つるバラのシュート管理と、木立ちバラのシュート管理はまったく違います。混同して間違った管理をしてしまわないよう注意してくださいね!
つるバラのシュートは長く伸ばす。ピンチしない!これが鉄則
▲建物の壁面に誘引した「つるブルームーン」 写真提供/ハナたろう
クライミング系統や大型シュラブ系統、ランブラー系統の枝が長くなるつるバラは、春花後にベイサルシュートやサイドシュートをたくさん伸ばします。今回は、これらつるバラのシュート枝の管理のしかたについて紹介します。
広いスペースを1株でカバーできてしまうこれらのつるバラは、景色をつくるバラです。枝の長さを生かしてさまざまな場所を美しく彩ります。
▲清楚な「つるアイスバーグ」のアーチ
たとえば家の壁面いっぱいに誘引したり、アーチに誘引してガーデンのアクセントにしたり。
▲エントランスを縁取るシュラブ系統のバラ「スーリールドゥモナリザ」
エントランスをアーチに見立てて両側からつるバラを誘引するというのもステキです。
どんな演出をするにしても、必要なのは枝の長さです。なので、つるバラの場合はシュート処理しません。そのまま長く伸ばすのです。
木立ちバラのシュートはピンチしますが、つるバラはピンチしてはいけません。混同しないよう、注意してください!
シュート枝を真っすぐ固定すれば長く伸びる
▲大型オベリスクに仕立てた「グラハムトーマス」
上の写真は、高さ3mほどの大きなオベリスクに誘引した大型シュラブ樹形のバラ「グラハムトーマス」です。赤い矢印の先にあるのがベイサルシュート。既に人の背丈ほどに長く伸びています。
このように、つるバラのベイサルシュートはとにかく真っすぐ伸ばすのが基本です。真っすぐ立っていれば、頂芽優勢の原理に従い、頂芽だけがどんどん伸びていきます。
写真ではベイサルシュートが紐で固定されていませんが、夏場は台風などの強風で枝が折れてしまう恐れがあるので、あるていど長くなったら固定した方が安全です。シュート枝をほかの枝に沿わせて紐で縛ったり、壁やフェンスに留めつけたりして、枝が折れないように管理します。
十分伸びたら花を咲かせてOK
▲「ザ・ジェネラスガーデナー」のシュート枝に咲いた花
シュラブ系統のつるバラは、あるていどの長さになると枝先に花を咲かせます。もう十分な長さになったとバラが判断して咲かせているので、これはこのまま咲かせて大丈夫です。
▲「アンジェラ」のサイドシュート枝の先に咲いた花
クライミング系統のバラ「アンジェラ」も、シュート枝の先に花を咲かせます。この花も咲かせて大丈夫です。
もちろん、これらは健康に育っている場合の話。株の状態が悪く貧弱な枝しかないなら、もしシュート枝に蕾がついても摘蕾してエネルギーの消費を抑えましょう。
【応用編】シュート枝を寝かせれば側枝が伸びる
▲シュート枝を寝かせて側枝を出す!
ここまで紹介してきたように、つるバラのシュート枝の管理は、まっすぐ立てて枝の長さを伸ばすのが基本です。頂芽優勢の原理に従い、頂上のひとつの芽だけを伸ばすのです。
ここからはちょっとした応用編の紹介です。
これは我が家のベランダに設置したバルコニー用小型アーチです。アーチの間にワイヤーを張り、枝が柔らかいタイプのつるバラ「紅玉」を誘引しています。
今年は2本の元気なベイサルシュートが伸びてきました。これが来年の主幹としてたくさんの花を咲かせてくれる枝になります。既に十分な長さがあるので、これ以降は長さを伸ばすより複数の側枝を出したいところ。
そこで真っすぐ留めつけていた紐をほどき、自然に弓なりになる状態に枝を寝かせて留め直しました。
▲次々と側枝が伸びてきた
枝を寝かせることで頂芽優勢が崩れ、側枝がわっと芽吹いてきます。こんなふうに長さより側枝が欲しいときは、枝を寝かせればいいのです。
【例外】十分育った「モッコウバラ」のシュートは付け根から切り取ってOK!
▲長く伸びた「モッコウバラ」のサイドシュート
おそらく日本で一番多く栽培されているだろう、つるバラが「モッコウバラ」です。とくに黄花品種の「キモッコウバラ」をよく見かけます。
「モッコウバラ」は、花つきが良く、病虫害に遭いにくく、枝がやわらかくて、ほとんどトゲがない。しかも常緑かと思うほど晩冬まで落葉しないという、とても育てやすいつるバラです。
このつるバラは白花品種が中国原産の原種で、黄花品種も原種に近い性質をもちます。そのため、ほかのつるバラと少し違ったシュート処理をすることが多いです。
まだ植えたばかりの小さな苗ならシュート枝をどんどん伸ばしますが、もう十分な大きさに育っている株なら、シュート枝を付け根から切り取ってしまうのです。
「モッコウバラ」のシュートには来年あまり花が咲きません。側枝にたくさん花が咲くので、シュートを切り取り側枝を伸ばす方にエネルギーを使ってもらうようにするのです。
▲「キモッコウバラ」はとびぬけて早咲きで、4月中旬に開花する
もうひとつ、「モッコウバラ」にはほかにない特徴があります。来年の花芽が今年のうちにできるので、遅くとも7月中旬まで、できれば6月中にシュートカットを含めた枝の整理をした方がいいです。
「モッコウバラ」の手入れは、ほかと違ってかなり特殊なので、区別して覚えてください。
まとめ
今回は、つるバラのシュート管理に焦点を絞って紹介しました。木立ちバラを育てている方がつるバラを育て始めると、間違ってシュートの先をピンチしてしまうことがあります。
木立ちバラではシュートの先をピンチして花を咲かせないようにするけれど、つるバラは何もしないのが正解です。花が咲いてもOK. つるバラはおおらかに育てましょう^^
台風などで枝が折れてしまわないよう、そこだけ注意すれば大丈夫です。
つるバラは、シュート管理だけを取れば簡単です。でも、夏に行いたいつるバラの管理に整枝作業があります。つるバラの夏の整枝は少々ややこしいので、これは別の機会に紹介しましょう。
関連記事
▼「季節ごとのバラの手入れ」の記事一覧はこちらから