そろそろ秋の気配漂う9月初旬~中旬は、バラの「夏剪定」の適期です。夏剪定の具体的なやり方や、ポイントなどを詳しくまとめています。参考になさってください^^


夏剪定をする理由は? 夏剪定しないとどうなる?

▲9月初旬のベランダのバラ

さと病虫害に悩まされっぱなしだった猛暑の夏を越えた9月初旬~中旬は「夏剪定」のシーズンです。慣習的に「夏剪定」と呼ばれていますが、秋の初めに行う作業という意味で「秋剪定」と呼ばれることもあります。

 

「夏(秋)剪定」は四季がはっきりしている日本独自のバラの手入れで、欧米では行われないもの。では、どうして日本ではバラに「夏剪定」をするのか、その理由をまず紹介しましょう。

 

理由その1、バラの開花にちょうどいい気温でそろって咲かせるため

▲同じ株の春花(左)と夏花(右) 写真提供/天女の舞子

ラは、昼の気温が23~25度、夜の気温が16~19度の環境で、状態の良い花を咲かせられます。日本では春と秋がバラが良い花を咲かせることができる環境です。

 

30度超えの暑すぎる日本の夏では、バラは蕾が充実することなく貧弱な花を咲かせてしまいます。上の写真の左が春花で、右が夏花。同じ株に咲く花でも、ここまで差があるのです。

 

▲蕾のまま開花できない「ボーリング」 写真提供/ハナたろう

 

逆に晩秋以降の寒い時期のバラは、せっかく蕾をあげても蕾のまま開くことができない「ボーリング」現象が起きてしまいがちです。

 

そのため、バラの開花にちょうどいい気温のタイミングでそろって秋花を咲かせるために考案されたのが「夏剪定」なのです。

 

理由その2、観賞しやすい高さに花を咲かせるため

▲人の背丈より高く咲くバラ 写真提供/天女の舞子

くに庭植えのバラによくあるのですが、身長より高いところに花が咲いてしまい、花の後ろ姿しか見られないことがあります。

 

できれば花を観賞しやすい、人の目線より低い位置に咲かせたいですね。夏剪定で樹高を低く抑えることで、秋花を観賞しやすい高さに咲かせることができます。

 

樹高を抑えるのも「夏剪定」をする重要な理由です。

 

じつは夏剪定は、必ず必要なわけじゃない

▲ポツリ、ポツリと咲くのでいいなら、夏剪定は不要

を招いてバラを観てもらうバラ園なら、秋バラシーズンに一斉に花が咲くように開花調整する「夏剪定」は必須作業でしょうが、家庭園芸なら必ずしもやらなくても構いません。

 

一斉に咲きそろわなくてもいいから、あちらにポツリ、こちらのポツリと少しずつずっと咲いてくれる方がいい! という考えの方もいるでしょうし、高いところに咲いても気にしないという方もいるでしょう。

 

「夏剪定」しないと株の生長に影響があるというものではないので、そこは好みで判断して構いません。

 

また、信州や北海道などヨーロッパと似た冷涼な気候の地域では夏剪定せず、花が咲いたら切り戻すの「都度剪定」で構わないそうです。もしこういった地域で「夏剪定」するなら、もっと早く8月中~下旬にかけて行うと良いそうです。

 

夏剪定をする理由については、別のページにまとめてあるので、詳しく知りたい方はご覧ください。

 

▼初心者目線で理由を分かりやすく説明しています

 

夏剪定の時期は関東基準で9月初旬~中旬

▲8月下旬の四季咲き性木立ちバラ「ノヴァーリス」

バラがもっともキレイに咲く時期は、関東基準で10月中旬~下旬です。剪定してから約40日で次の花が咲くので、9月初旬~中旬が「夏剪定」の適期となります。

 

かつて昭和時代に考案された「夏剪定」は、当時は8月下旬~9月初旬に剪定するのがセオリーとされていました。が、温暖化で年々暑さが長引く近年では、9月初旬~中旬が夏剪定の適期となっています。とくに残暑厳しい年は関東基準で9月中旬~下旬が夏剪定の適期となります。

 

▼夏剪定のタイミングについて詳しくは、こちらをご覧ください

 

バラの品種により剪定から開花までにかかる日数に差があるので、比較的早く咲く品種(早咲き品種)は9月中旬に、次の花まで時間のかかる品種(遅咲き品種)は9月初旬にと、品種により「夏剪定」する時期を調整すると、ぜんぶのバラを一斉に咲きそろわせることも可能です。

 

咲く時期が多少ずれても気にしないなら、一斉に夏剪定すればいいと思います。

 

「夏剪定」の前準備。1週間前に「追肥」を!

▲夏剪定する1週間前に緩効性化成肥料を追肥!

剪定のやりかたを紹介する前に、夏剪定前に行う「追肥」について紹介します。夏剪定の後、スムーズに芽吹いて生長してもらうためにあらかじめ肥料を施しておくのです。

 

「追肥」は、夏剪定の1週間前に行います。使う肥料は、緩効性の固形肥料です。緩効性の固形肥料は、ゆっくり効き始め、効果が長くもつ肥料です。

 

効き始めるまで1週間くらいかかるので、1週間前にあらかじめ「追肥」しておくのです。

 


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わたしがよく使っているのが「IBのチカラ」。室内で使えるほど臭いもなく清潔感があり、大粒なので鉢の大きさに合わせて粒数を数えて肥料やりできるので使い勝手のいい肥料です。

 

あらかじめ「追肥」するのを忘れた! ってときは速効性の肥料を活用

 
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らかじめ「追肥」できればいいけれど、「しまった忘れた!」ってときには、速効性の肥料を活用しましょう。速効性肥料なら、夏剪定と同時に使うことができます。

 

上で紹介した「IBのチカラ」などの「緩効性化成肥料」を夏剪定と同時に使うには、効き始めるまでの1週間を、ハイポネックスなどの液肥(液肥は速効性肥料です)で補ってあげます。「夏剪定」をした日と3日ほど開けてもう1回、計2回くらい液肥を与えればいいと思います。

 

もうひとつ紹介している「プロミック」は、速効性の成分と緩効性の成分を配合した肥料です。この肥料も大粒で、臭いが少なく室内でもベランダでも使いやすい商品です。これなら夏剪定と同時に使ってもすぐに効き始めるので、液肥を併用する必要がありません。

 

基本の「夏剪定」のしかた

ず基本の「夏剪定」のしかたを紹介します。夏剪定で切る場所は、先生により説明のしかたがそれぞれ違っています。3タイプ紹介するので、それぞれのバラの状態から判断して、取り入れやすい方法で切る場所を決めてください。

 

基本その1、2番花の花枝の真ん中より少し上を切る

▲夏剪定する場所は2番花の花枝の真ん中から少し上

は、9月初旬のバラの図です。この時期のバラは、春の1番花、梅雨時期の2番花、夏花の3番花と、計3回、花を咲かせています。それぞれ1番花を咲かせた花枝、2番花の花枝、3番花の花枝があるのを確認してください。

 

「夏剪定」では、2番花の花枝の半分よりやや上にある、外側に向かった葉の上5mmくらいのところでカットします。赤いラインがカットする位置です。

 

全体にドーム型を意識してカットします。

 

基本その2、咲かせたい位置から逆算して30cm低い場所で切る

▲樹高50cmちょっとのところでカット

は、咲かせたい高さから逆算して切る位置を決める方法です。

 

我が家のベランダは狭いので、高さ1mまでの位置に咲いてほしいと思っています。ということは、1mから30cm引いて、床面から高さ70cmのところでカットすることになります。この鉢は高さが22cmあるので、バラだけの樹高でいうと50cmちょっとのところで切ります。

 

基本その3、バラの樹高の上1/3を切り取る

▲バラの樹高の上1/3を目安にカット

本その3は、もともとの樹高の上1/3を切り取るという方法です。株元からいうと2/3の高さでカットします。

 

この株はもとの樹高が70cmあるので、株元から2/3の高さの50cm弱まで切り詰めます。この方法だと、枝の長さにより少し高さにばらつきが出ますが、そこは微調整します。

 

どの方法でも結果的に切る場所はそう変わりません。

 

シュート枝はどうする?

▲一番右側がベイサルシュート

年発生したシュート枝をどうするかについて紹介します。

 

上の図の一番右側の枝は、今年発生したベイサルシュートです。ほとんどのバラは、春の1番花後の6月ごろにベイサルシュートが発生し、9月初旬にはもうかなりしっかりしてきています。この枝にも秋花を咲かせて大丈夫です。

 

なので、他の枝と同じように夏剪定します。上の図でも、セオリー通り2番花の枝の真ん中よりやや上でカットしています。

 

▲セオリー通り切れないシュート枝は場合により判断

 

ところが、シュートの発生が遅かったとか生育が悪くてセオリー通りにできないこともあります。

 

上の写真のように、主幹を白いラインでカットすることにしたけれど、赤〇で囲んだベイサルシュートはまだ短いし、黄〇で囲んだサイドシュートも夏剪定の高さに達していない──こういう場合にどうするか、の考え方です。一例として参考にしてください。

 

赤〇のように短すぎるベイサルシュートはハサミを入れず、このまま伸ばします。秋花を咲かせるのをあきらめ、来年に向け枝を充実させてもらうためです。

 

黄〇のサイドシュートは、あるていどしっかりした枝なら多少短くても枝先を切り戻して秋花を咲かせます。

 

でも写真のように弱々しい枝なら、付け根から切り取ってしまっても構いません。

 

また、花が咲かなくてもいいからこの枝はこのまま残すという選択もアリです。この枝を育てたいからではなく、株全体の枝数が少ないので、光合成要員として葉を残したいという考えからです。いずれこの枝は、冬剪定で切り取ってしまいます。

 

「夏剪定」で注意する5つのポイント

ぎに、実際に夏剪定する際に気をつけたいポイントを5つ紹介します。

 

ポイント1、花や蕾があっても、全部の枝にハサミを入れる

▲夏花が咲いていてもすべてカット 写真提供/アスタルティ

剪定するタイミングで夏花が咲いていたり、もう少しで咲きそうな蕾があると、ついもったいなくて切りたくなくなるのですが、そこは割り切ってすべての枝に同じ時期にハサミを入れます。

 

こうすることで、すべての枝から同じタイミングで秋花を咲かせることができます。

 

ポイント2、良い花が咲く枝の太さを確保する

▲シュラブ系統なら割り箸より細くても咲く

態のいい花を咲かせられる枝の太さを確保するのも大切です。

 

ハイブリッド・ティー系統なら鉛筆の太さ以上の枝でカット。フロリバンダ系統なら割り箸の太さ以上の枝でカット。シュラブ系統のバラは、割り箸より少し細くても大丈夫です。

 

これより細い枝でカットすると、花が小さくなりがちです。品種により必要な枝の太さは違うので、それぞれに対応してください。

 

ポイント3、冬剪定みたいにガッツリ切りすぎない!

▲樹高50cm弱に、葉を残して夏剪定

ラに行う剪定には大きく2つの作業があります。「冬剪定」と「夏剪定」です。同じ「剪定」でも、「冬剪定」はかなり短く切り詰めますが、「夏剪定」はそんなにガッツリ切り詰めてはいけません。

 

夏剪定の時期に冬剪定と同じくらい枝を短くカットしてしまうと、秋花が咲かない可能性が高いです。

 

この先しっかり生長して良い秋花を咲かせてもらうために、「夏剪定」では葉を摘まず、剪定後も葉を残します。

 

ポイント4、シュラブ系統の夏剪定は要注意!

▲シュラブ系統のバラ「ジュードジオブシュキュア」 写真提供/とらうさぎ

つは「夏剪定」は、四季咲き性質の強い木立ちバラに適した手入れで、「シュラブ系統」のバラでは注意が必要です。

 

「シュラブ系統」のバラは木立ちバラとつるバラの中間の性質をもつバラで、品種により四季咲き性質が強いものもあれば、ほぼ一季咲きのバラもあります。

 

四季咲き性質の強いシュラブ系統のバラなら「夏剪定」しても構いませんが、四季咲き性質の弱いほぼ一季咲きのシュラブ系統のバラに夏剪定しても、秋に咲くことはありません。

 

今世紀に入ってから育種されている品種はほとんど「シュラブ系統」のバラなので、そのバラが「夏剪定」向きのバラか「夏剪定」してもあまり意味のないバラかは、それぞれの品種によって判断する必要があります。

 

これについては、別のページにまとめます。

 

ポイント5、つるバラに「夏剪定」してはダメ!

▲つるバラを夏剪定しても秋に咲くことはない

るバラにとって夏は、来年たくさん花をつける枝を長く伸ばす時期です。来春にどれだけ花を咲かせられるかは、この枝をどれだけ長く伸ばせるかにかかっています。

 

なので、これまでの説明のように「秋花を咲かせるために枝先を1/3カットする」なんてやってはいけません。あくまでも「夏剪定」は、四季咲きの木立ちバラに行う作業で、つるバラには行いません。

 

つるバラの枝先をカットしても、秋に咲くことはありません。ただ枝が短くなるだけです。

 

夏剪定と同時に枝葉の整理を

▲込み合った枝をカットして風通しのよい樹形に

剪定をしたら、同時に枝葉を整理して、樹形を整えましょう。3ステップで、樹形を整えます。

 

1、細くて花を咲かせられそうにない弱小枝をカット

 

2、株の内側に向かって生えている枝や、混み合った枝を減らして風通しのよい株に

 

3、あまりに茂りすぎているなら、葉も少し詰んで風通しよく

 

夏剪定の後に使いたい農薬と活力剤


住友化学 ベニカ Xガード 粒剤 550g 関東当日便

ハイポネックス リキダス 800ml 植物用活力液 (4977517162582)

剪定をしたら、病気と害虫予防に「ベニカXガード」や「オルトランDX」を株元に散布。ちょうどコガネムシの幼虫が発生する最後の時期なので、このタイミングで薬剤散布しておけば、来年の春までコガネムシの幼虫に根を食い荒らされる心配はありません。

 

微量要素を補うため適宜、「リキダス」などの活力剤も利用して元気な芽を育て、キレイな秋花を咲かせましょう!

 

まとめ

今回は、9月初旬~中旬に行う「夏剪定」について紹介しました。

 

夏剪定は必ずしもやらなくていい作業ですが、ミスターローズと呼ばれた故・鈴木省三氏が日本の気候を考慮して考案した日本独自の手入れです。夏剪定をすることで、秋バラが咲くのにちょうどいい時期にそろって花を咲かせられます。

 

注意点としては、記事中でも指摘しましたが、あまりガッツリ短く切りすぎないことです。とくに新しく育種された品種ほど浅く切るよう心掛けてください。

 

じつは今世紀に入って作出された新しい品種は、ほとんどが「シュラブ系統」のバラです。シュラブ系統のバラは特徴がまちまちで、「シュラブ系統のバラはこう夏剪定する!」と言い切ることが難しいバラです。が、一般的に浅く切るにとどめておいた方が良い結果につながりやすいのです。

 

「シュラブ系統」のバラの夏剪定については、こちらをご覧ください。

 

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▼この記事は「季節ごとのバラの手入れ」の秋の項目に分類されています

 

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