「ソフトピンチは指で折る」「ハードピンチはハサミで切る」と覚えていませんか?
じつは、この2つの違いは道具ではありません。柔らかい枝を切るのか、硬い枝を切るのかによって、その後の枝の育ち方や目的がまったく変わります。
この記事では、実際の写真を見ながら、ソフトピンチとハードピンチの本来の違いと、場面に応じた使い分けを分かりやすく紹介します。
まず比較!ソフトピンチとハードピンチの違い
ピンチとは?
ピンチというのは日本語で「摘芯」(てきしん)といって、枝の生長点(=芯)を摘んで取り去ることを意味します。ピンチは、芯に集中していた生長しようとするエネルギーを一旦解除し、再分配する目的で行う作業です。
このピンチには「ソフトピンチ」「ハードピンチ」の二つの方法があります。日本では「ソフトピンチは指で折り取る方法」、「ハードピンチはハサミで切り取る方法」と説明されることが多いです。
比較表
まず、この二つのピンチの違いを表で比較してみましょう。
| ソフトピンチ | ハードピンチ | |
| 切る場所 | 柔らかい枝先3節ていど | 硬くなった枝 |
| 目的 | 枝をさらに伸ばす | 枝の長さをそこで留める |
| その後の育ち方 | 元の枝と一体化して1本になる | 枝分かれする |
| 向く場面 | 主幹を育てるベイサル | 樹形を整えるサイド・地植え |
本来の意味は「柔らかい枝」と「硬い枝」
海外では soft pinch、hard pinch は、枝の柔らかさ・硬さに応じて使い分けられており、日本でよく説明される「指で折る・ハサミで切る」という区別ではありません。そしてこの二つのピンチは、それぞれ目的やその後の生長のしかたが違います。
この記事では、実際にどういう場面でソフトピンチを使うのか、どんな目的でハードピンチを使うのか、そしてピンチ後の枝がどう育っていくのかまで、ていねいに解説していきます。
シュート処理の基本のやり方は、こちらの記事をご覧ください
バラと小さなガーデンづくり
【基本】バラのシュート処理(シュートの手入れ)の基本|ベイサル・サイドシュートの育て方
ソフトピンチとは?
梅雨時期を中心に、株元から発生するベイサルシュートを適切に管理するために行うのがソフトピンチです。
ソフトピンチのやり方
▲シュートの枝先3節ていどをカットするソフトピンチ
上で紹介したようにソフトピンチとは「枝の柔らかいところをカットする」方法です。写真のように、まだ柔らかい枝先3節(葉3枚分)ほどを取り除きます。
ベイサルシュートのシュート処理の場合は、高さ30cmを目安にソフトピンチを行います。
▲枝が柔らかいので、ポキリと折れる
これくらい柔らかい枝先なら指で簡単に折り取れるので、通常ソフトピンチは指で行います。もちろん、ハサミでカットしても構いません。
こうすることで、冬剪定で困らない高さに芽をつくり、ほしい長さを確保して、来年以降に主幹として使いやすい良い枝をつくるのです。
ベイサルシュートのための、この特別な手入れは、鉢植えの木立ちバラに限って行われます。
ソフトピンチ後の枝の育ち方
▲頂芽が動き出し生長する
ソフトピンチした後に一番上になった芽(頂芽)が動き出し、やがて枝に育っていきます。
この新しい枝はとても勢いが良く、元の枝より太くなることもしばしばです。
▲やがて古い枝と新芽の枝が1本につながる
さらに日数を経ると、赤〇で囲んだもともとの枝先が横に押し出され、新しく出た枝ともとの枝が一直線につながります。
柔らかい枝先は再生力が強いので、こうしてピンチなどなかったかのように、枝がキレイに再生されるのです。
ソフトピンチは枝を止める作業ではありません。「長さを保ちながら、さらに良い主幹へ育てる手入れ」です。
30cmより前に蕾が付いたら、蕾ごとソフトピンチする
まだ30cmの高さになる前に蕾がついた場合は、その時点で同じように蕾ごとソフトピンチします。
蕾がまだ小さいうちにソフトピンチできれば、もともとの枝と新しく芽吹いた枝がシームレスにつながり1本になります。
蕾がかなり大きくなっている、あるいは花が咲く頃には、枝はすでに硬く成熟しています。この段階で切ると、枝先を一本につなげることはできず、ハードピンチと同じように枝分かれする育ち方になります。
ベイサルシュートに蕾や花が付いたときの判断は、こちらの記事で詳しく紹介しています
バラと小さなガーデンづくり
バラのシュートの花は咲かせちゃダメ?理由と正しい管理方法【初心者YOUのQ&A】
ハードピンチとは?
▲枝の硬いところをカットするのがハードピンチ
枝の硬いところをカットするのがハードピンチです。もう指で折り取ることができないので、剪定バサミを使って切り取ります。
ハードピンチ後の枝の育ち方
▲左右から角度をつけて細い枝が伸びてくる
ハードピンチした枝は、1~3本ていどの細い枝に枝分かれします。
しかもソフトピンチのように、もともとの枝と新しい枝を1本につなぐことができず、角度がついてしまいます。
▲たとえ1本しか新しい枝が伸びなくても、主幹になれない細い枝
たとえ1本しか新しい枝が伸びなくても同じです。
もともとの枝が硬いので、新しい枝は横に角度をつけて伸びることしかできません。新しい枝はもとの枝より細くなってしまい、主幹ではなく側枝にしかなりません。
つまりハードピンチは枝を伸ばすためではなく「その高さで枝を留め、枝分かれさせて樹形を整える手入れ」といえます。
なぜ育ち方が変わるの?
ソフトピンチとハードピンチでは、その後の枝の育ち方が大きく違います。
その理由は、切る場所の枝が「まだ生長中」なのか、「すでに完成した枝」なのかという違いにあります。
まだ柔らかい枝は「再生」できる
ベイサルシュートの枝先は、まだ細胞分裂が盛んな生長途中の組織です。そのため枝先を少し摘み取っても、一番上の芽がすぐに動き出し、新しく伸びた枝ともとの枝が自然につながります。
その結果、ピンチした跡が分からないほど一本の枝として再生し、さらに長く生長していきます。
硬くなった枝は「枝分かれ」する
一方、硬くなった枝は、すでに完成した枝です。この状態になると、切り口より上の部分を一本の枝として作り直すことはできません。
そのため切り口近くの芽が動き出し、それぞれが独立した枝として伸びます。
つまり、枝を伸ばすのではなく、枝分かれして樹形をつくる生長になるのです。
「soft」と「hard」は、枝の状態をあらわす言葉
海外でもsoft pinch、hard pinch という表現が使われますが、本来の soft と hard は、枝の状態を表した言葉です。
・soft=まだ柔らかく生長中の枝
・hard=硬く成熟した枝
つまり、「指で折る」「ハサミで切る」という意味ではなく、柔らかい枝を切るのか、硬い枝を切るのかという違いなのです。
結果として、柔らかい枝は一本の主幹として伸び続け、硬い枝は側枝へ枝分かれします。
だからこそ、どんな枝に育てたいかによって、ソフトピンチとハードピンチを使い分けることが大切なのです。
硬い枝を手で折り取るのはハードピンチと同じ
▲ギリギリ手で折れる硬さのところをピンチすると?
見た感じ、とても手で折れるように見えない上の写真のベイサルシュートを、なんとかギリギリ手で折れたと仮定します。すると、どうなるでしょうか?
▲これ以上シュートの長さを伸ばすことはできない
この後の新しい枝の育ち方は、上の図のようになるはずです。2本の細い側枝が角度をつけて伸びだし、ベイサルシュート自身の長さを伸ばすことはできません。つまりハードピンチをしたときと同じになるのです。
ソフトピンチは、枝先3節ていどの、指で簡単に折り取れる柔らかい場所(浅い位置)をつまむもので、ギリギリ手で折り取れるほど硬い場所(深い位置)でピンチしてはソフトピンチになりません。
ギリギリ手で折り取れるほど深い位置でピンチするのは、たとえハサミを使っていなくてもハードピンチなのです。
目的によって使い分ける
ではどんなケースでソフトピンチが適していて、どんなケースでハードピンチが適しているのか、いくつかの例を紹介しながら説明していきます。
ベイサルシュートにはソフトピンチ
▲株元から発生するベイサルシュート
株元から発生するベイサルシュートは、来年以降の主幹となる大切な枝です。この枝はシュート処理を行うことで、次の2点を備えた、良い主幹に育てます。
①冬剪定でちょうど良い高さに芽が多くある
②ほかの枝同等の高さまで枝分かれしていない
この条件を満たした主幹に育てるために、ベイサルシュートのシュート処理はソフトピンチで行います。
サイドシュートにはハードピンチ
▲主幹の途中から発生するサイドシュート
主幹の途中から発生するサイドシュートの場合は、すでに十分な高さがあるので、枝数を増やしこんもりとした樹形をつくるために使います。
このため、あるていど硬さのある場所をハードピンチして枝分かれさせます。
地植えではハードピンチ中心でもOK
▲地植えバラでは枝分かれさせるハードピンチが中心
鉢植えは養分が限られるうえに、鉢の分、地面から高さがあるので、冬剪定ではかなり低く切り戻す必要があります。だから特別なベイサルシュートの管理が必要になりますが、地植えではそこまで慎重にならなくても大丈夫です。
地植えのバラは根を広く張れるので養分をしっかり確保できるし、鉢がない分、冬剪定ではそこまで短く切り戻しません。そのため、もっとおおらかに管理するのが普通です。
地植えのベイサルシュートは、枝分かれさせたい高さでハードピンチして枝数を増やし、樹形をつくる方を優先します。
こんな場合はどうする?
ほかの枝と同じ高さになるまではソフトピンチ
▲緑の枝はベイサルシュート。枝先の赤いのは若葉
ベイサルシュートのシュート処理では「高さ30cmを目安にソフトピンチを」と説明していますが、それを越えて長くなってから気づいた場合は、やり方が少し変わってきます。
Aは、ほかの枝より高く飛び出してしまっているベイサルシュート。Bは、30cmよりは高いけれど、ほかの枝よりまだ低いベイサルシュートです。
Aの枝の場合
Aのベイサルシュートのように、ほかの枝より長く飛び出している場合。高さ30cmでソフトピンチすることができずに、気づいたらもうかなり長くなってしまったというケースです。
この場合、すでに株元の枝は硬くなっているため、30cmの高さでソフトピンチするのは諦めます。かといって、高さ30cmのところをハードピンチしても細い側枝が育つだけで良いベイサルシュートになりません。
ここは割り切って、すでに伸びた高さを活かし、上のほうで樹形づくりに生かす方向で考えます。
具体的には、ほかの枝より5cm(10cmでもOK)くらい下の位置でピンチします。ソフトピンチでもハードピンチでも、どちらでも構いません。
あえて言うなら、ハードピンチで枝分かれさせた方が枝葉を増やし、樹形を整える手入れにできます。
シュート枝はとても勢いがいいので、次に芽吹いた枝がすぐにほかの枝を追い越してしまいます。それを見越して、少し控えた長さにカットするのです。
これ以降は、夏の終わりまで花を咲かせないよう蕾を摘みつづけ、夏剪定をした後の秋花から咲かせて楽しみます。
Bの枝の場合
それに対してBのベイサルシュートの場合は、30cmを少し超えたくらいなら、通常通りに枝先を3節ほどソフトピンチします。
でも、もっと長く40cm以上になっているとしたら。そんな場合は、まだ枝先が柔らかい範囲のなかで、枝先4節ていどまで下げて、やや深くソフトピンチします。
これ以降は、ほかの枝と高さがそろうまで、蕾をつけ次第ピンチを繰り返します。
高さがそろった後は、長く伸び出すのを留めればいいだけなので、ソフトピンチでもハードピンチでもどちらでも構いません。夏の終わりまで花を咲かせないよう蕾を摘みつづけ、夏剪定をした後の秋花から咲かせて楽しみます。
まとめ│ソフトピンチとハードピンチは、目的で使い分けるのがポイント
「ピンチには2つのやり方があります。指で折り取るソフトピンチとハサミを使うハードピンチの2種類です」と、日本の多くのバラの先生が教えてくれます。
しかし本来の意味は、指やハサミの違いではなく、枝の柔らかいところを切るか硬いところを切るかの違いです。それにより、その後の枝の育ち方が変わってきます。ソフトピンチなら、もとの枝と新しく伸びた枝が1本につながるのに対し、ハードピンチは数本の細枝に枝分かれします。
つまり「ソフトピンチは枝を長く伸ばすための手入れで、ハードピンチは枝の長さを留め側枝を出すための手入れ」なのです。同じピンチでも、まったく別の目的で使われる手入れなのです。
これを理解していれば、シュートの枝先をソフトピンチすべきなのかハードピンチすべきなのか、目的に応じて使い分けることができます。
|
目的 |
おすすめの方法 |
| 主幹を育てたい | ソフトピンチ |
| 樹形を整えたい | ハードピンチ |
| 枝を長く育てたい | ソフトピンチ |
| 枝数を増やしたい | ハードピンチ |
ただし、これは木立ち樹形または小型のシュラブ樹形のバラを鉢栽培する場合です。地植えやつるバラ、大型シュラブの場合は、また考え方や方法が違ってきます。
シュートについては、知りたい目的別に、それぞれの詳しい記事へ進んでください。
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