特にミニバラを育てていて悩まされるのが「ハダニ」です。ハダニは繁殖力が強く、放置しておくと、葉が1枚もなくなるまで猛威をふるいます。バラの生育に深刻な被害をもたらすハダニの予防と駆除のしかたを、農薬を使う方法使わない方法で紹介します!


屋根のある場所でミニバラを育てているなら、ハダニ対策はぜったいに必要!

▲バラの葉裏に潜むハダニ

ダニは、なかなか厄介な害虫です。オルトランなどの一般的な農薬が効かないし、一度発生すると短期間に広がります。ひどくなると葉が1枚もなくなるまで猛威をふるい、バラは光合成ができなくなり、深刻な生育障がいを引き起こします。

 

ハダニは高温乾燥した環境が好きです。雨が当たる庭植えのバラではそんなに問題になりませんが、雨の当たらない屋根のある場所で育てている方はしっかり防除しましょう。ハダニはとくにミニバラが大好きです。ミニバラを育てている方は、防除のしかたをしっかりマスターしておくといいですよ!

 

ハダニは、どんな害虫?

を倒すにはまず敵を知ることから! ──と、いうことで。まずハダニはどんな害虫か調べてみましょう。

 

1、葉が細かいまだら模様に色が悪くなったら。それはハダニ!

▲ハダニがついた葉は、まだらに色が抜ける

ダニは葉の裏にとりついて吸汁する害虫です。ハダニが吸ったあとは白っぽく色が抜けるので、爪楊枝の先でつついたような白っぽい斑点が無数に現れます。初期では気づきにくいのですが、上の写真くらいになると、だいたいだれでも気がつきます。

 

白く色の抜けた部分には葉緑素がなく、十分な光合成ができません。

 

▲葉裏には、小さなハダニがびっしり!

 

ハダニは葉の裏にひそんでいます。成虫で体長0.5mmほどの小さな虫が、葉裏にびっしり寄生しています。さらに被害がひどくなると、葉が黄色くなりやがて落ちます。ハダニはクモの仲間なので、細い蜘蛛の糸がかかることもあります。

 

2、ハダニは、いつ発生するの?

ダニは高温期が好きなので、5月末~10月まで発生します。とくに注意したいのが、梅雨に入る直前の5月末~6月初旬。ハダニは雨が嫌いなので、梅雨の前にしっかり繁殖しようとする──という話を聞いたことがあります。たしかにこの時期、いきなりハダニ被害が増えます

 

その後は梅雨の間はもちろん、梅雨明け~夏の間ずっとハダニは元気に活動します。10月になるとだいぶ落ち着いてきますが、猛暑が長引く年だと10月に入ってもまだハダニ被害があります。

 

11月~4月の気温の低い時期にはハダニは活動していません。でも活動していないだけで、葉裏や幹などで越冬します。

 

3、ハダニが発生しやすい環境は?

▲ハダニは屋根のある場所で発生しやすい

ダニは水が苦手です。そのため、雨があたる庭植えのバラではあまり問題になりません。ポーチやベランダなどの、屋根のある場所で育てているバラにハダニがよく発生します。室内でも発生します。

 

4、ハダニが発生しやすいバラは?

▲ほとんどのミニバラがハダニに弱い

ダニはどのバラにもつきますが、とくにハダニがつきやすいバラがあります。それが「ミニバラ」です。「グリーンアイス」など、例外的にハダニがつきにくいミニバラもありますが、ほとんどのミニバラはハダニがつきやすいです。「マザーズディ」などの、「ポリアンサ系統」のバラでも注意が必要です

 

ミニバラを交配親にしたつるバラも、ほぼハダニがつきます

 

ベランダでミニバラを育てるなら、必ずハダニ対策を!

▲ベランダでミニバラを育てるならハダニは要注意!

こまでの情報を整理すると、とくにハダニに注意が必要なケースが見えてきます。それは、「ベランダなどの軒下でミニバラを育てる場合」です。

 

ミニバラは値段も手ごろで場所も取らないので、多くの初心者がバラ栽培の入門に購入してしまいがちです。そしてハダニで枯らしてしまい、「やっぱりバラ栽培は難しい」と、妙に納得してバラを育てることを諦めてしまう人が続出しています。

 

ベランダでミニバラを育てるなら、ハダニ対策は絶対に必要です!

 

近年ではベランダなどでバラを栽培することも多いのですが、かつてバラは庭植えするのが当たり前でした。そのため、図鑑や品種紹介ではハダニについて記載がないことも多くあります。栽培してみて初めてハダニ被害に困惑するということもあります。

 

ハダニ予防のしかた/毎日、葉裏にたっぷり霧吹きを!

▲ハダニ対策には、ノズルの長い霧吹きが便利

ダニは水が苦手なので、予防では葉裏に霧吹きします。アイロンがけなどに使う普通の霧吹きではなく、園芸用のノズルの長い霧吹きを使うと、鉢の中心まで差し入れられるので便利です。

 

ハダニに霧吹き

▲葉裏にたっぷり霧吹きする

 

ノズルを鉢の中心に差し入れ、葉裏にたっぷり霧吹きします。コツは、雫がしたたり落ちるまでたっぷりやることです。ちょっと湿るていどでは効果は薄いです。ハダニが活動する時期に毎日、たっぷり霧吹きすれば、かなり予防できます。

 

ただし、これはあくまでも予防なので、ハダニを駆除することはできません

 

これでも少しはハダニがつくかも知れません。でも、毎日予防を続けていればハダニがつく量が少ないので、生育障がいを招くほどひどくはなりません。

 

2つのポイント


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1、霧吹きは、アイロンなどに使うものでは水滴が粗いので、必ず園芸用を使ってください。さらにロングノズルなら、ハダニ対策に使いやすいです。上の商品はボトル付きですが、ペットボトルの空き容器を利用できる商品もホームセンターなどで見かけます。1本もっておくといいですね。

 

2、ボトルに入れるのは水道水でいいのですが、食用酢をほんの少し混ぜると、さらに忌避効果アップが期待できます。わたしは購入したけれど味がきつくて使いにくかった黒酢を少量、混ぜてスプレーしています。

 

ハダニ駆除のしかた1、専用の殺ダニ剤を使う!

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CSIRO_ScienceImage_23_Adult_and_Egg_Two_Spotted_Spider_Mites / KSRE Photo

の写真は、海外のハダニです。ハダニは英語で「spider mite」と言います。大きく見えますが、葉脈の大きさからしてかなり拡大されていると思います。このハダニをよく見ると、脚が8本ありますね。そうなんです、じつはハダニは昆虫ではなくクモの仲間なんです! だから被害がひどくなると糸を張るんですね。

 

このため、オルトランなどの通常の殺虫剤でハダニを駆除することはできません

 

ハダニを駆除するには、専用の殺ダニ剤を使います。殺ダニ剤の使用には、ゴム手袋、農薬用マスク、ゴーグル、長袖長ズボンなどを使用して、身体につかないよう注意してください。

 

殺ダニ剤の種類

販の殺ダニ剤をいくつか紹介します。殺ダニ剤を選ぶさいに大切なのは、その殺ダニ剤がどういう系統の薬剤を使っているか、と、ダニのどの生育ステージ(卵~成虫)に効果があるかです。

ダニ太郎/卵、幼虫、成虫に効果あり


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ダニ太郎は、バラから野菜・果物まで幅広い植物につくハダニ類を駆除する農薬です。速攻性があり、使用すればすぐにハダニを駆除できます。ダニの卵、幼虫、成虫のどのステージにも効果があります。有効成分はビフェナゼート(ヒドラジン系殺ダニ剤)。発生初期に1000倍に水で薄めて散布します。年間の総使用回数は1回です。

 

コロマイト乳剤/卵、幼虫、成虫に効果あり


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コロマイト乳剤は、微生物が生産する天然物由来の農薬です。野菜や果物など幅広いダニを駆除する薬品です。食用バラにも使われます。速攻性があり、すぐにハダニを駆除できます。ハダニのすべての生育ステージに効果があります。有効成分はミルベメクチン(マクロライド系殺ダニ剤)。発生初期に2000倍に希釈して使用します。年間の総使用回数は2回です。

 

ダニダウン水和剤/卵、幼虫、成虫に効果あり


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ダニダウン水和剤は、環境中で分解されやすい天然成分由来のミルベメクチン(マクロライド系殺ダニ剤)を有効成分とする殺ダニ剤です。速効性にすぐれ、ダニのすべての生育ステージで効果を発揮します。発生初期に2000倍に希釈して散布します。年間の総使用回数は2回です

 

バロック/卵、若い幼虫に効果あり


バロック 20ml 殺ダニ剤 ダニ退治に 【あす楽対応_関東】

 

バロックは、エトキサゾール(系統表示なし)を有効成分とする殺ダニ剤です。卵と若い幼虫駆除に効果があります。2000倍に希釈して散布します。年間の総使用回数は1回です。残効性が高い薬剤です。

 

殺ダニ剤の農薬ローテーション

ダニはとても抵抗性のつきやすい虫です。同じ殺ダニ剤を続けて使うと、すぐにその農薬に抵抗をもつハダニが現れます。抵抗性をもってしまったハダニにはその殺ダニ剤はききません。そういうことを避けるために、年間の総使用回数が決められているのです。

 

1回の使用でハダニを駆除しきれなかったら、またはまた発生してしまったら、有効成分が違う系統の薬剤を使ってハダニを駆除します。

 

ダニ太郎はヒドラジン系殺ダニ剤。コロマイト乳剤とダニダウン水和剤はどちらもマクロライド系殺ダニ剤。この2系統の薬剤を使うのが一般的です。

 

コロマイト乳剤またはダニダウン水和剤⇒ダニ太郎⇒コロマイト乳剤またはダニダウン水和剤

 

で、ローテーション散布します。ダニ太郎の年間使用回数は1回、コロマイト乳剤とダニダウン水和剤は年間2回使えるので、この順番で使えば年間3回のハダニ駆除ができます。

 

どの薬剤も残効性があるので年間1回の使用でほぼハダニはいなくなるはずです。それでもまだハダニ被害があるならローテーション使用を、さらにまだハダニ被害があるならバロックを使うことを考えるといいと思います。ただし、バロックは成長した幼虫や成虫には効果がないので、そこを考えてローテーションを組んでください。

 

ハダニ駆除のしかた2、気門封鎖系の殺ダニ剤を使う

虫剤には「気門封鎖系」と呼ばれるものがあります。薬剤の膜で虫全体を包み込み、窒息させて駆除するタイプの物理的な殺虫剤です。物理駆除なので、殺ダニ剤のように薬剤への抵抗性がつくことがありません。つまり年間の使用回数に制限なく、何度でも繰り返し使うことができます

 

粘着くん/幼虫、成虫に効果あり


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粘着くんの有効成分は、でんぷんです。食用に使われるでんぷんと同じものでできているので、使用時にゴム手袋やマスクなどの特別な装備はいりません。しかも、年間使用回数に制限なく何度でも使えます。100倍に希釈して散布します。

 

ただし卵には効果がなく、残効性が低く1週間ほどしかもちません。このため、粘着くんだけでハダニを駆除しようとするなら、1週間~10日に1度の連続散布が必要です。

 

ハダニ駆除のしかた3、ハンディスプレーを使う

▲ハンディスプレーは葉裏を中心に散布

剤を使い慣れていない人や、少ししかハダニ被害の鉢がない人には、ハンディスプレーはとても使いやすいものです。ハダニは葉裏に多いので、葉裏を中心にしっかりスプレーして使います。

 

ハダニに効果があるハンディスプレーをいくつか紹介します。

 

パイベニカVスプレー


住友化学園芸 パイベニカVスプレー 1000ml

 

パイベニカVスプレーは、ピレトリン(ピレスロイド系)を有効成分とする殺ダニ剤です。ハンディスプレータイプは、調剤しなくていいので気軽に使うことができます。

 

ピレスロイド系の薬剤は、除虫菊に含まれる天然由来成分で、蚊取り線香に使われている成分と同じです。昆虫にはよく効くのですが、人や動物への毒性が低いものです。ハダニだけでなく、アブラムシの駆除にも高い効果があります。年間の総使用回数は6回です。

 

ただし、メーカーの住友化学園芸では適用害虫にアブラムシだけが記載されています。ハダニにも効果があると思われますが、「ハダニには応急処置に使用」というていどの軽い扱いです。

 

ベニカXファインスプレー


ベニカXファインスプレー 950ml 住友化学園芸

 

ベニカXファインスプレーは、アブラムシ、アザミウマ、チュウレンジハバチ、ハダニなど、バラにつく幅広い害虫に効果がある薬剤です。ハダニに対する有効成分はフェンプロパトリン(ピレスロイド系)。年間の総使用回数は4回です。

 

メーカーの住友化学園芸では「ハダニには応急処置に使用」というていどの軽い扱いです。

 

ベニカマイルドスプレー


ベニカマイルドスプレー(1000mL)【ベニカ】

 

ベニカマイルドスプレーは、でんぷんを主成分にした、物理的に包み込んでハダニを窒息させる気門封鎖系の殺虫剤です。気門封鎖系なので、卵には効果がありません。そのぶん、使用回数に制限がなく、くり返し何度も使えます。根気よく使うことで、ハダニを駆除できます。

 

ハダニ駆除のしかた4、水だけでハダニを駆除する方法2つ

剤を使わずハダニを物理的に駆除する方法を2つ紹介します。農薬を使いたくない方におすすめの方法です。

 

シャワーの水流で吹き飛ばす

▲強い水流で吹き飛ばす

い水流で物理的にハダニを吹き飛ばす方法です。外水道があるなら、水やり用のシャワーヘッドの水流を強くして行うのがいいのですが、外水道がないならお風呂で行います。このときも、できるだけ水流を強くした方が、たくさん吹き飛ばせます。

 

ハダニの卵は10日ほどで孵化するので、10日あけてもう一度行うと有効です。

 

どぶ漬けで気門封鎖して駆除する

▲1、水を張ったバケツ、細い棒(支柱など)、底をカットした排水溝用ネット、ミニバラを用意

の方法は、バラを水に漬けこみ、物理的にハダニを窒息させようという方法です。バケツに入るていどの大きさのミニバラにのみ使える方法ですが、水だけですっきりハダニを駆除できます。

 

用意するのは、水を張ったバケツ、支柱などの細い棒3~4本、底をカットした排水溝用ネット、そしてミニバラです。

 

▲2、底をカットした排水溝用ネットを鉢底からはかせる

 

つぎに、排水溝用ネットの底をハサミでカットしておきます。これをミニバラの底側からはかせて、写真のように株元までかぶせて、土が落ちるのを防ぎます。

 

▲3、支柱3~4本で鉢を支えて逆さに水につけて1時間置く

 

バケツに支柱3~4本で井桁または三角に置いて、ミニバラの鉢を逆さに置きます。このとき、水がバケツぎりぎりまで入るようにします。

 

20分くらいあればハダニは窒息するようですが、念のため1時間このまま置いて引き上げます。どぶ漬け後の水には大量のハダニがいますから、いくつもの鉢をどぶ漬けするときは、毎回水を変えてくださいハダニの卵は10日ほどで孵化するので、10日あけてもう一度行うと有効です。

 

この水に殺ダニ剤を混ぜれば完璧です。(この場合は1度だけで十分です!)

 

この方法は「どぶ漬け」や「水攻め」などと呼ばれています。

 

葉がすべて落ちてしまっても諦めないで!

ダニに対して適切な対処ができなくて、葉っぱがすべて落ちてしまっても、まだ打つ手があります。ミニバラはほとんど樹勢が強いので、枝だけになってもまた再生させられます。

 

▼枝だけになってしまったミニバラの再生方法はこちらをご覧ください

 

まとめ

ハダニは、高温で乾燥した環境で爆発的に増殖します。とくにミニバラで注意が必要で、ポリアンサ系のバラにもつきやすい害虫です。ハダニは水に弱いので、庭植えならあまり問題になりませんが、ベランダやポーチなど屋根のある場所でミニバラを栽培すると、ほぼ必ず発生します。

 

駆除するためには駆除薬を使います。専用のダニ太郎やコロマイトを使えば、1回の使用でほぼすっきりいなくなりますが、特有の臭いがあるので、マンションのベランダでは使いにくいのが現状です。

 

そのため、マンションのベランダでは水を使った「どぶ漬け」がかなり有効な駆除方法になります。

 

ミニバラには、つる性のものもあります。つる性のように大型のミニバラをどぶ漬けすることはできないので、薬剤が使えない環境のベランダでは、こういう大型のミニバラを選ばないことをおすすめします。

 

現代のようにバラを鉢で育てる、しかもベランダで育てるという概念がなかったので、図鑑や品種紹介では、ほぼハダニについて書かれていないものが多いです。ハダニ対策ができそうにない方は、ミニバラやミニ系統のつるバラは選ばない方が無難です。ポリアンサ系も多少ハダニがつきますが、ミニバラに比べれば少量です。

 

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