根頭がん腫病疑惑のバラ苗「ルシファー」を、実験的にハイターを薄めた消毒液(次亜塩素酸ナトリウム液)につけて体内殺菌してみました。その後の育ちかたを検証してみます!
根頭がん腫病の治療のしかたについて
▲巨大に育った根頭がん腫病のコブ 写真提供/天女の舞子
根頭がん腫病は、バラの根頭や根にコブができる病気です。コブをそのままにしておけば、やがて木は衰弱し、ついに枯れてしまうこともあります。特効薬はなく、根本治療が難しい病気ですが、現在は2つの治療(対処)のしかたがあります。
ひとつはコブを取り除き、そこを木酢液などで消毒してから新しい培養土で植え替える方法。
もうひとつが、次亜塩素酸水(消毒液)に漬けこみ木の体内から消毒してしまう方法です。この方法は、バラの根頭がん腫病の防除にこだわったバラ苗や資材のお店「ゆうきの園芸ショップ ピーキャット」で提案されている方法です。「ゆうきの園芸ショップ ピーキャット」では次亜塩素酸水の取り扱いもあります。
▼がん腫病対策にこだわったバラ苗づくり「ゆうきの園芸ショップ ピーキャット」
次亜塩素酸水を入手できればよかったのですが、新型コロナウイルスの影響で次亜塩素酸水が品薄になっているということで、今回、応援レポーターの天女の舞子さんは実験的に次亜塩素酸ナトリウム溶液(ハイターを薄めたもの)に漬けこんでみました。その後の生長のしかたをレポートしてもらいます。
うわぁ、天女の舞子さん思い切った実験ですねー! 次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリなのでバラに悪い影響が出るような気がしますが(^^; でも、もし上手くいけば嬉しいですよね。これは楽しみ!
▼根頭がん腫病について詳しくは、こちらの2記事をご覧ください
今回育てる「根頭がん腫病疑惑」のハイター処理苗「ルシファー」の環境DATA
関東の、陽当たりの良い庭
2月末に届いた大苗
今年の目標/根頭がん腫病疑惑のバラ苗を、ハイターを薄めた消毒液で体内洗浄したらどうなるかの実験。
育てる人/天女の舞子
3月3日のハイター処理苗「ルシファー」/これは初期のがん腫?それともカルス?
▲販売店では「カルス」と言われたけれど・・・ 写真提供/天女の舞子
この冬に購入した大苗に根頭がん腫病を発症している苗がいくつかあったので、2月末に届いた「ルシファー」の根を洗って確認してみました。すると──太い根の側面にぶくぶくと小さな泡のような盛り上がりがいくつもありました。
これは初期の根頭がん腫病かな?と思って販売店に問い合わせたところ「カルスなので問題ありません」とのこと。素人には判断がつかないけれど、もし根頭がん腫病だったら他の健康なバラに感染させてしまうので、怖くて一緒に育てることができません。
そこで実験的に、次亜塩素酸ナトリウム溶液(ハイターを薄めた消毒液)に漬けこんで体内洗浄してみることにしました。本当は「次亜塩素酸水」の方が良かったのですが、すぐに手に入れるのは難しそうだったので、ハイターで実験です。
次亜塩素酸ナトリウム0.1%溶液で体内洗浄
水1リットルにキャップ1杯弱のハイターを入れた消毒液をつくり、そこに「ルシファー」の根を3時間ほど漬け込んでおきました。使用後の消毒液は明るい茶色をしていたので、根の表面が少し溶けたのかも知れません。
その後、新しい「マイローズ バラの培養土」で肥料を入れずに植えこみました。鉢は同じものを消毒して使っています。
3月9日のハイター処理苗「ルシファー」/今のところだいじょうぶ
▲今のところ問題なさそう 写真提供/天女の舞子
次亜塩素酸ナトリウム溶液で強引な体内洗浄をしてから約1週間。今のところ問題なさそうです。しばらく注意して観察していきたいと思います。なんとか枯れずに育ってくれるといいのですが。
根にきつい処理をしてしまったので、根の生育を助け、根からの水分や養分の吸収を助ける働きのある菌根菌を使ってみることにしました。鉢土の3カ所に穴を掘り、5ミリリットルずつ計15ミリリットルの菌根菌を入れて土をかぶせ、水やりしました。
菌根菌はカビやキノコの仲間ということで、根頭がん腫病の原因菌にもなにかいい働きがあればいいな──と、期待しています。
3月31日のハイター処理苗「ルシファー」
▲ゆっくり生長中 写真提供/天女の舞子
ハイター処理した「ルシファー」の生長は、ほかのバラに比べてゆっくりですが、新芽が伸びてきました。土の乾くサイクルが早くなってきたようです。
4月7日のハイター処理苗「ルシファー」/発蕾
▲枝先につぼみを発見 写真提供/天女の舞子
最初から生育の悪い枝が1つありますが、それ以外の3本は元気です。元気な枝の先からつぼみが上がってきました。ルシファーはボーリングしやすい品種として有名ですしまだ寒いので、うまく開花しないかもしれませんが、咲いてくれると嬉しいです。
微生物を活性化する効果がある竹酢液を、薄めて土に撒きました。
4月21日のハイター処理苗「ルシファー」
▲生育の悪い枝が枯れたのでカット 写真提供/天女の舞子
最初から生育の悪かった右端の枝が1本枯れてきたので、取り除きました。
▲つぼみは順調! 写真提供/天女の舞子
つぼみは順調に生育しているようですが、葉っぱが内側に丸まるような感じになっているところが少しあります。弱ってきているのではないかと、ちょっと心配しています。花を咲かせるための、一時的なものならいいのですが。
4月30日のハイター処理苗「ルシファー」/蕾ふくらむ
▲花びらが見えるように! 写真提供/天女の舞子
生育は順調です。つぼみが大きく膨らんで、花びらの色がのぞいてきました。無事に咲いてくれそうです。
葉が丸まるようになるのが気になっていましたが、ハナたろうさんの「そだレポ」によると、ルシファーの品種特性のようです。安心しました。
5月11日のハイター処理苗「ルシファー」/ボーリング
▲ガクが下りているのに、花びらが開かない・・・ 写真提供/天女の舞子
もう少しで咲きそうな「ルシファー」のつぼみですが、ガクが下りているのに、花びらが開きません。どうやらボーリングになってしまったようです。頻繁に水やりしているので、水切れではないと思います。
「ルシファー」はボーリングしやすい品種で有名ですし、とくに最初の花はボーリングしやすいと言われます。奥に写っている2輪目も少し乾いた感じなので、ちゃんと咲いてくれるか心配です。
▲調子の悪そうだった下葉が黄変 写真提供/天女の舞子
3月の段階から葉が強く丸まっているのが気になっていた下葉が黄色くなってきました。
5月24日のハイター処理苗「ルシファー」
▲ボーリングしたつぼみが枯れてしまった 写真提供/天女の舞子
ボーリングしてしまったつぼみは、結局、枯れてしまいました。でも、つぼみのすぐ下から新芽が伸びてきています。つぼみはもう1個ありますが、こちらもちゃんと咲くか怪しい雰囲気です。
6月12日のハイター処理苗「ルシファー」
▲株の状態は悪くない 写真提供/天女の舞子
少し心配していた葉の黄変もおさまり、株の状態は悪くありません。次々つぼみを上げて咲こうとするのですが、開かない感じです。
▲ガクは降りているが、果たして咲いてくれるか? 写真提供/天女の舞子
つぼみが膨らみ咲きそうではありますが、梅雨入りしたこともあって、ちゃんと咲いてくれるかどうか?
以前、小山内さんが、「ルシファーは暑くなると咲いて、暑さを我慢して見るくらいの誘惑があるからルシファーなんだ」というお話をされていました。これから暑くなれば、開きやすくなるといいのですが。
6月17・18日のハイター処理苗「ルシファー」/開花
▲小ぶりながら、きれいに開花 写真提供/天女の舞子
花径5cmと小ぶりながら、ルシファーがきれいに開花しました。以前にもルシファーを育てたことがありますが、大きいものだと花径8cmほどになります。これくらい大きいと開きにくかった覚えがあるので、小ぶりの方がボーリングしにくいようです。
▲翌18日朝。ブルーの香りが! 写真提供/天女の舞子
17日の撮影は夕方だったので、そんなに強く香りませんでしたが、18日朝のルシファーは強いブルー香が楽しめました。ほかにもつぼみが4つありますが、2つは虫に食べられていて(たぶんヨトウムシ)、あと2つは咲いてくれそうです。
ルシファーは次々つぼみを上げるし、超強香のブルーの香りが楽しめるので、人気なのが分かります。ただ、暑くならないと咲いてくれないのが、残念ポイントかもしれないですね。
薬剤散布
がん腫苗のエリアにハバチが飛んでいたので、全体にベニカXファインスプレーを散布しました。
ハイター処理苗、現時点での結論は・・・。
▲ハイター処理苗の真宙(まそら)(左)とガブリエル(右) 写真提供/天女の舞子
今回は、がん腫かもしれない大苗を、休眠期に次亜塩素酸ナトリウム0.1%溶液(ハイターを希釈したもの)に3時間つけて、バラ苗の体内洗浄を試した「実験そだレポ」でした。強アルカリ溶液なので、バラにどんな影響があるか試してみたのです。
今回レポートした「ルシファー」は状態も良く、ちゃんと開花までこぎつけました。ブルー香もしっかりしています。ハナたろうさんがレポートしている「正常なルシファー」と比較しても、生長のしかたに変わりなさそうです。
じつは「ルシファー」以外にも、同じようにハイター処理したがん腫疑惑の大苗があります。上の写真の「真宙(まそら)」と「ガブリエル」です。どちらも、もう何輪も花を咲かせ香りを楽しませてくれています。正常な苗と同じように生長しています。
▲ハイター処理苗「ガブリエル」の春花 写真提供/天女の舞子
少し前には、ガブリエルもちゃんと咲きました。
結論から言うと、今回のハイター処理で、生育障がいはなさそうです。
でも、バラから本当にがん腫が消えたかどうかは、顕微鏡などで細胞を確認しないと分かりません。それはわたしには出来ないので・・・。がん腫は夏になると活発化するそうなので、もう少し暑くなるまで「ルシファー」を観察し、最終的には根のがん腫を確認して「実験そだレポ」を終了しようと思います。
>>次のページでは「灰色カビ病発生」から紹介しています。
凄く大胆な事を試されたんですね!! ハイターは生花店で勤務していた時に。店舗によっては。切り花の水に入れてました。一応。大手と個人店の経験あります(苦笑 ま。その辺ははぐらかしときましょう。 鉢苗にハイターは初耳でした。 僕は今回。一気に処分を決めてしまったので。 生花店に勤務経験があるからなのか。処分には気にしないんですよね。。。 悪性なのか良性なのか。人も同じですもんね。腫瘍に関しては組織を調べないと分からないのが多数。 とりあえず残った株を大切に育てようと思ってます。
ORCAさん、こんにちは。
すごい実験ですよね! わたしも最初驚きました!
ここまできつい処理をしても、ちゃんとバラが育って花を咲かせるなんて
バラってなかなか強い植物だと思わせられます。
おそらく、根頭癌腫病の菌もかなり減らせられている感じだし。
ハイターの体内洗浄+コブの切り取りを続ければ、いずれ克服できるかもですね。
もちろん、組織の精密検査しないと、悪性か良性か判断できないから
いつまでも剪定バサミを別にして管理しないといけなくて、面倒なんですけどね(==
でも、ほんと面白い実験でした^^
あいびー