バラ栽培に適した土壌酸度(pH)を知っていますか?酸性雨などの影響で偏ってしまった土のpHを中和させる資材や使い方も合わせて紹介します!
バラが好む土壌酸度(pH)は6~7の弱酸性
▲バラが好む土壌酸度は弱酸性
植物により生育に適した土壌のpH値は少しずつ違います。多くの植物には弱酸性土壌が適していて、バラは原産地の土壌条件からpH6.2付近が最も適しているといわれます。
このためバラの土は、pH6~7の弱酸性に維持したいところ。しかし雨や水道水の影響で、土壌のpHはじょじょに変化していきます。
土が酸性やアルカリ性に傾くデメリットは?
▲pHと、各要素の溶けやすさ 出展/サカタのタネ
土のpHが極端に酸性やアルカリ性に傾くとどんなデメリットがあるかというと──。
上の表を見れば分かるように、土のpHが極端に酸性やアルカリ性に傾くと肥料成分が水に溶けにくくなります。
表の左端pH4の強酸性土壌では、肥料の3要素(窒素・リン酸・カリ)の溶出がかなり悪くなっています。逆に、表の右端pH10の強アルカリ性土壌では、肥料の3要素では窒素の溶出が悪く、二次要素のカルシウム・マグネシウムの溶出も悪く、微量要素の鉄・アルミニウム・マンガン・銅・亜鉛の溶出も悪くなっています。
肥料成分が水に溶けにくくなると、バラが肥料を吸い上げづらくなってしまい、その結果、生育不良を起こします。
日本の雨は酸性雨!
▲雨の当たる土壌は酸性に偏る
まず酸性雨について紹介しましょう。酸性雨とは、その名の通り酸性に傾いた雨のことで、一般的にpH5.6以下の雨を酸性雨と呼んでいます。
雨が酸性雨になる原因は、空中の二酸化炭素や排気ガスなどが雨に混じることで、本来中性(pH7)の水が酸性(pH5.6以下)になるのです。
酸性雨は建造物や金属の劣化を招き、水中の動植物を死滅させたり、ときに森林さえ枯らしてしまうほど、地球環境にさまざまな悪影響を与えています。
日本の雨は酸性雨で、pH値は地域により差がありますが、火山が近い場所や排気ガスの多い環境では、とくに酸性が強くなりがちです。
土壌酸度を計測する
庭や雨の当たる環境でバラを育てている方は、試しに一度、土壌酸度を調べてみては?
専用の土壌酸度計は、使いやすさに定評のあるシンワ測定の土壌酸度計がオススメです。安価なものもありますが、上手く作動しないことも多いので注意してください。(わたしは1000円ほどドブに捨てた経験があります──)。
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リーズナブルに土壌酸度を調べたいなら、リトマス試験紙を使うと簡単です。土に倍量の水を加えてその上澄み液のpHを調べればいいのです。土壌酸度計のように細かい数値は出ませんが、おおよその目安になります。
以前わたしがやったリトマス試験紙を使った測定では、白いペットボトルキャップを利用しています。詳しい方法は、下の記事を参考にしてください。
▼リトマス試験紙で土壌酸度を計る方法の参考
リトマス試験紙で土壌酸度を計る場合の注意点として、水道水は弱アルカリ性なので、0.5ほど実際のpHより高いめに出ます。
酸性の土を中和させる資材(アルカリ性資材)
▲もみ殻燻炭のpHは8~10
庭など雨の当たる場所で育てているバラの土は酸性雨の影響で酸性に傾いているので、アルカリ性資材を加えて、酸度を中和させる必要があります。鉢の土も、冬の土替えから半年もたてば、かなり酸性に偏っているはずです。
アルカリ性資材には「もみ殻くん炭」(籾殻燻炭)、石灰(苦土石灰・有機石灰など)があります。
もみ殻くん炭のpHは8~10。これを酸性土壌に混ぜて使います。使用量の目安は土の1割程度です。
▲畑に有機石灰を撒いて
石灰では一般に苦土石灰や有機石灰が使われます。
苦土石灰のpHは9.7。使用量の目安は、1㎡あたり1握り(100~200g)です。苦土石灰の「苦土」はマグネシウムを意味し、「石灰」はカルシウムを意味します。苦土石灰を撒いてすぐに植え付けても植物に害はありませんが、pHの調整効果が出るのは1~2週間後からです。
カニ殻やカキ殻を原料にした有機石灰は、苦土石灰よりも効果がゆっくりで、苦土石灰よりさらに植物に害を与えにくい資材です。ただし、苦土石灰に比べて割高です。
同じ石灰でも「消石灰」は強アルカリのうえ、化成肥料と一緒に使うとアンモニアガスを発生して植物を枯らしかねないので、あまり使われません。
ベランダの土はじょじょにアルカリ性になる!
▲青アジサイがいつの間にかピンクに!
雨が当たるところの土は酸性雨の影響で酸性に傾くのですが、逆に雨の当たらないベランダや温室の土はどうかというと、じつはじょじょにアルカリ性になっていきます。
これに気付いたのは、我が家のベランダでリサイクル土を使って育てていた青アジサイが、3年目にはピンクアジサイになってしまったからです。
アジサイは、酸性土壌で青く発色し、中性~アルカリ性土壌でピンク色や赤に発色するので、これをみて鉢土のpHがおかしいことに気がついたのです。
水道水の多くは弱アルカリ性!
▲青アジサイ、ピンクアジサイ、レディエマハミルトンがベランダの土
そこで、我が家の鉢土のpHを調べたんですが、その際、水道水のpHが7.5ていどの弱アルカリ性だったので驚きました。(当時は、水道水は中性のpH7だと信じて疑わなかったので)。でもその後よく調べてみると、これ普通のことでした。
東京都水道局によると、pHの水道水質基準値は5.8〜8.6。東京の水道水は、7.5程度でおおむね中性とありました。
水道管の劣化や食味に影響を与えないこと、さらに健康上の理由から、水道水は酸性ではなく弱アルカリ性に整えられていることが多いそうです。
上の写真が、我が家の鉢土の実験結果です。青アジサイの土がおよそpH5.7、ピンクアジサイの土がおよそpH6.4。おそらくpH6より高くなると、アジサイは紫やピンク色に発色するようです。
ちなみに、左端のルッコラの土だけは雨のあたる場所にあった土です。pHはおよそ5.3。やはり酸性雨の影響で、かなり酸性に傾いています。
アルカリ性の土を中和させる資材(酸性資材)
▲酸度無調整のピートモスはpH4ていど
ベランダなどの、雨が当たらず水道水で水やりする場所で育てているバラの土は、じょじょにアルカリ性に傾いていきます。そのため酸性資材を加えて、pHを中和させる必要があります。
*ただしベランダでバラを育てていても、毎年きちんと新しい培養土に土替えしているなら心配ありません。土がアルカリ性に傾く心配があるのは、何年も土替えしていない鉢や、リサイクル土を使いまわす場合です。
アルカリ性の土を中和させる酸性資材には、おもにピートモスが使われます。
ピートモスには酸度無調整の製品(pH4ていど)と、石灰を混ぜて酸度調整済みの製品(pH6)があるので、アルカリ性を中和させるには酸度無調整タイプのピートモスを選びます。
使用量の目安は、土の3割ていどを上限に混ぜ込みます。3割混ぜてpH0.2~1ていど酸性に傾くとされています。
他に、水苔(pH4)や鹿沼土(pH4~5)も酸性資材として使うことができます。
まとめ
今回は、バラに適した土壌酸度と、酸性やアルカリ性に傾いた土壌を中和させる資材を紹介しました。
庭でバラを育てている方は、土が酸性土壌になっていないか、一度チェックしてみてはいかがでしょう? 適宜、もみ殻燻炭や苦土石灰で中和させるとバラの生育が良くなります。
ベランダでバラを育てている方で、わたしのようにリサイクル土を使いまわしたいという方は、土がアルカリ土壌になってしまいがちです。ピートモスや鹿沼土をリサイクル土に混ぜてpHを調整してください。
今回紹介した土壌酸度を調整する資材は、土壌改良材の一種です。次回は、これらも含めた土壌改良材を個別に少し詳しく紹介します^^
参考文献
サカタのタネ https://sakata-tsushin.com/
気象庁 https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/acid/faq_acid.html
東京都水道局 https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/faq/qa-22.html
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やはり植物にはPHも大切ですよね~ 昔々。熱帯魚と水草が趣味だった頃は。やはりPHって一番、重要なんですよね。もっと深く言えば。硬度まで・・・ 軟水・硬水とかですね。今では国内でブリードや育成されているので、あまり感心は薄れているようですが。この記事。勉強になりました!
ORCAさん、こんにちは。
熱帯魚は詳しくないのですが、なんとなくシビアな水質管理が要求されそうですが──。
植物はそれほどシビアじゃないにせよ、やっぱり土壌管理は重要ですよね。
酸性雨の影響はけっこうあるようです。
ベランダで使ったリサイクル土(アルカリ性土壌)にルッコラを植えて
ほんの2カ月ほど雨の当たるところに置いたら、pH5くらいになってましたから。
雨の当たるところで管理しているバラは、花壇でも鉢でも、
ときどき酸性を中和させるアルカリ性資材を入れた方がいいかも知れないと思いました。
少なくとも、毎年使いまわす花壇の土や鉢土をリサイクルしようと思えば、
pH調整の知識は必須ですね~。
わたしも今回、記事にまとめて頭の整理ができました^^
あいびー