バラを一撃で枯らしてしまうバラの天敵・カミキリムシの生態と、産卵予防のしかたを紹介します。産卵されてから慌てるより、予防がなにより重要ですよ!


カミキリムシはバラを枯らす怖い害虫

▲年数の経ったバラの大株ほどカミキリムシに注意!

ラにはさまざまな害虫が寄ってきますが、なかでも高確率でバラを枯らす怖い2大害虫がいます。それはコガネムシの幼虫とカミキリムシの幼虫(通称”テッポウムシ”)です。

 

指名手配犯1、コガネムシ

▲「コガネムシ」は、すべてのバラで要注意!

ガネムシはバラの株元の土の中に産卵します。その後、卵から孵化した幼虫はバラの根を食べ始めます。

 

とうぜん、バラは弱りますが、なにしろ土の中なのでなかなか異変に気付くことができません。気づいたときにはもう手遅れ──ということが起きやすいのがコガネムシの幼虫です。怖いですね。

 

▼コガネムシの幼虫対策はこちらをどうぞ

 

指名手配犯2、カミキリムシ

▲バラの大敵「ゴマダラカミキリ」 写真提供/天女の舞子

2大害虫のもうひとつが、今回ご紹介する「カミキリムシ」です。カミキリムシにもいくつかの種類がいますが、バラで注意したいのが上の写真の「ゴマダラカミキリ」(「ホシカミキリ」とも言います)です。

 

「ゴマダラカミキリ」は、なんとバラの幹に産卵します。卵から孵化した幼虫は、バラの幹を内部から食べてスカスカの空洞にしてしまいます。空洞化してもろくなった幹が強風にあおられ折れたり、いきなり枯れてしまったりします。

 

幹の中に幼虫が潜んでいるのでなかなか気づくことができず、バラが急に枯れて初めて気づくことが多いというのがカミキリムシの幼虫被害の特徴です。コガネムシの幼虫同様、こちらも怖いです。

 

▲こんなに咲いていても翌年には枯れてしまった・・・ 写真提供/ハナたろう

 

コガネムシはどのバラにもつきますが、「カミキリムシ」はとくに年数が経ち大きく育った株で要注意です! カミキリムシの親は、幼虫がたっぷり食べられるようにと、太く老成した株を好んで産卵するそうなのです。

 

たとえば上の写真は溢れんばかりに咲いた「ピエール・ドゥ・ロンサール」ですが・・・。こんなにキレイだったのにカミキリムシの幼虫被害に遭い、翌年には枯れてしまったそうです(>< たった1匹の幼虫がこんな見事なつるバラを枯らしてしまうのです。

 

バラ以外にもヤナギやミカン類にも産卵するので、とくにミカン農家には深刻な問題です。とあるミカン栽培が盛んな地域では、地域一丸となってカミキリムシを根絶しようということで、捕殺したカミキリムシの成虫に懸賞金をかけて引き取っていたという農協があるくらいです。

 

一般家庭では、イチジクも要注意です。

 

カミキリムシの生態を知ろう!(カミキリムシの1年)

▲ゴマダラカミキリのメス。オスに比べて体が大きく触覚が短い

を効果的に駆除するため、まず敵を知ることから始めましょう。カミキリムシの1年を、順を追って紹介します。

 

5月下旬/羽化して成虫に

ミキリムシの1年は、バラ咲く5月下旬から始まります。バラの幹内部にいたカミキリムシの幼虫は、このころに蛹を経て羽化し、成虫になり外に出てきます。

 

6月~10月/枝を食害&産卵

▲おそらくカミキリムシの食害痕 写真提供/天女の舞子

ミキリムシの成虫は、その強靭なアゴで葉や若い枝の表面(樹皮)をかじります。

 

上の写真は、おそらくカミキリムシの食害痕だと思われます。(もしかしたら、チュウレンジハバチの産卵痕かも知れませんが)。

 

▲大きなバラの株元はカミキリムシの絶好の産卵ポイント

 

同じ時期に、カミキリムシは産卵もします。産卵の最盛期は6~7月です。

 

狙うのは年数の経った太いバラの株元。地際から地上30~40cmまでの間。

 

卵を産み付けられた場所から樹液が出たり、樹皮が変色することがあります。もしこの段階で見つけられたらラッキーです。すぐに対策すれば、バラが枯れるのを防ぐことができます。

 

卵は1週間ていどで孵化し、幹の中で幼虫となります。

 

▲バラの地際に木くずをみつけたら、幼虫が木の中を食べている証拠!

 

幼虫は幹の中を食べながらトンネル状に穴を掘り進めていきます。幼虫が掘った木くずや、木くずとフンが混じった虫糞が、産卵した穴から外に出てくるので、これを見つけたら急いで対策を! まだ間に合うかも知れません!

 

急にバラが枯れてきて、多くのロザリアンがようやくカミキリムシ被害に気付いて青くなるのがこのころです。

 

11月~翌年の5月中旬

▲木の内部から食害するカミキリムシの幼虫

虫はそのままバラの幹の中で越冬します。

 

ちなみに、昆虫食ではカミキリムシの幼虫は大人気食材で、美味しさNO.1なんだとか・・・。検索してみると、なんと1匹800円以上で販売されていました。クリーミーな食感とほのかな甘みがあるそうで、戦後の貧しい時代の子どもたちは網で焼いておやつとして食べていたそうです。

 

翌年の5月下旬/成虫となり外に出る

▲白樺の幹に開けたテッポウムシの大穴

がて幼虫は幹のなかで蛹になり、羽化して成虫になるとアゴで大きな穴を開けて外に出てきます。

 

その穴があまりに大きくてまるいので、「まるでテッポウで撃ったようだ」というので、カミキリムシの幼虫は「テッポウムシ」と呼ばれることが多いです。

 

上の写真は白樺の株元からテッポウムシが出た痕です。ほんとうに大きな穴が開いています!

 

カミキリムシの予防対策。取り入れたい4つの方法

ラの大株を一撃で枯らしてしまう怖いカミキリムシ。成虫は葉や枝の表面をかじるていどですが、とにかく怖いのは幼虫です。

 

カミキリムシ対策でもっとも重要なのは、バラに産卵させないこと。ここでは、カミキリムシを寄せ付けない予防対策を4つ紹介します。

 

せっかく育ったバラの大株を守るため、ぜひ取り入れてください!

1、成虫を見つけたら捕殺する

▲大きなアゴで噛まれないよう注意して! 写真提供/天女の舞子

切なバラの近くでカミキリムシの成虫を見かけたら! なるべく捕殺しましょう。

 

カミキリムシは毒をもたず、蜂のように人を攻撃してくることもありません。ただしアゴの力はとても強いので、素手でつかむときには噛まれないよう注意してください。

 


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いくら捕殺してもキリがないとあきらめず、根気よく捕殺を続けてください。いずれ飛来する数が減ってくるはずです。

 

2、定期的な薬剤散布で、成虫が飛んでくるのを減らす

▲農薬の定期散布はバラの健康を守るカギ 写真提供/天女の舞子

ミキリムシには翅があるので、成虫が飛んでこないようにするのは難しいです。

 

けれど、バラに定期的な薬剤散布をしていれば、成虫が飛来する数を減らすことができます。バラの本数が少ないなら簡易なハンドスプレー農薬の散布でもいいのですが、バラの本数が多いなら希釈タイプの農薬を使った本格散布をゼヒ取り入れてください。

 

成虫がやってくる数が少なくなれば、枝をかじられたり幹に産卵される確率もぐっと下がります。

 

▼薬剤散布の方法は、こちらのページの「農薬の正しい使い方とデータ」にある一連の記事を参考にしてください。

3、幹になにかを巻いて産卵予防する3つの方法

▲株元が大きく発達するつるバラはカミキリムシの狙い目!

ミキリムシは、いくつかの条件が重なって初めて産卵します。

 

カミキリムシの幼虫は、最終的には長さ5cm以上と大きく育ちます。そのため、なるべく太い幹に卵を産みます。報告では太さ1.5cmでも産卵されたという例もありますが、通常は3~4cm以上の太さの木に産卵します。

 

産卵する場所は地際から高さ30~40cmまでがほとんどです。これはおそらく、鳥に狙われないようにとの配慮でしょうね。

 

──と、いうことは。地際から高さ30~40cmまでを何かでカバーしてカミキリムシが産卵できないようにすればいいわけです。さまざまなモノがロザリアンたちに利用されているので、3つのアイデアを紹介します。

 

1、アルミホイル

▲アルミホイルで株元をカバーする

ミキリムシは光るものが苦手なので、アルミホイルを幹に巻き付けると効果的といわれます。キラキラ効果で近づきにくくする上に、アルミホイルが邪魔して産卵させないというダブル効果でカミキリムシの産卵を防ぎます。

 

巻くときのポイントは地際です。地面を掘って少し下までしっかり巻くことで、地際からの侵入を防ぎます。

 

アルミホイルは巻いてぎゅっと握るだけで付けられる簡便さが魅力ですが、デメリットもあります。ずっとつけっぱなしだと中にカイガラムシが発生しやすいので、カミキリムシの産卵期間の6~10月だけつけて、11月になったら外しましょう。

 

また、ベイサルシュートが顔を出しにくくなる恐れもあります。

 

2、防鳥ネット

▲防鳥ネットをぐるぐる巻きにして

鳥ネットを利用することもできます。防鳥ネットは網目が大きいのでベイサルシュートの発生を妨げないところが大きなメリットです。さらに風通しもあるので、アルミホイルのようにカイガラムシの心配もありません。

 

巻き方のポイントは、3重くらいにすること。防鳥ネットの網目は大きいので、1重ではカミキリムシに侵入される恐れがあります。さらに地際をしっかりカバーするよう株元のネットをたるませて置くと安心です。上部を園芸用ワイヤーやビニタイで縛っておけば外れることもありません。

 

防鳥ネットには黒や青、透明などさまざまな色があります。黒を選べば、かなり目立ちません。

 

3、銅タワシ

▲銅タワシを巻く驚きのアイデア

タワシを使うというアイデアもあります。銅タワシは長方形の銅ネットをくるくる丸めて作られています。まずこれをていねいにほぐし、元の長方形の銅ネットに戻します。

 

これをバラの株元に巻き付けるのです。銅タワシの網目は間が細かいので1重で構いません。ぴったり巻くのではなく、少しゆとりのある巻き方をすると、よりカミキリムシが侵入しにくくなります。

 

銅タワシの端は、園芸用ワイヤーで縫いつけておけば緩んでくる心配がありません。やはり気になる地際は、少し土を掘って下の方までしっかり巻いておきます。

 

銀色のステンレスタワシではなく銅タワシを使うのは、銅はやがて真っ黒に変色して目立たなくなるためです。

 

通気性があるのでカイガラムシは付きにくいでしょうが、ベイサルシュートが顔を出しにくくなるデメリットがあります。

 

4、幹になにかを塗って産卵予防する2つの方法

ルミホイルや防鳥ネットなど幹になにかを巻く方法でもいいけれど、より確実にカミキリムシをシャットアウトするなら専用アイテムを塗る方法が安心です。

 

ここでは、2つの商品を紹介します。

 

1、テッポウムシ予防樹脂フィルム

▲テッポウムシ予防に使いやすくて効果的!

ッポウムシ予防樹脂フィルムは、木に原液を塗っておけばやがて樹脂フィルムになるという商品です。

 

見た目と効果、さらに作業のしやすさを考えると、カミキリムシの産卵予防にはこれが1番だと思います。

 

▲原液をハケで塗るだけの簡単作業

 

使い方は簡単です。バラの株元から30~40cmの高さまで原液をハケで塗るだけ。

 

原液は白いどろっとした液体ですが、臭いはなく、複雑な形状のバラの株元にも簡単に塗ることができます。

 

上の写真では素手で塗っていますが、じつは手や服につくとかなり厄介です。汚れても構わない作業着で、使い捨て手袋を使って塗ってください。

 

▲数時間で乾いて透明フィルムに

 

これはテッポウムシ予防樹脂フィルムを塗った翌日の写真です。少し遠目ですが、赤い〇部分が樹脂フィルムを塗った株元。もうすっかり白色は消え、透明になっています。

 

この樹脂フィルムは3倍の伸びがあり、株の生長やベイサルシュートの発生も邪魔しません。水や凍結にも強いので、寒冷地でも問題なく使えます。

 

一旦フィルム化してしまえば効果は1年以上続くので、バラが葉を落とし作業しやすい冬の間に塗っておくといいかなと思います。長期保存には向かないので、使い切ります。

 

とても使いやすくて良い商品なんですが、今のところネット購入するしかなく、しかも送料が高いのがネックでした。250mℓで本体価格3000円しないのに送料が1000円くらいかかってしまうことが多くて──。

 


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そんななか「送料無料」で購入できるところを見つけたので紹介します。1度使ってみてくださいね^^

 

2、ガットサイドS


ガットサイドS 1kg 殺虫剤 (ガーデニング用品 ガーデン用品 家庭園芸 有機リン系 薬剤 虫対策 園芸 ガーデニング 用品 農業用品 農業用 農薬 害虫駆除 畑 殺虫 農業資材 園芸用品 園芸用資材・雑品 農業用資材)

ットサイドSは、殺虫剤(MEP乳剤)を含んだ白ペンキのようなものです。カミキリムシに狙われやすい地際から30~40cmの高さまで、原液をハケで塗って使用します。

 

殺虫効果は1年未満なので、カミキリムシの産卵シーズン直前の5月末に塗っておくと産卵予防効果が発揮されます。

 

殺虫剤なので手袋使用、さらに特有の臭いがキツイのでマスク使用もオススメします。その年に出たばかりの新枝には薬害が出るので塗れません。使用期限は3年で、購入した翌年も使うことができます。

 

ガットサイドSも優れた商品なんですが、ひとつ大きなデメリットがあります。それは、最初に書いたとおり白ペンキのようなものなので、木が真っ白になってしまうのです。美しい景観を楽しみたいバラの株元が真っ白だったら・・・ちょっと違和感あるかもしれません。

 

まとめ

今回は、カミキリムシの生態と産卵予防のしかたを紹介しました。

 

バラを一撃で枯らしてしまう怖いカミキリムシの幼虫・テッポウムシ。バラが枯れてきてから慌てて対策するよりも、そもそも産卵させない予防がとても重要です。今回紹介した方法で、カミキリムシのママをシャットアウトしてください!

 

オススメは、なにかを巻くなら黒い防鳥ネット、塗るなら「テッポウムシ予防樹脂フィルム」です。

 

うっかり油断していて産卵されてしまったようだ! バラが元気ないと思ったら株元に木くずを見つけてしまった! というときは木の中の幼虫(テッポウムシ)を退治します。テッポウムシの駆除方法はまた別のページで紹介します。

 

▼病気と害虫対策の記事一覧は、こちらからどうぞ

 

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