バラのシュート処理で必ず出てくる2つのピンチのやり方「ソフトピンチ」と「ハードピンチ」の意味を紹介します。その後の育ち方を見れば、この2つの手入れの意味はまったく違うのが分かりますよ!
バラのシュートの先をピンチする2つの方法
ソフトピンチのやり方
▲シュートの枝先2~3節を指で折り取るソフトピンチ
バラのシュートは伸ばしっぱなしにせず、適切な時期に枝先をつまむ手入れをする必要があります。こうすることで、シュートをしっかりした枝に育てることができるのです。この作業を「シュート処理」といいます。
▼シュート処理の実際のやり方は、こちらをご覧ください
シュート処理では、枝先2~3節をつまんで折り取る「ピンチ」を行います。「ピンチ」は、バラの専門用語です。
▲枝が柔らかいので、ポキリと折れる
通常のピンチのやり方は、上2枚の写真のように、枝先を指でつまんでポキリと折り取ります。枝先はまだ柔らかいので、指で簡単に折ることができます。
この指で行うピンチのやり方を「ソフトピンチ」といいます。
ハードピンチのやり方
▲枝の硬いところを剪定バサミでカットするハードピンチ
もっと大きく長く育ってしまったシュートの枝先を赤いラインで処理、つまりピンチしようにも、枝が硬くて指で折り取ることができません。
こんなときは剪定バサミを使って切り取ります。ハサミを使うピンチは、指で折り取るやり方と区別して、「ハードピンチ」と呼ばれます。
「ソフトピンチ」と「ハードピンチ」は、指で折るかハサミで切るかの違いだけでなく、それ以降の芽の育ち方に差が出ます。とくに養分が限られる鉢栽培で顕著に差が出るようです。
細かい部分ですが、とくに鉢栽培をしている方はこの違いを理解しておくと、ソフトピンチすべきなのかハードピンチでいいのか迷わなくなると思います。
「ソフトピンチ」と「ハードピンチ」それぞれの枝の育ち方の違い
ソフトピンチ後の枝の育ち方
▲指で折り取るのが「ソフトピンチ」
まずシュートを「ソフトピンチ」した枝が、その後どうなっていくか紹介します。
▲やがて頂芽が勢い良く伸びだす
しばらくすると、シュートの一番上の葉の付け根から新しい枝が伸びだします。この新しい枝はとても勢いが良く、元の枝より太くなることもしばしばです。
▲新しい枝と元の枝が1本につながる
さらに日数を経ると、赤〇で囲んだもともとの枝先が横に押し出され、新しく出た枝と元の枝が一直線につながります。
柔らかい枝先は再生力が強いので、こうしてピンチなどなかったかのように、枝がキレイに再生されるのです。
つまり「ソフトピンチは、シュートの長さを伸ばす手入れ」と言えます。
ハードピンチ後の枝の育ち方
▲硬い枝をハサミでカットするハードピンチ
次にシュートを「ハードピンチ」した枝が、その後どうなっていくか紹介します。
指で折り取れないほど硬くなってしまった枝をピンチするなら、もうハサミで切るしかないので「ハードピンチ」になります。
▲左右から角度をつけて細枝が伸びてくる
「ハードピンチ」したシュートは、1~3本ていどの細枝に枝分かれします。もうシュート枝が硬いので、もともとの枝と新しい枝を1本につなぐことができず、角度がついてしまいます。
▲たとえ1本しか新枝が伸びなくても、主幹になれない細い枝
たとえ1本しか新しい枝が伸びなくても同じです。もともとの枝が硬いので、新しい枝は横に角度をつけて伸びることしかできません。新しい枝はもとの枝より細くなってしまい、主幹ではなく側枝にしかなりません。
つまり「ハードピンチは、シュートの長さを留める手入れ」といえます。
欲しい長さになるまでは、シュートを「ソフトピンチ」する
▲Aはソフトでもハードでも。Bはソフトを強くオススメ
前回の「【鉢植え編】バラのシュート処理・シュートの手入れのしかた」の記事で、場合によってはソフトピンチを強くオススメしたり、ハサミで切ってもどちらでも~と書いてあったりで、少し混乱した方もいるかも知れません。
その違いは、要するにシュートの長さが欲しい長さに達しているかどうかの差なのです。
上の図のAのベイサルシュートは既に欲しい長さ(ほかの枝と同じ長さ)に達しています。なので、ソフトピンチでもハードピンチでもどちらでもいいのです。
それに対してBのベイサルシュートはほかの枝より短いので、まだシュートの長さを伸ばさなければいけません。なので、Bのシュート処理は「ソフトピンチ」を強くオススメしているのです。
つまり「欲しい長さになるまでは、シュートをソフトピンチする」と覚えておけばいいと思います。欲しい長さに達したら、あとは長く伸びだすのを留めればいいだけなので、指でピンチしてもハサミで切ってもどちらでも構いません。
たとえハサミを使わなくても「深すぎるソフトピンチ」はハードピンチと同じ
▲青いラインで手で折れても、それはもはや「ハードピンチ」
上の写真の赤い矢印の枝は、長く伸びだしたベイサルシュートをほかの枝の長さに合わせてピンチしたものです。たとえばこの枝を、もっと短い青いラインの長さにソフトピンチしたらどうなるか──? を、紹介します。
▲ギリギリ手で折れる硬さのところをピンチすると!
見た感じ、とても指で折れるように見えない上の写真のベイサルシュートを、なんとかギリギリ手で折れたと仮定します。
▲これ以上シュートの長さを伸ばすことはできない
この後の新しい枝の育ち方は、上の図のようになるはずです。2本の細い側枝が角度をつけて伸びだし、ベイサルシュート自身の長さを伸ばすことはできません。つまり「ハードピンチ」をしたときと同じになるのです。
「ソフトピンチ」は、枝先2~3節の、指で簡単に折り取れる長さをつまむもので、ギリギリ手で折り取れる深い位置でピンチしてはダメです。
ギリギリ手で折り取れるほど深い位置でピンチするのは、たとえハサミを使っていなくても「ハードピンチ」と同じと言えます。
まとめ
今回は、前回の記事「【鉢植え編】バラのシュート処理・シュートの手入れのしかた」を補足説明する内容でした。
「ピンチには2つのやり方があります。指で折り取るソフトピンチとハサミを使うハードピンチの2種類です」と、日本の多くのバラの先生が教えてくれます。
これはわたしの想像ですが、この外来語は、「指で簡単に折れるほど柔らかい場所を切るのがソフトピンチ」「指で簡単に折れないほど硬い場所を切るのがハードピンチ」というのが本来の意味だったのではないでしょうか?
理由は記事内で説明したように、柔らかい枝ならピンチしても再生して1本に繋がるのに対して、ハサミを使う使わないに関わらず、硬い枝をピンチするともう側枝しか出ないからです。
つまり「ソフトピンチは枝を長く伸ばすための手入れで、ハードピンチは枝の長さを留めるための手入れ」なのです。まったく別の意味合いですね。
これを理解していれば、シュートの枝先をソフトピンチすべきなのかハードピンチでも構わないのか、枝の長さに応じて使い分けることができると思います。
ただし、これは鉢栽培の場合です。環境の良い地植えの場合は、少し違うようです。それについてはまた別のページで紹介します。
▼地植えバラのシュート管理はこちらをご覧ください
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