バラの芽吹きから冬の休眠期まで、1年をとおしてバラがどんなふうに育つのか追いかける「そだレポ」企画。今回は新苗編です。姿良く香り高く、そしてたやすくロザリアンの期待を裏切ってくれる悩ましいバラ「ルシファー」です。季節ごとに更新していくので、お楽しみに!


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「ルシファー」は、こんなバラ


バラ苗【新苗】ルシファー (HS紫) 国産苗《Han-HS》

 

日本人の心をとらえて離さない儚げで繊細なバラを作出しつづけている河本純子さんのバラ「ルシファー」は、その名のとおり、悪魔のようなバラです。カップ咲き~咲き進むにつれ半剣弁咲きに変化していく花形、美しい青味の藤色、爽やかなブルーの超強香。そして、なんとも頼りない華奢な枝立ちで・・・。バラの家のデータによると、育てやすさタイプは4。「栽培技術を駆使して育て上げるバラ」です。

 

気難しくて魅惑的なバラ、それが「ルシファー」です。

 

今回育てる「ルシファー」の環境DATA

関東の南向きの庭(陽当たり良好)

 ⇒8月から北側に引っ越し(日照は正午~日没まで)

今年5月に届いた新苗

今年の目標/1年目は樹を育て、2年目にたっぷり咲かせたい

育てる人/ハナたろう

 

*バラの育て方は、育てる場所により、それぞれの木の状態により、また目的や好みによっても人それぞれです。ここで紹介する育て方は、一例として参考になさってください!

 

5月下旬の「ルシファー」

▲「ルシファー」の新苗 写真提供/ハナたろう

バラの魅力にとりつかれてしまい、いろいろな青バラを育てています。なかなか気難しいと評判の「青竜」を去年お迎えして、今年とても良い状態で咲いてくれたので調子に乗ってしまい。「ルシファー」を新苗から挑戦してみることに──。「ボーリングの鉄人」みたいなことが書いてあったので、手間をかけても、名前のとおり裏切ってくれるかも知れませんが(^^;

 

▲「ガブリエル」(左)と「ルシファー」(右) 写真提供/ハナたろう

 

今年 そだレポ している「ガブリエル」も、なかなか気難しいと言われるバラなんですが、その「ガブリエル」と比べてもこの違い・・・。いくらなんでも、こんなヒョロヒョロした苗が届くとは思っていなかったんですよね──。もちろん、ベイサル・シュート候補の芽すら見当たりません。接ぎ枝も台木も細くて、昨年届いた「青竜」よりも弱弱しい新苗です。(これでもお迎えしてから3週間たっているんですよ!)

 

そだレポ のプレッシャーの中で育てるのもいいかと思い、今回エントリーしました。さて、どうなりますか!

 

この時期の作業/鉢増し

GW明けに新苗が届き、3か4号のビニールポットから現在植えてある7号のプラ鉢に鉢増ししました。培養土の配合はいつも通りの「赤玉小粒:7 腐葉土:2 籾殻燻炭:1」で『オルトランDX』を混ぜてあります。鉢増しなので根鉢は触らず、周りに培養土を詰める感じにします。

 

「鉢物・プランターの肥料」大粒の肥料(N:10 P:10 K10+苦土2)3粒を置き肥にしてから、しっかり水やり。最後に薬剤散布をして作業は完了です。

 

薬剤散布は*ダコニール1000&ベニカS乳剤の混合液散布です。

 *ダコニール1000は、バラではウドンコ病の防除に効果がある殺菌剤です。ベニカS乳剤はバラではハマキムシやヨトウムシの防除に効果がある殺虫剤です。

 

6月12日の「ルシファー」/鉢増し

▲目立った生長なし 写真提供/ハナたろう

の枝はピンチより2週間経つのに新芽が出ません。右の枝は上から2段目の芽を成長させるために1段目の芽をもぎ取りました。生長の良い方を優先するための処置です。(1段目の葉は光合成用に残します)。この子は生長がゆっくりな上、芽を出す体力も未だ無いようですねー。

 

▲あれ・・・? 鉢底からヒゲ根が・・・ 写真提供/ハナたろう

 

これは来年ちゃんと咲いてくれるかな~と、今から心配していたら・・・。ふと覗きこんだ鉢底から、ヒゲ根が見えていました。あれ・・・? 鉢増しのサイン?

 

▲びっくりの根の張りよう! 写真提供/ハナたろう

 

一応、鉢増しの準備を整えて元のプラ鉢を抜いてみてびっくり! あんなに弱々しい枝葉なのに、この根の張りよう! なんじゃこりゃ~っ! 

 

▲10号鉢に鉢増し完了 写真提供/ハナたろう

 

7号プラ鉢から10号くらいの(内径26㎝×内側高さ27cm)昨年コメリで買ったアップルポット(焼物鉢)へ鉢増し完了です。

 

脱帽です。してやられました! 『裏切りの天使』の名はダテじゃない。油断大敵ですなぁ~! もし気がつかずに放っておいたら調子を崩していたかも・・・って事は、根っこの生長ぶりからするといきなり化ける可能性も有るかもしれないですね!

 

今後の生長ぶりに期待しましょう! まぁ程々に・・・。

 

「ルシファー」の培養土はいつもと少し変えました。

•赤玉土小粒:4鹿沼土小粒:3腐葉土:2籾殻燻炭:1
•元肥:有機ペレット(N6:P6:K6+微量要素)ひと握り
•オルトランDX混入

 

理由は、『しばらく植替えをしない』方向でいきたいからです。

 

魔王殿は冬の元肥や芽出し肥を与えるとボーリングしてしまうようなので。株の力だけで咲かせることが開花に繋がるみたいです。そこを考慮して水はけの良さをかなり重視したつもりです。また、(来年の)2番花以降を咲かせる予定なので『そだレポ:ルシファー編』は来年も継続確定です。ギブアップしないよう頑張ります!

 

6月17日の「ルシファー」/支柱立て(支柱というか・・・)

▲オベリスクにゆるく巻いてみました! 写真提供/ハナたろう

がしっかりしているのに、芽が出ないのはおかしい! ──と、いうことで。前回のそだレポ撮影後に鉢にオベリスクを立ててゆるく巻いてみました。「枝葉が欲しけりゃ巻いてしまえ!」ってことです(^^; 良い感じに芽が動き始めてきました。

 

これなら、ひょろひょろでも『観れる樹形』になりましたね! このまま2~3年育てたら立派な「つるルシファー」になるかな? 「木立」で纏まらない樹形ならこの方が良さそうです。

 

6月22日の「ルシファー」/薬剤のローテーション散布

この時期の管理(我が家のすべての樹に散布しています)

この時期、病気はほぼ皆無ですが、虫たちの活動が活発で「コガネムシ成虫」「バッタ」「ヨトウムシ」「ホソオビアシブトクチバ」「ハバチ類」「クロケシチョッキリ」「スリップス」「アザミウマ」の被害をチョクチョク受けます。

 

なので、殺菌・殺虫剤の混合液を週1回下記のようなローテーションで散布しています。

 

病気防除/殺菌剤(殺虫剤と混合して使用)

ダコニール1000/黒星病・ウドンコ病の防除

オーソサイド/黒星病の予防

STサプロール乳剤/黒星病の防除にとくにすぐれる、ウドンコ病やさび病にも効果あり

ベンレート水和剤/黒星病・ウドンコ病の防除

トップジンM水和剤/黒星病・ウドンコ病の防除

 

害虫防除/殺虫剤(殺菌剤と混合して使用)

ベニカS/ハマキムシ、ヨトウムシの防除

スミソン乳剤/アブラムシ駆除

ベニカR乳剤/アブラムシ類、ハダニ類、チュウレンジハバチ、ハスモンヨトウ、クロケシツブチョッキリ、コガネムシ類成虫、ヒラズハナアザミウマの駆除

 

殺虫・殺菌剤(単独使用)

サンヨール/ウドンコ病・黒星病・灰色かび病の防除、アブラムシ、ハダニ、チュウレンジハバチの駆除

 

ローテーション①/オーソサイド水和剤80&ベニカS乳剤の混合

ローテーション②/ベンレート水和剤&スミソン乳剤の混合

ローテーション③/トップジン水和剤&ベニカS乳剤の混合

ローテーション④/オーソサイド水和剤80&スミソン乳剤の混合

 

殺菌剤と殺虫剤を互い違いにして混合散布しています。「ダコニール1000」は薬害(葉っぱが黒くなる)が出るので涼しくなるまでお休みです。夏期は「ウドンコ病」が出なくなる一方「黒星病」が猛威を奮うので。黒星病に効果のある殺菌剤を重用します。

 

また、「サンヨール」は殺菌・殺虫剤なので、単独で散布します。水和剤と乳剤の混合時(または乳剤単独)は展着剤不要です。

 

6月30日の「ルシファー」

▲枝数が増えてきました 写真提供/ハナたろう

っくりですが枝数が増えています。見るからに元気です。ほかのバラに同じような生長をするものがないように思います。ここまで育てていて「見た目よりタフ」な印象です。

 

▲枝先に初のつぼみが! 写真提供/ハナたろう

 

枝先につぼみがつきましたが、開花させるには時期尚早です。来年以降、様子をみて咲かせて行きます。このつぼみは、ピンチしました。

 

7月5日の「ルシファー」/お仲間が増えました!

▲枝葉が増えてきました 写真提供/ハナたろう

葉が増えてきました。巻いてある状態で樹高50cm。見た目はともかく、元気なのは良いことです。

 

▲「ルシファー」の中苗を追加購入しました 写真提供/ハナたろう

 

「ルシファー」にお仲間が増えました(^^; 7月4日、夜勤明けで眠れずドライブがてらバラの家実店舗に行きまして──ベイサルシュートつきの良さそうな中苗があったのでつい・・・。こっちは支柱にくくりつけず、通常の「木立ち」で育てます。樹高50cm 摘蕾済みです。

 

もともとあった苗を「ルシファーA」今回、追加した苗を「ルシファーB」と呼び分けて一緒にレポートします。

 

7月18日の「ルシファー」

▲オベリスクに巻いたルシファーA 写真提供/ハナたろう

オベリスクに巻いたルシファー「A」は、樹高70cm。コガネムシ成虫の食害で、せっかくの新芽がかじられるも元気です。病気はありません。

 

▲木立ち仕立てのルシファーB 写真提供/ハナたろう

木立ち仕立てのルシファーBは、樹高60cm。下葉の枯れがありますが生理的なものでしょう。ベイサルシュートのピンチ後、分枝してくれたようで(写真左側の枝を見てください)今後の生長に期待しています! こちらは病虫害なし。太陽光もっと欲しい! ってところです。

 

7月26日の「ルシファー」/ルシファーBの鉢増し

▲ルシファーBを10号鉢に鉢増し 写真提供/ハナたろう

よいよ暑くなってきましたが、「ルシファーB」の鉢底から白根が見えてきているので、元々の6号角鉢(バラの家のもの)からリッチェル10号鉢に鉢増ししました。

 

▲自作の土「ハナたろうブレンド」に使う材料 写真提供/ハナたろう

 

鉢増し手順1、使う土を用意します。土はいつもの「ハナたろうブレンド」。「赤玉小粒:7 腐葉土:2 籾殻燻炭:1」に『オルトランDX』を混ぜます。

 

▲鉢底に腐葉土を敷く 写真提供/ハナたろう

 

鉢増し手順2、ざる状の底穴を腐葉土で隠します。

 

▲ウォータースペースの計測 写真提供/ハナたろう

 

鉢増し手順3、培養土を軽く入れてから元々の鉢をその上に置き、ウォータースペースがキープできる高さに調節します。

 

▲根鉢を崩さぬように元の鉢を抜く 写真提供/ハナたろう

 

鉢増し手順4、根鉢を崩さぬよう抜き上げます。根張り良し!

 

▲接ぎ口は土の上に出す 写真提供/ハナたろう

 

鉢増し手順5、接ぎ口は土の上に出します。接ぎ木テープが巻かれているようなら、そっと外します。腐葉土でマルチングして、水やりを。水やりは、鉢の下から出る水が透明になるまでしっかりやります。さらに水が引いたらもう一度たっぷりと。

 

▲鉢増し完了 写真提供/ハナたろう

 

鉢増し手順6、添木にくくりつけて、鉢増し完了です。

 

8月4日の「ルシファー」/家の北側に引っ越し

▲新苗から育てたルシファーA 写真提供/ハナたろう

高80cm。枝葉も出てきたので螺旋状を解き支柱としてオベリスクを使おうと思います。元気ですよー^^

 

▲中苗で迎えたルシファーB 写真提供/ハナたろう

 

樹高75cm。ブラインドが出てきたので、そのピンチと支柱にくくり枝を直立矯正しました。ベイサルシュートの枝は順調に育っています。

 

▲今回のスペシャルサンクス 写真提供/ハナたろう

 

長梅雨の日照不足に液肥と活力剤のバックアップ。コガネムシ成虫による甚大な食害を止めてくれたキンチョール様(百発百中! すごく効きます!)。何とか夏までこぎつけられたのはあなた方のおかげです!

 

株全体の撮影が困難になってきている鉢があるので「そだレポ」対象の品種は、すべて北側に引っ越しました。陽当たりは正午あたりから日が暮れるまであり、生長に出る影響は軽微かと思います。

 

8月19日の「ルシファー」

▲枝葉が密に茂ってきたルシファーA 写真提供/ハナたろう

シファーA。少し下葉の落葉もありますが、元気です。つぼみを頻繁にあげるようですね。

 

▲こちらも元気! ルシファーB 写真提供/ハナたろう

 

ルシファーB。こちらも元気です。つぼみは見つけ次第ピンチしています。

 

>>次のページでは、「台風後の管理」から紹介しています。