日照不足になりやすい雨の季節を、生育不良にならずに乗り切るために! 日照不足に効果のある成分とその成分を含んだ商品をまとめて紹介します。半日陰などもともと日照不足な環境の方も、梅雨の日照不足が気になる方もご参考に。
梅雨こそ日照不足をサポートする資材を使いたい!
▲長雨が続く梅雨は日照不足になりやすい
6月を迎え、いよいよ梅雨の季節が到来しました。もともと乾燥ぎみの冷涼な場所が原産地のバラにとって、日本特有な多湿の梅雨、続く高温の夏は苦手です。この季節を上手く乗り越えることが、バラを健康に育てる秘訣となります。
今回は、とくに梅雨の日照不足対策に使いたい資材を、その有効成分とともに紹介します。
半日陰でもともと日照不足ぎみな環境でバラを育てている方はもちろん、普段は日当たりの良い場所で育てている方も、梅雨時期の日照不足を解消するため積極的に取り入れてください。
「5-ALA」(ファイブアラ)は、葉緑素をつくり、生長を良くし、環境ストレスを緩和する
▲5-ALAが植物に効くイメージ図 出展/清和肥料工業株式会社
新型感染症が流行していた頃、「5-ALA」(ファイブアラ)と、それを多く含む甘酒が有効という情報を聞いた覚えはありませんか?「5-ALA」とは「5-Aminolevulinic Acid」(5-アミノレブリン酸)の略語です。これは自然界に広く存在する天然のアミノ酸で、「5-ALA」は動物、植物、微生物など多くの生物で重要な役割を果たしています。
たとえば動物では、5-ALAは「ヘム」という物質の元となります。ヘムは血中のヘモグロビンに含まれていて、酸素とヘムが結合することで全身に酸素を送ることができます。つまり5-ALAがなければ、わたしたちは生きていくことすらできません。それくらい重要な物質なのです。
ALA GARDENアラガーデン・ファームBB10-8-8 15kg |
【植物用肥料】【5-ALA(アミノレブリン酸)配合粉状肥料】あらびっくPK【送料無料】 |
植物にも「5-ALA」は含まれています。植物体内では「葉緑素」や「窒素代謝酵素」、「抗酸化酵素」などの構成成分として重要なはたらきを担っています。
「5-ALA」を植物に与えることで、
①気孔を開き蒸散量を増やしCo2の取り込み量も増やす
②葉緑素を増やすことで光合成を促進する
③窒素の吸収を助け代謝を促進する
という働きをします。その結果、
A、日照不足を補い光合成の量を増やすことができる
B、生長が早まり食味を良くし収穫量の増加が見込める
C、高温/低温・乾燥/過湿・農薬ダメージなどの環境ストレスを緩和する
などの効果につながります。
【5-ALA(アミノレブリン酸)配合液体肥料】ペンタガーデン バラの液体肥料(450ml / 100倍希釈) |
植物へのさまざまな良い効果をもつ「5-ALA」。これを配合した肥料はどれも比較的高価ですが、日照不足が気になる方にはゼヒ取り入れてほしい肥料です。
「アラガーデンファームBB」(清和肥料工業)は、高濃度ALA入りタブレット状化成肥料
「あらびっくPK」(キヤンファーマ旧ネオファーマジャパン)は、5-ALA配合粉状化成肥料
「ペンタガーデン バラの液体肥料」(日清ガーデンメイト)は、5-ALA配合液体肥料
「プロスタイル ALA配合肥料」は、まつおえんげいオリジナルの粒状肥料
葉緑素をつくるには苦土(マグネシウム)、鉄も必要!
5-ALAは葉緑素をつくるのに必要なアミノ酸ですが、葉緑素をつくるには大量の苦土(マグネシウム)や鉄も必要になります。
5-ALA配合肥料には、苦土や鉄も同時に配合されているものもあれば、配合されていないものもあります。たとえば、まつおえんげいの「プロスタイルALA配合肥料」のように、商品説明に記載のないものには、ケイ酸塩白土(ミリオン)を追加して使うとより効果的です。
ケイ酸塩白土には、苦土・鉄をはじめとするさまざまなミネラルが豊富に含まれています。ケイ酸塩白土はデメリットもなく、とても使いやすい資材です。
▼ケイ酸塩白土について詳しくは、こちらをどうぞ
「鉄」は葉緑素をつくり、光合成を活発にさせ根張りを良くする微量必須要素
▲葉の色が薄くなったクロロシスの状態 写真提供/ORCA
葉脈だけかろうじて緑色だけれど、それ以外は黄緑色~黄色になってしまう葉の症状──これを「クロロシス」といいます。「クロロシス」は鉄が欠乏することで起こります。
前の「5-ALA」の項目でも説明しましたが、葉緑素をつくるには大量の鉄が必要です。「クロロシス」は、鉄が欠乏することで葉緑素を十分つくることができなかったので、葉の色が悪くなってしまったという症状なのです。
じつは土にはかなり多くの鉄分が含まれています。でもそれは、植物が吸収しにくい「三価鉄」という形で存在しています。「メネデール」は、植物が吸収しやすい「二価鉄」の形で含む「二価鉄資材」です。
「二価鉄」は根からすみやかに吸収され、葉緑素の元となり、光合成を活発化させる働きがあります。さらに水分や養分の吸収を助けたり、発根を促す効果もあります。
「挿し木するときにメネデールを使うと良い」と言われるのは、このためです。挿し木だけでなく、日照不足にも「二価鉄資材」は有効です。
挿し木するときに購入したまま余っている「メネデール」を持っている方はいませんか? 梅雨時期こそ使いたい資材ですよ^^
葉面散布もできますが、根から吸収させた方が効果的です。
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人気の園芸ユーチューバー、カーメン君とのコラボ商品「鉄がないと」(soware)も、二価鉄資材です。根からすみやかに吸収され、光合成を助けます。
「腐植酸」は、日照不足などの悪環境のストレスを軽減し、植物の生長を促進する
▲環境ストレスを軽減するバイオスティミュラント資材「ストレスブロック」
シュートを出やすくする方法など、これまでいくつかの記事で取り上げてきた「腐植酸」も、日照不足に良い効果が期待できます。
自然の森の豊かな土壌には、腐植酸が多く含まれています。腐植酸の効果は多岐にわたりますが、いくつか簡単に紹介します。
1、土の団粒化を促進する
2、植物の三大栄養素と言われるチッソ、リン、カリウム。さらに硫黄、カルシウム、マグネシウム、ホウ素などの微量要素まで幅広い栄養分を供給する
3、植物の生長を促進する機能がある
4、腐植にはキレート化合物が含まれていて、これが土壌中のアルミニウムと結合してその有害性を抑え、リン酸を吸収しやすい形にして肥料効果を上げる
5、各種の有用微生物を増殖させる
6、干ばつ、過湿、酸素不足、日照不足、養分過不足などの不良条件下で起こる生育不良を軽減する
などなど。
日照不足などの環境ストレスを軽減してくれるという直接的な効果だけでなく、肥料効果をあげたり有用微生物を増殖させるなど、間接的な効果でも日照不足からくる生長不良を改善してくれます。
腐植酸を多く含んだ資材は、環境ストレスを軽減する「バイオスティミュラント資材」といえます。代表する商品は「ストレスブロック」(ハイポネックス)です。
ハイポネックス ストレスブロック 500ml 高温・乾燥から植物を守る 関東当日便 |
根を育てる肥料 1kg プレミアローズセレクション ※土セットと同梱可※(2個まで) ZIK-10000 |
「バラの家」の「根を育てる肥料」も優秀です。腐植酸にマグネシウムを配合した資材なので、日照不足にもしっかり効果が期待できます。
驚くほど根がぐんぐん伸びる素 500g 土壌改良剤 天然の腐植物質 観葉植物 お花の苗 プランター フルボ酸 園芸用 グランドカバー 土壌改良 ガーデニング 畑 野菜 作物 家庭菜園 農業 農作物 発根 |
高濃度フルボ酸活力液 アタックT-1 800ml |
ホームセンターで購入できる腐植酸資材はこの2点。「驚くほど根がぐんぐん伸びる素」(PIC-BIO)と「高濃度フルボ酸活力液アタックT-1」(花ごころ)。入手しやすいのが嬉しいですね。
腐植酸は日照不足だけでなく、続く夏の高温ストレスも軽減してくれる、便利で頼もしい資材です。上手に活用していきたいですね^^
「カリウム」で徒長を防ぐ!
▲ひょろりと徒長した窓辺のハーブ
日照不足の状態が続くと、植物は「徒長」します。徒長した植物は節(葉の付け根)と節の間が長くなり、茎や枝は細くなり、全体にひょろひょろした姿になります。
上の写真は室内で育てているハーブです。手前から2番目がバジルですが、日照不足の影響で徒長しています。さらに光合成で十分な養分を得られないので枝分かれできないし、葉は小さく色も薄くなっています。
健康に育った下の写真のバジルと見比べてみてください。これで一株です。
▲日向でがっしり育ったバジル
十分な日光を浴びて育ったバジルは、節間が狭くぎゅっとコンパクトな草姿です。しっかり枝分かれしているので、こんもりとした形に茂り、葉は大きくて色も濃い。さらに味も香りもバツグンです!
バラでも同じことが起こります。徒長したバラは軟弱で、病気にもかかりやすくなります。徒長を防いで健康なガッシリした樹形に育てたいものです。徒長を防ぐ資材を使うと、花首が下がって咲くのも改善されます。
ここでは、徒長を防ぐ肥料成分と資材を紹介します。
微粉ハイポネックス(カリウム特化型肥料)
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植物の3大栄養素「N(チッソ)P(リン酸)K(カリ)」は、それぞれ「チッソ=葉肥え、リン酸=花&実肥え、カリ=根肥え」として知られています。
こう聞くと、日照不足の環境ではチッソを多く与えるといいと思われがちです。もちろん適切な量のチッソは必要ですが、チッソを多く与えすぎると植物を徒長させるデメリットがあります。
日照不足の環境で徒長を防ぐにはチッソではなく、K(カリ=カリウム)をしっかり効かせる方が効果的です。
カリウムは植物体内のさまざまな働きを促進させる効果があり、根を育てる以外にも、茎を丈夫にしたり、病虫害や暑さ寒さへの抵抗力を増やすなどの効果があります。
カリウムは与えすぎのデメリットが出にくいので、気軽に使える肥料成分す。
徒長を防ぐカリウム特化型肥料として、まず覚えておきたいのが「微粉ハイポネックス」です。この肥料の成分比率は「N6.5:P6:K19」。
同じ液体肥料の「ハイポネックス原液」が「N:6:P10:K5」なのに比べれば一目瞭然。とびぬけてカリウム含有量が多い肥料なのが分かります。チッソ・リン酸と同時にカリウムをこんなに多く配合している肥料は、ほかにありません。
▲「微粉ハイポネックス」は粉状の液体肥料
「微粉ハイポネックス」は、白い粉状の肥料です。これを水で希釈して与えるので、通常「液体肥料」と表記されています。
でも実際使ったことがある人なら分かるはずですが、ジョウロの底に白く沈殿して残ってしまうし、ハス口に目詰まりするしで、液体肥料としては扱いづらいところがあります。
では、どうすればいいのか──。
▲そのまま株元に撒いてから水やりすればOK!
水に溶かさず、株元にそのまま撒いてしまえばいいのです。その後水やりすれば、水溶性成分はすぐに溶け出し、水に溶けにくい成分は土に残って水やりのたびに少しずつ溶け出します。じつはこの水に溶けにくい成分こそが、重要なカリウムなのです。
すぐに水やりしないなら、微粉ハイポネックスを撒いたあと、土とちょっと馴染ませておけば風に飛ぶ心配がありません。
この使い方は、ハイポネックス公式動画でも紹介しています。
カリウム単体の肥料
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通常の固形肥料を与えている場合、さらに「微粉ハイポネックス」を与えると多肥が気になります。チッソ過多になると、葉が増えすぎ、葉色は濃くなりすぎます。さらに徒長して軟弱に育ち、病虫害に弱くなります。リン過多は、生育不良を引き起こします。
そこで、カリウムだけをプラスしたいという場合には、カリ単体肥料を使います。
「硫酸カリ」は、カリだけの速効性化成肥料です。株元に撒いて使います。
「草木灰」(そうもくばい)は、天然のカリウム単体肥料として使えますが、使い方には注意が必要です。化成肥料と同時に使うとガスを発生して植物の生育障害をおこします。有機肥料のみ使っているなら、カリウムを補う肥料として使えます。
結局どれを選べばいいの? あいびーオススメの使い方
▲まず取り入れたいのは、広範囲な効果が期待できる腐植酸資材
葉緑素のモトになる「5-ALA」、「二価鉄」。環境ストレスを軽減することで日照不足からくる生育不良を軽くする「腐植酸」。徒長を防ぐ「カリウム」。日照不足な環境や梅雨時期に使いたいさまざまな成分や商品を紹介してきましたが、それじゃ結局なにをどう使えばいいか分かりにくいかもしれません。
ここからは、わたし・あいびーオススメの使い方を紹介します。参考になさってください。
普段は日当たりの良い環境だが、梅雨時期だけ日照不足に備えたい場合
▲長雨の日照不足が気になるなら、腐植酸資材を
普段は日当たりの良い場所で育てているけれど、梅雨時期だけ日照不足が心配だという場合は、「ストレスブロック」などの腐植酸資材をプラスするだけで大丈夫だと思います。
腐植酸資材は夏の高温対策にもなるので、梅雨から秋まで長く使えます。
もともと日照不足な環境なら、程度に応じて資材をプラスしよう
▲徒長ぎみに咲く梅雨時期の2番花
もともと軽い日照不足な環境でバラを育てているのなら、普段は腐植酸資材の定期使用を。梅雨や秋の長雨続きには5-ALA肥料やカリウム肥料(「ハイポネックス微粉」またはカリウム単体肥料)をプラスして与えるといいと思います。ケイ酸塩白土(ミリオン)は多く入れても害にならないので、これもプラス。
かなり日照不足な環境なら、普段使いの固形肥料を5-ALA入りの肥料(+ケイ酸塩白土)に変更します。さらに徒長を防ぐカリウム肥料も普段使いしましょう。二価鉄資材を持っているなら、これも適宜使っていきましょう。
ただし日照不足の環境では、バラは旺盛に育てません。通常の肥料の量では多肥になりがちです。規定量の2/3ていどを目安に施肥します。ここにプラスして、チッソやリンも入っている「ハイポネックス微粉」を定期的に使うなら、多肥になるのを防ぐため、固形肥料の分量は規定量の半分に抑えるといいと思います。
まとめ
今回は、日照不足をサポートする成分の紹介と、その成分を含んだ代表的な商品を紹介しました。
葉緑素をつくるモトになる「5-ALA」と「鉄」、日照不足だけでない広範囲な環境ストレスを軽減する「腐植酸」、徒長を防ぎ、ガッシリした樹形をつくる「カリウム」。
日照不足の程度に合わせて上手に利用してください!
▲例年1輪咲きが感動の房咲きに!
我が家では今年から「ストレスブロック」と「リキダス」を、水やりのたびに少し薄めに作って交互に与えています。
そのおかげで、これまで1輪咲きにしかならなかったバラたちが房咲きになり、花数が増えてますます可愛く咲いてくれます。写真は「レディ エマ ハミルトン」。だいぶ花がら切りをしてから撮影しているけど、ちゃんと房咲きなのが分かると思います。
▲花芯が2つの「ダブルセンター」の花形
こんな花も登場しました。ちょっと分かりにくいけれど、これ「ダブルセンター」です。花芯が2つある奇形で、多くは多肥で現れるんですが、じつは肥料の量は例年と変わりません。
もしかして「ストレスブロック」に含まれているチッソ成分が効きすぎたのかなぁ?なんて思っていますが、奇形はこの1輪だけなのでヨシとします。
皆さまも、どうぞ取り入れてみてくださいね!
参考文献
SBI Pharma 「5-ALAとは」https://www.sbipharma.co.jp/about-5-ala/
清和肥料工業「アラガーデンシリーズ」https://www.shk-net.co.jp/products/ala/
メネデール https://www.menedael.co.jp/products/menedael/
ハイポネックスジャパン「微粉ハイポネックス」https://www.hyponex.co.jp/products/products-635/
「リキダス」https://www.hyponex.co.jp/products/products-636/
セントラル化学「土壌ってどんなもの?」https://central-chemical.co.jp/PDF/gizyutsu/soil2.pdf
▼「半日陰のバラ栽培」の記事は「冬の手入れ」の下にあります