農薬の「ローテーション散布」がなぜ必要か、その理由と方法を初心者にも分かりやすく紹介しています。理由を知ることで、効果的な薬剤散布につなげられますよ!

YOUYOU

初心者ロザリアンYOUです。バラの薬剤は「ローテーション散布しましょう」ってよく聞くけれど、それってどうして? ローテーション散布する意味と、正しいやり方を教えて!


その「ローテーション散布」間違っているかも!?

アブラムシ

▲バラの蕾にびっしりついたアブラムシ

ラがどんどん生長する春はロザリアンにとって嬉しい季節ですが、同時に病虫害に悩まされ始める季節でもあります。

 

せっかく伸びた新芽の先を真っ白にしてしまうウドンコ病や、蕾にびっしりつくアブラムシ・・・。イヤですよね!

 

これらを予防したり駆除するために使うのが農薬です。

 

▲ハンドスプレー農薬は手軽だけれど・・・

 

手軽に使えるハンドスプレータイプの農薬は、初心者さんでも1本や2本もっている商品でしょう。

 

上の写真の3種類のハンドスプレー農薬は、殺菌剤と殺虫剤の両方が入っているタイプ。ラベルにバラが描かれていたりCMされていたりするので、多くの方が使っています。

 

YOUYOU

わたしも、ちょうどその3種類のハンドスプレー農薬を使っているわ。バラには「ローテーション散布」した方がいいって聞いたから、アレを使ったら次はコレって交互に──。まぁ、詳しくは分からないんだけどね。

あいびーあいびー

残念ながら、この3種類のハンドスプレー農薬をローテーションしても、意味のあるローテーション散布になっていないわ。どうしてこの3種類じゃ意味がないのか、どうすればいいのかが分かるように、順を追って説明していくね。

ローテーション散布が必要な理由

▲図1、葉についた害虫の群れ

の図は、害虫がバラの葉についている図です。なんか憎らしい顔してますが、アブラムシだとしましょう。

 

ここに、アブラムシに効果のある殺虫剤Aをかけます。

 

▲図2、殺虫剤A使用後

 

アブラムシをほぼ退治しました。でも、1匹だけ赤いアブラムシが残ってしまいましたね。じつはこの赤いアブラムシは突然変異で、殺虫剤Aに耐性があります。

 

ここにまた殺虫剤Aをかけます。

 

▲図3、殺虫剤Aが効かない害虫だらけになってしまった・・・

 

殺虫剤Aは赤いアブラムシに効かないので、いくら散布してもどんどん増えていきます。

 

このように、同じ殺虫剤ばかり使っていると、結果的に耐性をもつ害虫ばかり増やしてしまい、バラを育てている側からみれば「ぜんぜん農薬が効かない!」ということになります。

 

ウドンコ病や黒星病でも同じです。

 

同じ殺菌剤──たとえば殺菌剤Bばかり使っていると、殺菌剤Bに耐性をもつ菌が現れ増殖し、次第に殺菌剤Bが効かなくなっていくのです。

 

耐性をもつ害虫や菌の発生を防ぐために有効なのが、いくつかの農薬の「ローテーション散布」です。これが、ローテーション散布が重要な理由です。

 

YOUYOU

なるほど~。同じ薬剤を使い続けていると、結局その薬剤が効かなくなってしまうのね。だからローテーション散布しないとダメなのね。理由はわかったけど──だったら3種類の商品をローテーション使いするわたしのやり方でいいんじゃないの?

あいびーあいびー

それじゃ次に、YOUちゃんが使っている3商品の農薬成分を細かく見ていきましょう。

3種類のハンドスプレーの成分比較

商品名 商品写真

有効成分

ベニカXネクストスプレー

還元澱粉糖化物・クロチアニジン・ピリダリル・ペルメトリン・マンデストロビン

ベニカXファインスプレー

クロチアニジン・フェンプロパトリン・メパニピリム

アタックワンAL ビフェントリン、ミクロブタニル

れらはどれも殺虫剤と殺菌剤を混合した薬剤で、複数の有効成分が配合されています。

 

注目してほしいのは、ベニカXネクストスプレーにもベニカXファインスプレーにも「クロチアニジン」という同じ成分が使われている点です。

 

「クロチアニジン」は、アブラムシに効果のある殺虫成分です。

 

つまりベニカXネクストスプレーとベニカXファインスプレーをいくら交互に散布しても、アブラムシにとってはローテーション散布になっていないのです。

 

YOUYOU

あっ、本当だ! 商品名が違っても、同じ有効成分を使っているのね! たしかにこれだとローテーションにならないわね。でもアタックワンALは、有効成分がかぶっていないから大丈夫そうね。

あいびーあいびー

さぁ、それはどうかな? じつは「ローテーション散布」は、有効成分が違っていればいいのではなくて、その薬剤の系統が重要なの。系統の違う農薬をローテーションするのが効果的な「ローテーション散布」なのよ。次は系統をみていきましょう。

3種類のハンドスプレー農薬の有効成分を系統で比較

商品名 有効成分 系統
ベニカXネクストスプレー

還元澱粉糖化物

クロチアニジン

ピリダリル

ペルメトリン

マンデストロビン

デンプン系殺虫剤

ネオニコチノイド系殺虫剤

ジハロプロペン系殺虫剤

ピレスロイド系殺虫剤

Qol剤(ストロビルリン系)殺菌剤

 

ベニカXファインスプレー

クロチアニジン

フェンプロパトリン

メパニピリム

ネオニコチノイド系殺虫剤

ピレスロイド系殺虫剤

アニリノピリジン系殺菌剤

アタックワンAL

ビフェントリン

ミクロブタニル

ピレスロイド系殺虫剤

EBI剤、またはその作用機作からDMI剤に分類される

目してほしいのは、赤字で記したところです。配合されている殺虫成分は違うけれど、どのハンドスプレー農薬にもピレスロイド系殺虫剤が入っています。

 

つまりこの3種類の農薬をローテーション散布しても、同じピレスロイド系薬剤を散布し続けていることになり、意味のあるローテーションになっていないのです。

 

YOUYOU

有効成分の名称が違っているのに、系統は同じなのね!これだと確かにこの3商品を使っても意味のあるローテーション散布になっていないわね。難しいなぁ・・・。ところで、そもそも農薬の系統ってなに?

農薬の系統とは?

▲さまざまな方法で害虫を駆除

こまでくると、かなり専門的な話になりますが、農薬の系統とは「害虫や菌に対する作用の仕組みが同じグループ」をさします。

 

上の図のように、害虫に効果のある農薬は大きく5つのタイプに分けることができます。

 

「神経を攻撃するタイプ」、「ホルモンバランスを崩すタイプ」、「消化器官を攻撃するタイプ」、「新しい皮膚を作れなくさせるタイプ」、「呼吸させなくするタイプ」の5タイプです。

 

これら5タイプをさらに細かく分けて同じような作用で攻撃するタイプの農薬をグループ分けしたのが「農薬の系統」です。

 

あいびーあいびー

同じ方法でばかり攻撃すると、それに耐性を持たれてしまう恐れがあるから「さまざまな効果で攻撃するように系統の違う農薬をローテーション散布する」というのが、「ローテーション散布」の正確な意味なのよ。

YOUYOU

なるほどー!「ローテーション散布」が必要な理由はよく分かったし、わたしがやっている3商品のローテーションじゃあまり意味がないのも分かったわ。それじゃ結局どうすればいいの?

ハンドスプレー農薬だけで正確なローテーション散布はできない!さまざまな方法を併用して減農薬する!

▲農薬の「ローテーション散布」は、希釈タイプを使うのが確実

統を変えながら、かつそれぞれの農薬の年間使用回数を守りながら、正しく「ローテーション散布」しようと思えば、現状ハンドスプレー農薬だけで済ますのはムリです。

 

ハンドスプレー農薬がさまざまな薬剤を配合しているのに対して、希釈タイプの農薬は、ほぼ単一の成分でできています。これを系統別にいくつかそろえてローテーション散布するのが、もっとも確実な方法です。

 

YOUYOU

そんなぁ・・・。我が家の環境だとそんな本格的な薬剤散布はできないんだけど──。同じような人は多いと思うけど、どうすればいいの?

あいびーあいびー

考え方はいくつかあるけれど、現状ではその中でやりくりしていくしかないと思うわ。

1、病虫害に強い品種を選ぶ

▲「ロサ オリエンティス プレグレッシオ」ブランドの「リュシオール」 出展/バラの家

年発表されている新品種のバラには、病気の発生が少ないものが多くあります。

 

たとえば日本なら「ロサ・オリエンティス・プログレッシオ」ブランドのバラは、病気にかかりにくい手のかからないバラばかりです。

 

フランスの「デルバール社」のバラも、病気や害虫被害に遭いにくいバラを多く発表しています。なにしろパリ市内の住宅地では農薬使用がかなり制限されてきていますから。

 

病気が発生しにくい品種なら、予防のための殺菌剤散布を大幅に減らせられます。

 

2、農薬以外の資材を活用する


ベニカマイルドスプレー(1000ml)【ベニカ】

アースガーデン 園芸用殺虫・殺菌剤 やさお酢(1000ml)【アースガーデン】

ンドスプレーには、デンプンで害虫を包んで窒息させるような、農薬とはいえないタイプの薬剤があります。さらに、殺菌効果の高いお酢を利用した商品もあります。これらを繰り返し散布しても、害虫や菌に耐性を持たせることがありません。

 

こういうタイプの商品は、農薬のように効果が高くないのがデメリットですが、使用回数に制限がなく人体に安全で、何度も繰り返し使うことができます。

 

さらにニームオイルや木酢液、手作り忌避薬など、さまざまなタイプの資材があるので、これらを積極的に利用することで、減農薬栽培を目指しましょう。

 

本当の農薬を使うのは ココゾ! というときだけにすれば、使用回数が少なくて済みます。

 

▼手作り忌避薬の作り方はこちらをどうぞ

3、最初はハンドスプレー農薬のローテーションから

▲使いやすいものから始めてOK!

ンドスプレー農薬だけで、正しく効果的なローテーション散布をするのは現状ムリですが、初心者にいきなり希釈タイプの農薬散布をすすめるのも難しいですよね。

 

そこで、最初はハンドスプレー農薬のローテーション散布から始めて、いずれ希釈タイプの農薬散布を目指すというのも、現実的な方法です。

 

どんなハンドスプレー農薬を選ぶかなど、詳しくはプロの意見を参考にしてください。

 

▼ローテーション散布のプロのオススメはこちらから

まとめ

今回は、バラの薬剤の「ローテーション散布」について、やや深堀りして紹介しました。

 

我が家はベランダ栽培のため、あまり農薬が使えない環境です。そこで年4回までの「ベニカXガード」をメインで使い、補助的に農薬の系統がかぶらない「アタックワンAL」を併用しています。

 

これでだいたい対処できていますが、さらに減農薬できる方法を模索しています。それについては、いずれまた別のページで紹介します。

 

それぞれの置かれた環境で、もっともやりやすい方法でやっていきましょう。「必ず農薬ローテーションしなければ!」なんて難しく考えず、最初はやりやすい方法でやり、少しずつ改善していけばいいと思いますよ^^

 

YOUYOU

わたしも、とりあえず自分のできる範囲から取り組んでいきます。最初からベテランさんと同じように行かなくて当たり前だものね! そして農薬メーカーさん、ぜひローテーション使いできる初心者向けの商品開発をお願いします!

参考文献

「今さら聞けない農薬の話」(農文協)

JCPA農業工業会「農薬はどうして効くの?」https://www.jcpa.or.jp/qa/a4_01.html

 

 

▼バラ初心者YOUのQ&A一覧は、こちらからどうぞ

 

▼病気と害虫対策の記事一覧は、こちらからどうぞ

 

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