バラの葉が黄変して落ちる、枯れる。夏に起きやすいバラの葉のトラブルと対処法を15の実例から紹介します。バラの葉がどんな状態なのか、症状から調べられるので、どうぞ参考にして!
バラは基本的に暑さが苦手!
▲暑い夏。多くのバラは調子を崩しがち
年々厳しさを増す日本の夏。暑い日本の夏は人間はもちろん、バラにとっても厳しい季節です。
もともと多くのバラの原産地は冷涼な気候のヨーロッパです。日本で品種改良されたバラのなかには暑さに強いバラも登場していますが、それでもバラは基本的に暑さが苦手で、夏に調子を崩しやすいもの。
葉が黄色くなって落ちた、枯れたなんてトラブルはよく起こります。なぜ葉が黄変したのか、どう対処すればいいのか? 原因が分からなければ対処のしかたも分かりません。が、トラブルの原因を特定できるかどうかは、経験値がモノを言うジャンルです。逆に言うと、初心者には原因が分からず困ってしまうことが多いものです。
今回は、夏に起こりやすい葉の黄変や枯れについて。考えられる原因やその対処法まで、15の豊富な実例(タイプ)から詳しく紹介します。病気名や害虫名から調べるのではなく、葉の症状から調べることができるよう、初心者に使いやすく編集しています。
さらに、なかにはすぐに対処しなければ危険な症状もあるので、危険度を5段階で表示しました。バラの葉の異変の原因を探るのに役立ててください!
*食害のある、明らかな虫の被害については省略しています。
タイプ1、下の方の古い葉が数枚、黄色くなっている|新陳代謝による生理現象なので問題なし!
▲株全体の1/4ていどまでの量なら問題なし!
まず最初のケースは「全体的に緑色の葉がたくさんあって調子は悪くなさそうなのに、株の下の方の葉がいくつか黄色くなっている」という場合。
黄変している葉の量が上の写真ていどなら、それは生理現象で問題ありません。
春の初めに出た古い葉は老化している上に、たくさん茂っている元気な葉の下になり光合成効率が悪くなってしまっています。こういう古い葉を養うのをやめ、新しい葉を出す方に養分を回すために、バラ自身が判断してやっていることなので、この黄変はまったく問題ありません。
ちなみに、黄変した葉の奥に枯れ枝が見えますが、これも問題なしです。株全体がしっかり元気で、緑色の葉がたくさんあるなら、新陳代謝で古い枝が枯れただけです。カットすればOK。
危険度は5段階で0。スルーして大丈夫。
生理的な黄変の対処法
▲生理的な黄変は放置でOK
生理的に黄変した葉は、気になるなら取り除いてもいいし、そのまま放置でも構いません。放置しておけば、いずれ枯れて落葉します。
枯れ枝があったら、枯れている部分を切り取っておきましょう。
タイプ2、黒い斑点がある黄変|黒星病(黒点病)なので、適切な薬剤散布を
▲黒星病の斑点の特徴は、にじんだような黒い点
次は病気による黄変です。「葉ににじんだような黒い斑点ができ、やがて黄色くなって落葉する」。これは典型的な黒星病(黒点病)の症状です。
黒星病は雨の当たる場所で育てていると起こる病気なので、夏になる以前の梅雨時期から発生しているはずです。黒星病を放置すると短期間に株全体に広がり、すべての葉が落ちてしまうこともあるので、発生初期に適切な対処を心掛けたいものです。
危険度は5段階で3~4。短期間に広がる厄介な病気ですが、たとえ葉がすべてなくなっても適切な管理で回復させられるので、落ち着いて対処を!
黒星病の対処法
▲初期なら、病葉を取り除いて薬剤散布を
まだ初期段階なら、罹患している葉とその周りの葉を取り除き、サプロール乳剤やラリー乳剤を3日間隔で3~4回、立て続けに薬剤散布を行います。
その後、再発がなければ通常管理にもどします。
黒星病が株全体に蔓延してしまったときの対処法は、黒星病について詳しく説明しているページを参照してください。
▼黒星病の発症メカニズムや対処法について詳しくはこちらをどうぞ
タイプ3、全体になんとなく生育が悪くて黄変した葉も目立つ。株元にコブができる|根頭癌腫病なので、隔離栽培または廃棄処分を!
▲株元にコブができていれば、根頭癌腫病確定!
根頭癌腫病の細菌は夏になると活動が活発化するため、株元や根に大きなコブをつくってバラの養分を奪い始めます。このため根頭癌腫病の罹患株は、夏になってなんとなく全体に生育が悪いとか、新芽が出なくなったとか、葉色が悪くなった、黄色い葉が目立ってきたという症状が現れます。
写真のように株元にコブができていればすぐに根頭癌腫病だと分かりますが、土中の根にコブができると原因が分からず対処に困ってしまうのが、この病気の厄介なところです。
危険度は5段階でMAXの5! バラが根頭癌腫病に罹患してもすぐに枯れるわけではありませんが、感染力が強く、近くの健康なバラに感染させてしまうとても怖い病気です。
根頭癌腫病の対処法
▲罹患株と土は廃棄処分。鉢や株を切ったハサミなどの道具は消毒
オススメは株の廃棄処分ですが、治療を試みるなら感染が広がらないよう、ほかのバラと離して隔離栽培してください。
販売店により期間はそれぞれですが、購入から半年~1年以内なら苗の交換に応じてもらえます。
▼根頭癌腫病についてくわしくは、こちらをご覧ください
タイプ4、白い細かい点々が無数に出てからの黄変|ハダニ被害なので、薬剤や水でダニ退治を!
▲最初は白い無数の点々から始まり、やがて黄変して落ちる
葉に細かい白い点々がたくさんついているのは、ハダニ被害です。葉裏に小さなハダニがびっしりついて葉を吸汁しています。
ハダニに吸汁され白くなったところの葉には葉緑素がありません。ハダニ被害が進むと葉は光合成できなくなり、やがて黄変して落葉します。さらにこの頃にはクモの糸が張るようになってきます。じつはハダニは昆虫ではなくクモの仲間なので、糸を引くのです。
ハダニは乾いた高温の環境で爆発的に繁殖します。雨の当たらないベランダなどで栽培している場合は、特にハダニは要注意。夏の間は毎日、葉裏に水をかけるなどしっかり予防につとめましょう。
危険度は5段階で4。雨の当たる環境ではそう問題になりませんが、ベランダでは大問題になります。放置すれば簡単に丸坊主になってしまいますが、適切な管理で回復させることも可能です。
ハダニの対処法
▲ハダニへの薬剤散布は、基本的に1回きり!2回目は別の薬剤を
ハダニは水が苦手なので、水や薬剤を使って退治します。
薬剤を使う際に重要な注意点があります。じつはハダニは、薬剤抵抗をもちやすい害虫です。そのため薬剤によっては、ハダニに対して年間1度しか使えないものも多くあります。
なので基本は、水や窒息させて駆除する系の資材を使って予防につとめます。それでもハダニが出てしまったら、しかたないので薬剤を使うという予防メインで対処しましょう。
「ベニカXネクストスプレー」などのハンディスプレーでもハダニを退治できますが、ハダニに対しては年間1回しか使えません。くわしくはハダニのページをご覧ください。
▼ハダニについて詳しくは、こちらをご覧ください
タイプ5、新芽が出なくて、葉が広範囲に黄変して落ちる|コガネムシの幼虫被害が疑われる。薬剤で幼虫退治を!
▲夏になりバラが急激に調子を崩したら、コガネムシの幼虫被害かも!?
春の2番花の切り戻し以降、新芽が出なくて、株が動きを止めてしまったように感じるとき。葉が黄変して、ときに写真のように、主幹が枯れてくることも。
これは明らかに根に問題がある症状です。
バラの株元をもって左右に揺らしてみて、簡単に揺れるようならコガネムシの幼虫被害です。鉢の中にコガネムシの幼虫がいて、根を食い荒らしています。
ほかに、鉢土が妙にフカフカする、鉢土が減ったように感じる、土がいつまでも乾かないといった症状もコガネムシの幼虫被害のサインです。
危険度は5段階でMAXの5! 放置すれば確実にバラが枯れます。気づいたら早急に対策を!
コガネムシの幼虫被害の対処法
▲土に撒くタイプの駆除薬剤を使おう
コガネムシの幼虫被害が疑われるときは、駆除効果のある薬剤を土に撒いて幼虫を退治します。
「ベニカXガード」「オルトランDX」「ベニカ水和剤」などが、コガネムシの幼虫に効果があります。
コガネムシの幼虫被害は、バラを枯らしてしまう深刻な事態になりやすいので、被害に遭う前の予防が大事です。コガネムシの産卵がある7月初旬~9月初旬までに1~2回薬剤散布して幼虫を駆除するか、そもそも産卵されないように鉢土を何かでしっかりカバーしておくと予防になります。
鉢土をカバーする専用アイテムもありますが、麻布、金網、防虫ネットなど、ロザリアンのみなさん、さまざまなものを工夫して使ってます。わたしはセダム(モリムラマンネングサ)をよく使っています。
▼コガネムシの幼虫対策について詳しくはこちらをご覧ください
タイプ6、太い主幹が急激に株元から枯れてきた|カミキリムシの幼虫被害の疑いあり!
▲株元にオガクズを見つけたら、確実にカミキリムシの幼虫!
カミキリムシの幼虫は、一撃でバラに致命傷を与えるこわい害虫です。カミキリムシはバラの幹の中に産卵するので、人はなかなか気づくことはできません。バラが一気に枯れてきて、ようやく気付くことがほとんどですが、こうなるともう既に手遅れです。
もしバラの株元にオガクズのようなものがあったら、丹念に幹を確認してください。カミキリムシが産卵した穴が見つけられるでしょう。この段階で幼虫退治できるなら、まだ間に合うかもしれません。
危険度は5段階でMAXの5! バラがなんとなく元気がないとか、黄色い葉が増えてきたという段階で気づくことができたら、まだ助けられる可能性があります。
対処方法
▲乾いたら透明フィルムになるカミキリムシ予防商品
カミキリムシは被害が出てから慌てて対策してもバラを助けられないことが多いので、重要なのは予防です。
カミキリムシの産卵期間の6~10月の間、カミキリムシが産卵できないよう株元に何かを巻いたり塗ったりして、物理的にカミキリムシに産卵させないようにします。
▼カミキリムシ対策について詳しくは、こちらをご覧ください
タイプ7、主幹1本だけが元気で、それ以外の主幹が枯れていく|日照不足なので、栽培場所の移動を!
▲日照不足のバラは、主幹1本だけに養分を集中させる 写真提供/天女の舞子
日当りの悪い場所でバラを育てている場合、バラはもっとも状態の良い主幹1本を選んで、その主幹だけに養分を集中させるようになります。逆に言うと、光合成で得られる養分が少ないので、その主幹だけしか育てられないとバラ自身が判断しているのです。
見捨てられたそれ以外の主幹は、葉が黄変し、やがて主幹ごと枯れてしまいます。
危険度は5段階で4。日照不足の程度にもよりますが、上の写真のような感じだとかなり深刻。その場所でバラは育ちません。
日照不足の対処法
▲環境ストレスを軽減する資材
環境ストレスを軽減するバイオスティミュラント資材やアミノ酸資材など、日照不足を補う効果がある活力剤を利用すれば、少しの日照不足なら対策できます。
でももっとも効果的な対処法は、日当たりの良い場所に鉢ごと移動することです。
▼日照不足を補う活力剤について詳しくは、こちをご覧ください
タイプ8、葉が波打つ、黄変または茶色になる|高温障害なので、栽培場所を移動する
▲モザイク状に葉色が抜けるのが高温障害の特徴
焦げるような日差しの夏に起きやすい高温障害には、じつはさまざまな症状があります。葉が縮れたり、写真のように葉がモザイク状に色が抜けたり。
▲直射日光で葉が焦げたようになる葉焼け
さらに葉に黒星病とは違うタイプの黒いシミができたり、次に紹介するクロロシスとよく似た感じに葉色が抜けたり、上の写真のように分かりやすく茶色く焦げたようになるケースもあります。
危険度は5段階で2。葉の異変だけならさほど心配いりません。見た目は悪いけれど、いずれ涼しくなれば健康な葉が出てきます。しかし鉢栽培の場合、高温による根傷みも併発している可能性が高いので要注意。根傷みを併発しているなら危険度は4~5に上がります。
高温障害の対処法
▲夏の間は半日陰に移動するのが確実な解決策
高温障害の簡単な対処法は、鉢ごと半日陰に場所移動することです。既に高温障害が出てしまった葉は元に戻りませんが、これから出てくる葉は正常になります。
場所移動ができないなら、遮光ネットやタープを使って夏の直射を遮りましょう。特に西日が高温障害を起こしやすいので、西日が当たる場所のバラには対策が必要です。
鉢植えは対策が必要ですが、地植えなら放置でも構いません。葉の異常は見た目が悪いけれど、いずれ涼しくなれば、新しくキレイな葉が出てきます。
鉢植えの場合は根傷みも併発しやすいので、根傷みの項目も確認してください。
▼高温障害について詳しくは、こちらをご覧ください
タイプ9、葉脈だけ緑色で、他は黄色っぽくなる|微量要素不足のことが多いので、まず活力剤で補給!
▲典型的なクロロシスの症状 写真提供/ORCA
葉脈だけ濃い緑色で、それ以外は黄色っぽくなっている葉がある場合、それは「クロロシス」と呼ばれる症状です。葉脈も含めた葉全体がライムグリーンになっているケースもあります。
クロロシスは鉄やマンガンなどの微量要素が不足して起きることが多いです。単純な肥料不足のこともあったり、高温障害でも似た症状になることがあります。また、何年も土替えしていないバラに起きることもあるので原因が特定しにくい症状です。
危険度は5段階で2~3。全体にクロロシスが広がっているなら光合成不足から株が弱ってしまう恐れがあるので対策しましょう。クロロシスの葉が部分的に少しあるていどなら、スルーしても構いません。
クロロシスの対処方法
▲微量要素を補う活力剤を利用する
微量要素と肥料不足を補うため、活力剤や液体肥料を株元に、または葉面散布して様子を見ましょう。クロロシスの症状がある葉は治りませんが、新しく出てくる葉が正常な緑色になります。
それでも改善しないなら、ほかの原因を探します。
タイプ10、株元の葉が一斉に黄変して枯れてきた①|置き肥の肥料焼けが疑われる。肥料抜きを!
▲高温期の置き肥は肥料焼けしやすい 写真提供/天女の舞子
置き肥をした直後に株元から枯れ上がってきたら、それは肥料焼けです。肥料焼けとは、濃度の高い肥料が根にダメージを与えることで、株全体が弱ってしまうことです。場合によってはバラが枯れてしまいかねない、深刻なダメージになることもあります。
夏の肥料やりには注意が必要です。とくに土に置くタイプの肥料(置き肥)を使うと、肥料焼けを起こしやすくなります。
夏は土が乾燥しているので肥料濃度が高くなりがちです。そのため春と同じ量の置き肥でも、肥料焼けしやすい状態です。とくに土に置くタイプの有機質肥料は気温が高いとたくさん溶け出す性質があるので、夏に使うのはオススメできません。
危険度は5段階の4~5。放置すれば枯れる原因になります。
置き肥の肥料焼けの対処法
▲夏は液体肥料がオススメ
まず土から肥料を取り除きましょう。固形肥料を使っているなら土に残っているはずなので、それを取り除きます。粉末肥料を使っているなら、バラの株元の表土を薄く取り除き、新しい土を足しておきます。
さらに大量の水を与え、土に残った肥料成分を洗い流します。
こういう失敗を防ぐため、夏は液体肥料を使うのがオススメです。
▼夏の肥料やりについて詳しくは、こちらをご覧ください
タイプ11、株元の葉が一斉に黄変して枯れてきた②|数日前の水切れが疑われる。半日陰に移動し養生する!
▲夏の水切れは枯れる原因にも!
水やりが追いつかずひどい水切れをさせてしまった──こういうことがあった数日後、株元の葉が一斉に黄色くなってしまうことがあります。
もちろん枝先が少しお辞儀するていどの軽い水切れならこうはなりませんが、根が完全に乾いてしまったら──これはアウトです。根が傷んでしまっているので株に大ダメージになり、場合によっては枯れてしまいます。
初心者がバラを枯らしてしまう原因の第1位が、夏の水切れと言われています。
危険度は5段階で3。株元の葉が黄色くなった分量にもよりますが、半分ていどならまだまだ大丈夫!しかし根が傷んでしまっているなら危険度は5に跳ね上がります。
ひどい水切れの対処法
▲鉢の半分の高さまでバケツ水に浸ける「腰水」
水切れしたら一刻も早く水やりします。あまりにひどい水切れだと、普通の水やりでは対応できない場合もあります。そんなときには「腰水」(こしみず)を試してみましょう。
バケツに水を張り、鉢の半分くらいまで水につけたまま1晩置くのです。翌日、シャンとしていれば一安心。これ以降は土を乾かさないよう、半日陰で管理してください。肥料やりはNGです。
1晩置いても枝がぐったりしたままなら、根が傷んでいるのでかなり深刻。1~2日、腰水のまま半日陰で様子をみて、改善しないなら、その株はもう枯れています。
タイプ12、株元の葉が一斉に黄変して枯れてきた③|根傷みからの根腐れが疑われる。鉢のサイズダウンを検討!
▲プラ鉢は暑さで根傷みしやすい 写真提供/天女の舞子
プラスチック鉢を使っていると、夏の暑さで根を傷めてしまうことがよくあります。傷んだ根はやがて根腐れします。その影響で下葉から一斉に黄変が始まり枯れます。
プラスチック鉢で日向でバラを育てているなら、夏は根傷みさせなよう二重鉢にする、マルチングするなどの暑さ予防が重要です。とくに西日は厳しいので、西日の当たる環境でバラを育てているなら、できれば遮光したり場所移動することをオススメ。
株に対して大きすぎる鉢で育てていたり、水やりが多すぎたり、質の悪い土を使っていたり・・・根傷みからの根腐れはさまざまな原因で起こります。バラの生育期(4月~11月)に、根鉢を崩した植え替えをしたときにも同じような症状になります。これも根傷みが原因です。
危険度は5段階で4。対策を怠れば枯れたり、枯れないまでもかなり弱ってしまうはずです。
根腐れの対処法
▲状態が悪いなら鉢のサイズダウンを
根腐れが疑われる株を鉢から抜いてみて、白根が少なく黒い根ばかりになっていたら、さらにドブ臭い臭いがするなら、それは完全に根腐れです。状態が悪いなら鉢のサイズダウンを検討しましょう。
根鉢を崩さないよう(根鉢があればですが・・・)注意しながら傷んだ黒い根を取り除き、一回り小さい鉢に植え替えます。鉢の側面から呼吸ができる素焼き鉢を使うのも良い選択です。また、根腐れ防止剤を入れるのも効果的です。
サイズダウンすることで鉢土が乾きやすくなり、根も張りやすくなります。これ以降は日向は避け、半日陰で管理を。しっかり立ち直るまで、肥料はNGです。
タイプ13、葉が外側から枯れる|塩害・液肥散布の肥料焼けまたは根傷みが疑われる。原因を特定して対処を!
▲葉先や葉の外側から枯れこむ症状
葉の先端、または葉の外側が枯れる症状は、比較的よく起こります。これは葉の水分が急激に奪われた、または水分の吸い上げが上手く行っていない場合に起きる症状です。
上の写真の赤〇部分を見てください。この葉は付け根が半分切れかかっていて、そのため葉先まで水分が行き届かないために葉の外側から枯れこんでいるのです。これは水分の吸い上げが上手く行っていないケース。
ほかに、エアコン室外機の熱風が当たるところでも、同じように葉の外側が茶色く枯れています。これは、葉の水分が急激に奪われたために起きているケースです。風でフェンスなどにこすれたところが、物理的に傷んで茶色く枯れているケースもあります。
原因が分かれば、その原因を取り除けばいいのですが、よく分からないケースもあります。症状が株全体の1/4ていどまでなら、経過観察して大丈夫です。株全体に広がっているなら、とにかく原因を特定しましょう。
危険度は5段階で2~3。そんなに多く発生していなければ経過観察でOK。全体に広がっているなら、対策が必要です。
原因を特定する
▲塩害で葉の周りから枯れてきた
水分が急激に奪われたために起きる原因のひとつは、直射日光です。古い葉が直射日光にさらされたことで、周りから枯れることがあります。
海の近くにお住まいなら、塩害も考えられます。台風などで海風が強く吹いた後には、葉に塩分が残ります。これが葉から水分を奪って枯れさせます。真水でよく洗い流しましょう。
葉面散布の液肥濃度が濃すぎる(肥料焼け)ときにも、同じように葉の周りが枯れこみます。これも真水でよく洗い流しましょう。
根傷みで、十分な水分を補給できなくなったときにも同様の症状になります。二重鉢など、根傷みしないような対策を取っているか点検してください。
タイプ14、広範囲の日焼け、広範囲に黒い斑点|薬害が疑われる。夏の薬剤散布は早朝に!
▲ニームオイルの葉焼け
バラの薬剤には、夏に薬害を起こすものがあります。上の写真はニームオイルの薬害です。ニームオイルはオイル成分のため、多くの植物で夏に薬害を起こします。
しかしバジルは薬害を起こさないので、隣のバジルにかけるついでにバラにもかかってしまい、強い日差しで葉が焼けてしまった──というのが上の写真です。夏に、バラにニームオイルを使ってはいけません。
▲黒星病の症状は黒点の周りがにじんでいる
たとえば「ダコニール」や「サプロール」など、農薬の中には夏に薬害を起こしやすいものが多くあります。薬害の症状もさまざまで、全体に黒っぽくなったり、黒星病と見分けがつかないような薬害もあります。
上の写真は黒星病です。黒点の周りがにじんだようになっているのが黒星病の特徴で、薬害の場合はにじみがありません。右半分のベッタリ黒っぽくなっている様子は、薬害そっくりで区別がつきません。
農薬散布した後に急に症状が出たなら、薬害が疑われます。高温期に薬害が出る農薬ではないか? 使用濃度は適切か、さらに散布時間は適切かを確認してください。
薬害の対処法
▲夏の薬剤散布は早朝に!
たとえ適切な濃度で散布していても、夏は葉の上で水分が蒸発して濃度が濃くなり、薬害が出やすくなります。
夏に薬害を出しやすい農薬を使わないとともに、直射日光がまだあまり熱くない早朝に薬剤散布するよう努めましょう。
タイプ15、新芽が出なくて、全体に葉色が良くない。水やりの水が抜けにくく、鉢底から根が出ている|根詰まりなので、鉢増しをオススメ!
▲冬の植え替えを怠ると、鉢の中は大渋滞! 写真提供/天女の舞子
冬に植え替えしていない鉢なら、根詰まりは簡単に起きます。
鉢の中が根でパンパンになってしまうと、バラは生長することができず新芽を出すなどの動きを止めてしまいます。さらに葉が黄変して落ち、全体に元気がなくなります。
プラスして水やりの水がなかなか抜けない症状があれば、鉢底をチェック。鉢底から根がはみ出ていたら、鉢土に棒を挿してみましょう。棒がぜんぜん刺さらなかったら、それは明らかに根詰まりです。
危険度は5段階の3。すぐに枯れこむことはありませんが全体に弱っているので、病虫害や根傷みなど、他の要因がプラスされれば、確実に枯れやすくなります。対策しましょう。
根詰まりの対処法
▲エアレーションで応急処置
鉢の中が根でパンパンになっているということは、土がほとんどなくなっている状況です。根が邪魔をして水が抜けないし、そのくせ水保ちも肥料保ちも良くありません。
とりあえずの応急処置として、鉢土に支柱などの長い棒を挿して、数か所穴を開けます。これをエアレーションといいますが、エアレーションにより水や空気の通り道ができ、一時的に状況は改善されます。
しかしあくまでエアレーションは応急処置で、一回り大きな鉢に鉢増しするのが最も良い解決法です。生長期の植え替えなので、根鉢を崩さず、そっと鉢増ししてください。
まとめ
夏に葉色が悪くなる、枯れてくる原因を15の実例から紹介しました。数が多くてまとめるのが大変でした!
最初にも書きましたが、バラにとって日本の夏はとても過ごしにくい環境です。旺盛に生長するというよりは、生長を止め、じっと耐えてやり過ごす「仮休眠」の状態になることもあるくらい。
だから葉が黄変したり少し枯れたりするのは当たり前。少しくらい調子を崩すのもよくあることです。
でも、バラはそう軟弱な植物ではありません。夏の間に少しくらい調子を崩しても、涼しくなれば何事もなかったかのように芽吹いてくるのがバラです。だからそう神経質にならなくても大丈夫。
とはいえ、コガネムシの幼虫やカミキリムシの幼虫など、すぐに対策しなければ確実にバラを枯らしてしまう危険な状態のこともあります。要は、不調の原因をつきとめることが重要なのです。
どうぞ今回の記事を、皆さまのバラの不調の原因を探るガイドとして役立ててください!
▼季節ごとのバラの手入れ一覧は、こちらからどうぞ
こんばんは
うちのバラは今年ではなく去年でしたが夏の水切れで葉が一撃でやられましたね。
夏にしおれさせるとその時点で葉をある程度失う事は覚悟して置いた方が良いかもしれないです。
あと、バラではなく枝豆ですが、軽いクロロシスの症状かと思われる症状が出ましたので、苦土石灰を軽く蒔いたら症状が改善しました。バラで改善できるかは解りませんが参考までに……。
尤も苦土石灰は肥料の様に根元に蒔いて使用する物ではないので、やる時は本当に少しからやる事をおすすめします。
成瀬川ゆうきさん、コメントをありがとうございます。
日当りの良い場所でバラを育てているなら、夏の水切れで葉がなくなってしまうことは多いでしょうね。
午前と午後、毎日2回の水やりが必須という方も多くて大変そうです。
我が家は半日陰なので、例年2~3日に1回で大丈夫なんですが、
今年はストレスブロック使用で葉が多いためと、酷暑の影響で1.5日しかもたないので、水やり頻度が多いです。
でも夏剪定まであと10日ちょいですから、がんばりましょうー^^
クロロシスは多くは微量要素の不足から起きるので、
カルシウムやマグネシウムを補給する苦土石灰で症状が改善されたのは納得です。
ただ、苦土石灰はアルカリ性なので、多く与えすぎると土が肥料分を吸い上げにくい土質になってしまいます。
成瀬川さんが書いてくださったように、やるなら少しづつ試されるといいですね。
あと、苦土石灰は緩効性で効果が出るまで10日ていどかかるので、そこも注意点です。
市販の活力剤は害になる成分をほぼ含まず速効性なので、しっかり観察する自信のない初心者さんには
市販の活力剤の方がオススメです^^
あいびー