家庭園芸で50年以上も愛され続けている元肥「マグァンプK」の魅力と効果、バラ栽培での使い方提案など、「マグァンプK」について詳しく紹介しています。


超優秀な元肥「マグァンプK」を知らないロザリアンが多い!

▲「マグァンプK」は、50年以上のロングセラー商品

グァンプKという肥料をご存じでしょうか?「マグァンプK」は、大阪のハイポネックス・ジャパンから発売されている肥料で、もう50年以上、家庭園芸で愛され続けているロングセラー商品です。

 

わたしはバラ栽培を始めた当初から、ずっとこの「マグァンプK」を使っていますが、新しくバラ栽培を始めた方には知らない人が多いことに気づきました。ハイポネックス社では、草花栽培で使ってもらうよう力を入れていて、バラ栽培で使うことにあまり力を入れてこなかったからという理由もあります。

 

▲講演会で熱弁をふるう小山内健さん 写真提供/天女の舞子

 

ハイポネックス社がロザリアンにも自社製品を使ってもらうよう注力しだしたのが1年ほど前からです。京阪園芸の小山内健さんとタイアップして、日本各地で講演会を行ったり、小山内健さんの動画でも紹介する機会が増えてきました。

 

それで「マグァンプK」の知名度もロザリアンにずいぶん浸透してきたと思うのですが──。しかしこの「マグァンプK」が、どれほどスゴイ肥料なのかは、あまり知られていないのでは?

 

そこで今回は、「マグァンプK」がどうスゴイ肥料なのか、また、バラ栽培でどう使えばいいのかの提案とともに詳しく紹介していきます。

 

「マグァンプK」が「安心で失敗がない」理由

つはこの「マグァンプK」、ハイポネックス社でもっとも強調しているのが「安心で失敗がない」ことです。なにが安心でなぜ失敗がないのか、まずここから紹介しましょう。

 

1、「マグァンプK」は、土に混ぜて使える

▲一般的な肥料は、株元から離して置くのが基本

形肥料を使う際の注意点に、「株元から離して置きましょう」というのを聞いた方は多いと思います。じっさい、わたしもそう紹介しています。

 

これは、肥料成分が強く当たりすぎて、根にダメージを与えるのを防ぐため。さらに、養分を吸収する根は白根なので、白根が良く発達するあたりに肥料がくるように、株元から離して置といいという二つの理由があります。

 

▲「マグァンプK」は、土に混ぜて使う肥料

 

ところが「マグァンプK」は、植え付ける際の土に混ぜて使います。つまり「マグァンプK」は、根に直接触れても肥料焼けを起こさない肥料なのです。

 

つまり、肥料を置く場所を気にしなくていい安心感がありますね。

 

2、たくさん入れすぎても、ほぼ肥料焼けを起こさない

▲草花を植える前に花壇の土に混ぜて使う

んな肥料にも適量があります。もちろん「マグァンプK」にも適量があります。

 

花壇に草花を植える場合、中粒の「マグァンプK」の使用量は1㎡あたり250gです。でも、たとえばこれを300g入れても、400g入れてもほぼ効果は変わりません。

 

もっと極端に、10倍の2500g入れたとしても──もちろん生育不良にはなりますが、枯れないそうです。

 

つまり「マグァンプK」は、適量はあるけれど、あるていどアバウトに使っても大きな問題にならないのです。

 

きっちり計らなくても、アバウトでも失敗しにくい安心感がありますね。

 

3、急激に溶けず、長く効果が続く

▲「マグァンプK」は、じっくり長く効果が続く緩効性化成肥料

しい仕組みはあとで説明しますが、「マグァンプK」は、じわじわ長く効果が続く特徴があります。

 

ほとんどの肥料は水溶性で、大雨が降れば急激に溶けて肥料分が流出してしまいます。しかし「マグァンプK」は水溶性の成分が少しと、多くの水溶性ではない成分からできています。

 

このため、雨に関わらず安定した効果が長続きするのです。

 

よく使われる「マグァンプK」中粒で、約1年間の肥料効果があります。これだけ長く肥料効果が続くので、植え付けるときに元肥として「マグァンプK」を入れておけば、草花栽培ならほぼ追肥の必要がありません。

 

初心者がやりがちな、肥料を置く場所を間違えたり、量を間違えたり、追肥し忘れたりといった失敗を防ぎ、安心して使えるよう考えられているのが「マグァンプK」なのです。

 

4、臭いがなく、ベランダでも室内でも使いやすい!

▲室内の観葉植物や窓辺のハーブでも使いやすい

うひとつ、ベランダガーデナーとして追加したいのが、臭いがないことです。「マグァンプK」はイヤな臭いがないので虫を呼ばず、ベランダや室内でも使いやすいというのも大きなメリットです。

 

「マグァンプK」成分の配合比率がすごい!

▲「マグァンプK」のリン酸の多さは大きな特徴

グァンプKというこの変わった商品名は、じつは肥料成分の頭文字を組み合わせた造語です。「マグァンプK」をアルファベット表記すると「MAGAMP K」となります。

 

MAG=マグネシウム

AM=アンモニウム(アンモニア性チッソ)

P=リン酸

K=カリ

 

チッソは葉や茎を育てる肥料。「葉肥え」です。

リン酸は花や実をつかせる肥料。「花肥え」または「実肥え」です。

カリは根を育てる肥料。「根肥え」です。

マグネシウムは、葉緑素のなかの葉緑体をつくりだす肥料です。光合成をしやすくする効果があります。

 

「マグァンプK」は、これらが配合された肥料ですよってことで、命名されたネーミングです。理由が分かると、奇妙な商品名も納得ですね。

 

しかもこの配合比率がすごい。

 

N6:P40:K6:Mag15

 

注目は「P40」です。リン酸がこんなに多く配合されている肥料って他にありません。つまり、花や実を多くつけさせるのに特化している肥料なのです。

 

抜群の使いやすさで積んで置くだけで爆売れした!

▲「マグァンプK」の優秀さを力説するカーメン君 出展/you tube

つはこの「マグァンプK」、かつては棚に積んで置くだけで爆売れした商品でした。

 

こちら、総合園芸店で20年間のキャリアをもつカーメン君が、園芸のあれやこれやを楽しく紹介してくれる「カーメン君ガーデンチャンネル」のカーメン君です。

 

カーメン君によると、彼が入社したての20年前には、「マグァンプK」は、なにもしなくても積んで置くだけで何箱も売れるという状況だったそうです。動画内で「レジェンド肥料」なんて表現していますね。

 

その人気の高さゆえに、あまり販売に力を入れられることなく、いつのまにかあまり知られない地味な商品になってしまったのだとか──。

 

でも、その抜群の使いやすさは、今も変わりません。

 

「マグァンプK」が長く効く秘密は「アンモニア性」と「く溶性」

▲「マグァンプK」の裏書き

こまでは、いかに「マグァンプK」が使いやすく、長く愛され続けているロングセラー商品なのかをざっと紹介しました。

 

ここからは、この肥料がなぜ土に混ぜ込んでも大丈夫なのか? なぜ雨に流れ出すことなく長く効果が続くのか、その仕組みを少し詳しく紹介します。

 

上の写真は「マグァンプK」の裏書きです。赤ラインで囲った、成分量のところが変わっていますね。ただの「チッソ、リン酸、カリ、マグネシウム」ではなく、それぞれ「アンモニア性チッソ」「く溶性リン酸・水溶性リン酸」「く溶性カリ・水溶性カリ」「く溶性苦土・水溶性苦土」(苦土=マグネシウム)と、書かれています。

 

▲「マグァンプK」に含まれる成分は、水溶性は少しだけ

 

この図は、「マグァンプK」に含まれる成分をあらわしたものです。水溶性のリン酸・カリ・マグネシウムもあるけれど、その分量は少なく、それ以外の「アンモニア性チッソ」や「く溶性のリン酸・カリ・マグネシウム」がほとんどなのが見て取れます。

 

アンモニア性チッソとは?

ンモニア性チッソは、土の中の微生物により分解されるチッソです。冬の間は溶け出さず、微生物の活動が活発になる春以降に溶け出します。

 

く溶性のリン酸・カリ・マグネシウムとは?

は根酸(こんさん)という有機酸を分泌します。この酸により有害な物質を無毒化し、必要な元素の取り込みにも役立てています。

 

く溶性は「2%のクエン酸に溶ける性質」のことをいい、根酸で溶ける場合も「く溶性」と呼ばれます。つまり「マグァンプK」の「く溶性リン酸・カリ・マグネシウム」は、水ではなく根酸で溶けるのです。

 

このためく溶性成分は、根の活動がゆるやかな冬の間はあまり溶けず、根が発達する春以降に根酸の分量に応じて少しずつ長期間にわたって溶け出す性質があります。

 

「マグァンプK」の効き方イメージ

こまでの情報をまとめると、「マグァンプK」がどんな効き方をするのか見えてきます。

 

1、「マグァンプK」を土に混ぜ、植物を植えて水やりした直後から水溶性のリン酸・カリ・マグネシウムが溶け出す。水溶性カリ(カリは根を育てる成分)が比較的多く配合されているので、これで根が育つ。

 

2、微生物が活発になる気温に応じて、アンモニア性チッソが溶け出す。

 

3、根が発達し、根酸が分泌される量に応じて、つまり根の量に応じてく溶性のリン酸・カリ・マグネシウムが溶け出す。

 

と、こういう3段階で効果が出る仕組みになっています。

 

微生物の活動や根酸の量により成分が溶け出す量が変わるので、植物にとってちょうどいい分量を賢く効かせてくれる、「マグァンプK」がとても優秀な肥料なのが納得できると思います。

 

元肥を使うことがほとんどない!問題

▲昨今のほとんどの培養土には元肥が入っている

れほど優秀な肥料なのに「マグァンプK」が使われなくなった背景には、市販の培養土がほぼ「元肥入り培養土」になってしまったことが挙げられます。

 

最初から元肥が入っているなら、あえて使う必要ないものね!

 

だから元肥は、花壇に花を植えるときや、自作の培養土をつくる人以外には必要なくなってしまったのです。元肥が忘れられると同時に「マグァンプK」も、忘れられていったようです。

 

バラの土には元肥がないものが多い!

▲大野耕生さん監修の元肥なしの「薔薇の土」(カインズ)写真提供/天女の舞子

こで思い出してほしいのですが──。市販の「バラの土」には元肥のないものが多いです。

 

冬の植え替え時に元肥は入れず、芽が動き出す3月ごろに芽出し肥を施し、それ以降は生長している間、定期的に追肥するという育て方が一般的です。

 

もちろん、このやり方でもいいのですが、1年間しっかり効く元肥を利用するのも賢いやり方だと思うのです。

 

冬の植え替えで「マグァンプK」を入れておき、それ以降の追肥は多肥にならないよう少し量を減らして施す。こうすることで、肥料効果が切れるのを防ぐことができます。

 

バラに使うなら中粒?それとも大粒?


ハイポネックスジャパン マグァンプK 中粒 1.1kg中粒 1.1kg

マグァンプK 大粒(1.1kg)

▲「マグァンプK」中粒(左)と、大粒(右)

グァンプKで、もっとも一般的なのが約1年間の効き目がある中粒です。メーカーでは、草花、球根、野菜には中粒がオススメされています。

 

そして、花木、果樹、バラなどには「マグァンプK」大粒がオススメされています。「マグァンプK」大粒は、約2年間の効き目があります。

 

バラに大粒がオススメされている理由は、草花のように頻繁に植え替えしないからだそうです。でも、わたしは中粒でいいように思います。

 

多くのロザリアンは地植えなら毎冬に寒肥えを施し、鉢植えなら冬の植え替え(土替え)をするはずです。

 

さらに大粒を使った場合、わたしのように土をリサイクルしようとすると残留肥料が気になってしまいます。「マグァンプK」が、多く施肥しても問題の出にくい肥料なのは分かっていますが・・・。

 

だから、わたしは冬の土替えで「マグァンプK」中粒を使っています。

 

バラでの使い方提案

▲地植えなら寒肥として施肥

植えの場合は寒肥として、冬の休眠期に株の周りをぐるりと掘り返し、掘り返した土に「マグァンプK」を混ぜて埋め戻します。土壌改良効果を期待して、牛ふんや腐葉土などのたい肥を同時に混ぜてもいいでしょう。

 

基本的に寒肥は毎冬に施すので、「マグァンプK」中粒を使います。毎年できないという場合は、2年間の効き目がある「マグァンプK」大粒がいいと思います。

 

▲鉢植えなら冬の植え替えで培養土に混ぜ込んで

 

鉢植えなら、冬の植え替えで使う培養土に「マグァンプK」を混ぜて使います。もちろん、元肥なしの培養土を使っている場合のみです。

 

毎冬に植え替えする場合は「マグァンプK」中粒を、大きな鉢で毎年植え替えできないという場合は「マグァンプK」大粒を選びます。

 

1年使った培養土は必ず廃棄するというなら、毎冬に「マグァンプK」大粒を使うのもアリです。応援レポーターの天女の舞子さんは、この使い方をしています。入れる量は基準量の半量にしているそうです。

 

ベース肥料として元肥を1年間しっかり効かせることで、肥料切れをガッチリサポートしてくれる感じの使い方ですね。

 

わたしのように土をリサイクルする人は、残留肥料が気になるので中粒を使います。こちらも基準量の半量にした方がいいのかも知れませんが、基準量ていどをアバウトに使っています。それで問題になったことはありません。

 

バラの場合、元肥だけでは少し心もとないので、適宜、追肥をします。追肥は、基準量よりやや控えめに入れます。よく日の当たる環境なら基準量の2/3、半日陰なら1/2を目安にするといいと思います。

 

ここで注意です。「マグァンプK」を追肥として使ってはいけません!

 

やりがちな「マグァンプK」の間違った使い方

▲「マグァンプK」を追肥として使ってはダメ!(*写真はマグァンプKではありません)

こまで紹介してきたように「マグァンプK」はとても優れた肥料です。花壇で草花を育てている方なら、既に使っている方も多いと思います。

 

そういう方がやりがちな間違った使い方、それは「マグァンプK」を追肥として土に撒いて使うことです。

 

「マグァンプK」は元肥です。少しは水に溶けますが、多くの成分が微生物分解される、もしくは根酸で溶ける仕組みです。「マグァンプK」を土に撒いて追肥しても、水溶性の成分が少し溶けておしまいです。それ以上は効果が期待できません。

 

追肥には、追肥専用の肥料を使いましょう!

 

まとめ

今回は、じつはとても優れた肥料なのにロザリアンにあまり使われていない元肥「マグァンプK」について、やや詳しく紹介しました。

 

「マグァンプK」は、ゆっくり溶けて長く効く緩効性化成肥料です。水溶性、微生物分解する性質、根酸で溶ける性質の3つの性質の成分が組み合わされているので、植物が必要なときに必要な量を効かせてくれます。

 

わたしはこの肥料が好きでずっと使っているので、その良さを知ってほしくて取り上げました。

 

バラの元肥に「マグァンプK」を入れておけば、施肥忘れから肥料切れを起こす心配がありません。多肥による肥料焼けの恐れもほぼないので、お守り代わりに入れておくのもいいと思いますよ。

 

参考サイト

ハイポネックス・ジャパン公式/https://www.hyponex.co.jp/

カーメン君ガーデンチャンネル/https://www.youtube.com/@Kahmen-Gardening

 

▼「土と肥料・薬剤・園芸資材について」の記事一覧はこちらから

 

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