バラの芽吹きから冬の休眠期まで、1年をとおしてバラがどんなふうに育つのか追いかける「そだレポ」企画です。今回は「つるブルームーン」です。季節ごとに更新していくので、お楽しみに!
「つるブルームーン」はこんなバラ
つるブルームーンは、青バラの人気品種「ブルームーン」(HT)が、突然変異でつる性になったバラです。もともとの「ブルームーン」同様に、半剣弁のラヴェンダー色の大輪花を咲かせます。ブルーの強香もあり、咲いたときの満足感の高いバラです。
返り咲きも少し期待できます。
枝が固くて太く曲げにくいので、繊細な誘引はできません。広い壁面などにおおらかに誘引するのに向いています。逆に小さなトレリスやオベリスク、アーチなどでは良さが生かせません。トゲは少なく、あまり引っかき傷を作らずに誘引作業ができます。
「つるブルームーン」を購入するときに特に注意したいことがあります。この品種はつる性が安定していないので、大苗から育てるとつる性が失われて木立ち樹形にもどってしまいやすいことです。長尺苗か、枝先に蕾や花のない新苗を購入する方が安全です。
今回育てる「つるブルームーン」の環境DATA
関東の北側の庭の壁面(明るい日陰)
大苗から育てて3年目の株
今年の目標/たくさん開花させて、通りすがりの人の足を止めたいですね^^
育てる人/ハナたろう
*バラの育て方は、育てる場所により、それぞれの木の状態により、また目的や好みによっても人それぞれです。ここで紹介する育て方は、一例として参考になさってください!
12月13日の「つるブルームーン」/壁面誘引
▲3年かけて樹高350cmの高さに! 写真提供/ハナたろう
じつはこの「つるブルームーン」は、大苗で購入して育て始めたところ、木立ち樹形にもどってしまった株です。木立ち樹形から蕾のピンチを続け、3年かけてようやく樹高350cmの高さまで育てることができました。
今回は、この「つるブルームーン」のそだレポを、冬の誘引作業から始めたいと思います。
誘引する場所は、家の北側の壁です。4月~10月は午後から陽がさします。8月~9月は強烈な西日があたります。11月~3月までは、まったく直射日光はありません。ということで、日照環境としては「明るい日陰」です。バラを育てるには十分な環境とはいえないと思います。
日照は少ないのですが、屋根の下なので雨があまり当たらず黒星病にかかりにくいことと、花びらが痛みにくいというメリットがあります。
▲家の凸部を利用してワイヤーを留める 写真提供/ハナたろう
トレリスなどを使わず誘引したいので、窓の外側についている面格子や雨どいなどを利用してワイヤーを取り付けます。
今回の誘引で準備したもの
ワイヤー
電工ペンチ(ワイヤーをカシメて止める道具)
スリーブ(ワイヤーを通してカシメる部品)
ジュート紐
ペンチとハサミ
脚立
じつは、外壁にワイヤーを張るために、熱で溶かして取り付けるタイプのフック(「すっぽんフック」など)を提案したのですが、却下されました。「壁に密着させて誘引すると風通しが悪くなるから」とのこと。なるほど、納得です。
▲扇形になるように壁面誘引 写真提供/ハナたろう
つるブルームーンの枝は固くて真っ直ぐなので、壁面に扇形を描くように誘引します。
▲ワイヤーに枝を留めつける 写真提供/ハナたろう
枝とワイヤーは、堅結びでしっかり留めつけます。
▲誘引完了 写真提供/ハナたろう
赤いラインがワイヤー、青い点がジュート紐で枝を留めつけた位置です。右下の枝を留めるために、追加で黒い支柱を1本立てました。
▲花枝が長い、切花向きのバラ 写真提供/ハナたろう
最後に花や細枝をカットして、誘引作業は完了。割り箸より細い枝は切り取りました。
あまりに葉が青々としているので今回はそのままにして、後日、葉を取ることにしました。寒肥は既に施してあるので、葉をむしれば後は春の芽吹きを待つだけです。
▲春の開花が楽しみ! 写真提供/ハナたろう
遠くからワイヤーは見えないので、まるでバラが壁を這い登っているようです。来春の開花が、今から楽しみです。
2月4日の「つるブルームーン」
▲葉を取り除き枝がハッキリ 写真提供/ハナたろう
先日、葉を取り除き、枝の流れがはっきり見えるようになりました。誘引できるほどの長さのない枝が株元に数本ありますが、これらは木立ちで育てます。
▲芽が動いてきている 写真提供/ハナたろう
この時期、家の北側のこの場所は日照ゼロなのですが、日向で育てている他のつるバラ同様に芽が動いてきています。
3月17日の「つるブルームーン」/芽吹き
▲芽吹きが多くて、春花が楽しみ♪ 写真提供/ハナたろう
どの枝からもびっしり芽吹いてきました。芽吹きは多いめです♪ 春の花数は、この中にどれだけ花芽ができるかにかかっています。楽しみです。
▲木立ちの枝の方が芽吹きが早い 写真提供/ハナたろう
木立ちで残した枝の方が芽吹きが早く、既に葉が展開しています。大きくしっかりとした芽なので、こちらは立派な花が期待できます。
3月29日の「ブルームーン」
▲日照が悪いので徒長ぎみ 写真提供/ハナたろう
日陰なので、枝が徒長ぎみです。午後3時以降に直射日光が当たるようになってきたので、なんとか花芽もできてくるでしょう。
この時期の手入れ
薬剤散布。
オーソサイド80水和剤(幅広い病害の予防)+ポリオキシンAL水和剤(ウドンコ病などの防除)+アファーム乳剤(ヨトウムシ、アザミウマなどの害虫駆除)。
展着剤として、今回からアビオンEを混入しています。
4月6日の「つるブルームーン」/発蕾
▲葉がモサモサしてきた 写真提供/ハナたろう
全体に葉が茂ってきましたが、まだスカスカのところもありますね。全新芽の7割ていどから蕾が上がってきました。房咲きの枝もあります。
▲側蕾のついた枝も! 写真提供/ハナたろう
花数が多いので、HTの「ブルームーン」よりも小ぶりの花になるでしょう。
この時期の手入れ
薬剤散布。アブラムシが出てきたので、スミソン乳剤を散布しました。
4月30日の「つるブルームーン」/蕾のガク割れ
▲葉が密になり、蕾の数は70~80個 写真提供/ハナたろう
さらに葉が茂り、たくさんの蕾が上がってきました。数は70~80個ありますが、予想通り、HTのブルームーンよりも小ぶりです。
▲ガクが下りてもう少しで咲きそう 写真提供/ハナたろう
ガク割れが始まっています。もう少しで咲きそうです。
5月9日の「つるブルームーン」/開花
▲つるブルームーン開花 写真提供/ハナたろう
北側の家壁に誘引した、つるブルームーンが開花し始めました。
▲花径10cm超の大輪花 写真提供/ハナたろう
予想より大輪の花径10cm以上の花になりました。1輪だけでもじゅうぶん香る花がこれだけまとまって咲くので、まるで庭の香水のようです。
▲まだまだ蕾がたっぷり 写真提供/ハナたろう
これで3分咲きといったところでしょうか。蕾がたっぷりあるので、まだまだ楽しませてくれそうです。
5月11日の「つるブルームーン」/満開
▲ゴージャスに満開に! 写真提供/ハナたろう
つるブルームーンが満開になりました。これだけ咲けば大満足! 壁面に仕立てて良かったです。白壁なので、お花はもちろん、青々とした葉っぱもよく映えています。
▲大輪の重みでうつむき加減に咲く花も 写真提供/ハナたろう
横から見ると、固定してない木立ちの枝は、花の重みで前に倒れて咲いています。
6月5日の「つるブルームーン」/サイドシュートが発生
▲今年の春花はおしまい 写真提供/ハナたろう
春花の花がらを切り終え、今はグリーンカーテン状態です。
▲サイドシュートが8本発生 写真提供/ハナたろう
ベイサルシュートこそありませんが、強い枝からサイドシュートが計8本出てきました。
▲これから秋まで、しっかり休憩 写真提供/ハナたろう
サイドシュートが窓枠の内側に入り込んでしまわないよう、この部分の誘引を解いています。しばらく「要監視モード」ですね。
次の開花は秋以降なので、それまでしっかり休んでもらいましょう。とってもキレイな「秋バラ」「冬バラ」が拝めることを願っています♪
>>次のページでは「蕾をピンチ」から紹介しています。