つるバラの誘引のしかたを2回に分けて紹介します。今回は、硬い枝のつるバラの誘引のしかた。「ピエールドゥロンサール」を例に誘引していきます。
つるバラには枝が堅いタイプと柔らかいタイプがある
▲「ピエールドゥロンサール」は、つるバラの大人気品種
つるバラには枝が堅くて曲げにくいタイプと、枝が柔らかく曲げやすいタイプがあります。枝が堅いつるバラは大輪の花を咲かせる品種に多く、枝が柔らかいつるバラは小花を咲かせる品種に多いです。
今回は、つるバラの人気品種「ピエールドゥロンサール」を例にとり、枝の堅いタイプのつるバラを誘引する方法を紹介していきます。
つるバラの誘引は、12月中旬~1月中旬までに
▲つるバラの誘引適期はクリスマス前後1ヵ月
バラの休眠時期は、関東基準で12月中旬~2月いっぱいですが、つるバラの芽は木立ちバラよりも膨らむのが早いので、12月中旬~1月中旬ごろまでに行います。つまりクリスマス前後の1ヵ月が、つるバラの誘引適期です。1月中旬以降に誘引作業をすると、せっかく膨らんできた芽を落としてしまう恐れがあります。
とくに枝の堅いタイプのつるバラは、休眠に入ったらなるべく早く誘引した方が少しでも枝を曲げやすく、作業がラクです。
「もしも!」に備えてメガネやゴーグルを!
▲ゴーグルとマスクは、感染症以外にも有効(笑)
枝の堅いつるバラを誘引する際の事故で気をつけたいことがあります。留めつけようとしている枝を誤って放してしまい、トゲつきの枝が顔に跳ね返ってくると大変です! 「もしも!」に備えて、メガネやゴーグルをしていると目を傷つける最悪の事態だけは免れます。マスクやフェイスシールドをすれば頬を傷つける心配も減り、さらに万全ですね。
脚立を使うほど高いところの誘引は、転落防止に二人以上で作業することをおすすめします。くれぐれ気をつけてくださいね!
つるバラの誘引作業で準備するもの
▲麻ロープとハサミ
準備するもの
誘引するための紐(ビニタイやゴムタイなどでもOK)
ハサミ
取り除いた枝や葉を集める入れ物(バケツなど)
ガーデングローブ(必要なら)
▲ガーデングローブを使えば引っかき傷を防げるけれど・・・
手のひら側や指先をゴムで補強したガーデングローブや、皮手袋を使えば、バラのトゲから手指を守れますが・・・。バラの先生方は器用にグローブをしたまま紐を縛っているんですが、慣れないと、これがなかなか難しい。
わたしはガーデングローブをしたまま紐を縛れないので、素手、または使い捨てのポリエチレン手袋を使います。今年は素手で作業しました。おかげで右手が引っかき傷だらけです。
「ピエールドゥロンサール」の誘引のしかた
▲長尺苗から5年目くらいの株
今回、誘引する株は、長尺苗から5年目くらいの「ピエールドゥロンサール」です。我が家のベランダの内側に設えたベランダアーチに誘引して育ててきたので、日照不足のため全体にほっそりした枝です。
日向育ちの健康な「ピエールドゥロンサール」よりは曲げやすいのですが、それでも枝が堅く、全体に粗い印象の枝ぶりです。
今年はこの株を、ベランダのフェンスに誘引していきます。
1、すべての葉と、以前の誘引を取り除く
まず、すべての葉を取り除きます。
人によっては、なるべく長い間、葉を残す方もいますが、わたしは一気に取り除きます。枝のながれも見やすく、誘引作業もやりやすいと思います。
葉を取ると同時に、以前の誘引紐も取り除きます。わたしは誘引に麻ロープを使っているので、ハサミでチョンチョン切ってしまいます。
2、枝の内訳を把握する
▲枝は大きく3種類
この株の枝は、大きく3種類あります。
①一番古い、4年前くらいの枝(赤いライン)
赤いラインの枝は、4年くらいたっている一番古い枝です。もうあまり花をつけませんが、葉はよく茂ります。
②もっとも勢いの良い枝(青いライン)
青いラインの枝は3年たっていますが、まだまだ瑞々しく花つきも良い勢いのある枝です。
③弱々しい若いシュート枝(緑色のライン)
緑色のラインは、去年と今年のベイサルシュートです。どちらも細く弱々しく、頼りない枝です。
じつはこの株は日照不足に加えて強い薬害を受け、元気なシュートが育っていません。そのため、今年は比較的日当たりの良いこのフェンスで育てることにしたのです。
3、メインの枝から留めつける
▲①と②の枝を留めつける
まず勢いの良い②の枝をよく目立つ手すりに留めつけ、その下に一番古い①の枝を留めました。古い枝は、赤いラインを引いたところは切り取っています。もう1段下のピンクのラインまで切り戻してもいいと思いましたが、枝数がそう多くないので、赤いところだけカットしました。
誘引のポイント1
枝は、なるべく地面に水平になるようにします。枝の堅いタイプのつるバラは、水平より下に誘引すると花つきが悪くなります。水平または少し斜め上くらいがベストです。
誘引のポイント2
あまり強く引っ張ると裂けたり折れたりするので、枝がたわむように弓なりのカーブを保ったまま誘引します。
誘引のポイント3
枝と枝の間は、最低でも拳1個分を開けるようにします。可能なら手のひら1個分くらい開けたいところです。
▲枝で一回縛ってからフェンスに留める
この「ピエールドゥロンサール」は節間が長く、引っかき傷を作るのが嫌だったので以前かなりトゲを取り除いてあります。そのため誘引紐が滑ってしまうので、枝で一回縛ってからフェンスに留めるようにしています。こうすれば結び目が節で引っかかり、ちゃんと留まります。
4、細いシュートはオベリスクに巻いて
▲細い枝は柔らかいのでオベリスクに
メインの枝を留めつければ、だいたいの骨格はできているので、あとは空いたところに細い枝を留めていきます。
2本ある細いシュートは、1本は左側の隙間に誘引し、もう1本はオベリスクに巻きました。これだけ細いとあまり花は咲けませんが、葉でしっかり光合成してもらおうと思います。枝がたくさんある株なら、こういう細いシュートはつけ根から切り取って構わないです。
5、微調整して完成
▲枯れ枝、細枝をカット
つぎに枯れ枝、細枝をカットします。細枝はつけ根から1~2目、だいたい5~10cm残して切り取ります。長い枝の枝先も少し切り戻します。
▲誘引完了!
最後に麻ロープを短く切りそろえて誘引完了です。
写真の見え方で、左側に一部、枝の隙間が狭いところがあるように見えますが、実際は拳1個以上空いています。今回はこんな感じでヨシとしましょう。
▼同じく枝が堅いつるバラ「つるブルームーン」の誘引はこちらをどうぞ!
まとめ
今回は、枝の堅いタイプのつるバラの誘引作業を、「ピエールドゥロンサール」を例に紹介しました。
「ピエールドゥロンサール」は花枝が長く、大きな花が横から下向きに咲くので、本来ならこういう低いフェンスに誘引するのは向きません。家壁などにゆったり誘引する方が向いています。
この株は日照不足と薬害のためにあまり良いベイサルシュートが育っていないので、太さのあるベイサルシュートが発生するのを期待して、今年は比較的日当たりの良いこのフェンスで育てることにしたのです。
枝の堅いつるばらの誘引作業の一例として参考になさってください。
▼この後の生長は、そだレポで確認できます。
▼枝の柔らかいタイプのつるバラの誘引は、こちらをどうぞ