3月に入るとバラの新芽がふくらみ、じょじょに若葉が展開してきます。若葉が広がってきたこの時期は、「芽かき」の適期です。「芽かき」のやり方を紹介します。


「芽かき」とは?

▲直立樹形なので、狭い場所に若葉が込み合っている株

芽かき」とは、不要な芽を掻きとること。不要な芽を掻きとることで、残した芽に十分栄養が回るようにする作業です。「芽かき」をする目的は2つあります。

 

1、育てたい芽だけを選別し残すことで、養分の分散を防ぐ

2、向きの良い芽だけを残すことで、どの枝にも日光が当たる良い樹形にできる

 

つまり、きちんと「芽かき」をすることで、エネルギーの最適化ができ、病虫害にかかりにくいきれいな樹形に整えることができるのです。今回は、「芽かき」の適期と、具体的なやり方を紹介していきます。

 

「芽かき」の適期は?

▲枝げんこつ部分から一斉に吹いてきた芽。「芽かき」にはまだ早い

方により早い・遅いはありますが、啓蟄前後からバラの芽は一斉に吹き出てきます。とくに枝げんこつ剪定をしたところからは、同じ場所からたくさんの芽が出ているはずです。

 

上の写真でも4つの芽が見えますね。この芽を全部伸ばしたら、当然どれも貧弱な枝になってしまいます。いずれこの芽は、いい芽だけを残していくつかは掻きとってしまう必要があります。

 

でも、この段階で「芽かき」をするのは時期尚早です。

 

まだ若葉が展開していない芽は、遅霜やちょっと触れただけでも、枯れたり取れたりすることがあるからです。もう少し待ちましょう。

 

▲2~3枚若葉が展開したころが適期

 

「芽かき」の適期は、若葉が2~3枚展開してきたころです。これくらいになれば、そう簡単に枯れたり取れたりすることはありません。

 

「芽かき」は何度も行うもの

▲育った大きな芽はハサミでカット

かきは、若葉が開いてきたころに1度だけ行う作業なわけではありません。不要な芽が出てきたらそのつど取り除いたり、残した芽が何かのトラブルでダメになったら下の段まで切り戻したり、今後も株全体を見ながら何度も「芽かき」や剪定を繰り返し、株を良い状態にもっていきます。

 

「芽かき」の実践的なやり方・考え方

▲直立樹形で芽が込み合っているパティオローズ

は、実際の「芽かき」のやり方を順を追って紹介します。

 

上の写真の株は黄色のパティオローズです。花径10cmていどの大輪花を咲かせるので、ほぼハイブリッド・ティー系統と同じような育て方をします。「芽かき」のやり方は、花の大きさで少し変わります。もっと小さい花の場合の注意点は、最後に紹介します。

 

このパティオローズは直立樹形のため2本の主幹の間隔が狭く、しかも同じ場所からたくさんの芽が出ているので込み合っています。若葉が2枚ていど開いてきたので、これを「芽かき」していきます。

 

手順1、枝1本ずつ、方向の良い芽を選別する

太い主幹から分かれた枝その1

▲枝の途中からも複数、芽吹いている

幹は2本あり、太い方の主幹は途中で3つに枝分かれしています。まず太い方の主幹から分かれた赤いラインの枝から見ていきます。

 

▲残す芽を選別する

 

外側に向かう、方向の良い芽を選んで残します。枝先にひとつ、付け根の両サイドに2つある芽が方向も良く、生育状態もまぁまぁなので、これを残すことにします。

 

▲不要な芽を指で落としたところ

 

不要な芽を指で掻き落としました。まだ小さな芽が残っていますが、とりあえずこのままで。いずれこの芽が伸びてきたら、また「芽かき」します。

 

太い主幹から分かれた枝その2

▲もう1本の分枝をチェック

ぎに、太い方の主幹から枝分かれしたもう一方の枝を見ます。

 

▲枝げんこつ部分から大きな2つの芽

 

枝げんこつ剪定したところから2つの勢いの良い芽が伸びています。芽の方向もいいし、十分太さのある枝から出ているので両方残すことにします。この後の生長次第では、どちらか取り除くかもしれませんが、今の段階では残します。

 

太い主幹から分かれた枝その3

▲短い分枝をチェック!

らに、太い主幹から分かれた3本目の短い枝を見ていきます。先端と付け根の両方から勢いの良い芽が伸びています。この芽は両方残すことにします。

 

▲同じ場所から出ている不要な芽を落とす

 

頂芽の脇から出ている小さな芽を指で掻き取ります。

 

とりあえず、太い方の主幹はこれで完了です。

 

細い主幹

▲細い主幹から2つの勢いの良い芽

う1本の主幹は細く、かなり若々しい枝です。去年遅くに、たぶん秋に発生したベイサルシュートでしょう。先端と、その下から新芽が出ています。どちらも芽の向きが良く、大きく育っているので両方残すことにします。

 

手順2、株全体を見て、不要な芽を落とす

▲株全体をチェック!

1本ずつの「芽かき」が終わったら、株全体を見ます。すると、赤丸で囲んだ芽が青丸で囲んだ芽の下になり、日差しが届きにくくなっていました。

 

少し悩んだのですが、結局、青丸で囲んだ芽を両方落とすことにしました。(矢印は、枝の間隔を広げるために渡したブリッジです。これについてはまた別のページで紹介するので、今は無視してください)。

 

▲大きい芽はハサミの先でカット

 

青丸の芽を落とす決め手になったのは、主幹の太さと芽の数です。

 

写真左の主幹は太いけれど枝分かれが多く、全部で7つの芽があります。いくら太い主幹とはいえ、花を7輪以上咲かせるのは無理だろうと判断して減らすことにしたのです。写真でハサミを入れている芽と、ちょうど裏側にある少しヒョロリとしている芽を落としました。

 

写真右側の主幹は細いので、花1輪が精いっぱいだろうと思います。なので頂芽だけを残し、もうひとつは落としました。

 

▼枝を広げるためのブリッジについては、こちらをどうぞ。

「芽かき」完了

▲「芽かき」作業後の株

かき作業が完了しました。けっこう大きな芽も落としたので、スカスカの見た目になってしまいましたが、花枝になるだろう芽が6本あります。しかも株の裏側にベイサルシュートになるだろう芽が顔を出しているので、この株としては十分でしょう。

 

枝でブリッジを渡したので主幹同士の間隔も広がり、日光が当たりやすい樹形になりました。

 

中輪・小輪品種の「芽かき」

▲「芽かき」でより良い樹形に 写真提供/ハナたろう

幹に芽をいくつ残すかは、花の大きさと密接な関係があります。たとえば鉛筆の太さの主幹に、大輪品種なら花枝になる芽を1~2本伸ばすことができます。それより多く芽を残しても、花を咲かせられない細い枝にしかなりません。

 

中輪品種なら、3~4本の花枝を伸ばしても花を咲かせることができます。小輪品種なら、もっとたくさんの花枝を伸ばしても花を咲かせられます。

 

上の写真はミニバラです。ミニバラは竹串ていどの細い枝でも花を咲かせることができるので、基本的にミニバラに「芽かき」は必要ありません。しかしミニバラでも「芽かき」をしてしっかりした芽を選別することで、写真のようによい樹形で状態の良い花が期待できます。

 

まとめ

今回は「芽かき」の適期と実際の方法を手順を追って紹介しました。記事作成のためもあり、今回わたしは一気に「芽かき」しましたが、ここまでやる必要はありません。毎日バラを見回るついでに、葉がごちゃごちゃ込み合っているところを見つけたら、その都度、何度でも繰り返しやればいいと思います。

 

じつは「芽かき」は、必ず必要な作業ではありません。「芽かき」をしなかったから枯れるとか弱るとか、そういうものではありません。でも「芽かき」をした方が良い結果につながりやすいのも確かです。

 

とくに今回の株のように直立樹形のバラだと、狭い範囲にごちゃごちゃと芽が出ている状態になりやすいので、「芽かき」の効果は大きいと思います。

 

バラ栽培に少し慣れてきたら、「芽かき」にチャレンジしてください^^

 

 

▼季節ごとのバラの手入れ一覧は、こちらからどうぞ

 

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