冬の植え替え時期になると、必ず出る古土。古土は、そのまま使ってはいけません。使える状態に再生させてから使います。今回は、古い土のリサイクル方法を紹介します。


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培養土は毎年新しいものを用意しよう!

は1年に1度のバラの植え替え(土替え)の季節です。植え替えは、これまで植わっていた古い土から新しい状態の良い土に替えて、次の1年間しっかり育ってくれるようにする、とても大切な作業です。

 

だから植え替えでは、毎年新しい培養土を準備します。あらかじめ作られた培養土を購入してもいいし、いろんな土を混ぜて培養土を手作りしてもいいですね。

 

でも、古い土はどうすれば? って思いますよね。

 

古い土も再利用できますが、そのままではダメです。少し手をかけなければいけません。今回は、古土のリサイクルのやり方を紹介します。

 

古い土がダメな5つの理由

ず古土がどういう状態になってしまっているかを、5つの項目で説明します。これを見れば、バラを大切にしたい人ほど古土を使うのが怖くなりますよ!

 

1、古い根や害虫の幼虫などが混じっている

▲こういう細根が切れて古土に混じる

れたバラの細根や雑草の根、落ち葉、場合によっては害虫の幼虫が混じっていることもあります。このまま再利用すると、古い細根は植物の生長を妨げ、落ち葉には病原菌がついている恐れがあります。コガネムシの幼虫が混じっていれば、バラの根をどんどん食べられてしまいます。

 

2、土の団粒構造が壊れている

▲左が「団粒構造」の土、右が「単粒構造」の土

い土は団粒構造をしています。良い土の条件とは、肥料や水分、空気を適度に保ち、しかも水はけが良い土です。左の図のようにいくつかの土がくっつき小さな団子になっている「団粒構造」の土なら、これらの条件を満たした土になります。

 

古い土はこの「団粒構造」が壊れてバラバラになっていることが多く、こういうバラバラになってしまった土を「単粒構造」の土(右の図)といいます。単粒構造の土は肥料も水分も保つことができず、しかも粒子が細かすぎて空気を含むこともできません。さらに水はけも悪く、植物が育ちにくい土です。

 

3、肥料分がなくなっている

▲1年間、しっかりバラを育てたのは「土」

季咲き品種なら年に3~4回も花を咲かせ、つるバラなら花と樹の生長を支え続けたのは、すべて鉢の中の土です。途中でお礼肥えや追肥をしながらもたせてきましたが、冬にはもう肥料分スッカスカになっています。

 

4、phが偏ってしまう

▲土壌測定器(PH計)

ラは弱酸性のPH6.5くらいがちょうど良いと言われます。適正なphで、バラは栄養素をよく吸収することができるのです。バラに限らず植物を育て続けるだけで、土のphは酸性に傾いていきます。さらに雨の当たる環境だと、酸性雨の影響でさらに酸性が強くなります。

 

5、病原菌が混じっている恐れがある

▲バラにおなじみ「ウドンコ病」

ラがかかりやすい黒星病やウドンコ病、ほかにもさまざまな病原菌が土に付着している恐れがあります。古土をそのまま使うと、バラがすぐ病気にかかってしまうかも知れません。

 

古い土の欠点を改善する方法

のように古い土にはさまざまな欠点がありますが、毎年培養土を購入するのもエコじゃありません。しかも培養土って、重くて運ぶのが大変だし・・・。そんなときには、古土の欠点を改善してリサイクルすればいいのです。上で紹介した古土の欠点を改善する方法を順に紹介します。

 

1、古い根や害虫の幼虫などを取り除く!


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古い根や落ち葉、小枝などのゴミは、粗目の土ふるいで取り除きます。コガネムシの幼虫や、鉢底石も同時に取り除くことができます。

 

2、単粒構造の細かい土=微塵(みじん)を取り除く!

粒構造が崩れ、ごく細かい土になってしまったものを微塵(みじん)といいます。微塵は、細目のふるいで取り除きます。この作業を「微塵抜き」といいます。

 

3、有機質肥料と緩効性化成肥料で肥料分を追加する


マグァンプK 中粒(600g)

料分がなくなってしまった土には、有機質肥料と緩効性化成肥料(元肥)で、肥料分をプラスします。緩効性化成肥料(元肥)は、バラ用なら「マイローズ バラの肥料」、バラ以外に使うなら「マグァンプk(中粒)」がおすすめ。これらの肥料は根を傷めにくいので土に混ぜて使えます。また、多いめに混ぜても少しずつ溶け出すので肥料過多になりにくい商品です。

 

4、偏ったphを正常に戻す


PH測定器 土壌測定器 小型測定計 土壌酸度計 日本語説明書付属 M39M【RCP】アナログ測定で分かりやすい

壌測定器でphを測り、バラが好むph6.5に調整します。中性がph7なので、ph6.5は微酸性です。バラ以外の植物に使うなら、中性のph7に調整します。

 

酸性に傾いた土を中性にするには、石灰やもみ殻くん炭(ph8~10の弱アルカリ性)を混ぜてphを上げます。逆にアルカリ性に傾いてしまった土を中性にするには、「酸性度無調整のピートモス」(ph4前後の強酸性)を混ぜてphを下げます。

 

5、土を消毒する

何年も使った古土には、さまざまな病原菌が混入している恐れがあります。病原菌は約60度で死滅するので、太陽熱や熱湯を利用して、土を消毒します。

 

1年使っただけの、状態の良い古土のリサイクル方法<3ステップ>

▲1年間バラを育てた培養土を乾燥させた古土

実際の古土のリサイクル方法を紹介していきます。まず1年使っただけの、状態の良い古土の場合です。

 

1年使っただけの古土はまだ状態が良いはずなので、ゴミを取り除き、鉢底石を分別し、肥料やphを調整して使える土に戻します。肥料やphの調整は「土のリサイクル材」を利用するので、初心者でも簡単に土のリサイクルができます。

 

やり方を3ステップで紹介します。

 

用意するもの/粗目の土ふるい、リサイクル材、ビニール袋(レジ袋でOK)3枚、土入れ

 

Step 1、粗目の土ふるいでゴミと鉢底石を取り除く

▲右上がゴミを入れる袋、左上が鉢底石や赤玉土を入れる茶色の袋

3枚のビニール袋を口を開いて並べ、まず①の袋で古土を粗目の土ふるいにかけます。レジ袋の中で土ふるいを使えば、土ぼこりが舞わないので、やりやすいです。

 

土ふるいの上に残ったゴミ(古い根や小枝などのゴミ)と鉢底石をそれぞれ別のビニール袋に分けます。写真では鉢底石は②の茶色のレジ袋に、ゴミは③のレジ袋に入れています。

 

③の袋のゴミは「燃えるゴミ」として処分します。

 

Step 2、リサイクル材を混ぜる

▲商品の裏書きに従い、古土4:リサイクル材1で混ぜます

るいから落ちた土に市販のリサイクル材を混ぜます。土とリサイクル材の分量は、リサイクル材の袋の裏書きに従ってください。

 

今回使った「ふっかふかによみがえる古い土のリサイクル材」(花ごころ)は、「古い土4:リサイクル材1」の割合で混ぜて使用します。

 


古い土のリサイクル材(10L)

 

Step 3、鉢底石は洗って乾かす

石の鉢底石を使っているなら洗ってから再利用。わたしは大きいめの赤玉土を鉢底石がわりに使っているので、このまままた鉢底石として再利用します。

 

【注意!】コガネムシの幼虫が出てきたら!

▲バラの根を食べるコガネムシの幼虫

しコガネムシの幼虫が出てきたら捕殺します。この古土は、バラ以外の植物に使ってください。

 

植物を植えつけたら、すぐに土の上に「オルトランDX粒剤」をまきます。水やりで溶けだしたオルトランDXの効果で、万一土の中に幼虫が残っていても死滅します。

 

あいびーあいびー

わたしは基本、リサイクルした土をバラに使いません。バラ以外の植物に使います。たとえばビオラやチューリップなど、1年草に使うことが多いです。大きくしたくないつるバラや、培養土が足りなくなったときにはバラ用の土にも混ぜますけどね(^^;

2年以上使った古土のリサイクル方法<7ステップ>

▲数年使った後の古土

1年使っただけの培養土ならそんなに状態は悪くないので、上記3ステップで古土のリサイクルができますが、2年以上使った古土は、もう少し手がかかります。

 

土ふるいに2度かけて状態の良い土だけを選別し、夏の太陽熱で土を殺菌・消毒し、さらにたい肥や肥料を足してphを調整し、ようやく使える土になります。

 

冬の植え替え時期に古土が出ますが、このときにはバケツなどに貯めておき、後日時間のあるときにリサイクル作業を進めるといいですよ。

 

実際のやり方を順番に紹介します。

 

作業1、土ふるいに2度かけて、使える土を選別する

に出た古土は、バケツなどに入れてよく乾かしてから土の選別作業をします。土の選別作業の次に行う作業は夏なので、夏までに選別作業をしておけば構いません。時間のあるときにやりましょう。

 

用意するもの/粗目と細目の土ふるい、ビニール袋(レジ袋)5枚、黒いビニール袋(ゴミ袋)1枚、土入れ

 

Step 1、粗目の土ふるいで、ゴミと鉢底石を取り除く

▲粗目の土ふるいにかける

の袋で古土を粗目の土ふるいにかけます。

 

土ふるいの上に残ったゴミ(古い根や小枝などのゴミ)を③の袋にいれ、②の袋には、鉢底石を入れます。

 

Step 2、細目の土ふるいで、微塵を抜く

▲次に細目の土ふるいにかける

の袋の土(粗目の土ふるいから落ちた土)を、今度は④の袋で細目の土ふるいにかけます。

 

細目の土ふるいから落ちた粉状の土は微塵(みじん)といって、使えない土です。微塵は住んでいる自治体のルールに従って処分します。

 

▼土の捨て方について詳しくは、こちらをご覧ください!

 

細目の土ふるいの上に残った土を⑤の袋に入れます。これが、リサイクルできる土になります。

 

②は鉢底石。③は根などのゴミ。ゴミは「燃えるゴミ」として処分します。

 

Step 3、使える土を黒いビニール袋にまとめておく

目のふるいの上に残った土(⑤の袋の土)を黒いビニール袋にまとめて入れ、この状態で夏まで置いておきます。鉢底石は洗って乾かしておきます。

 

作業2、太陽熱で殺菌・消毒する方法

夏の日差しがギラギラする頃に、この太陽熱を利用して土の殺菌・消毒をします。冬の寒さを利用して殺菌・消毒する方法は、次の項目をご覧ください。

 

用意するもの/黒いビニール袋に入れたリサイクルする土、水

 

Step 4、リサイクルする土を水で湿らす

▲全体にしっとり湿るていどに水を含ませる

いビニール袋の中の土を水で湿らせます。全体にかき混ぜて、しっとりよく水がなじんだら袋の口を縛ります。

 

Step 5、日向に1ヵ月以上置く

▲よく陽の当たる場所に置く

るべくよく陽の当たるコンクリートの上などに1ヵ月以上置いて、太陽熱でじっくり殺菌・消毒します。1週間に1度くらい上下をひっくり返し、まんべんなく熱くなるように。

 

ひっくり返すときに中を確認して乾いていたら、水分を足して湿らせてください。

 

作業3、phを調整し、たい肥、肥料を加えて、使える土に!

の殺菌・消毒が終われば、あとは使いたいときにやればいい作業になります。

 

用意するもの/土壌測定器、ph調整剤(石灰、もみ殻くん炭など)、たい肥(牛ふんたい肥や腐葉土)、緩効性化成肥料。これらは「土のリサイクル材」で代用してもOK

 

Step 6、土壌測定器でphを測り、バラ用ならph6.5、普通の植物用ならph7になるように調整する

性(phの数値が低くなっている状態)の土を中性に近づけるには、石灰やもみ殻くん炭(ph8~10の弱アルカリ性)を混ぜてphを上げます。逆にアルカリ性(phの数値が高くなっている状態)の土を中性に近づけるには、「酸性度無調整のピートモス」(ph4前後の強酸性)を混ぜてphを下げます

 

土がアルカリ性に偏ることはほとんどなく、通常は酸性になりすぎた土のphを上げて調整します。

 

Step 7、肥料分を補ってリサイクル完了!

(牛ふん肥たい肥や腐葉土)、緩効性化成肥料をプラスして、使える土の完成です! 緩効性化成肥料は、根に触れても肥料焼けしにくい肥料を使ってください。「マグァンプk中粒」や、「マイローズバラの肥料」がおすすめです。

 

【補足】便利なリサイクル材を利用してもOK!

▲手軽に使える土のリサイクル材

のリサイクル材には、ph調整剤、有機肥料、緩効性化成肥料などが入っているので、Step 6~Step 7は、土のリサイクル材を混ぜるだけでも構いません。商品の裏書きをよく確認して、指示通りに使ってください。

 

冬の寒さで殺菌・消毒する方法

般的に土の殺菌・消毒は上で紹介した夏の強烈な太陽熱を利用して行います。でもベランダ栽培をしている方のなかには、そんなに日が当たって高温になる場所がないという方もいると思います。そんなときに利用したいのが、冬の寒さです。ここでは、冬の寒さで殺菌・消毒する方法を紹介します

 

Step 1~Step 3の、土ふるいに2度かけ、ゴミと鉢底石、微塵を取り除く工程は上と共通です。

 

用意するもの/リサイクルする土、バット(容器)、熱湯

 

Step 4、バットに広げて熱湯をかける

サイクルする土をバットのような口の広い容器に広げ、熱湯を回しかけます。

 

Step 5、半月ごとにかき混ぜ、寒さにじっくり当てる

月ごとにかき混ぜながら、1~2月の極寒期に、霜などにじっくり当てて殺菌・消毒します

 

続くStep 6~Step 7も、共通です。

 

まとめ

今回は、古い土のリサイクル方法を紹介しました。1年使っただけのまだ状態の良い古土なら、リサイクル材を利用して簡単によみがえらせることができるので、ぜひトライしてみてください。もったいないですからね^^

 

2年目以降の古土は、たくさんあるならここで紹介した方法でリサイクルを。──でも、微塵抜きして残った土って、結構少ないんですよね。大した量でないのなら、いっそ捨ててしまってもいいかも知れません。消毒は手間も時間もかかるので。

 

土ふるいは、小さいサイズのものならダイソーにもあります。ホームセンターやネットショップなら粗目、中目、細目の3枚の網がセットになって700~1000円ていどです。ひとつ持っておいてもいいと思いますよ。

 

▼「土と肥料・薬剤・園芸資材について」の記事一覧はこちらからどうぞ

 

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