園芸でよく使われる4つのたい肥「腐葉土」「バーク堆肥」「牛ふんたい肥」「馬ふんたい肥」それぞれの特徴とデメリットをやや詳しく紹介します。バラ栽培に使いやすいオススメたい肥も一緒にどうぞ!
主要たい肥4種類それぞれの特徴
前回は、たい肥の全体的なお話と、土壌改良効果がすぐれていることを教えてもらったわね。でも・・・じっさい、どのたい肥をどう選んでいいか分からないわ。
それじゃ今回は、園芸で使われる主要たい肥4種類について少し詳しく紹介するね。
▼前回の記事をご覧になっていない方は、こちらからどうぞ。
1、「腐葉土」の特徴/メリット・デメリット
▲落ち葉の原型をとどめた完熟腐葉土
植物性たい肥でもっとも良く使われるのが「腐葉土」です。腐葉土は、ブナ、ケヤキ、クヌギなどの広葉樹の落ち葉が微生物により分解された植物性たい肥です。
腐葉土はほとんど肥料成分を含みませんが、土壌改良効果に優れています。
腐葉土のメリット/土をふかふかにし、団粒化を促す
腐葉土には葉の繊維質が多く残っているので、物理的に土をふかふかにする効果に優れています。さらに通気性、通水性、保水性、保肥性も向上させる優秀な土壌改良材です。
同じ植物性たい肥のバークたい肥と比べると、葉の形がしっかり残っているぶん腐葉土の方が通気性、通水性が高い特徴があります。
▲土の団粒構造の図。白まるが砂粒、緑まるが腐植酸
腐葉土が分解される過程で生成されるものに「腐植酸」(ふしょくさん)と呼ばれる高分子有機化合物があります。
上記図のとおり、腐植酸は砂の粒と粒をつなぎ合わせる糊の働きをします。つまり腐葉土を入れることで、土の団粒化が促進されるのです。
ただし、土の団粒化は数年単位の時間をかけて起こるものです。腐葉土を入れてすぐに団粒化するものではありません。団粒化が「促進されます」「促されます」という微妙な表現は、目に見えた効果はないけれど、少しは役に立つという意味合いです。
腐葉土をマルチングに使うこともありますが、コバエが発生しやすいので注意が必要です。
腐葉土のデメリット/完熟を選んで、入れすぎに注意!
▲「完熟」腐葉土を選ぼう!
腐葉土は、1~2年の時間をかけてじっくり分解させてつくられます。こういう腐葉土は「完熟」腐葉土と呼ばれます。
ところが、もっと短時間に製品化された「未熟」な腐葉土もあります。
未熟な腐葉土を土に入れると、土の中で分解が進みます。未熟な腐葉土が分解されるときには、多量の窒素を必要とするので、土壌の窒素不足が起きてしまいます。
腐葉土を選ぶさいには、「完熟」腐葉土を選びましょう!
▲「完熟」腐葉土の裏書き
良質の腐葉土を選ぶには、裏書きの「炭素窒素比」または「C/N比」の項目に注目してください。この数値が高いほど未熟で、この数値が低いほど熟成が進んでいることを示します。
窒素炭素比の基準値は20~30。上の写真は「完熟」と書かれた腐葉土の裏書きですが、基準値を上回った38です。できれば、もう少し熟成した状態の方が望ましいですね。
この腐葉土を多く入れると、窒素不足が心配です。多く入れすぎない、動物性たい肥(窒素を多く含みます)や窒素肥料を一緒に入れるなどの対策が必要です。
基準値を上回っていたとはいえ、この製品は炭素窒素比が明記されているので良心的です。このていどの数値なら、十分対策できます。でも、なかには粗悪な腐葉土もあります。炭素窒素比50以上のものもあるそうなので、注意してください!
2、「バークたい肥」の特徴/メリット・デメリット
▲原料となる樹皮を細かく砕いたもの
バークたい肥は、伐採された樹木の樹皮を砕いたものを原料に微生物の力で分解した植物性たい肥です。バーク堆肥はほとんど肥料成分を含みませんが、土壌改良効果に優れた資材です。
バークたい肥の特徴は、一言で言うと分解しにくく、完熟まで長い時間がかかることです。これはメリットにもなり、同時にデメリットにもなります。
バークたい肥のメリット/土壌改良効果が長持ちする!
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バークたい肥は植物の繊維質を多く含み、物理的に土をふかふかにします。また分解過程で腐植酸を生成し、土の団粒化を促します。バークたい肥は、土の通気性、通水性、保水性、保肥性も向上させる優秀な土壌改良材です。ここまでは腐葉土と同じです。
腐葉土との違いは、バークたい肥の方が分解に時間がかかること。繊維質が長く形をとどめるので、保水性、保肥性が、腐葉土より長く保持されます。
また、土に混ぜ込んだ後もじわじわと長期間、分解を続けます。分解している間、微生物が活発に活動するので、それだけ長く腐植酸を生成します。
バーク堆肥は高温処理されている製品が多く、バラ栽培ではマルチングによく使われます。
バークたい肥のデメリット/大量に入れない、湿らせてから使う!
▲高品質を保証する「日本バーク堆肥協会」のマーク
微生物がバークを分解している間、ずっと窒素を使い続けます。バーク堆肥は分解に時間がかかるので、多く入れすぎると土の窒素分が不足した「窒素飢餓」と呼ばれる状態になります。
バーク堆肥を使うには、多く入れすぎない、土が窒素飢餓を起こさないよう動物性たい肥や窒素肥料を一緒に入れるという対策が必要です。
バーク堆肥は「日本バーク堆肥協会」がその品質を管理し保証しています。上記の「品質認定証」がついたバーク堆肥なら、「炭素窒素比」(C/N比)が35以下に調整されているので、大量に入れなければ大きな問題になりません。
しかしバークたい肥には粗悪な(未成熟)なものも多いと聞きます。原料段階でのバークの「炭素窒素比」(C/N比)は高いものだと100ちかくあるので、未熟なバークたい肥を使うと、土が窒素飢餓状態になります。「日本バーク堆肥協会」の「品質認定証」マークを確認して購入すると安心です。
もうひとつバーク堆肥にはデメリットがあります。撥水性があるので、水を含みにくいのです。このため、使う際には水に湿らせてから土に混ぜる必要があります。さらに植物を植えてからも、あまり乾かしすぎないよう注意しましょう。
バークたい肥は、土壌改良効果が長持ちするのが特徴です。畑や庭植えのバラには良さそうですね!でも鉢植えは基本的に毎年土替えするから、必ずしも必要な特徴ではないかな?
3、「牛ふんたい肥」の特徴/メリット・デメリット
▲さらさらの完熟牛ふんたい肥
牛ふんたい肥は、牛のふんを原料に、藁やバークを混ぜて発酵分解させた動物性たい肥です。藁やバークなどの補助資材の割合は1/2ていどです。
藁やバークだけでなく、牛は牧草を食べて育つのでふんにも植物繊維を多く含みます。このため、物理的に土をやわらかくする土壌改良効果があります。さらに肥料の基本要素(窒素・リン酸・カリ)をバランスよく含み、二次要素から微量要素まで幅広い肥料成分を含んでいます。
牛ふんたい肥のメリット/土壌改良効果も肥料効果もそこそこのバランス型
▲牧草を食む黒毛牛
牛は草食動物なのでふんにも植物繊維を多く含み、さらに牛ふんたい肥には藁やバークを補助資材として混ぜてあります。そのため、土をフカフカにする土壌改良効果があります。ただし、土壌改良効果は植物性たい肥より劣ります。
牛ふんたい肥は基本要素~微量要素まで、幅広い肥料成分を含みます。このため、土にあるていどの肥料分を補うことができます。ただし、含有量としては肥料に劣ります。
牛ふんたい肥は、土壌改良効果もそこそこ、肥料効果もそこそこのバランスの取れたたい肥といえます。
牛ふんたい肥は、どこのホームセンターでも手軽に購入できるところもメリットです。バラ栽培では、庭植えの寒肥によく使われます。
牛ふんたい肥のデメリット/臭いと入れすぎに注意!
▲畑に大量に撒かれる牛ふんたい肥
動物性たい肥のデメリットとして、どれも臭いがあります。臭いの強さは「鶏ふんたい肥>豚(とん)ぷんたい肥>牛ふんたい肥>馬ふんたい肥」の順です。
牛ふんたい肥は、完熟していれば、さほど臭くないと言いますが──以前「臭くない!」を強調したかなりお高い商品を購入したけれど、やはり臭かったです。臭いにつられてコバエなどの害虫が集まるデメリットがあります。
さらに臭いの強い鶏ふんたい肥や豚(とん)ぷんたい肥は、じつは牛ふんたい肥よりも肥料成分が多く含まれています。でもこの臭いのため家庭園芸では使いにくく、もっぱら畑用です。
牛は生育時に塩を舐めているので、牛ふんたい肥にも塩分や、塩分を排出する働きをするカリウムが多く含まれます。大量に使うと塩害やカリウム過多を起こす恐れがあります。カリウムは、マグネシウムの吸収を妨げるので、植物がマグネシウム不足になりやすいです。
臭いの面でも、塩害やマグネシウム不足を起こさないためにも、牛ふんたい肥を多く入れすぎないよう注意しましょう。
牛ふんたい肥はホームセンターで手軽に購入できるし、土壌改良効果も肥料効果もそこそこで使いやすいところが魅力です。植物性たい肥に混ぜて使うのもいいですね。でも、やはり臭いがあるので、畑や庭ならいいけれどベランダ栽培では使いにくいです。
4、馬ふんたい肥の特徴/メリット・デメリット
▲完熟馬ふんたい肥
馬ふんたい肥は、馬ふんに敷き藁などを混ぜて発酵分解させた動物性たい肥です。じつは馬ふんたい肥のふん量は少なく、1/10ていどしか含まれていません。ほとんどが敷き藁です。牛ふんたい肥のふん量が1/2ていどなので、比べるといかに少ないか分かります。
そのため、牛ふんたい肥よりも肥料成分が少なく、植物繊維が多く含まれているので土壌改良効果が高いたい肥です。分かりやすく言うと、馬ふんたい肥は動物性たい肥ではあるけれど、植物性たい肥に近い性質をもつといえます。
馬ふんたい肥のメリット/動物性たい肥と植物性たい肥のいいとこ取り。黒星病予防効果も期待できる!
▲厩舎のサラブレッド
馬ふんたい肥はふん量が少なく、敷き藁などが多く含まれているので、動物性たい肥と植物性たい肥の中間のような性質をもっています。牛ふんたい肥と比べると、より土壌改良効果が高く、より肥料成分が少ないという特徴をもちます。
馬ふんたい肥には敷き藁が多く含まれているので、「炭素窒素比」(C/N比)が、動物性たい肥のなかでは突出して高く32ていどあります。土の窒素飢餓が心配になる数字ですが大丈夫。窒素を含む馬ふんの力で窒素飢餓になるのを防ぎます。
これまで見てきたように、たい肥にはそれぞれデメリットがあります。そのデメリットを考えて、土にたい肥を混ぜる場合、植物性たい肥と動物性たい肥を1:1の割合で入れることが多いのですが、馬ふんたい肥なら、他のたい肥を混ぜる必要がありません。
たとえば「赤玉土7:腐葉土1.5:牛ふんたい肥1.5」でブレンドするところ、「赤玉土7:馬ふんたい肥3」で、同じような培養土ができます。馬ふんたい肥にはデメリットが少ないので、ほかのたい肥を混ぜる必要がないのです。
馬ふんたい肥はふん量が少ないので、しっかり完熟している製品なら、ほとんど臭いがありません。臭いで害虫を呼びにくいのも嬉しいところ。
黒星病の胞子を破壊する効果があるともいわれていて、ロザリアンには馬ふんたい肥を愛用する方が多いです。
より安心な野菜づくりにこだわった家庭菜園をしている方にも馬ふんたい肥、とくにサラブレッドのたい肥を使う方が増えています。牛は病気予防のために抗生物質を与えて育ちますが、これがたい肥から野菜、さらには人体にも影響を与える懸念があります。一方、薬剤使用に厳しいサラブレッドは薬害とは無縁。野菜づくりにも安心・安全なたい肥といえます。
馬ふんたい肥のデメリット/流通が少なくやや高額
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馬ふんたい肥は流通量が少なく、ホームセンターで入手するのは難しい。ネット購入が主流になります。さらに、たい肥のなかでは値段が高いのも大きなデメリットです。
牛ふんたい肥から馬ふんたい肥に変えて、バラに劇的な効果があったという口コミをいくつも見かけました。バラ専用土でも、馬ふんたい肥を使っていることが多いです。ちょっと割高ですが試したくなりますね!
バラ栽培にオススメたい肥2選
たい肥って、それぞれ特徴が違うのね。メリットもたくさんあるけれどデメリットもあって──しかも未熟なものを見分ける目とか炭素窒素比を確認しながら配合しなきゃいけないとか・・・なんか難しそう。
そうね。ここではたい肥選びやたい肥の配合に失敗したくないYOUちゃんのような人のための、あいびーオススメのたい肥を2つ紹介します。
1、特選有機バラのたい肥(花ごころ)
フランス・デルバール社の代表取締役社長アルノー・デルバールさんがオススメする「特選有機 バラのたい肥」(花ごころ)。
主原料は「牛ふん、動物性残さ、豚ふん、鶏ふん」。肥料成分たっぷりの、ともすると臭いがきつくなりそうな配合ですが、まったく臭いがありません。しっかり熟成した、よほど高品質なたい肥をブレンドしているようです。
主原料に書かれていませんが、バークを細かく砕いたものも入っていて、土壌改良効果も期待できます。サラサラな気持ちのいい手触りです。
炭素窒素比は11なので、土壌が窒素飢餓になる心配もありません。
使用量は「用土5:特選有機バラのたい肥1」の割合です。
元肥として土に混ぜて使うほかに、夏の暑さや冬の寒さからバラを守るマルチングとしても使えます。
▲右が培養土、左がリサイクル土
「バラのたい肥」と書かれていますが、バラに限らず、どんな植物でもいい効果を発揮します。上の写真は、リサイクル土の生育実験結果です。
古土のリサイクル土に「特選有機 バラのたい肥」と固形肥料(ハイポネックスの元肥)を混ぜただけで、市販培養土とそん色ない育ち方になりました。
もう一工夫すれば、リサイクル土をかなり状態のいい土にできそうです。
どのホームセンターでも入手しやすいし、アマゾンプライムで送料無料なところもオススメポイントです^^
2、THE ROSE SHOP バラ専用馬フン堆肥 プレミアム
バラ専用 完熟馬フン堆肥 プレミアム by ROSE FACTORY
バラ専門店「ザ・ローズショップ」オリジナルのこだわり馬ふんたい肥です。
管理の行き届いた乗馬クラブで健康に育てられた馬ふんを使った高品質なたい肥です。副原料としてヒノキチップを加えているので、ニオイが少なく、消臭効果も期待できます。(ただし高温期は少しニオイがします)。
植え付け時に元肥として20%ていど混ぜて使うほか、マルチングにも使えます。
去年も使いましたが、土が柔らかくなり芽吹きもよかったです。
匂いもあまりなく、寒肥、マルチングに使いました。
また頼みたいです。
口コミでの評判も良いですね^^
馬ふんたい肥は流通量も少なく、質の良いものを入手するのが難しいので、バラ専用につくられた馬ふんたい肥は貴重です。
たい肥それぞれの詳しい特徴を知らなくても、すぐに使える状態にしてある品質の良い商品はとても助かるわ。これなら、わたしでも自分でオリジナル培養土が作れそう!
まとめ
今回は、家庭園芸でよく使われる4種類のたい肥について、それぞれの特徴を詳しく紹介しました。
でも、たい肥それぞれの特徴をふまえ、品質の良いものを選んでブレンドするのは、なかなか大変。そこで、あいびーオススメの使い勝手の良いたい肥を2種類ご紹介。
上手に使ってくださいね^^
次回は、バラに適した土壌酸度(pH)について。さらに酸性やアルカリ性に偏ってしまった土壌酸度を中和させる資材(土壌改良材)も紹介します。
参考資料
日本バークたい肥協会/https://www.bark-compost.com/
千葉県「畜種別堆肥の特徴」/https://www.pref.chiba.lg.jp/chikusan/taihiriyou/tokuchou.html
▼「土と肥料・園芸資材」の記事一覧はこちらからどうぞ
ザ・ローズショップさんの馬糞堆肥は気になってるんですよね~ でも、お礼肥料としていつも蒔くバラ専用ぼかし肥料でさえ、かなり臭います。。。 ま。この冬の土は購入したので。あとは休みの日に、風がない比較的暖かな日に(笑 そだレポのはグリーンアイス以外は土の入れ変え終わりました。 来年は。。。黒星病と害虫(バッタ)との戦いですね~(苦笑 皆さんも、寒いけど土の入れ替え。頑張りましょう!!
ORCAさん、こんにちは。
肥料やたい肥の臭いは気になりますよね。
とくに我が家はベランダだから、隣家に臭いと思われても嫌だし、
鉢にコバエがたかるのも困る。
わたしが水やりで出入りするときにくっついて入るんでしょうけど
毎年、室内にコバエが入るのが本当に困ります(==
だんだん臭いの少ないものが出てきているので、上手に利用したいです。
わたしは今年は「特選有機バラのたい肥」を使っていますが、ザ・ローズショップの馬ふんたい肥も
いずれ使ってみたいですね^^
お店で1袋だけ残っていた馬ふんたい肥を購入したんですが、これが湿ったタイプで
敷き藁の形状まったくなくなるまで完熟しているたい肥でした。
湿っているし臭いは当然・・・と覚悟してかいでみたら無臭でした^^
土の入れ替え早いですね!
わたしも少しずつやっていますが、生活サイクル上午後しか使えないし
昼食の後かたずけ~日没までって2~3時間しかなくて・・・。
ぜーんぜん終わりません!
がんばりま~す^^ノ