バラを挿し木で増やす方法には、「緑枝挿し」と「休眠挿し」のふたつの方法があります。今回は、バラの休眠期に行う「休眠挿し」のやり方を紹介します。
バラの挿し木のやり方は2種類ある!
▲バラの生育期に行う挿し木は「緑枝挿し」
バラは、意外と簡単に挿し木で増やすことができます。お気に入りのバラを増やすのはとても楽しいし、なによりお金をかけずに苗を手に入れられるのはお財布的に助かりますよね。
バラの挿し木のやり方には「緑枝挿し」(りょくしざし)と「休眠挿し」(きゅうみんざし)の2つの方法があります。「緑枝挿し」は梅雨頃に行う方法で、バラの休眠期に行うのが「休眠挿し」です。
今回は、バラの「休眠挿し」の方法を紹介します。
バラ苗って、誰でも自由に増やしていいんだっけ?
挿し木の手順を紹介する前に、バラを増やす場合に知っておきたい「種苗法」について、簡単におさらいします。
「種苗法」は、新品種を育成した人の権利を定められた期間保護する法律です。現在の法律では、バラの新品種登録してから30年間は、育成者権が発生します。育成者に無断で増やして販売してはいけません。
利益を得るのでなければ──つまり、販売するのでなければ法律違反にはならないのですが、マナー上、自分の庭で楽しむのに限りOKとされることが多いです。お友だちに挿し木苗を差し上げるのも、控えた方がいいと思います。
もちろん、これらは「育成者権」の発生する比較的新しいバラに限ってのことで、もう「育成者権」が消滅している古いバラについてはだれでも自由に増やして構いません。
▼「種苗法」について詳しくは、こちらをご覧ください。
「休眠挿し」の適期は12月~1月ごろ
▲12月のバラ
休眠挿しの適期は、バラの休眠期の12月~1月ごろです。
バラが生長している時期、とくに暑い時期に挿し木を行うと、葉からの蒸散が激しく、それが原因で根が出る前に枯れてしまいがちです。そのてん、寒い時期に行う「休眠挿し」では蒸散が抑えられるので成功しやすいといわれています。また、冬の枝はたっぷり養分を蓄え充実しているので、これも成功につながりやすいそうです。
なかなか挿し木が成功しないと悩んでいる方、こんどは寒い時期に試してみてはいかが?
今回も、自宅でたくさんのバラを挿し木して楽しんでいるハナたろうさんに、「休眠挿し」のやり方を教えてもらいます。
応援レポーターの「ハナたろう」です。冬はバラの剪定枝がたくさん出るので、これを利用して「休眠挿し」をします。しっかり育てれば、挿し木苗でもちゃんと立派な花を咲かせてくれますよ!
ハナたろうさんには、「イントゥリーグ」「ブルームーン」「パスカリ」「ベルサイユのばら」の4品種を挿し木から育てた株でそだレポをしてもらっています。興味のある方は、そちらもご覧ください。
▼「そだレポ一覧」からそれぞれの品種を探してください。
「休眠挿し」で準備するもの7つ
準備するものは、以下の7点です。準備するものや、実際の挿し木の手順は、夏に行う「緑枝挿し」とほぼ同じです。
用土&鉢底ネット
鉢
挿し木にする枝
水揚げに使うコップや花瓶
割りばし
発根促進剤(ルートン)
よく切れるハサミまたはカッターナイフ
それぞれに、どんなものが適しているか説明します。
用土&鉢底ネット
挿し木に使用する用土は、雑菌のない新しいものを用意します。よく使われるのは鹿沼土、赤玉土(小粒)、バーミキュライト。
鉢底ネットは、通常のものを使います。
わたしは、挿し木用の用土はバーミキュライトを使っています。
鉢
▲今回は、細長い鉢を使います 写真提供/ハナたろう
底穴のある通常の鉢を用意します。ハナたろう流ではとても長い挿し穂を使うので、今回は高さのある細長い鉢を使います。写真の鉢は、大苗を仮植えした状態で販売されていたときに植えられていた鉢です。
挿し木する枝
挿し木にする枝は、3~6mmの太さの枝が適します。あまり太い枝では活着(根が出る)まで時間がかかりすぎ、あまり細い枝では活着後の生育が良くありません。
枝は、1月に作業するなら「前の年」に(12月ちゅうに作業するなら「今年」)新しくのびた若い枝を用意します。ただし、枝先のやわらかい部分は使いません。
水揚げに使うコップや花瓶
枝の半分以上しっかり水に浸かるていどの深さの容器を用意します。
割りばし
土に穴を開けるためのモノです。使い古しでも、棒でも構いません。
発根促進剤
「ルートン」という商品を使います。
よく切れるハサミまたはカッターナイフ
挿し木用の枝を切るには、よく切れるハサミまたはカッターナイフを使います。いつも使っているハサミの切れ味が心配なら、新しい刃のカッターナイフを用意してください。
休眠挿しの「手順」
実際のやり方を順を追って紹介します。
1、「挿し穂」をつくる
▲今回、挿し木に使うのは赤いラインの枝 写真提供/ハナたろう
バラの枝を、挿し木に適した「挿し穂」にします。今回、休眠挿しするバラは「ラ・フランス」。上の写真で、赤いラインを引いた枝を切り取って「挿し穂」にします。
▲切り取った枝の長さは35cm 写真提供/ハナたろう
この枝は去年発生した新しい枝で、太さは割り箸ていどです。今は休眠期なので、全体に赤く沈んだ色をしています。枝に養分が十分蓄えられている目印です。
枝の長さは35cm、7節ほどあります。ハナたろうさんが、これだけ長い挿し穂を使うのには3つの理由があります。
理由その1、
枝が長い方がそれだけ挿し穂に体力があります。休眠前に蓄えた養分が枝に詰まっています。ハナたろうさんのこれまでの経験からいって、枝が長い方が活着率が高いそうです。必ず35cmの長さが必要なわけではありませんが、10cm~40cmくらいで、なるべく長く取ってください。
理由その2、
「休眠挿し」の場合は、芽数(=節の数)が多い方が活着後の生長がいいと思われます。
理由その3、
活着したら、しっかり太陽も雨も当たるところで管理したいので、黒星病になるのを防ぐ目的からも、挿し穂が長い方が適しています。
バラの本には、挿し穂の長さは5~10cmと書かれていることが多いのですが、わたしはいつも長い挿し穂を使います。経験上この方が成功しやすいし、活着後の生育もいいと思います。
2、挿し穂を水揚げする
枝を切ったら1時間ほど水につけて吸水(水揚げ)させておきます。
3、鉢に用土を入れ、湿らせておく
用意した鉢に用土を入れ、あらかじめじょうろなどで湿らせておきます。
4、挿し穂の先端を斜めにカットしてルートンをつける
▲斜めにカットした枝先にルートンを 写真提供/ハナたろう
挿し穂の下をよく切れるハサミかカッターナイフで斜めにカットして、ルートンをつけます。
さらに土に割り箸などで穴を開け、そこに挿し穂を立てて周りから土を寄せます。枝の半分くらいは土中に埋まるようにしてください。
5、置き場所は暖房の効かない室内
▲暖房のない室内に置く 写真提供/ハナたろう
置き場所は、暖房の効かない室内です。直射日光が当たらず、かといって真っ暗でもない場所が適します。温度や湿度が高くなりやすいお風呂やキッチンもあまり良くないでしょう。
土が乾いたら、水を含ませるかんじで水やりを。土が湿っていればいいので、水のやり過ぎに注意します。挿し穂が腐ります。水やり後は鉢受け皿の水を捨てておきます。溜めっぱなしにするのはいけません。
6、活着まではおよそ2カ月
この後、根が出る前に芽吹きます。これは枝の体力だけで芽吹いているので、芽吹いたから成功したとぬか喜びしてはいけません。
活着までは、およそ2カ月かかります。朝霜が朝露になる頃まで、適切な水管理で挿し穂を乾かさないよう、腐らせないように維持します。
途中で枝がシワシワになったり、芽吹いた後すぐ葉が萎れてしまったら失敗です。
大事なのは「決して覗かない」「触らない」ことです。鶴の恩返しではないですが、我慢できずに途中で掘り上げ様子を見ると台無しになりますよ!
まとめ
今回は、バラの休眠期に行う挿し木「休眠挿し」の方法を紹介しました。
なんと挿し穂35cmと、ながーい挿し穂を使うハナたろう流は、たくさん挿し木してきたハナたろうさんの経験からくる成功しやすい方法です。どうぞ参考にしてください。
今後この挿し木がどうなっていくのか、追加レポートしてもらえるということなので、楽しみに待ちたいと思います。ちゃんと成功してくれますように!
充実した枝を挿し穂にできる「休眠挿し」は、「緑枝挿し」よりも成功しやすいオススメの方法です。試してみてください!
▼「休眠挿し」の追加レポートは、こちらからご覧ください。
▼バラの生育期に行う「緑枝挿し」は、こちらをご覧ください
▼「バラの育て方」の記事一覧は、こちらからどうぞ