バラにやってくる、緑色や茶色の甲虫。見つけると「コガネムシだ! バラの害虫だ!」と、反射的に駆除していませんか?

じつは、コガネムシによく似たカナブンやハナムグリなど、バラにほとんど害を与えない虫もいます。さらに「コガネムシ」という名前も、広い意味と狭い意味があって、ちょっとややこしいところです。

この記事では、バラにやってくるコガネムシ類をはじめ、カナブンやハナムグリとの違いを写真で紹介します。「この虫、退治したほうがいい?」と迷ったときに、見分けるための手がかりとして役立ててください。


コガネムシ科には、いろいろな仲間がいる

それ本当にコガネムシ?

網戸につかまるコガネムシ

▲網戸につかまる緑色のコガネムシ

コガネムシと聞くと、よほどの初心者さんでないかぎり、ロザリアンなら顔をしかめます。なぜなら、その幼虫が株を弱らせたり枯らしたりする厄介な害虫だと知っているからです。

 

だからコガネムシを見つけると条件反射のように駆除してしまう方も多いです。

 

気持ちは分かります。わたしも大事なバラを枯らされたことがあります。

 

でも虫好きからすると、その駆除は「冤罪」だと嘆かれることがよくあります。それは、多くのロザリアンがコガネムシのことを詳しく知らないために起きている事件です。

 

今回は、知らずに無関係な虫を駆除しないよう、コガネムシとよく似たほかの虫を区別する方法や、それぞれの生態について、豊富な写真で紹介します。

コガネムシ科にはさまざまな昆虫がいる

最初に少し昆虫学的な話をします。

 

コガネムシ科には、いくつもの亜科が含まれています。代表的な亜科を表にしました。

コガネムシ科の分類表

亜科 代表的な昆虫
カブトムシ亜科 カブトムシ
ハナムグリ亜科 カナブン、ハナムグリ、シロテンハナムグリ
スジコガネ亜科 コガネムシ、マメコガネ、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ
コフキコガネ亜科 コフキコガネ、コイチャコガネ

 

なんと、コガネムシ科にはあのカブトムシが属するカブトムシ亜科も含まれます。

 

ほかにわたしたちが聞き馴染みのある「カナブン」「ハナムグリ」「コガネムシ」など、少しずつ特徴の違うさまざまな仲間がいます。

 

では、バラを食害するのはどの昆虫でしょう?

バラを食害するコガネムシ類

ガネムシ科にはさまざまな甲虫が含まれますが、このなかでバラに被害を与えるのは特定の種類です。主にスジコガネ亜科(次点でコフキコガネ亜科)に属する昆虫がバラを食害する犯人です。

 

成虫が葉を食べボロボロにし、幼虫がバラの根を食べ弱らせたり枯らしたりしてしまいます。農作物や芝生の根を食べ枯らしてしまうこともあるので、重要な農業害虫として知られている虫もいます。

 

バラの葉や根を食べる、とくに要注意なスジコガネ亜科の6種類を順に紹介します。

1、アオドウガネ(青銅鉦)

アオドウガネ(コガネムシ科)

▲我が家でよく見かける「アオドウガネ」

アオドウガネは体長17~25mmていどの大きさ。鈍い金属光沢のある、緑色の甲虫です。

 

見分けるポイントは、色と形とお尻の毛です。

 

・色は、鈍い金属光沢のある、緑色

・2cm前後の大きさで、全体の形がコロンとまるい

・お尻にふっさふさの毛が生えている

 

成虫はバラの葉を食べ、夏に土中に産卵し、幼虫がバラの根を食べます。

 

バラだけでなく、サトウキビなど広範囲の植物の根を食べて枯らすこともあります。

 

少し前まで関西以西に多くいる虫でしたが、近年は生息域を北へ広げており、東京でもアオドウガネがよく見られるようになっています。

 

灯火によく集まります。

2、ドウガネブイブイ(銅鉦蚉蚉)

ドウガネブイブイ(コガネムシ科)

▲にぶい銅色の「ドウガネブイブイ」

ドウガネブイブイは、体長17~25mmていどの大きさ。鈍い金属光沢のある、銅色の甲虫です。

 

漢字で「銅鉦」(どうがね)は、銅のような色合いをさし、「ブイブイ」は、「ぶんぶん飛ぶ虫」という意味だそうです。

 

見分けるポイントは、これも色と形とお尻の毛です。

 

・色は、鈍い金属光沢のある、銅色

・2cm前後の大きさで、全体の形がコロンとまるい

・お尻に1列にまばらな毛が生えている

 

色が違う以外は、アオドウガネとほとんど同じです。

 

ドウガネブイブイも成虫はバラの葉を食べ、夏に土中に産卵し、幼虫がバラの根を食べます。

 

灯火によく集まります。

3、ヒメコガネ(姫黄金)

ヒメコガネ

▲ヒメコガネ (写真:harum.koh / Wikimedia Commons)

コガネムシ科を代表する「コガネムシ」が17~24mmなのに対して、ヒメコガネは12.5-16.5mmと、少し小型です。小さいということで「姫」黄金と名付けられたようです。

 

ヒメコガネは上の写真のような緑っぽい金属色のほかに、黒、暗い赤茶色、暗い藍色など、カラーバリエーションはさまざまです。また、いかにもコガネムシらしいキラキラの金属光沢のタイプもあれば、アオドウガネやドウガネブイブイのように鈍い光沢のタイプもあります。

 

見分けるポイントは、これも色と形とお尻の毛です。

 

・色は、光沢も色もさまざま

・1.5cm前後の大きさで、全体の形がコロンとまるい

・お尻に1列にまばらな毛が生えている

 

ヒメコガネも成虫はバラの葉を食べ、夏に土中に産卵し、幼虫がバラの根を食べます。

 

灯火によく集まります。

4、マメコガネ(豆黄金)

マメコガネ(コガネムシ類)

▲マメコガネ

マメコガネは体長8~15mmと、小型のコガネムシです。

 

強い金属光沢のある美しい体色をしている、日本の在来種です。

 

見分けるポイントは、色と大きさです。

 

・強い金属光沢のある美しい色

・1cm前後の小さい体

 

ほかのコガネムシ類同様に、成虫は多くの植物の葉や花を食べ、幼虫は根を食べるので、重要な農業害虫のひとつと言われています。

 

1900年代初頭にアメリカに輸出された植物に紛れ込み、今では「ジャパニーズビートル」の名称で、アメリカじゅうの農家を困らせているそうです。

 

成虫は植物の葉を食害し、土中に産卵します。孵化した幼虫は植物の根を食害します。

 

多くのコガネムシ類が夜行性ですが、マメコガネは昼によくみかけられます。

5、カタモンコガネ(肩紋黄金)

カタモンコガネ

▲カタモンコガネ (出展:環境省いきものログ

カタモンコガネは黒褐色で、8~14mmの小型のコガネムシです。

 

肩のあたりに黒っぽい斑紋があることが多いので「肩紋黄金」の名前がつきました。

 

ドウガネブイブイなどに比べて発生時期が早く、5~7月に出現し、雄しべや花びらをかじったり、新芽や葉を食害します。

 

見分けるポイントは、大きさと色、発生時期です。

 

・8~14mmと、マメコガネと同じくらいの小さなサイズ

・肩に黒い紋のある黒褐色

・5月から発生する

 

ちょうど春の一番花と発生時期が重なるので、春花をボロボロにします。

 

成虫は自然界ではノイバラなどの白っぽい花を好み、株元に産卵し、根を食べる要注意害虫です。庭バラでは、白や淡いピンクなどで香りの強いものが狙われやすいようです。

 

バラだけでなく、広範囲の植物を食害します。

6、セマダラコガネ(背斑黄金)

セマダラコガネ

▲背中のまだら模様が特徴的なセマダラコガネ

セマダラコガネは、体長8~12mmていどの小さなコガネムシです。黄褐色の地に黒いまだら模様があるのが特徴です。

 

見分けるポイントは大きさと色です。

 

・1cm前後の小さな体

・黄褐色の地色に黒いまだら模様が特徴的(赤っぽいものや緑ぽいものなどもいます)

 

出現時期は6月以降の真夏です。

 

バラの葉や花びら、蕾をはじめ、広葉樹、草、農作物など広範囲の植物を食害する害虫です。

 

成虫は土に産卵し、根を食い荒らします。

 

ゴルフ場の芝を広範囲に枯らすことでも知られています。

頻繁ではないけれど、バラにやってくるコガネムシ類

ナガチャコガネ

ナガチャコガネ(コガネムシ類)

▲少し細長くて茶色い「ナガチャコガネ」

ナガチャコガネ(コフキコガネ亜科)は、体長10~15mmのやや細長い茶色の甲虫です。

 

成虫はあまり葉を食べないようですが、幼虫は幅広い植物の根を食害するので、農業害虫とされています。

 

頻繁にバラにやってくることはありませんが、株元に産卵することもあるようです。

コイチャコガネ

コイチャコガネ

▲コイチャコガネ (写真:けいそよ / Wikimedia Commons)

コイチャコガネ(コフキコガネ亜科)も頻度は多くないけれどバラにやってきます。

 

全体に細かい毛が生えていて、密に生えているところが白点のように見えて、後述のハナムグリと紛らわしい虫です。

狭義の「コガネムシ」はバラの害虫?

コガネムシ

▲コガネムシ(スジコガネ亜科)(写真:Takaobw / Wikimedia Commons)

ここが少々ややこしいところなんですが。じつはコガネムシ科スジコガネ亜科には「コガネムシ」という甲虫がいます。コガネムシ科を代表する虫で、わたしたちが一般に「コガネムシ」と呼んでいる虫です。

 

漢字表記で「黄金虫」と書くのにふさわしく、キラッキラな見た目の虫です。

 

この狭義のコガネムシは、体長17~24mmと、これまで見てきたコガネムシ類の虫に比べて大型で強い金属光沢をもつ美しい甲虫です。

 

やはり成虫は葉を食べ、幼虫は植物の根を食べますが、雑木林周辺に生息し、あまりバラ花壇に近づくことはなさそうです。

 

絶対にバラにつかないとは言い切れませんが、狭義のコガネムシがバラを枯らす主犯格とは言えません。

 

この記事では、アオドウガネやドウガネブイブイ、ヒメコガネ、マメコガネなど、バラを食害するコガネムシ類をまとめて「コガネムシ」と呼ぶことにします。

 

正確ではないけれど、ちょっと紛らわしくなってしまうので、これ以降はそう呼びますね。

コガネムシの幼虫はコレ!

コガネムシの幼虫

▲我が家のバラ鉢から出てきた幼虫

にあげた、コガネムシ(アオドウガネ、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ、マメコガネなど)の甲虫はバラの葉を食べ、土中に産卵し、幼虫がバラの根を食い荒らすバラの害虫です。

 

成虫が夏に産卵し、土の中で幼虫は孵化して大きく育ちます。

 

上の写真は、冬の植え替え(12月中旬~2月ごろ)に、バラの鉢から出てきた幼虫です。頭がオレンジ色で、体はクリーム色。サイズは2~3cmで、Cの字に体を曲げています。

 

幼虫の数が多ければ、バラを枯らしてしまいます。

 

幼虫駆除には、ベニカXガード粒剤、オルトランDX粒剤が効果的です。

駆除方法について詳しくは、こちらの専門記事で確認してください

→リンク

カナブンはコガネムシとどう違う?

背中の大きな三角形と角ばった頭や体が見分けポイント

カナブン

▲少し大型で背中に目立つ三角形がある

カナブンは、この次に紹介するハナムグリと同じハナムグリ亜科の仲間です。

 

コガネムシとの見分け方ポイントは、色と形、そして背中の目立つ大きな三角形です。

 

・色は緑~銅色の金属光沢をもつ美しい甲虫

・体長25mm前後とやや大型で、四角い頭と角ばった体つき

・背中に目立つ大きな三角形がある

 

ハナムグリの仲間のなかでは大型で、バラを食害するコガネムシに比べて頭が四角く、体も角ばっています。

 

背中に目立つ大きな三角形があるので、これを目印にすると見分けやすいです。

カナブンは益虫

カナブン

▲樹液を食べるカナブン

カナブンの成虫は腐った果実や樹液を食べ、幼虫は腐葉土などを食べて土を耕し豊かにします。

 

植物に直接被害を与える虫ではなく、腐葉土を分解する側の昆虫です。

 

カナブンはあまりバラに興味がなく、近くに飛んできていても、バラを食害したり、バラの株元に産卵することはありません。

 

カナブンを含むハナムグリ亜科の幼虫は、コガネムシの幼虫と見た目は似ていますが、独自の面白い特徴をもっています。地上に出すと背中で歩くそうです。

ハナムグリはコガネムシとどう違う?

背中の三角形と白い斑点が見分けポイント

ハナムグリ

▲体じゅうに花粉をつけたハナムグリ

ハナムグリは、体長1.5~2cmのコガネムシ科ハナムグリ亜科の昆虫です。漢字で「花潜」(ハナムグリ)と書くことから分かるように、花に潜るようにして花粉や蜜を食べます。樹液も好みます。

 

コガネムシとの見分け方のポイントは、背中の三角形(カナブンほどは目立たない)と白い斑点です。

 

・色は赤紫、オレンジ、緑色など多彩で、金属光沢をもつものが多い

・背中に三角形がある

・体に白い斑点がある

・ビロード状の産毛のあるものもいる

 

ハナムグリの成虫は、基本的に花の蜜や花粉を食べますが、その過程で花びらに穴を開けたり傷つけることもあります。

 

ハナムグリの幼虫は、コガネムシの幼虫と似ていますが、地上に出すと背中で歩く面白い特徴をもっています。カナブンと同じですね。

飛んでくる時期でも見分けられる

白バラとハナムグリ

▲白バラにやってきたハナムグリ

オドウガネなどの、バラの害虫となるコガネムシと、バラにほとんど関係ないカナブン、花びらを傷めるハナムグリ。

 

それぞれ見た目が似ているので、区別が難しいところがありますが、じつは活動時期が違うので、成虫がいつやってきたかであるていど区別することができます。

 

見つけた場所・時期 まず疑う虫
春~初夏、バラの花の中 ハナムグリ類
6月以降、バラの葉 コガネムシ類
樹液の出る木など カナブン
鉢土の中に白い幼虫 コガネムシ類など

 

つまり、春の1番花にやってくるのはハナムグリです。(ただし、カタモンコガネなど、一部のコガネムシも来ます)

 

梅雨以降の夏にやってくるのがコガネムシ。

 

カナブンも6月以降の夏に活動する虫ですが、バラ花壇にやってきても、たまたま通りかかっただけです。

ハナムグリがバラの害虫かどうかは意見が分かれる

ハナムグリ

▲バラの蜜を舐めるシロテンハナムグリ 写真提供/天女の舞子

ハナムグリの成虫は、基本的に花粉や蜜、樹液、腐った果実などを食べます。

 

白っぽい花を好み、花に潜るときに花びらや花の器官(子房)を傷つけることがあり、観賞用のバラでは花が傷む原因になる場合があります。

 

しかし花粉を運ぶという、植物にとって大切な役目をはたしているし、幼虫は腐葉土などを食べて土を豊かにし、根を食べることはありません。

 

花びらを傷めたり、食害することもあるのだから害虫だとする人もいれば、株元に産卵することはないし、飛んでくる成虫を捕殺するのも難しいので気にしないという人もいます。

 

ここは、それぞれの判断にゆだねられるところです。

まとめ│ハナムグリにどう対応するか、自分なりの考えをもとう

バラを枯らす怖い害虫コガネムシと、よく似たカナブン、ハナムグリ。それぞれの違いが、おおよそ分かってもらえたでしょうか?

 

ロザリアンにとってバラを害するコガネムシは駆除対象。これは異存のないところです。カナブンはバラにほぼ無関係なのでそっとしておいてほしい。

 

ではハナムグリは──考え方は人それぞれです。

 

我が家の場合、ハナムグリが来てもほんの数匹。まったく見ない年もあります。だからハナムグリがバラに潜っていても「いっぱい食事してってね~」と気に留めません。でも、白バラばかりのホワイトガーデンをつくっていたら、また違ったかもしれません。

 

ハナムグリに自分はどう対応しようか? 一度しっかり考えてみると良いと思います。それがあなたの正解です。

 

病気と害虫対策の総合案内ページはこちらからどうぞ

バラと小さなガーデンづくり

病気と害虫対策の総合案内ページ

病気と害虫対策の総合案内ページ

 

cropped-rose1.png
スポンサーリンク