バラの芽吹きから冬の休眠期まで、1年をとおしてバラがどんなふうに育つのか追いかける「そだレポ」企画です。今回は「シェエラザード」です。季節ごとに更新していくので、お楽しみに!
「シェエラザード」は、こんなバラ
▲紫がかったローズピンクの花色、花びらの先が尖る現代的な花形の「シェエラザード」
ロサ・オリエンティスブランドのバラを作出する「木村卓功」さんを一躍、有名にしたのがこのバラ「シェエラザード」です。紫がかったローズピンクのいかにもバラらしい花色で、花びらの先が尖る現代的な花形をもつこのバラは、育てやすく、花もちが良く、房咲きで、さらにダマスクを基調にした素晴らしい芳香に恵まれた、バラのいいとこ取りを集めたような品種。もちろん四季咲きです。
2018年のモナコ国際バラコンクール(The Monaco International Rose Competition)で、芳香賞とフロリバンダ部門賞をダブル受賞したという栄誉をもつバラでもあります。
今回育てる「シェエラザード」の環境DATA
関東の東向きベランダ(日照3時間ていど)
昨年、新苗で購入し育てている株
今年の目標/今年は花と芳香を楽しみたいけれど、一番の目標はトラブルなく健康に育てること! 昨年は病虫害がとても少なかったように思うので、そのあたりも注目です!
育てる人/あいびー
*バラの育て方は、育てる場所により、それぞれの木の状態により、また目的や好みによっても人それぞれです。ここで紹介する育て方は、一例として参考になさってください!
2月28日の「シェエラザード」/芽吹き
▲大苗からの芽吹き
昨年の春に新苗でお迎えし、冬の休眠期に8号角鉢に植替えしたシェエラザードです。3本の主幹をもつ立派な大苗に生長してくれました。暖冬のため、2月下旬にはこんなに若葉が広がってきました。
若葉の色は、赤い覆輪のある艶葉です。樹高は35cm。
4月3日の「シェエラザード」/つぼみが上がる
▲葉が茂ってきました
3月に暖かい日が続き、大きく葉が茂ってきました。ほかの品種でウドンコ病が出ていますが、「シェエラザード」はまったくなく、昨年に続きとても病気に強い印象です。
▲小さなつぼみを発見!
よく見ると、枝先に小さなつぼみらしきものがありました。ちょっと早い気もしますね。やや早咲きなのかも知れません。
4月26日の「シェエラザード」
▲つぼみがずいぶん膨らんできた!
前回、あんなに小さかったつぼみが、ずいぶん膨らんできました。10輪ほど咲いてくれそうです。
▲尻尾に角がある大きな青虫が!!!
アブラムシはまったくいないのですが、少し前から大きく葉っぱが食べられた痕があると思っていたら、立派な害虫を2匹も見つけてしまいました。茶色いヨトウムシ(たぶんホソオビアシブトクチバの幼虫)と、きれいな緑色の青虫(たぶんカラスヨトウの幼虫)です。青虫はきれいだったので捕殺するにしのびなく、向かいの雑木に移動してもらいました。
鉢をベランダの端に置いていたので、目が行き届かなくて見逃してしまっていましたね。
▲立派なベイサルシュートがにょっきり!
今までぜんぜん気づかなかったのですが、立派なベイサルシュートが出ていました。もう少し伸びてきたらピンチしましょう。「シェエラザード」は他の品種に比べてすごく生育が旺盛ですね!
5月9日の「シェエラザード」/開花
▲最初の1輪が開花!
小さなつぼみを見つけてから約1ヵ月。最初の1輪が開花しました。昨年、新苗の先についていた花よりもカップが深く、ゆったり咲いてくれたと思います。花径は7.5cmほどです。
香りは──淡いです。昨年は溢れんばかりの強香で、1日に何度も香りをかぎにベランダに出たくらいだったのですが。「シェエラザード」より早く咲いた強香品種も今年は香りの強さも質も悪いので、今年は全体的に香りが良くない年なのかもしれません。
▲ベイサルシュートに脇芽が発生
少し前にベイサルシュートの先をピンチしました。写真では見にくいのですが、残した枝の一番先の葉のつけ根に、小さな脇芽が出てきました。
そういえば、「春花と同時にベイサルシュートが発生するのはあまり良くない」と言われます。開花にエネルギーを使うから、ベイサルシュートがエネルギーをあまりもらえず、枝が充実しないから「あまり良くない」と言われるのだと思います。この時期にベイサルシュートが出るのは、肥料のやりすぎが原因とされますが、この株に限ってそれはないかな、と思っています。
「シェエラザード」は新苗でも3本のベイサルシュートがあったので、おそらくシュートが出やすい品種だろうと思います。品種特性ですね。とにかく、いろいろ旺盛な品種です。
5月14日の「シェエラザード」
▲花が重くて枝がきつそう!
シェエラザードに後続の2輪が咲いてきました。1本の枝先に、多いものは7輪の房咲きになっているので、花の重みで枝がたわんでいます。そのせいで花も下向きに。支柱で枝を補強した方が良さそうです。樹高は、一番高いところで50cm。たわんでいる枝を伸ばせば、53cmくらいになるかな?
▲1輪目は咲き終わり
開花から5日後。最初に咲いた1輪目は、もう咲き終わりです。開花してすぐは7.5cmで、咲き終わりは9cmになりました。やや褪せて白っぽく、紫を帯びた花色になり、花びらが立ち上がったように乱れてきました。この花は撮影の後、切り取りました。木の負担を考えれば、もっと早くカットした方がいいと思います。
▲2・3輪目は咲きたてのフレッシュな花色
2輪目と3輪目は花色はきれいですが、1輪目よりもカップが浅く、横から見るとペタンと平たい咲き方です。
香りはかなりスパイシー。ダマスクの甘さは少しも感じられず、イングリッシュローズによくある「ミルラ香」のように思えます。「バラの家」では「ダマスクを基調とした素晴らしい香り」と表現されているんですが──。しかも、「強香」品種のはずなのに「中香」に分類できるかどうかというくらいの弱い香り。
確か昨年に、新苗の先についていた花は素晴らしく強香だったような気がするので、我が家の環境のせいか、それとも年による差なのか──香りの記憶って曖昧ですけど。
5月18日の「シェエラザード」/満開
▲まだつぼみはあるけれど、だいたい満開
シェエラザードが満開を迎えました。平均的なバラよりも少し早咲きかな? 花枝が細いので、大きな房咲きになると、支えきれずに倒れてしまいがちです。支柱があった方が良さそうです(と、前回も書いたけど、結局支柱を立てていませんが(^^;)。
▲少し立ち上がりのある、これくらいが美人
シェエラザードの花は、暖かく日当たりがいいと驚くほど平たく咲きますが、天気が悪かったり日陰だと少し立ち上がりがつきます。そして咲き終わりに近づくにつれ、また立ち上がってきます。あまりに平たいのは個人的に好きではなく、この写真くらいのちょっと立ち上がりのある姿がきれいだと思います。
咲き終わりでも花の芯が見えず花形がくずれすぎないので、長くきれいな状態を保ちます。
▲ベイサルシュートの脇芽
ベイサルシュートの脇芽が順調に伸びてきています。
5月27日の「シェエラザード」/花がら切り・お礼肥え
▲2番花に備えて花がらをカット
春の1番花が終わったので、花がらをすべてカットしました。樹高は、一番高いベイサルシュートの先で53cm。(右端に写っているのはノヴァーリスです)。
▲花がらはグラスに挿して窓際に
咲き終わった花がらは、グラスに挿して窓際に飾りました。退色して赤味が減った「シェエラザード」は蛍光灯の下ではさらに青く発色して、青バラのように見えます。だいぶ弱くなりましたが、まだ香ります。
▲控えめにお礼肥え
開花疲れを癒すためのお礼肥えを。「IBのチカラ」(N10P10K10+Mg)を、8号鉢での規定量15粒のところ10粒、株から離してぐるりと取り囲んで置きました。
▲ピンチしたベイサルシュートの先から新芽が伸びて
ベイサルシュートはすくすく生長ちゅうです。2度目のピンチをした先からまた新芽が伸びてきています。それでもエネルギーが有り余っているのか、上から2段目の葉のつけ根からも新芽が発生しそうです。
薬剤散布
他のバラに害虫被害が出てきたので、株元に「オルトランDX」を散布。
6月20日の「シェエラザード」
▲ベイサルシュートの先まで樹高75cm
つぼみが膨らんだタイミングで発生したベイサルシュートはその後すくすく生長し、現在3回のピンチを繰り返した先からまた新芽が伸びてきています。高さはついに75cmになりました。
どうもベイサルシュートにエネルギーが集まっている様子で、他の枝はまったく変化なし。なかなか個性的な育ちかたをしてくれます。
▲少しハダニが発生している!
「オルトランDX」の効果もあり小さなイモムシ類はまったく見ないのですが、よく見ると葉の色が細かい点々になって抜けています。どうやらハダニです。
とりあえず葉裏から「ベニカXファインスプレー」を、たっぷりかけておきました。
7月22日の「シェエラザード」
▲ここ1カ月ほぼ変化なし!
シェエラザードは、ここ1カ月ほぼ変化がありません。あまりに動きがないので、春花を咲かせ過ぎたかなぁと、少し思っています。ハダニ被害で葉の色が悪くなっていますが、薬剤散布で落ち着いたようです。
もしやコガネムシの幼虫に入られたか? という疑いもあって「オルトランDX」を散布しました。前回が5月末散布の今年2回目です。
▲飛び出していたベイサルシュートをカット
「シェエラザード」の作出者・木村卓功さんのブログで「ベイサルシュートが1本だけ長く飛び出してしまっていると、頂芽優性でその枝先ばかりに養分が行き、他の枝の生長が止まるので、ベイサルシュートも他と同じくらいの高さに」と書かれていたのを見つけました。「頂芽優性」は、枝単位の話だと思っていたので、株全体でもそんな性質があるのかと、少し驚きです。
そこで、ベイサルシュートを、他の枝と同じくらいの高さにそろえてカットしました。これで、全体に芽が動いてくれるといいのですが。
8月12日の「シェエラザード」
▲芽が動き、新しい葉が広がってきた
前回、1本だけ飛び出していたベイサルシュートを短くしたおかげか、全体に芽が動き、新しい葉が広がってきました。切り詰めたベイサルシュートは、なんと上から3段目の芽から側枝を伸ばしています・・・どうして頂芽じゃなくて3段目? ほんと個性的な育ちかたしてくれます。
少し前に、ベイサルシュートは3回目のピンチをしました。
▲ハダニ被害の葉は色艶が悪い
ハダニ被害に遭ってしまった葉は色艶が悪く、ガサガサした見た目です。「シェエラザード」の葉はレモン形のきれいな葉なので、瑞々しい新しい葉が増えてきて、株の見た目がだいぶ良くなりました。
>>次のページでは「追肥・夏剪定」から紹介しています。