株元にばら撒くだけで、バラの病気を予防し害虫を駆除する便利な農薬「ベニカXガード」の紹介です。この農薬、優秀な商品ではあるけれど、バラ栽培では使いづらいところもあります。メリット・デメリットあわせて紹介します。


「ベニカXガード」のスゴサを調べよう!


殺虫 殺菌 病気 ベニカXガード粒剤 お徳用 550g 住友化学園芸

2020年春に園芸農薬メーカー大手「住友化学園芸」から発売された「ベニカXガード」。パッケージには「家庭園芸初!!」の文字が踊り、公式サイトの商品紹介には「園芸革命」とまで書かれている商品です。メーカーさん、かなり力入ってます!

 

「とにかくスゴイ!」・・・らしいんだけど、何がどうスゴイのか分かりません。そこで、「ベニカXガード」がどういう商品なのか、どうスゴイのか、そしてどう使えばいいのか、さらに実際に使ってみたその効果まで、詳しく紹介します。

 

「ベニカXガード」は、土に撒くだけで病虫害が予防できる!

▲「ベニカXガード」は、株元に散布するタイプの粒剤

ニカXガードは、土に撒くだけで病虫害が予防できる商品です。その仕組みはこうです。

 

土に「ベニカXガード」を撒いて水やりすると、その成分をバラが根から吸い上げ、株全体に行き渡ります。そしてその株の薬剤入りの葉を食べた害虫が駆除されるという仕組みです。

 


殺虫剤 害虫 オルトラン オルトランDX粒剤 200g 住友化学園芸

 

こういう土に撒くタイプの害虫防除薬としておなじみの「GFオルトラン粒剤」や「オルトランDX粒剤」と同じ仕組みです。

 

「GFオルトラン粒剤」よりも「オルトランDX粒剤」の方が駆除できる害虫の幅が広いので、ロザリアンなら「オルトランDX粒剤」を使っている方が多いでしょうね。

 

「オルトランDX粒剤」は、とても使い勝手が良く、わたしもずっと愛用しています。

 

含まれる害虫駆除の有効成分と適用害虫は?

は、新しく出た「ベニカXガード」と従来からある「オルトランDX粒剤」の比較をしてみましょう。

 

商品名 害虫駆除の有効成分 適用害虫
ベニカXガード クロチアニジン アブラムシ類、コナジラミ類、コガネムシ類幼虫、ハモグリバエ、アオムシ
オルトランDX粒剤

クロチアニジン

アセフェート

アブラムシ類、アザミウマ類、コガネムシ類幼虫、クロケシツブチョッキリチュウレンジハバチ

 

「ベニカXガード」に含まれている害虫駆除の有効成分は「クロチアニジン」。そして「オルトランDX粒剤」に含まれている害虫駆除の有効成分は「クロチアニジン」と「アセフェート」です。

 

有効成分が多い分、害虫駆除については「オルトランDX粒剤」の方が優れているようです。とくに、バラにつきやすいアザミウマ、クロケシツブチョッキリ、チュウレンジハバチを「ベニカXガード」で駆除することはできません。

 

「ベニカXガード」は「ウドンコ病」や「黒星病」の予防ができる!これは画期的!

▲ウドンコ病で真っ白になったバラの蕾

つは「ベニカXガード」のすごさは害虫駆除能力ではなく病気予防の方にあります。バラの葉や蕾を真っ白にしてしまうウドンコ病や、一旦発生するとまたたくまに株全体に広がり葉を落とす黒星病の予防効果があるのです。

 

これまでバラの病気予防は、殺菌剤を噴霧器で散布する方法で対処するものでした。それが、株元に粒剤を散布することで予防できるなんて! たしかにこれは画期的です!

 

病気予防の有効成分は「BT菌」

Bt-toxin-crystals.jpg

▲BT毒素の結晶 出展/wiki

ニカXガードに含まれるウドンコ病や黒星病を予防する有効成分は「バチルス・チューリンゲンシス菌」(Bacillus thuringiensis)、通称「BT菌」です。

 

BT菌は、1901年(明治34年)日本の石渡繁胤(いしわた・しげたね)により、さらに1911年ドイツのエルンスト・ベルリナー(Ernst Berliner)により発見された病原菌です。

 

その後、BT菌は養蚕農家の粉塵、土壌、淡水、海底の堆積物など自然界のあちこちで発見され、鱗翅目(チョウやガ)、双翅目(カやハエ、アブなど)、甲虫類(カブトムシ、ホタル、テントウムシなど)を駆除する効果があることが確認されます。

 

現在では人体に安全な生物農薬(殺虫剤)として、BT菌を使った農薬(殺虫剤)が世界中で広く利用されています。

 


殺虫剤 野菜 天然成分 STゼンターリ顆粒水和剤 20g 住友化学園芸 M4

 

BT菌を利用した殺虫剤は、日本では「ゼンターリ」という商品が住友化学園芸から発売されています。「ゼンターリ」は、アオムシ、ケムシ、ヨトウムシ、ハマキムシなどの駆除に効果があり、オーガニック栽培に使える、水に溶かして葉面散布するタイプの農薬です。

 

「BT菌」を根から吸収させることで病気予防効果があることを日本で新発見!

▲殺虫成分のあるBT菌を根から吸収させると──

れまでBT菌は、葉面散布して害虫を駆除する目的で使われてきましたが、これを根から吸わせると、なんと病気の予防効果があることを日本で新発見しました! その仕組みを簡単に紹介します。

 

BT菌で病気予防ができる仕組み

▲BT菌が病気耐性を高めるイメージ図 出展/住友化学園芸公式

BT菌が根から吸収されると、「病原菌が入ってきた!」という刺激が株全体に伝達されます。これにより植物の防御機能(病気に対する抵抗力)を高める植物ホルモンが分泌されるので、病気が予防されるという仕組みだそうです。

 

人間が、無毒化したウイルスをワクチンとして接種することで、病気耐性を獲得する仕組みによく似ていますね。

 

こうして予防できる植物の病気は、ウドンコ病、黒星病、灰色カビ病。これまで殺菌剤をスプレー散布しなければ予防できなかった病気が、粒剤を株元に撒いておくだけで予防できるなら、すごく楽です!

 

「ベニカXガード」の使い方

▲規定量を株元に散布して水やりすればOK

ニカXガードの使い方は簡単です。植えつけ時に土に混ぜ込むか、植えつけ後に土の上にばら撒きます。水やりの水で溶けて有効成分が土に染み込み、根から吸収されて効果を発揮します。

 

BT菌の使用回数に制限はありませんが、一緒に入っている殺虫成分クロチアニジンのバラでの年間使用回数は4回です。このため「ベニカXガード」の年間使用回数も4回までとなっています。殺虫効果はアブラムシで約1ヵ月間持続します。

 

バラ以外の植物に使用する場合は年間使用回数が変わります。詳しくは公式サイトで確認してください。

 

「ベニカXガード」を使うタイミング考察

▲「ベニカXガード」は手軽に使える病気予防剤

に、バラ栽培で「ベニカXガード」を使うタイミングを考えてみます。病気や害虫駆除に使いたい主なタイミングは、①ウドンコ病予防、②アブラムシなどの害虫駆除、③黒星病予防、④コガネムシの幼虫駆除。この4回のタイミングでしょう。

 

1、ウドンコ病予防/2月下旬~3月初旬

病気予防では、その病気が発生する少し前から予防的に使う方がいいので、冬の植え付け時、またはウドンコ病が発生する少し前の2月下旬~3月初旬に散布します。

 

年間使用回数が少ないのを考慮して、植え付け時ではなく2月下旬~3月初旬に散布する方が良さそうです。梅雨明け(7月中旬)まで効果が持続してほしいところです。

 

2、害虫駆除/4月中旬

アブラムシが発生する4月~6月は、ずっと効果が持続してほしいので、4月中旬に2回目散布。

 

3、黒星病予防/6月初旬

梅雨時期~10月は黒星病が出やすいので、予防効果が持続してほしいところ。前回の散布から1.5ヵ月あけた6月初旬散布が良さそうです。

 

4、コガネムシの幼虫駆除/8月中旬

6月~10月にコガネムシの成虫が発生し産卵するので、夏を中心に幼虫駆除したいところです。8月中旬に散布すればコガネムシの幼虫対策になりそうです。

 

以上の4回がいいタイミングかなと思いますが、年間4回までしか使えないのはちょっと少ないです。さらに、害虫駆除を目的とした4月中旬の散布は「オルトランDX」を使った方が適用害虫が多いので良さそうです。

 

「ベニカXガード」を実際に使ってみた効果は?

▲ウドンコ病予防効果はそれなりありそう

が家はベランダ栽培なので、毎年ウドンコ病に悩まされます。一昨年から育てている青バラの「ノヴァーリス」も、病気耐性が高い品種のはずなのに、いつも株じゅう真っ白になるほどウドンコ病が発生します。

 

そこで、今年の春は2月下旬に「ベニカXガード」を散布してみました。

 

上の写真は4月中旬の「ノヴァーリス」の葉です。しっかりウドンコ病が発生しています。が、昨年に比べれば、各段に少ないです。

 

その後、ウドンコ病治療に驚くほど効果的な*「重曹オイルスプレー」をまわりのバラに散布したため、「ノヴァーリス」のウドンコ病もなくなりました。「ノヴァーリス」に「重曹オイルスプレー」を散布していませんが、環境が改善されたために「ノヴァーリス」自身の力でウドンコ病を克服できたようです。

 

*「重曹オイルスプレー」については次の3つの記事を参考にしてください

 

▼「重曹オイルスプレー」紹介の記事

 

▼「重曹オイルスプレー」の散布後の影響を検証する記事

 

▼「重巣オイルスプレー」の使い方を提案する記事

 

▲6月8日の「ノヴァーリス」の様子

 

2月下旬に「ベニカXガード」を散布して以降、5月ごろ1度だけハンドスプレー式殺虫剤(アタックワンAL)を散布しました。「ニームオイル」も1度だけ散布した覚えがありますが、それだけで、ほぼまったく害虫被害がありません。

 

たまたまかもしれませんが、こんなに害虫被害のない年は初めてです。

 

理由は、やはり環境改善ではないかと思います。ウドンコ病がなくなったため、バラの葉が健康に丈夫に育てるようになったので、害虫被害も減ったのだろうと思います。

 

我が家のベランダでは、もともとそんなに害虫被害が多い方ではなく、「ベニカXガード」で対処できない「アザミウマ、クロケシツブチョッキリ、チュウレンジハバチ」は、ほとんど見かけないので、良好な結果が得られましたが、庭植えの方には害虫対策としては物足りないだろうと思われます。

 

「ベニカXガード」を使うさいに注意したいデメリット

こまで「ベニカXガード」の有効性を紹介してきましたが、注意したい点もあります。「ベニカXガード」に含まれる殺虫成分は「クロチアニジン」です。「クロチアニジン」は年間の使用回数が4回までと決められています。

 

「クロチアニジン」は、「ベニカXガード」以外のさまざまな農薬に含まれています。たとえば「ベニカXネクストスプレー」にも、「ベニカXファインスプレー」にも、「オルトランDX」にも含まれています。

 

つまり「ベニカXガード」を年間4回使うと、もう「ベニカXネクストスプレー」も「ベニカXファインスプレー」も「オルトランDX」も使えなくなるのです。どれも多くの愛用者がいる優れた商品なので、併用できないのは大きなデメリットです。

 

「ベニカXガード」を使うなら、それ以外は「クロチアニジン」を含まない薬剤を選んで!

剤を土に撒くだけで病気予防ができる便利な「ベニカXガード」ですが、これだけでバラの害虫駆除が万全とはいえません。併用する薬剤は、「ベニカXガード」に使われている「クロチアニジン」を含まない商品を選ばなければいけません。

 

ハンドスプレー式薬剤なら「アタックワンAL」


for the ROSE アタックワンAL(1000ml)

 

害虫を見つけたときにサッと使えるハンドスプレー式薬剤なら「アタックワンAL」がオススメ。有効成分は「ビフェントリン」と「ミクロブタニル」なので、「クロチアニジン」を含んでいません。

 

年間使用回数を気にせず何度もくり返し使えるところも優秀です。

 

株元に散布する殺虫剤なら「GFオルトラン粒剤」


殺虫剤 住友化学園芸 GFオルトラン粒剤 200g

 

株元に散布して害虫駆除するタイプのオルトラン粒剤には「GFオルトラン粒剤」と「オルトランDX粒剤」があります。商品名が似ていて紛らわしいのですが、含有成分はぜんぜん違います。

 

「オルトランDX粒剤」は「クロチアニジン」を含むので、「ベニカXガード」と併用する場合は、両方合わせて使える回数は年間4回までになります。

 

一方、「GFオルトラン粒剤」の有効成分は「アセフェート」なので、「ベニカXガード」と併用することができます。「アセフェート」のバラへの年間使用回数は5回までです。アブラムシ、ヨトウムシ、アオムシの駆除効果があります。

 

高さ1mちょいまでしか効果が期待できない

▲つるバラ全体に効果を行き渡らせることはできない

れは「ベニカXガード」に限らず、根から吸収させるタイプの薬剤すべてに言えることですが、バラが薬剤を吸い上げることができるのは樹高1mちょいまでです。

 

このため、1mちょっとまでに管理している木立ちバラなら樹全体に効果が発揮されますが、もっと樹高の高いつるバラでは上の方は効果を期待できません。

 

ほかの薬剤を併用する必要があります。

 

まとめ

今回は、2020年春に住友化学園芸から発売された「ベニカXガード」について紹介しました。株元に撒くだけで病気予防ができる画期的な薬剤です。

 

実際に使ってみた結果もじょうじょう。皆さんにオススメしたいのですが・・・一緒に混入されている殺虫成分「クロチアニジン」のせいで年間使用回数が4回までと制限され、さらに殺虫効果としては「オルトランDX粒剤」に劣り、そのうえ併用する薬剤がものすごく制限されるという使いづらさがあります。

 

BT菌に病気予防効果があるというせっかくの新発見も、これでは使いにくくて困ってしまいます。

 

害虫駆除は従来の「オルトランDX粒剤」にまかせて、病気予防に特化した「BT粒剤」を商品化してくれた方が使いやすいと、住友化学園芸さんに思わず提案しちゃいました。もし商品化されたら絶対買います!

 

バラにはやや使いにくいところのある「ベニカXガード」を、上手に利用する際の参考にしてください。

 

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