バラを健康に育てきれいな花を咲かせるために、肥料やりは欠かせません。でも、ホームセンターの棚の前で首をかしげてしまうものの一つが、この肥料ではないでしょうか? 今回は、肥料の種類や、自分のバラに合った上手な選び方、そして肥料の使い方などを詳しく説明します。


有機質肥料、たい肥、化成肥料の違いは?

▲有機質肥料の発酵牛ふん

料には「有機質肥料」と呼ばれるものと「化成肥料」と呼ばれるものの2種類があります。まずそれぞれの違いを説明します。

 

有機質肥料」または「有機肥料」とは、植物や動物の有機物を原料としてつくられているものです。多くは工業製品を作る際にでたものを原料としています。たとえば油を絞ったあとに出る「油かす」、魚の骨を砕いた「魚粉」、牛の糞を原料にした「牛ふん」など。わたしは見たことがありませんが、衛生的な工場で加工された人糞もあるそうです。魚のウロコやカニ殻なども使われています。

 

たい肥」は、落ち葉や草、動物の糞などが微生物で分解された肥料です。コンポストを使って台所のゴミからたい肥をつくっている方もいますね。たとえば「腐葉土」は落ち葉が腐敗してできた土で、これもたい肥のひとつです。たい肥は、有機物が微生物で分解され(要するに腐って)土になった肥料なので、「有機質肥料」と同義語として使われることもあります。

 

有機物を原料とした「有機質肥料」の対義語にあたるのが「化学肥料」です。肥料には3つの柱となる栄養素(チッ素、リン酸、カリ)があり、化学肥料は空気中の窒素やリン鉱石、カリウム鉱石といった無機物を原料としてつくられます。チッ素、リン酸、カリウムのうち、1種類だけの化学肥料を「単肥」(たんぴ)といい、2種類または3種類を含んだ化学肥料を「化成肥料」といいます

 

有機質肥料(たい肥)と化成肥料のメリット・デメリット

▲腐葉土(たい肥)

機質肥料にも化成肥料にもそれぞれメリットとデメリットがあります。それを理解して、自分のバラの育て方に合わせて上手く組み合わせて与えるのが、上手な肥料の使い方です。

 

有機質肥料(たい肥)のメリット

機質肥料は肥料の3大要素であるチッ素、リン酸、カリ以外にもさまざまな要素が含まれていて、それらが穏やかにしかも長く効くというメリットがあります。また、植物の栄養を補給する以外にも土壌改良したり土に住む微生物や昆虫にも養分を与えることで、結果的に植物をすこやかに育てる効果があります。

 

有機質肥料はおだやかに長く効く」と覚えておくといいですね。肥料効果以外にもさまざまな効果が期待できるところもgoodです!

 

有機質肥料(たい肥)のデメリット

機質肥料のデメリットとしては、効果があらわれるまで時間がかかる(遅効性)、臭いがあるので虫や鳥などを呼びやすいことがあげられます。さらに気温により肥料分の溶出にムラがあり、高温時は多く溶け出し、低温時はあまり溶けません。

 

有機質肥料は「たい肥」+「油かす」などと、いくつもの肥料を用意して混ぜて使うのが基本です。庭のある方やたくさんの鉢を育てている方ならいいのですが、まだ数鉢しかない初心者には、配合が面倒だったり、臭いのする残った肥料の保管に困ったりと、やや使いにくいところがあります。

 

また、有機質肥料(たい肥)は有機質を発酵させてつくるのですが、完全に発酵が終わった「完熟たい肥」を選ぶことが大切です。未熟なたい肥は、土の中でガスを発生しバラの根を傷めてしまいます。コンポストでたい肥をつくっている方も注意しましょう。

 

化成肥料のメリット

▲土にばらまいた緩効性の化成肥料

成肥料は、肥料の3大要素がバランス良く配合されているので無駄なく使いやすいのが大きなメリットです。有機質肥料が効き始めるまで日数のかかる「遅効性」なのに対して、化成肥料にはすぐに効果がでる「速効性」の液体肥料や、少しずつ溶けて長く効く「緩効性」の固形肥料の両方の効き方をするタイプがあります。臭いがなく、虫を呼ぶことが少ないのも大きなメリットです。ベランダガーデナーには助かりますね。

 

化成肥料のデメリット

機質肥料にはさまざまな成分が含まれているので土壌改良効果があるのに対して、化成肥料には土壌改良効果がありません。化成肥料だけを何年も使い続けるとphの偏りや、化成肥料に含まれている塩分などから植物が育ちにくい痩せた土になってしまいます。

 

とくに肥料分が凝縮された「高度化成肥料」は、使用量が少なくてすむ反面、効果が強いので、多肥で根を傷めてしまいやすいという欠点があります。使用量に注意です。

 

あいびーあいびー

長い期間、効果が続くタイプを「緩効性」肥料、すぐに効果があらわれるタイプを「速効性」肥料と呼び分けられます。基本的に元肥には緩効性肥料が、追肥には速効性肥料・緩効性肥料の両方が使われます

有機質肥料と化成肥料をブレンドした肥料

機質肥料と化成肥料それぞれの優れたところを引き出し欠点を補うブレンド肥料が最近では多く発売されています。元肥でも追肥でも、オールマイティに使える利便性がありますが、値段が張るのが欠点です。

 

有機質肥料と化成肥料の上手な選び方と使い方

ラには、年間に何度か肥料を与える時期があります。有機質肥料と化成肥料のメリット・デメリットを踏まえたうえで上手な選び方と使い方を紹介します。上で紹介した「ブレンド肥料」は、植えつけ、寒肥え、お礼肥え、追肥のどのタイミングでもオールマイティに使えます。

 

元肥や寒肥には有機質肥料を基本に!

▲元肥や寒肥には有機質肥料を使うのが基本

ラの休眠期(12月中旬~2月中旬)は、寒肥(寒肥え)を与える時期です。地植えのバラなら株の周りに3カ所ほどの大きな穴を掘り、完熟たい肥と油かすなどの有機質肥料を土にすきこみます。こうすることで、地面を柔らかく土壌改良し、同時に長く穏やかに効く肥料分を補います。植えつけのときに使う元肥にも有機質肥料を基本に使います。

 

ただし培養土を利用している人(鉢数の少ない初心者やベランダガーデナー)は、有機質肥料やたい肥を買う必要がありません

 

お礼肥えには緩効性化成肥料または速効性の液肥を!

▲お礼肥えには化成肥料を

の1番花が終わった後に与えるのが「お礼肥え」です。1番花で使ったエネルギーを補給し2番花を美しく咲かせるための肥料なので、ここでは速効性のある液肥を選びます。(1季咲きのバラにはお礼肥えは要りません)

 

液体の化成肥料の場合、肥料分がすぐに流れ出てしまう欠点があるので、水やりの水に薄く混ぜて、水やりついでに少しずつ肥料分を追加するような使い方を、わたしはしています。多肥になるのを防ぐため、通常の使い方より薄く混ぜるのがポイントです。

 

長く効く緩効性化成肥料を使うこともできます。

 

追肥には緩効性の化成肥料を!

肥とは、夏剪定の1週間前に施す肥料のことです。秋に良い花を咲かせるための花枝をしっかり伸ばしてもらうための肥料です。緩効性の化成肥料が使われることが多いです。(1季咲きのバラには追肥は要りません)

 

肥料過多に注意! 変な花が咲いたり、病気にかかりやすくなることも!

▲チッ素過多だと、ウドンコ病が発症しやすい

んとなく肥料はたくさんあげた方が、株が大きくなり花も立派になるような気がしますが、肥料のやりすぎも良くありません。肥料過多(多肥とも言います)が原因で、「肥料焼け」と呼ばれる症状が出ることがあります。肥料焼けの主な症状を紹介します。

 

チッ素(N)が多すぎると、葉が大きく茂り、節の間が間延びして徒長した株になります。さらにウドンコ病にかかりやすくなるなど、耐病性、さらに耐虫性も弱くなります。葉の縁が枯れこむこともあります。

 

リン酸が多すぎると、全体に生育が悪く、葉が小さくなり下葉が黄色くなって落ちます。

 

カリウムが多すぎると、根をはじめ、全体の生育が悪くなります。

 

開花時期に肥料が多く残っていると「ダブルセンター」といって、花の芯が二つに割れることがあります。花の中にもう一つ花ができる「ブルヘッド」と呼ばれる花になることもあります。

 

あまりに肥料濃度が高くなると、根が傷み、バラが枯れてくることもあります。

 

長くバラを育てている土は、肥料過多になりやすい

▲何年もバラを育て続けている土は、肥料過多になっていることが多い

年もバラを育てている土は、毎年何度も肥料をやり続けている土です。いつのまにか、肥料過多になっていることも多いものです。庭植えの場合は数年に1度、株元の土をなるべく広範囲に入れ替えてみてはどうでしょう。土のリセットですね。

 

大きく育ちきったつるバラは、1季咲きのものならほとんど肥料を必要としなくなります。様子を見ながら、必要最小限の肥料やりを心がけましょう。

 

鉢植えのバラは毎年土を入れ替えるのが基本なので、多肥になりにくいはずです。パッケージの使用量を目安に肥料やりしましょう。

 

株や根に固形肥料が直接当たらないように!

▲固形の化成肥料は株から離して置く

形の化成肥料は、直接バラの株や根に当たると植物を痛めてしまうことがあります。かならず株や根から2~3cm離して置きましょう。

 

つぼみが上がったら肥料をやらない!

Double Headed Rose
Double Headed Rose / ian02054

▲芯が二つに割れた「ダブルセンター」のバラ

ブルセンターやブルヘッドの花が咲くのを防ぐためには、「つぼみが上がったら肥料をやらない!」と覚えておきましょう。速効性の液体肥料をやっているなら肥料やりを中止し、固形の化成肥料をやっているなら溶け残りを取り除いておくと安心です。

 

化成肥料の「N-P-K」ってなに?

本的な化成肥料は3つの要素からできています。それが化成肥料のラベルに書いてある「N-P-K」です。

 

Nはチッ素をあらわします。チッ素は、葉を茂らせ、大きく生長させるための栄養素です。「葉肥」とも呼ばれます。

Pはリン酸をあらわします。リン酸は、花や実の生長を助ける栄養素です。「実肥」または「花肥」とも呼ばれます。

Kはカリウムをあらわします。カリウムは根の生長を助け、植物全体の組織形成を促す栄養素です。「根肥」とも呼ばれます。

 

アルファベットの後についている数字は、それぞれの栄養素が含まれている%を示しています。「N8-P8-K8」なら、それぞれチッ素8%、リン酸8%、カリウム8%を含んだ化成肥料だという意味です。N-P-Kの配合合計が30%以上のものは「高度化成肥料」と呼ばれます。少量でしっかり効果を発揮してくれますが、肥料過多になりやすいので使用量に注意します。

 

バラが弱っているときに、肥料を与えてはダメ!

後に、初心者がやりがちな肥料やりのミスを紹介します。何だかよく分からないけどバラの調子が悪そうだと思ったら、原因究明をすることなく、とにかく肥料をやってしまう方がいます。これでは、弱っているバラにさらに追い打ちでダメージを与えてしまいます。このせいで、バラが枯れてしまうかもしれません!

 

バラが弱っているのには、必ず原因があります。

 

日照は十分か? 水やりは適切か? 肥料過多になっていないか? 病気や害虫が発生していないか? 薬剤の使い方が間違っていて「薬害」が起きているのではないか? などなど。これらの原因をさぐり、それを改善するのが最良の方法です。

 

たとえばバラが弱っている原因が肥料過多のせいだったら・・・追い打ちで肥料をやったら状態が悪化するのは明らかですよね。

 

バラの葉や花など地上部の状態が悪いときには、根に原因があることが多いものです。土の状態が悪くて根が正常に育っていないから、地上部も弱弱しくなってしまうのです。根があまり育っていないのに肥料をやるのは、人でいえば胸やけしてあまり食欲がないのに無理やりステーキを食べさせるようなものです。

 

バラが弱っているときに肥料を追加してはいけません!

 

いろいろ考えてみたけれどバラが弱っている原因がよく分からないときには・・・「肥料」ではなく「活力剤」の利用をおすすめします。

 

▼活力剤については、こちらをご覧ください。

 

まとめ

バラの肥料についてまとめて紹介しました。肥料は各社からさまざまな商品が発売されていて、ちょっとどれをどう選んでいいのか迷うところですよね。

 

1、肥料には有機質肥料と化成肥料があること。

2、元肥にはゆっくり長く効く有機質肥料や緩効性の化成肥料が適していること。追肥には速効性の化成肥料や緩効性の化成肥料が適していること。

3、鉢数が少なく培養土を利用している人は有機質肥料を買う必要がないこと。(培養土に有機質肥料が配合されているからです)

 

初心者なら、これくらいをおさえておけばいいと思います。バラを育てながら、肥料のことも少しずつ覚えていきましょう!

 

▼「土と肥料・薬剤・園芸資材について」の記事一覧はこちらから

 

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