多くのロザリアンに選ばれている植物用活力剤「リキダス」。同じハイポネックス社から発売されている「ストレスブロック」との使い分けや効果的なタイミングなど。活力剤の成分から上手に使うヒントを紹介します。


活力剤とは? 肥料とどう違うの?

▲「活力剤」は、各メーカーからさまざまなものが発売されている

物用活力剤は、植物を上手に育てるためにとても便利な資材です。でも、活力剤ってなにか、肥料との違いをキチンと把握できている人は少ないのでは? 

 

まず、活力剤の定義について、簡単におさらいしましょう。

 

商品名に「肥料」と書ける条件は、法律で定められています。「肥料」とは、「チッソ・リン酸・カリがそれぞれ0.1%以上、あるいは2成分以上の合計量を0.2%以上含むもの」です。

 

これに対して「活力剤」に法律上の定義はありません。植物を育てる3大栄養素(チッソ・リン酸・カリ)以外の微量要素を配合することで、植物の生長を活性化する資材を一般的に「活力剤」と呼んでいます。「肥料」と呼べないほどまで3要素を薄めたものも、「活力剤」と呼ばれています。

 

つまり法律で定められた「肥料」の規定に合わないものを「活力剤」と呼んでいるわけで、その内容は製品によりさまざまです。

 

▼活力剤についてくわしくは、こちらのページもご覧ください

バラによく使われる活力剤「リキダス」の成分と効果は?

▲バラによく使われる活力剤「リキダス」

まざまな活力剤があるなかで、多くのロザリアンが使っている活力剤「リキダス」の成分をくわしく見ていきましょう。

 

主要成分は「フルボ酸」「コリン」「アミノ酸」「Caなどの各種ミネラル」です。

 

それぞれの働きを簡単に説明します。

 

フルボ酸

フルボ酸は、土壌に含まれる腐植酸のひとつです。腐植酸は、土壌の団粒化を促進したり、リン酸を吸収しやすくするなどの効果があります。

 

コリン

コリンは植物への浸透移行性に優れたビタミンです。とくにカルシウムの吸収を助け、素早く植物に効かせる働きがあります。

 

カルシウムは土壌に多く含まれていますが、植物が吸収しにくい構造のことが多い栄養素なので、コリンはその欠点を補う働きがあります。

 

アミノ酸

植物は光合成によりアミノ酸を合成しますが、日照量が足りないと十分なアミノ酸をつくることができません。アミノ酸資材は、直接アミノ酸を補給することで日照不足を補い植物の生長を助けます。

 

カルシウム

カルシウムは細胞組織を強固にし、発根を促し根を育てる働きがあります。水溶性カルシウムは植物がすぐに吸収しやすい構造なので、植物にダイレクトに効きます。

 

チッソ・リン酸・カリは、植物の3大栄養素と呼ばれます。これらほど多く必要とはしないけれど、中程度の量を必要とするという意味で「中量要素」と呼ばれるのがカルシウム、マグネシウム、イオウです。カルシウムは植物にとって、とても重要な栄養素なのです。

 

「リキダス」はカルシウムを豊富に含み、根を育てる効果に優れた活力剤です。

 

各種ミネラル

鉄/葉緑素の生成を助けます。

 

銅/植物の呼吸作用に関わる成分で、葉緑素の形成や炭水化物、タンパク質の代謝にも重要な働きをします。

 

亜鉛/さまざまな酸化還元酵素やタンパク質、でんぷんなどの合成に関わる成分です。

 

モリブデン/各種タンパク質の合成に関わる成分です。

 

これらの効果をまとめると。

 

3大栄養素のひとつリン酸を吸収しやすくすることで、花つきや実つきを良くする。

 

重要な中量要素であるカルシウムを直接補ったり吸収しやすくすることで、徒長を防いで締まった株をつくり、発根を促し育てる。

 

カルシウムや各種ミネラルで日照不足を補う。

 

などの働きがあります。

 

なかでも突出しているのがカルシウムの多さです。

 

植物が吸収しやすい水溶性カルシウムを多く含み、コリンの働きで土壌中のカルシウムを吸収しやすくするなど、カルシウムを効かせる効果に優れているのが「リキダス」です。

 

「カルシウム」は、発根を促し根を育てる働きがあります。つまり「リキダス」はさまざまな働きがあるけれど とくに根に効く! 効果にすぐれた活力剤といえます。

 

「リキダス」をバラに使う、効果的な4つのタイミング!

キダスに含まれる成分とその効果から、どんなときにバラに使えばいいのか、タイミングを考えてみましょう。

 

1、バラの根を育てたい植え付け直後や春先に!

▲春先は、とくにバラの根を育てたい時期

キダスは根に効く活力剤なので──発根を促したいときや根を育てたいときに効果的です!

 

冬の植え替え直後や、根が伸び始める春先がとくに効果的。一回り大きな鉢に鉢増ししたときや、挿し木をするときにもいいですね!

 

2、バラの回復を助けたいときに!

▲ハダニ被害で葉を落としたバラ

ラが病虫害で弱ってしまったときなど、いち早く元気を回復してほしいときにも活力剤は有効です。「リキダス」は根を育て、光合成を加速する効果で、バラの回復を助けます。

 

原因はよく分からないけれど、なんとなく元気がないバラにも。

 

こんなときに肥料をやるのは絶対にダメ。肥料は元気な株に施すもので、弱った株にやると余計弱らせてしまいがちです。原因が分からないなら、とりあえず「活力剤」で様子をみましょう。

 

3、バラの花咲く季節の前に!

▲元気な蕾を育てたいときに!

を美しく咲かせるために必要なリン酸の吸収を助けてくれるので、バラ咲く季節の前も「リキダス」を使うタイミングです。

 

春の1番花の前、2番花の前、秋花の前にも!

 

元気なバラの蕾を育てたいときに使いたいですね。

 

4、日当たりが良くない環境で!

▲あまり日当たりが良くない環境でバラを育てるときに

合成を助ける働きがあるので、日当たりが良くない環境のバラに使いたいです。

 

1日に直射日光が3時間ていどしかない半日陰の環境なら常時使いたいし、普段は日当たりのよい環境でも天候不良が続くときにはオススメです。たとえば天候不良になりやすい春先や、雨続きの梅雨時期が「リキダス」を使うタイミングですね。

 

日照不足で徒長しやすい環境でも、カルシウムの働きで徒長を防ぎ締まった株をつくります。

 

「リキダス」の使用頻度は1週間に1回

▲「リキダス」は、少しツンとした酸のニオイ

を育てたいときにも、花を美しく咲かせたいときにも、株に元気がないときにも、「リキダス」はさまざまなタイミングで効果を発揮します。

 

なので、バラが生長している間、3~11月の間コンスタントに使いたい活力剤です。

 

とくに冬の植え替えをした後、芽が動いてきた春先にしっかり「リキダス」を与えることで、根を育てる効果が期待できます。

 

公式では「1週間に1度、200倍で散布」となっています。

 

わたしの使い方は、春先に根を育てたいときには200倍でしっかり効かせて、それ以降11月まで、もっと薄い300~400倍希釈で水やり用の水に混ぜて毎回散布しています。こうすれば散布忘れ防止に役立ちます^^

 

「ストレスブロック」の成分と効果は?

▲バイオスティミュラント資材「ストレスブロック」

じくハイポネックス・ジャパンが発売している活力剤に「ストレスブロック」があります。注目はされているけれど、「リキダス」との違いが分かりにくいうえに、「リキダス」よりも値段が高いので使っている人は少数派でしょう。

 

これについても成分や効果をみていきます。

 

主要成分は「肥料成分」「ミネラル」「フルボ酸」「アミノ酸」「ベタイン」「多糖類」です。

 

また「リキダス」との違いとして、「ストレスブロック」は有機100%でつくられている資材という点が挙げられます。

 

肥料成分

「ストレスブロック」が誤解されやすい理由のひとつがコレです。「肥料成分が入っているなら、液体肥料代わりになるのかな?」と思ってしまいがちですが、この肥料成分だけでは十分ではありません。「ストレスブロック」に肥料成分は含まれますがあくまで「活力剤」なので、肥料は別にやりましょう。

 

「ストレスブロック」に肥料をプラスしても、多肥になる心配はありません。

 

ミネラル

ミネラルには葉緑素の生成や、植物の呼吸、タンパク質の合成を助けるなどの効果があります。

 

フルボ酸

フルボ酸は、土壌に含まれる腐植酸のひとつです。腐植酸は、土壌の団粒化を促進したり、リン酸を吸収しやすくするなどの効果があります。

 

「ストレスブロック」にはフルボ酸が23%もの高濃度で配合されています。「ストレスブロック」は、高濃度腐植酸資材と言えます。

 

アミノ酸

植物は光合成によりアミノ酸を合成しますが、日照量が足りないと十分なアミノ酸をつくることができません。アミノ酸資材は、直接アミノ酸を補給することで植物の生長を助けます。

 

「ストレスブロック」のアミノ酸は、「リキダス」よりも植物に吸収されやすい構造になっています。

 

ベタイン

高温・低温・乾燥・凍害などからくる水分ストレスを緩和するために、植物は浸透圧を調整する物質を体内に貯えます。ベタインはすぐれた浸透圧調整物質のひとつです。

 

多糖類

土壌微生物を活性化させるエサとなります。

 

これらの効果をまとめると、「ストレスブロック」は──

 

葉緑素の生成を助けるので、日照不足のストレスを緩和する。

 

高濃度フルボ酸で土壌改良を促し、リン酸を吸収しやすい状態にする。

 

高温・低温・乾燥・凍害などからくる水分ストレスを緩和する。

 

土壌微生物を活性化する。

 

などの働きがあります。

 

「リキダス」と同じような成分を含んでいますが、目的が日照不足や水分ストレスの緩和、土壌改良、土壌微生物の活性化と、方向性が少し違うのが分かります。

 

こういった日照不足や降水・水やり頻度による水分ストレス、劣化した土壌、土壌微生物の不活性化など、病気や害虫以外から植物が受けるストレスを緩和し、植物がもつ抵抗力を上げる目的でつくられた資材を「バイオスティミュラント資材」と呼びます。

 

「バイオスティミュラント資材」は、日本ではあまりなじみがありませんが、欧米では広く注目されている農業資材です。

 

さらに有機100%資材という点からも、「ストレスブロック」はかなりこだわったつくりの活力剤といえます。

 

「ストレスブロック」の使用頻度は1週間に1回

▲「ストレスブロック」の黒い液体は高濃度フルボ酸由来

境ストレスを緩和し、バラが本来もつ抵抗力を上げることで、より良い結果に導こうという発想の活力剤が「ストレスブロック」です。この商品は、1度や2度使えば効果が出るというものではありません。継続して使うことで効果が発揮されます。

 

公式では「希釈倍率1000倍で、週に1度」使用すると書かれています。

 

継続使用なので、バラが生長している間、3~11月の間コンスタントに使いたい活力剤です。

 

「リキダス」と「ストレスブロック」の使い分けは?

▲汎用性の「リキダス」とバイオスティミュラントに特化した「ストレスブロック」

イポネックス・ジャパンから発売されている「リキダス」と「ストレスブロック」は、どちらも活力剤です。方向性の違いはあるけれど、似たような効果があり、使い方も1週間に1度水に溶かして株元に散布するというよく似たタイプの商品です。

 

では、どちらを選べばいいのか?

 

正解は、どちらを選んでも構いません!

 

が、メーカーのオススメは、両方使いです。植え付け直後に発根効果にすぐれた「リキダス」を使い、その後、植物の抵抗力を上げるために「ストレスブロック」を使うというダブル使いが効果的とされています。

 

これ以降は、「リキダス」「ストレスブロック」を1週間に1度、交互に与えると良いそうです。

 

あいびーの考え

 
リキダス エコパック(720ml)

ハイポネックス ブリリアントガーデン バラのストレスブロック(400ml)【ハイポネックス】

くのロザリアンが使っている活力剤「リキダス」は、とくに根を育てる効果に優れた資材です。冬の植え付けの後、根が動き出す早春や、鉢増ししたときなど、根を育てたいときにゼヒ使いたいですね。

 

「リキダス」は、多くの園芸店で取り扱いがあるので入手がしやすく、さまざまな効果が見込める万人向けで使いやすい活力剤です。エコパック商品もあるので、さらに使い勝手がいいですね。

 

一方「ストレスブロック」は、大型園芸店やホームセンター、またはネット通販でしか入手できないので、ややこだわった人向けと言えます。

 

たとえば半日陰でバラを育てているとか、雨続きの天気や梅雨時期など日照不足な環境だったり、寒い春や猛暑など、天候不順がバラに与える悪影響を減らしたいというバイオスティミュラントに興味のある方に。

 

また、有機栽培、腐植酸、土壌微生物などに興味があり、バラ栽培に取り入れたいと考える方に良さそうです。

 

マイローズ「ばらの活力液DX」も同じように使えるの?

▲マイローズ「ばらの活力液DX」(住友化学園芸)

回はハイポネックスの活力剤「リキダス」と「ストレスブロック」を主に取り上げましたが、やはり多くの方に選ばれている活力剤に住友化学園芸のマイローズ「ばらの活力液DX」があります。

 

マイローズ「ばらの活力液DX」は「鉄、マルチミネラル、ビタミン、アミノ酸入りの天然有機質」と表記してあり、土壌微生物環境を整え、土質改善にも有効とあります。さらに「バイオスティミュラント成分配合」とも記載されています。

 

どうやら「リキダス」と「ストレスブロック」両方のいいとこ取りをしたような活力剤ですね。大きく違うのは、公式オススメの使用タイミングです。

 

芽出しの時期/2月中旬~4月中旬

2番花の後/7月初旬~中旬

夏剪定の前後/8月初旬~10月中旬

 

この3つのタイミングで使うことがオススメされています。

 

もちろんバラが生長している間、3~11月の間「リキダス」や「ストレスブロック」と同じようにコンスタントに使っても問題ないでしょうが、とくにこの時期にはオススメということだと思います。

 

まとめ

今回は、入手しやすく汎用性の高い植物用活力剤「リキダス」(ハイポネックス)の成分を分析し、どんな効果が見込めるのか、そこから引き出される使用タイミングなどを紹介しました。

 

「リキダス」は根を育てる力が強いので、根が伸びだす早春や鉢増しのタイミングで使うにはぴったりの活力剤です。さらに花を育てたり光合成を助ける働きもあるので、バラの生長期にはコンスタントに使いたい。

 

一方、天候不順などの環境ストレスを軽減する「バイオスティミュラント資材」として開発された「ストレスブロック」は、コンセプトがおもしろい活力剤です。

 

我が家のように日当たりのあまり良くない環境の方に、ゼヒ取り入れてほしいのが「ストレスブロック」です。500mℓ入りで2000円前後するのでやや値が張ると思われがちですが、1000倍希釈で使うのでじつは長く使えます。

 

わたしは今年から使い始めたところで、まだ効果は実感できていませんが、結果を楽しみに使ってみようと思います。

 

参考資料

ハイポネックス・ジャパン公式/https://www.hyponex.co.jp/

日本ソフケン「フルボ酸について」/http://www.nihon-sofuken.co.jp/fulvic_acid.html

感動の園芸・儲かる農業「浸透移行がすばやい成分・コリン」/https://www.tama5ya.co.jp/agribiz/clmn/2019/02/339.html

味の素AgriTecno「植物へのアミノ酸の効果って?」

日本バイオスティミュラント協議会「バイオスティミュラントの定義と意義」/https://www.japanbsa.com/biostimulant/definition_and_significance.html

 

▼「土と肥料・薬剤・園芸資材について」の記事一覧はこちらからどうぞ

 

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