ほとんどのバラは高温多湿な日本の夏が苦手です。あまりに暑いと高温障害が起きてしまいます。高温障害にはどんな症状があるのか、また高温障害を出さずに夏越しするための対処法を紹介します。


人にもバラにもつらい日本の夏

▲日本の夏は、人にもバラにも辛い!

りじりする暑さの続く日本の夏。人間でも熱中症をおこしてしまう危険があるほど辛いものですが、それは植物も同じです。とくにバラは、冷涼な気候のヨーロッパの原種を元に改良されてきたので、ほとんどのバラは暑さに弱いものです。

 

今回は、暑い夏に現れるバラの葉の異常「高温障害」について紹介していきます。

 

高温障害で現れる5つの葉の異常

1、葉が黄色くなる(黄変)

▲葉が黄色くなって落ちる

ラの高温障害でもっとも良く見られるのが、葉が黄色くなる症状です。

 

高温障害で黄変してしまった葉は、やがて落ちてしまいます。あまりの暑さで、バラがこの葉を維持することができなくなってしまったのです。

 

▲黒星病でも葉が黄色くなって落ちる

 

同じように葉が黄色くなる症状に黒星病がありますが、こちらは黄色いだけでなく黒斑があるので見分けることができます。黒星病の場合は、黒星病対策をしましょう。

 

▼黒星病対策はこちらからどうぞ

 

2、葉の一部が黒くなる(葉焼け)

▲葉の一部が黒くなる葉焼け

の一部が黒くなっているのは葉焼けです。この黒変は、ひどくなるとどんどん濃くなり、やがて葉の真ん中から枯れてきます。

 

3、葉の色が抜けて薄くなる

▲葉の色が薄くなり、葉脈が目立つように

温障害で葉の色が薄くなり、葉脈がはっきり見えるようになってくる場合があります。

 

▲これはクロロシス? 写真提供/ORCA

 

上の写真も同じように葉脈だけがハッキリ見えてそれ以外のところが色抜けしていますが、ここまでひどいとクロロシスかもしれません。クロロシスは、マグネシウムや鉄などのミネラル不足で起こります。

 

肥料過多や根詰まりでも似たような感じになります。

 

▲葉裏に潜むハダニ

 

同じように葉の色が薄くなっていて、葉裏に小さな虫がついていたら、それはハダニです。

 

▼ハダニ対策はこちらをどうぞ

 

4、葉が波打つ・垂れ下がる

▲葉が波打ったうえに垂れ下がっている

温障害で葉が波打ったり垂れ下がることがあります。

 

▲「ルシファー」は夏に葉が丸まる 写真提供/ハナたろう

 

夏に葉が丸まるバラがありますが、これは品種特性で高温障害ではありません。有名なところでは「ルシファー」が、夏に葉が丸くなります。

 

5、葉が枯れる

▲虫食い葉が枯れてきた

温障害で一部の葉が枯れてくることがあります。多くは、もともと虫害であまり光合成ができていない古い葉が見捨てられていくようです。

 

葉が枯れる要因は、水切れ、肥料過多、根づまり、根腐れ、コガネムシの幼虫被害などなど、ほかにもいろいろあります。

 

高温障害は生理現象!

▲夏の直射はバラには強すぎる

れまで紹介したように、高温障害でバラの葉にさまざまな異常が現れますが、これらは病気や害虫被害ではなく、バラが夏の暑さにうまく対応できずに現れている生理現象です。

 

ただし、それが本当に高温障害で現れている異常なのか、ほかに疑われる要因はないかを考えるのは重要です。たとえば黒星病は大丈夫か、ハダニは大丈夫か、肥料の過不足は大丈夫か、水やりの時間や頻度はどうか、農薬散布の時間や薬剤の選び方はどうか・・・それらの要因にしっかり対策していても異常があるなら、それはきっと高温障害です。

 

高温障害は生理現象で、基本的に仕方のないものなんですが、バラが辛そうにしているのは確か。人間でいえば適応障害ってところでしょうか? 少しでもバラが日本の夏を楽に過ごせるよう、工夫していきましょう!

 

高温障害を出さずに、バラを夏越しする工夫6選

1、半日陰に移動する

▲鉢を移動するのが一番簡単な解決法

栽培なら、半日陰に移動するのが手っ取り早い解決策です。

 

とくに西日が良くないので、可能なら夏の間だけ、西日の当たらない半日陰で管理しましょう。

 

2、遮光ネットを利用する


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所移動できないなら、遮光ネットを利用しましょう。これまでは、あまり見栄えのよくないものが多かったのですが、見た目も涼し気なタイプが登場してきています。

 

▲風情あるよしず屋根

 

昔ながらのよしずを利用するのも風情がありますね^^

 

3、夏の水やりはたっぷり2回、早朝または夕方に

▲夏の水やりはたっぷり2回!

の水やりは「たっぷり2回」が基本。最初の1回でしっかり鉢底から水が流れ出たら、それと同じ分量をもう1回与えましょう。最初の1回は、鉢土にたまった熱気を押し出すのが目的。次の1回でフレッシュな水を与えるのです。

 

水やり時間は、早朝または夕方に。鉢を持ち上げてみて軽くよく乾いているようなら、朝夕2回水やりします。昼の暑い時間に水やりすると、鉢の中で水が熱くなり根を傷める原因になりかねません。

 

ホースを使っている方は、ホースにたまった熱湯をバラにかけないよう、水が冷たくなるまでしばらく水を流してから水やりしてください。

 

4、2重鉢で根を守る

▲鉢の側面に当たる日射を遮る工夫

温障害は、葉に異常が現れますが、じつは根にダメージを負っていることも少なくありません。根が高温で枯れてしまうのを防ぐため、鉢を2重にして鉢土が熱くなりすぎるのを防ぎます。

 

鉢と鉢の間には何も入れない、新聞紙を詰める、などの方法がありますが、わたしは乾いた土を入れます。この土には水をかけません。

 

ちなみに、2重鉢の外側の鉢は白やベージュなど、薄い色の方が熱を反射してくれます。

 

5、マルチングで根を守る


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になにかをかぶせることを「マルチング」といいます。マルチングすることで、土の表面から熱くなるのを防ぐことができます。

 

マルチング材料はいろいろなタイプがあります。もっとも一般的なウッドチップやバークチップ、見た目も可愛らしいクルミ殻、コガネムシの産卵防止にもなる白い鉢底石、腐葉土やたい肥を使う方もいます。わたしはセダムのモリムラマンネングサを愛用しています。

 

6、ポットフィートや花台に載せる


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を少し浮かした状態にする小さなアイテムをポットフィートといいます。鉢の下に隙間をつくり、風通しを良くすると同時に熱を逃がします。

 

▲レンガを組んだ花台 写真提供/ORCA

 

花台に載せれば黒星病対策にもなり、一石二鳥です。

 

高温障害が進むとバラは生長を止める

▲黄変した葉は元にもどらない

温障害が出るような環境にバラを置き続けていると、やがてバラは生長を止めます。生長を止め、休眠のような状態になって暑い夏をやり過ごそうと防衛体制に入るのです。

 

こうなると秋バラの開花や、翌年の春バラにも悪影響が残ってしまいます。秋以降の生長や開花を順調にするためには、夏の間もゆっくり生長していける状態を保つことが大切なのです。

 

高温障害で黄変してしまった葉やちぢれた葉は、半日陰に移したからといって元通りにはなりません。でもそれ以上高温障害が広がらないよう、対策していきましょう!

 

真夏は肥料をストップする!

▲化成肥料も有機肥料も液体肥料も、どんな肥料も夏はストップ!

こまで書いてきたように、バラにとって真夏はとても辛い時期で、場合によっては休眠に近い形で命からがらやり過ごすだけで精一杯な季節です。その辛さが葉の異変に現れているのです。

 

とくに初心者に多いのですが、なにか異変があると「肥料で元気になってもらおう!」と考えてしまいがち。でも、これは逆効果です。健康なバラでも夏は肥料をストップします。ましてや葉に異変が出て弱っているバラに肥料なんて、余計に弱らせてしまう結果につながります。

 

その理由を「胃もたれしている人に無理にステーキを食べさせるようなもの!」と、よく説明されます。たしかにこれは辛いですね。

 

夏の高温障害は、いわば夏バテです。涼しいところでゆっくり回復するのを待てばいいのです。どうしても何かあげたいのなら、活力剤を利用するにとどめておきましょう。

 

バラの水やりついでに打ち水を! SDGsな方法として、打ち水が見直されています

▲打ち水は、手軽に気温を下げる方法

ち水は、水が蒸発するときの気化熱の働きを利用して周囲の温度を下げる方法で、エアコンのない時代から長く行われてきた日本の伝統的な暑さ対策です。

 

バラへの夏の水やりは早朝または夕方の涼しい時間帯がおすすめですが、じつはこのタイミングは打ち水にもぴったり。昼の暑い時間に打ち水してもすぐに水が蒸発して効果が薄いだけでなく、湿度も上げてしまい、より過ごしにくい環境にしてしまいます。

 

打ち水はバラの高温障害と直接関係ありませんが、近年、手軽で環境にも優しいSDGsな取り組みとして見直されています。(ヒートアイランド現象で夜いつまでも暑い熱帯夜をやわらげるのはバラにとってもいいことなので、多少は高温障害を出さない工夫にもなりますかね^^)

 

バラの水やりついでに打ち水をすれば、朝の打ち水なら午前中を涼しく過ごせるし、夕方の打ち水なら夜が過ごしやすくなります。バラだけでなく、人にも節電にも優しい打ち水、上手に取り入れてください。

 

マンションのベランダにもオススメです!

 

まとめ

今回は、夏のバラに現れる高温障害の症状とその対処方法について紹介しました。

 

高温障害で一旦出てしまった葉の黄変やちぢれは元に戻りませんが、それ以上ひどくさせないためにもゼヒ対策してください。

 

じつは我が家の北東向きのベランダでは、これまで高温障害が出たことはありません。午前中のみしか直射日光が差さないので、これまで夏の高温障害とは無縁だったんです。なにしろ真夏でも2~3日に1度の水やり頻度で済むくらいですから。

 

でもこの夏、ベイサルシュートを早く出したくて欲張って新苗の「アレゴリー」を日当たりの良い南西向きの室外機置場に移したところ、なんと1週間で高温障害が出てしまいました。おかげで、この記事をつくることができたわけですが・・・少々ムリをさせました。

 

でも「アレゴリー」は1週間でベイサルシュートの芽を出してくれたので、結果オーライ。また北東向きのベランダに移動しました。残りの夏は、涼しい環境でゆっくり過ごしてもらおうと思っています

 

▼季節ごとのバラの手入れ一覧は、こちらからどうぞ

 

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