真夏のバラに肥料を与えるか与えないか?じつは先生によって意見の分かれるところです。それはどうしてか?実際どうすればいいのか?初心者にも分かりやすく紹介しています。上手な夏越しに役立てて!


そもそも夏に肥料は必要?それとも不要?

▲夏に肥料が必要説と不要説があるけれど・・・

のバラの手入れを調べていて、肥料やりをどうすればいいのか困った経験のある方は多いと思います。人により、説明が真逆のことがあるからです。「夏は肥料を与えない方がいい」という専門家もいれば「夏も肥料を切らしてはいけない」という専門家もいます。

 

それじゃ実際どうすればいいのか? 一般の愛好家には判断がつかず、困ってしまいますよね。

 

当然ですが、それぞれの発言には根拠があります。根拠となる前提や目指すところが違うから、発言が食い違ってくるわけです。それぞれの根拠を理解すれば、どちらも正しいと分かるはずです。

 

今回は、夏の肥料やりについて、詳しく紹介します。

 

夏は肥料を与えない方が良い3つの理由

▲夏の肥料やりは避けた方がいいと言われることが多い

ず「バラは夏に肥料を与えない方が良い」説の理由の紹介から始めます。こちらが従来から一般的に言われている育て方で、「夏にも肥料やりを」というのは最近出てきた新しい育て方になります。

 

理由1、耐暑性の弱いバラは夏に生長をストップする

▲多くの夏のバラは、葉も少なく、蕾もほとんど上がらない

本の夏は多くのバラにとり、とても過ごしにくい気候です。バラは歴史的にヨーロッパを中心に品種改良されてきた植物です。ヨーロッパの気候でよく育つ品種が選抜・育種されてきたのです。

 

その品種を日本で育てると、当然ですが育ち方が変わります。暑すぎる日本の夏に、調子を崩してしまうバラが多いのです。

 

上の写真は、我が家で育てているフランス・デルバール社の「アレゴリー」8月の状態です。「バラの家」のデータでは「耐暑性が強い」となっている「アレゴリー」ですが、実際はそう強くないと感じています。

 

半日陰の我が家ではそれなり葉が残っていますが、他の品種に比べると少ないです。また、花ごころの屋上ガーデンにある「アレゴリー」は、夏はほとんど葉が落ちていました。20世紀に作出されたバラやヨーロッパ生まれのバラは、このように夏に葉を落としてしまう品種がほとんどです。

 

あまりの暑さに耐えられず、もう生長することをやめて動きをストップしたような状態になる品種もあります。これを夏の「仮休眠」と表現する専門家もいます。この状態のバラはほぼ休眠しているのだから、肥料を必要としません。逆に肥料をやることで弱ってしまいます。

 

理由2、従来のバラは黒星病で夏に葉を落としてしまう

▲従来のバラは夏に黒星病になるのが当たり前

年では耐病性の強いバラが多く育種されていますが、従来のバラは、夏に黒星病にかかりほとんど葉を落としてしまう品種ばかりでした。

 

葉がなくては光合成ができませんから、光合成ができないバラは、生長することを諦め「仮休眠」状態になって夏越しします。葉のないバラに肥料をやれば、もちろん多肥でよけい調子を崩してしまいます。

 

やがて暑さが和らぎ、バラも再び新芽を伸ばし始めます。そのため夏(秋)剪定の段階で肥料やりを再開するのが一般的な育て方です。それまでの葉のない状態では、バラに肥料を与える必要がありません。

 

理由3、夏は肥料焼けで根を傷めてしまう

▲夏の固形肥料は肥料焼けの原因になりやすい

は気温が高すぎるため「肥料焼け」と呼ばれる状態になりやすい季節です。「肥料焼け」は、写真のように固形の化成肥料を置いた場合や、有機質肥料でも固形のタイプを使った場合に起こります。

 

夏は気温が高いので土が含む水分量が減り、その分、肥料成分が濃くなりすぎることがあります。この濃い肥料成分が根を傷めるのです。根傷みから根腐れを招くこともあり、バラが大きく調子を崩してしまうことも多いので、夏に固形肥料を与えるのはオススメできません。

 

とくに固形の有機質肥料は気温が高いと急激に溶け出す性質があり、夏に肥料焼けを起こす原因になりやすいので、こちらもオススメできません。

 

1、耐暑性の弱いバラは夏に成長をストップする。2、従来のバラは黒星病で夏に葉を落としてしまう。3、夏は肥料焼けで根を傷めてしまう。主にこれら3つの理由から、夏は肥料を与えない方が良いとされます。たとえば日本ばら会のサイトでは、「8月は肥料やりをストップする」と書かれています。

 

夏も肥料やりが必要な4つの理由

▲夏も肥料を与えた方が良いという育て方も・・・

ぎに「夏も肥料やりが必要」説の理由を紹介します。こちらは主にロサ・オリエンティスの育種家・木村卓功(きむら・たくのり)さんが教える育て方になります。

 

理由1、暑さに強いバラ品種が増えている

▲手前のバラはロサ・オリエンティスの「リュシオール」

サ・オリエンティスの育種家・木村卓功さんは、毎年たくさんの新品種を発表しています。育種を始めた最初の頃の木村さんの目標は「日本の気候にあったバラの育種」でした。海外で作出された品種が、日本でまったく違った育ち方をするのをたくさん見てきた結果なのでしょう。

 

とくに日本一暑いまちとして知られる埼玉県熊谷市に隣接する地域に圃場があることから、木村さんは夏の暑さに強い品種を多く育種してきました。

 

上の写真の手前の品種がロサ・オリエンティスの「リュシオール」8月の様子です。葉が茂り、つぎつぎに蕾を上げて、暑さにとても強いのが良くわかります。

 

耐暑性の高い品種は、夏も旺盛に生長します。その成長を支えるための肥料が必要になります。

 

理由2、黒星病に強いバラ品種が増えている

▲夏でもキレイな葉をキープする品種が増えてきた

村卓功さんは耐暑性だけでなく、耐病性の高い品種の育種にも注力しています。とくに日本では梅雨時期に黒星病が蔓延し、夏の間は葉を落として丸坊主で過ごすバラが多かったのですが、黒星病耐性の高い品種が増えたことで、夏も葉を落とさずに生長し続けるバラが増えています。

 

上の写真は近所のバラ花壇です。あまり手入れが行き届かないので、病虫害がひどい株が多いのですが、なかにはこのように、夏でもキレイな葉が茂り花さえ咲かせている品種もあります。

 

▲黒星病で枝だけになってしまったバラ

 

同じ花壇には、黒星病でほとんど葉をなくしている株もたくさんあります。

 

フランスでは一般家庭の庭で農薬の使用が禁止されています。それに伴い、デルバールなどのフランスのナーセリーでも耐病性の高い品種の育種に力を入れています。

 

黒星病耐性が高く夏も葉が茂った状態なら、夏も肥料が必要です。

 

理由3、黒星病の予防には肥料が有効

▲肥料をやることで黒星病予防になる!

れまで黒星病の予防には、殺菌剤の農薬散布しか方法がないとされてきました。が、近年ではさらにプラスして、肥料を切らさないことも有効だと分かってきました。従来の育て方セオリーに従い夏に肥料を与えないことで、よけいに黒星病が蔓延してしまった側面もあったというわけです。

 

黒星病予防のためには、夏も適切な肥料やりが必要です。もちろん、多肥にならないよう気をつけなければいけませんが。

 

理由4、「根を育てる肥料」は、肥料というより活力剤に近い!


根を育てる肥料 1kg プレミアローズセレクション ZIK-10000

サ・オリエンティスの木村卓功さんは、8月に自社製品の「根を育てる肥料」を使うことをオススメしています。これわたしも持っていますが、厳密には「腐植酸苦土肥料」です。いわゆる植物の三大肥料成分チッソ・リン酸・カリは入っていません。

 

腐植酸に、植物の多量要素である苦土(マグネシウム)が3%配合されたもので、肥料というより活力剤のような働きをする資材といえます。

 

決して、通常の固形肥料を与えましょうと教えているわけではありません。

 

1、暑さに強いバラ品種が増えている。2、黒星病に強いバラ品種が増えている。3、黒星病の予防には肥料が有効。4、「根を育てる肥料」は、肥料というより活力剤に近い!というおもに4つの理由から、木村卓功さんは、夏にも肥料を切らさないようオススメしています。

 

それじゃ結局、真夏に肥料をやるべき?やらない方がいい?

▲夏に調子を崩しているバラ

れまでの情報を整理すると、日本ばら会をはじめとする従来の育て方と木村卓功さんの新しい育て方、両者では前提がかなり違っているのが分かります。

 

日本ばら会をはじめとする従来のバラの育て方では、「バラは日本の夏が苦手なので仮休眠のような形で休んで過ごす」という前提で育て方を紹介しています。20世紀に作出されたバラや、現代でも水色系や茶系などの珍しい色味のバラは、夏に調子を崩しやすい傾向が強いです。

 

一方、木村卓功さんは「ロサ・オリエンティスをはじめ近年に発表された耐暑性・耐病性に優れたバラは夏も葉を落とさずしっかり生長する」という前提で育て方を紹介しています。耐病性に優れたバラの育種は世界的な傾向ですから、今後もこういうタイプの新品種が増えてくるでしょう。

 

前提がまったく違うので、肥料のやり方も真逆になってしまったのですね。

 

つまり、それぞれのバラの品種や状態に合わせて、夏に肥料やりをするか・しないかを判断する必要があるということです。

 

上の写真のように、状態の悪い株には肥料はあまり必要ありません。逆に肥料が効きすぎて、さらに調子を崩してしまいかねないので、活力剤を与えるにとどめるか、肥料を与えるにしても肥料焼けしにくい肥料を選んで少量与えるにとどめた方が良さそうです。

 

▲耐暑性・耐病性に優れるバラは、夏も旺盛に生長する

 

夏も病気にならず葉が茂ってよく生長している株なら、良い状態をキープするため適切な量の肥料を与える必要があります。

 

夏の肥料は液体肥料を選ぼう!

▲夏は液体肥料が便利

記で紹介したように、夏は化成肥料・有機質肥料ともに固形肥料を使うと根を傷めてしまう恐れがあります。そのため、夏に使う肥料は液体肥料がオススメです。液体肥料なら、化成肥料でも有機質肥料でも大丈夫。

 

液体肥料が土に留まる期間はとても短くて、通常でも3日ていどです。夏は水やり頻度が増えるのでさらに短くなり、せいぜい1~2日ていどしか土に留まりません。このため液体肥料では肥料焼けが起きません。

 

土に留まる期間が短いことは、通常デメリットになります。固形肥料と同じくらいの効果を得ようと思えば、何度も液体肥料をやる必要があり手間がかかるからです。

 

しかしこのデメリットは、夏はメリットに働きます。液体肥料はすぐに肥料成分が抜けるので、株の様子を見ながら、調子が悪くなってきたら肥料やりを止めるといった細かい対応が可能です。これは調子を崩しやすい夏の肥料やりには、大きなメリットとなります。

 

▲「ハイポネックス微粉」は、土に撒いてもOK

 

どんな液体肥料を使ってもいいのですが、わたしは「ハイポネックス微粉」を使っています。「ハイポネックス微粉」はカリウムに特化した液体肥料なので、日照不足の我が家では重宝しています。

 

「ハイポネックス微粉」は液体肥料なので、水に溶かして使うのが本来の使い方ですが、土に少量を撒いてから水やりする方法で使っても構いません。

 

▼ハイポネックス微粉について詳しくは、こちらのページの「カリウムで徒長を防ぐ!」の項目をご覧ください。

 

まとめ

今回は、夏の肥料やりについて紹介しました。専門家により、「夏は肥料やりしない」「夏も肥料を切らさない」と、真逆の育て方が言われているので、どうすればいいか困ってしまいますね。

 

結論として「夏のバラの状態は、品種や育てている環境などにより、かなり差があります。なので株の状態に合わせた肥料やりが必要!」ということです。

 

夏に調子を崩してしまうバラには、ムリをさせず仮休眠のような状態で過ごしてもらう。夏も好調をキープするバラなら、そのまま秋まで生長を続けてもらうために少しは肥料やりが必要。それぞれの品種や株の状態に合わせて対応していきましょう。

 

肥料焼けを防ぐため、夏は液体肥料を利用するといいです。状態良く夏越しして、秋バラに備えましょう!

 

▼季節ごとのバラの手入れ一覧は、こちらからどうぞ

 

cropped-rose1.png
スポンサーリンク