夏剪定は、残暑の厳しさに応じてタイミングをずらすといい結果に繋がりやすいです。2023年のようにいつまでも暑い年はいつもより後ろにずらして遅く夏剪定するのがオススメ。応用が利くよう、時期調整の考え方を紹介します。


おさらいしよう! そもそも「夏剪定」の目的は!?

▲秋花をキレイに咲かせるために行う「夏剪定」

9月の声が聞こえると、「夏剪定」と呼ばれるバラの手入れを考える時期になります。夏剪定はいつ行えばいいか? じつは夏剪定で良い結果を得るには、タイミングが超重要です!

 

かつてバラの世界では「夏剪定は8月下旬~9月初旬に行うもの」と言われてきました。昭和の時代はこれで良かったのですが、温暖化が急速に進んでいる昨今では、この通りにやってもうまく行かない年が増えています。

 

とくに、今年(2023年)のように猛暑続きの年と、冷夏の年ではタイミングが大きく違ってきます!

 

今回は「夏剪定」のタイミングについて紹介しようと思いますが、そもそも「夏剪定」とはなにか? まず「夏剪定」する目的について、おさらいすることから始めましょう。

 

今回の記事は中級者以上の方向けとなります。初心者さんは、以下の関連記事をご覧ください。

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暑いときに咲く花は貧弱で観賞価値が低い

▲暑い時期のバラは、ちょっと伸びてすぐ蕾をつける

の写真は、9月2日に撮影した我が家のバラです。枝先からちょっと花枝が伸びて、小さな蕾がついています。計ってみると花枝は5cmでした。これが真夏だと1cmくらいしか伸びずに蕾がつくこともあります。

 

暑い時期のバラは、だいたいこんな感じですね。この蕾が開いたらどんな花が咲くかというと──。

 

▲花径5cmの夏花の「デスデモーナ」

 

短期間にパカッと全開し、春とは似ても似つかない貧弱な花を咲かせます。花径は小さく、花びらの枚数は春よりずっと少なく、花色は白っぽくなり、香りもほとんどありません。そして、咲いたと思ったら数日であっさり咲き終わります。

 

これは気温が高いので、バラが蕾をじゅうぶん育ててから咲くことができないために起きる現象です。品種や環境による差はありますが、多くのバラが夏花はこんなふうに貧弱に咲きます。

 

▲花径8cmの春花の「デスデモーナ」

 

じつはこのバラは「デスデモーナ」なんですが、上の写真の春花と比べると、夏花は同じ品種とは思えないほど違った印象なのが分かると思います。

 

この夏花を「これも可愛らしくていい」と思えば咲かせてもいいんですが、わたしは「夏花は観賞価値が低いからバラのエネルギーを節約するために蕾を摘んで咲かせない」という方針です。

 

基本的にバラはヨーロッパのような冷涼な気候を好む植物なので、日本の暑い夏は苦手で、調子を崩しやすい品種が多いからです。調子を崩すリスクを取ってまで夏花を咲かせるほどの価値はない、というのが、わたしの考えです。

 

夏花を咲かせるか摘むかは、ロザリアンそれぞれの考えでいいと思います。

 

秋は10月中・下旬ごろがもっとも状態のいい花が咲きやすい時期

▲春とそん色なく、状態良く咲く「アイスバーグ」の秋花

い夏を過ぎ、やがて秋になるとまたバラが状態のよい花を咲かせやすい気候になります。

 

関東以西の温暖な地域基準でいえば、10月中・下旬ごろがまたバラがキレイに咲く適温になります。10月中・下旬というのは、日中の気温が20度前後。これくらいの気温で、バラは一番状態良く咲くことができるのです。

 

なので、秋バラを良い状態で楽しむため「10月中・下旬にまとまって咲くように開花時期を剪定で調整しよう」というのが、夏剪定の主目的です。

 

10月中・下旬から逆算して剪定時期を決める

▲10月下旬開花を見込んで9月中旬に夏剪定する

種や剪定のしかたにより多少、差はありますが、バラは剪定してから40日ほどで開花します。10月中旬に咲かせようと思えば、逆算して9月5日ごろに剪定すればいいと計算することができます。

 

しかし近年の温暖化している気候ではもう少し遅く10月下旬に咲かせる方が状態が良くなりやすいので、夏剪定ももう少し遅く9月中旬に行うのが良いと言われています。

 

これが、関東以西での基準となります。

 

残暑厳しい夏は「夏剪定」を遅くする。冷夏は「夏剪定」を早める

▲新芽が長く伸びるようになってから夏剪定すると上手くいきやすい

れを基準として、今年(2023年)のように厳しい残暑が続く年は9月中旬よりもう少し遅らせて9月20日ごろに夏剪定するのでもいいでしょう。

 

逆に冷夏だったり、お盆過ぎから急激に涼しくなったという年は、9月中旬より前倒しにして、9月5~10日ごろに夏剪定するのがいいかも知れません。

 

もちろん自然相手のことなので、気温の変化がどうなるのかだれにも予測はできません。なので、夏剪定の結果が上手く出る年もあれば、上手く行かない年もあります。そこは仕方のないことです。

 

いずれ暑さが和らいでくると、バラにも変化が出てきます。ちょっと伸びてすぐ蕾をつけるようなことはなくなります。上の写真のように、長く伸びてまだ蕾をつけない枝が出てきます。こんな枝が増えてきてから夏剪定するのでもいいと思います。

 

九州は関東基準より「夏剪定」を遅くする。寒冷地は「夏剪定」を早める

▲お住まいの地域の気候で夏剪定時期を調整して!

暑厳しい年と冷夏の年で夏剪定のタイミングをずらすという考えは、そのまま九州などの暑さが残りやすい気候の地域や、長野県や北海道のような寒冷地でのタイミングを考えるのに応用できます。

 

九州などの残暑が残りやすい地域では、関東以西の基準となる地域よりも夏剪定を遅くします。日中の気温が20度ていどになるのが11月初旬なら、そこから40日遡って9月下旬~10月はじめごろに夏剪定するのでちょうどでしょう。

 

寒冷地では、関東以西の基準となる地域よりも夏剪定を早めます。日中の気温が20度ていどになるのが10月初旬なら、そこから40日遡ってお盆過ぎ~8月下旬に夏剪定でいいと思います。

 

これを基準として、残暑の夏は夏剪定を遅らせて、冷夏は夏剪定を前倒しにして調整します。

 

お住まいの地域の気候とその年の気温から、秋バラを状態良く咲かせるのにちょうどいい夏剪定のタイミングを見極めてくださいね!

 

夏剪定は早すぎても遅すぎてもダメ!

▲秋花を状態よく咲かせるために行う「夏剪定」

こまで夏剪定のタイミングの考え方について説明してきました。──が、なんだか面倒くさいなぁと思った方もいるかも知れません。

 

では、夏剪定を早くしすぎたらどうなるか、逆に遅くしすぎたらどうなるか、を紹介します。なぜこんなに夏剪定のタイミングにこだわるのかが、理解できると思います。

 

夏剪定を早くしたらどうなる?

▲ちょっと伸びてすぐ蕾をつける

期より早く──たとえば関東でお盆ごろに夏剪定したらどうなるでしょう? まだまだ暑い時期に夏剪定しても、枝先の芽がちょっと伸びて8月のうちに小さな蕾をつけることになります。

 

この小さな蕾が咲いても、それは貧弱な夏の花。これでは「10月中旬の良い花が咲きやすい時期に秋花を咲かせる」という夏剪定の目的が上手く達成できません。

 

夏剪定を遅くしたらどうなる?

▲寒さで咲ききれなかった蕾 写真提供/天女の舞子

に適期より遅く──たとえば関東で10月に入ってから夏剪定したらどうなるでしょう? 10月はじめから40日たつと11月中旬ごろに秋花が咲くことになります。

 

秋が暖かい年なら、または咲きやすい品種なら、これでも咲くかも知れません。でも上の写真のように、寒さで開くことができず蕾のまま終わってしまうことも多いでしょう。これでは夏剪定する意味がありません。

 

だから夏剪定は早すぎても遅すぎてもダメ。つまり、タイミングがとても重要なのです!

 

まとめ

今回は、夏剪定をする時期・タイミングに的を絞って紹介しました。年々、暑さ厳しくなっていく日本列島。「夏剪定は8月下旬~9月初旬にしましょう」と言われた昭和時代のセオリーが成り立たなくなってきています。

 

なので、残暑が長引く年はどうするか、逆に冷夏の年はどうするか。気候に応じて応用できるよう、基本的な考え方を紹介しました。

 

「災害級の暑さ」と言われた今年2023年の夏は、これからの残暑も長く残りそうですね。こういうときは、暑さが和らいでから夏剪定するといい結果に繋がりやすい。通常9月10日に夏剪定していたなら、今年は9月15~20日ごろをメドにすると良さそうです。

 

それぞれのお住まいの地域に応じて、夏剪定時期を決めてください。

 

昭和の時代には夏の終わりにやる手入れということで「夏剪定」と呼んできたこの作業、近年の暑さが長引く気候では秋になってから行うことが多いので「秋剪定」と呼び変えることが増えています。従来通り「夏剪定」と呼んでもいいし、近年の事情に合わせて「秋剪定」と呼んでも構いません。手入れのしかたは同じです。

 

ちなみに半日陰の我が家では夏剪定~開花まで40日以上かかるので、例年9月1~7日に夏剪定していましたが、今年は少し遅らせて9月10日ごろにやる予定です。夏剪定の準備として、あらかじめ施肥しておいたほうが芽吹きがいいので、9月2日に化成肥料を施肥しました。

 

夏剪定の実際のやり方や、夏剪定に適したバラ・適さないバラといった初心者目線の記事も、必要に応じてご覧ください。

 

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▼この記事は「季節ごとのバラの手入れ」の秋の項目に分類されています

 

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