ロサ・ケンティフォリア(Rosa × centifolia)を親として交配されたバラがケンティフォリア系統です。ロサ・ケンティフォリアは別名「キャベッジ・ローズ」「ハンドレッド・ペタルド・ローズ」とも呼ばれます。どちらも花びらの枚数が多い特徴を捉えた別名です。
ケンティフォリア系統は、ロサ・ケンティフォリアを親とするバラ
▲「Rosa centifolia」ピエール・ジョゼフ・ルドゥテ
ロサ・ケンティフォリア(Rosa × centifolia)は、ロサ・ガリカ、ロサ・フォエニキア、ロサ・モスカータ、ロサ・カニナさらにダマスク・ローズ、アルバ・ローズと、さまざまな原種が複雑に関わった雑種で、16世紀ごろ、おそらくオランダで作出されたものだろうと考えられています。
ケンティフォリア系統のバラは、ロサ・ケンティフォリアを親として作り出された一連のバラをさします。ケンティフォリア系統のバラは、香料を採るため、17世紀に大量にオランダで栽培されました。
ケンティフォリア系統のバラを総称して「ケンティフォリア・ローズ」と呼んでいます。
「centifolia」は「多くの花びら(または葉)」の意味で、日本語表記では「ケンティフォリア」または「センティフォリア」と書く場合もあります。
枚数の多い八重咲きの、オールド・ローズらしい花形
▲ケンティフォリア系統の「ジュノー」
ケンティフォリア系統のバラの特徴は、その名前が示す通り、花びらの多さです。薄い花びらが幾重にも重なり、丸くカップ状に咲く様子はとても優雅な印象です。ポンポン咲きや、ロゼット咲き、中央が渦を巻いて4つに分かれるクオーター・ロゼット咲きになるものも多く、もっともオールド・ローズらしいバラといえそうです。
花径3cmていどの小花もありますが、写真の「ジュノー」は10cm近い大輪で、とても華やかです。
交配にダマスク・ローズが関わっていることから、豊かなダマスク香があります。
日本では「百弁バラ」と呼ばれていました。
春のみの一季咲きです。
誘引して楽しめる、大型のシュラブ樹形
ケンティフォリア系統のバラの多くは2m以上になる大型のシュラブ樹形。壁やフェンスに誘引して楽しめます。ただし小さな棘が密集しているので、誘引の際は注意が必要です。
ケンティフォリア系統は、現代でもとても人気のあるバラです。
多くの画家に愛されたバラ
▲エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ルブラン「 La Reine à la rose 」(1783年)
ロサ・ケンティフォリアは16世紀ごろにオランダで作出され、17世紀にオランダで大規模に香料採取のため栽培されていたことから、17~18世紀のフランドル派の画家が、多くのケンティフォリア系統のバラの絵を残しています。
18世紀で最も有名な女性画家と称されるエリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ルブランが描いたマリー・アントワネットの肖像「 La Reine à la rose 」(1783年)でマリー・アントワネットが手にしているバラがロサ・ケンティフォリアだったといわれています。
また、「バラ図譜(Les Roses)」を著しバラの画家として知られるピエール・ジョゼフ・ルドゥテ(1759- 1840)も多くケンティフォリア系統のバラを描きました。
ケンティフォリア系統は、オールド・ローズ基本4種のうちのひとつ
オールド・ローズにはさまざまな系統がありますが、ヨーロッパで古くから親しまれてきた代表的な4つの系統を「オールド・ローズの基本4種」と呼んでいます。
アルバ系統
ガリカ系統
ダマスク系統
ケンティフォリア系統とモス系統(モス系統は、ケンティフォリアの変異種です)
の4系統が「オールド・ローズの基本4種」で、ケンティフォリア系統はこのうちのひとつです。オールド・ローズの基本4種は、どれも花が美しいばかりでなく、香りもすばらしいのが特徴です。
まとめ
花びらの枚数が多く、ポンポン咲きや、ロゼット咲き、クオーター・ロゼット咲きなど、いかにもオールド・ローズらしい花が楽しめるのがケンティフォリア系統のバラです。花が美しいだけでなく、香りも豊か。心まで豊かになりそうな、素敵なオールド・ローズですね!