12月~2月の手入れその2、冬剪定(適期は2月)
▲冬剪定のしかた
植え替えと同時に冬剪定を行ってもいいのですが、できれば冬剪定は、バラが休眠から目を覚ます直前の2月に行うのが適期です。
冬剪定のしかたは、
赤い線A/まず細すぎる枝や枯れ枝をつけ根から切り取ります。
青い線B/ハイブリッドティー系統のバラは、この位置でカット。春から伸びた枝の1/3の高さで切ります。剪定した後は、春から伸びた枝が10~15cm残っている状態になります。パティオローズやミニバラもこの方法で剪定します。
紫色の線C/フロリバンダ系統のバラは、この位置でカット。春から伸びた枝の1/2の高さで切ります。もっと長く枝を残し、2/3の高さで切っても構いません。なるべく1番花が咲いた花枝で切ります。
シュラブ樹形のバラ/イングリッシュローズなどのシュラブ樹形のバラは、フロリバンダ系統のバラと同じ剪定(紫色の線C)ができます。2/3の高さを目安に、枝をやや長く残します。細枝でもよく咲くので、あるていど細いものも残します。
枝を切る場所は、株の外側についている芽(外芽)の上5ミリの場所です。枝に対してナナメではなく真っ直ぐ切ってくださいね!
新苗から育てる、隠れた大きなメリット
新苗からの育て方を紹介しました。これ以降の育て方は、大苗からの育て方のページを参考にしてください。
▼木立ち樹形のバラを大苗から鉢で育てる方法
せっかくのつぼみを切り落とすことから始まる新苗からのバラ栽培は、初心者にはなかなかハードルが高いです。しかもいきなり病虫害が多くなる梅雨時期の管理、酷暑の管理と、ていねいな観察と対応力が求められます。だから初心者にはあまりオススメできないのですが・・・。
でも、最初の方に書いた「値段が安い」とかいうより大きなメリットが新苗にはあるんじゃないかと個人的に思っています。これは、あまり先生がたも指摘していないことなんですが──。
それは、花を咲かせる前に自分の家の環境にバラが慣れてくれること。
日当たりの良い場所で、プロのガーデナー並みにしっかり管理できればいいのですが、みんながみんな、そうは行かないですよね。我が家のように日照3時間、しかもへたしたら直射ではなく木の葉ごしの日差ししかないという悪環境もあります。冬は土が凍りそうなほど寒い環境のこともあります。水やりが大好きな人がじゃぶじゃぶ水やりして育てるかもしれません。それも含めてバラにとっては「環境」です。
そんな環境で数カ月過ごしたバラは、もうしっかりその環境になじんでいます。その環境なりの自分の育ちかたを知っているってことで、これはとても大きなメリットだと思うのです。
最高の環境で育てられていただろうナーセリーから、素人愛好家の悪環境にいきなり連れてこられた芽吹き苗の大苗は、それでもナーセリーでの貯金でしっかり春花を咲かせます。でも、その後に調子を崩してしまうことが多いのは、やはり急激な環境変化が大きな要因じゃないかと思っています。
新苗からの「そだレポ」
▼新苗から実際に育てた「そだレポ」は、こちらで見られます。
*ただし「ルシファー」は、かなり特殊な育ちかた・咲き方の品種なので、セオリー通りではない手入れも取り入れた育て方になっています。
まとめ
バラの育て方のページをなんとか分かりやすくできないかと、ずっと考えていました。その結果、樹形別に、一連の流れが分かるように書くのがいいと思い、このようにまとめました。かなり長いページになってしまいましたが、写真やイラストを多く使って分かりやすくしたつもりです。
今回は、「木立ち樹形のバラを新苗から鉢植えで育てる方法」に絞ってまとめています。基本だけでもこれだけ長くなってしまったので、もっと細かいこと、たとえば肥料や病虫害、農薬などについては、別のページをつくっています。詳しくは、それぞれのページを参考にしてください。
ちなみに、今回、新苗から育てたノヴァーリスのその後を「そだレポ」しています。興味のある方は、そちらもご覧になってくださいね!
▼「ノヴァーリス」の大苗からのそだレポ