バラはその花の美しさ、庭に咲いたときの姿の美しさとともに、香りの豊かさでも人を魅了し続けています。女性用の香水のほぼ100%にバラの香りが使われているといわれているほどです。せっかくバラを育てるなら、香りの良さにもこだわりたいですね。今回は、バラの香りの種類と、芳醇な香りをもつバラの強香品種オールド・ローズの中から紹介します!

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バラの香りには個性がある


▲ダマスク香の強香品種「カザンリク」(ロサ・ダマスケナ・トリギンテペタラRosa × damascena trigintipetala

「香りのないバラは、笑わない美人と同じ」という言葉があるそうです。確かに、バラに香りがなかったら、こんなに人々を魅了する花にならなかったかもしれません。

 

バラの香りというと、どんな香りを想像するでしょう? 甘く濃厚でどこかウェットな香りでしょうか? それともややコスメっぽい印象を含んだツンとくる香りでしょうか? 一口にバラの香りといっても、じつはさまざまな個性があります。

 

当サイトでは、バラの香りを3回に分けて紹介しています。今回は「ダマスク香」と「ティー香」を中心にした「オールド・ローズの香り」について紹介しています。

 

「ブルー香」を含む「モダン・ローズの香り」、さらに「アニス香」に代表される「イングリッシュ・ローズの香り」については、それぞれ別のページをご覧ください。


▼モダン・ローズの香りと強香品種について、詳しくはこちらをご覧ください。


▼イングリッシュ・ローズの香りの種類と強香品種については、こちらをご覧ください!


バラの花色別の強香品種一覧をまとめています。

▼黒赤・赤・白・紫のバラの強香品種一覧

▼淡ピンク・ピンク・ローズ色のバラの強香品種一覧

▼黄色、オレンジ色、杏色、複色&ミニバラの強香品種一覧

 

オールド・ローズの香りは、香水に使われるローズ精油の「ダマスク香」が基本

▲ロサ・ケンティフォリア(ローズ・ド・メ)

く濃厚なバラの香りの代表はオールド・ローズのダマスク香です。

 

香水の原料として栽培されている品種は、ブルガリアやトルコの「ダマスク・ローズ」や、フランスの「ケンティフォリア・ローズ」が有名です。これらはどちらも、もともとヨーロッパに自生していた原種バラを基本に品種改良されたオールド・ローズです。いずれも素晴らしいダマスク香をもっています。

 

オールド・ローズの香りはダマスク香を基本にしながら、系統により「ティー香」や「ムスク香」をもつ品種もあります。

 

ややコスメっぽくてツンとくるのはチャイナ系統のティー香に由来する香りです。

 

ヨーロッパに中国の原種バラがもたらされたのは、18世紀の終わりから19世紀初頭にかけてのことでした。中国のバラは、ヨーロッパのバラにはない「ティー」の香りをもっています。「ティー」の香りはその名の通り、甘い紅茶のような香りです。これがモダン・ローズを代表する「ハイブリッド・ティー系統」のバラの香りに受け継がれました。もともとのティー香にフレッシュな香りが加わり、モダン・ローズの香りはコスメっぽい香りのものが多くみられます。

 

また、西アジア・北アフリカ原産のロサ・モスカータは「ムスク」の香りをもっています。

 

系統別オールド・ローズの香り

ダマスク系統の香りは、甘く濃厚なダマスク香



▲ダマスク香の代表品種「カザンリク」(ロサ・ダマスケナ・トリギンテペタラRosa × damascena trigintipetala

元前48年にエジプトを統治したクレオパトラは、バラの花びらをひざの高さまで床に敷き詰めシーザーやアントニウスを迎えたといわれています。そんなに大量のバラを野から摘んできたとは考えにくいので、この頃には、バラの栽培がおこなわれていたと考えられています。このバラはロサ・ダマスケナ(Rosa × damascenaだったと推測されています。

 

かつてシリア一帯で栽培されていたロサ・ダマスケナは、11世紀末~13世紀末までの長期にわたり派遣された十字軍により、ヨーロッパに渡りました。

 

現在、ブルガリア中央部のカザンラク町近郊のバラの谷では、ロサ・ダマスケナの変種、ロサ・ダマスケナ・トリギンテペタラ(Rosa × damascena trigintipetala)が香料を採るために栽培されています。ロサ・ダマスケナ・トリギンテペタラは、栽培されている地名から「カザンリク」の別名で呼ばれています。

 

カザンリクの花びら3トンで、たった1000mlの精油しか採れないそうです。バラの精油がどれだけ貴重かが分かりますね!

 

じつはバラの精油(ローズ・オイル)の世界最大の産出国はトルコですが、ブルガリア産のローズ・オイルの方が品質が高いとされています。

 

▼ダマスク系統について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

ダマスク系統の代表的な強香品種

ロサ・ダマスケナ・トリギンテペタラ

別名カザンリク

Rosa damascena trigintipetala

ピンク  

オータム・ダマスク

別名キャトル・セゾン

Autumn Damask

ピンク

 マダム・アルディ

Madame Hardy



 セルシアーナ

Celsiana

淡ピンク
Celsiana / mmmavocado

 ブラッシュ・ダマスク

Blush Damask

ピンク
Rosfest i Simrishamn / cwasteson

 

ガリカ系統の香りは、甘いダマスク香

▲ガリカ系統の強香品種「シャルル・ド・ミル」

サ・ガリカは、現在のフランス南部を中心に自生していたバラです。ロサ・ガリカを交配の親にした系統のバラをガリカ系統といいます。

 

ダマスク・ローズ(ロサ・ダマスケナ)は、ロサ・ガリカとロサ・フェニキアの自然交雑種と考えられており、ロサ・ガリカはロサ・ダマスケナの親にあたります。ロサ・ガリカの香りは、ロサ・ダマスケナによく似たダマスク香です。

 

▼ガリカ系統について、詳しくはこちらをご覧ください。




ガリカ系統の代表的な強香品種

エンプレス・ジョセフィーヌ

Empress Josephine

 ピンク

カミュ

Camaieux

 白と濃ピンクの絞り
Roses in The Garden – Camaieux / BenGrantham

 シャルル・ド・ミル

Charles de Mills

ローズ・ピンク

 デュセス・ド・モンテベロー

Duchesse De Montebello

ピンク  

 

アルバ系統の香りは、爽やか

▲アルバ系統を代表する「ロサ・アルバ・セミプレナ」は中香

サ・アルバは、ロサ・ダマスケナとロサ・コリイフォリア・フロエベリーの自然交雑種といわれています。ロサ・アルバを親にして交配されたアルバ系統のバラは、ガリカ系統やダマスク・ローズのダマスク香とは少し異なり、爽やかな香りが特徴です。かすかにレモンの香りもします。

 

白バラには、しばしばロサ・アルバに特徴的な爽やかな香りを受け継いでいる品種があります。

 

▼アルバ系統について詳しくは、こちらをご覧ください。

 

アルバ系統の代表的な強香品種

クイーン・オブ・デンマーク

Königin von Dänemark

濃ピンク
Rosa alba “Königin von Dänemark” ( Booth 1826 ) / Nouhailler

フェリシテ・パルマンティエ

Félicité Parmentier

 淡ピンク  

 

ケンティフォリア系統の香りも、ダマスク香

▲ケンティフォリア系統の強香品種「ケンティフォリア・ローズ(ローズ・ド・メ)」

サ・ケンティフォリアは、ロサ・ガリカ、ロサ・フェニキア、ロサ・モスカータ、ロサ・カニナさらにダマスク・ローズ、アルバ・ローズと、さまざまな原種が複雑に関わった交雑種です。豊かな香りをもつ品種が多く、香りの系統としてはダマスク香。そこに少しハーブの香りを含んでいるとされます。ケンティフォリア系統のバラは、香料を採るため、17世紀に大量にオランダで栽培されていました。

 

現在、南仏グラースでは、ケンティフォリア・ローズ(別名ローズ・ド・メ)がバラの精油を採るために栽培されています。

 

▼ケンティフォリア系統について詳しくは、こちらをご覧ください。

 

ケンティフォリア系統の代表的な強香品種

ジュノー

Juno

 白ピンク

ファンタン・ラトゥール

Fantin Latour

淡ピンク
Centifolia ‘Fantin-Latour’ / Rhian vK

 ブランシュ・フルール

Blanchefleur


Blanchefleur / mmmavocado

 ロサ・ケンティフォリア

Rosa centifolia

 ピンク
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モス系統の香りもダマスク香

▲モス系統の代表品種「コモン・モス」

ンティフォリア系統から突然変異で生まれたモス系統のバラにも、素晴らしい香りをもつ品種がたくさんあります。モス系統の香りもケンティフォリア系統と同じ、ダマスク香です。

 

▼モス系統について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

モス系統の代表的な強香品種

グロワール・ド・ムッシュ

Gloire des Mousseux

 淡ピンク  

サレ

Salet

ピンク

シャポー・ド・ナポレオン

Chapeau de Napoleon

 

濃ピンク

ブラック・ボーイ

Black Boy

 赤紫  

ブランシュ・モロー

Blanche Moreau


rosa Blanche Moreau / Apua

ロサ・ケンティフォリア・ムスコーサ

Rose centifolia muscosa

ピンク
Rosa centifolia muscosa “Moosrose” (Holland 1796) / Nouhailler

 

ティー系統の香りは、ティー香


▲ティー香の祖「ロサ・ギガンティア」

18世紀の終わりから19世紀初頭にかけて、中国からヨーロッパにもたらされた4種類のバラのうち、ロサ・ギガンティアはティー香の祖ともいわれるバラです。

 

ティー香は、その名の通り紅茶を思わせる香りで、上品で優雅な印象です。ほとんどの香り立ちは中程度で、強香品種はあまりありません。

 

▼ティー系統について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

ティー系統の代表的な強香品種

レディ・ヒリンドン

Lady Hillingdon

 

淡杏

*フランシス・デュブリュイ

Francis Dubreuil

濃赤

*フランシス・デブリュイは、含まれる香り成分としては「ティー香」が多いのですが、人が嗅いだときは、ダマスク系の香りとして感じられます。

 

ロサ・モスカータはムスクの香り

Rosa moschata
Rosa moschata / mmmavocado

西アジア、北アフリカ原産のロサ・モスカータは、ムスク(じゃこう)の香りが特徴です。ややスパイシーなダマスク香ともいわれます。

 

まとめ

バラをさらに魅力的にしている香りについてまとめてみました。バラには、さまざまな個性的な香りがあるのが分かっていただけたかと思います!

 

オールド・ローズの香りは、ダマスク系統のバラに代表されるダマスク香と、中国原産のロサ・ギガンティア由来のティー香に分けられます。アルバ系統のバラもダマスク系統ですが、爽やかなレモンのような香りを含んでいます。この香りは白バラに特徴的な香りです。あまり強い香りではありませんが、ロサ・モスカータの系統のバラにはムスク香があります。

 

モダン・ローズの香りとイングリッシュ・ローズの香りについては、別のページでまとめています。

 

▼モダン・ローズの香りと強香品種は、こちらをご覧ください。

▼イングリッシュ・ローズの香りの種類と強香品種については、こちらをご覧ください。

 

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