バラの芽吹きから冬の休眠期まで、1年をとおしてバラがどんなふうに育つのか追いかける「そだレポ」企画です。今回は「アンナプルナ」の【新苗編】です。季節ごとに更新していくので、お楽しみに!


「アンアプルナ」は、こんなバラ

▲アンナプルナ 出展/はなはなショップ

ンナプルナは、フランスのドリュ社から2000年に発表された白バラです。日本で白バラといえば「ボレロ」が一番人気ですが、「ボレロ」と「アンナプルナ」はまったく違った雰囲気をもちます。

 

温かみのあるクリームホワイトの丸い花を横向きに咲かせる「ボレロ」に対して、「アンナプルナ」は透明感あるシルキーホワイトの花色で、丸弁高芯咲きの整った花を上向きに咲かせます。花径は8cmていどの中大輪花。凛とした美しい花と同時にダマスクにティの乗った強香も楽しめます。

 

樹高は1mていどと大きくなりすぎないので鉢栽培にも向き、四季咲き性が強いので繰り返し何度も花を咲かせます。

 

「アンナプルナ」はフランスで人気NO.1の白バラで、日本でも実際に育てた方にとても評判がいいとショップの紹介にありました。

 

「バラの家」のスコアは「樹勢/普通」「ウドンコ病耐性/普通」「黒星病耐性/普通」「耐陰性/弱い」「耐寒性/弱い」「耐暑性/普通」です。定期的な薬剤散布ができれば、問題なく育てられそうです。

 

今回育てる「アンナプルナ」の環境DATA

四国の西日の当たらない南東向きの場所(日照5時間程度)

今年の春から育て始めた新苗

今年の目標/新苗の育て方のお勉強

育てる人/アスタルティ

 

*バラの育て方は、育てる場所により、それぞれの木の状態により、また目的や好みによっても人それぞれです。ここで紹介する育て方は、一例として参考になさってください!

 

5月29日の「アンナプルナ」/鉢増しから1カ月ほど

▲樹高は60cm。主幹は3本 写真提供/アスタルティ

新苗は買ったことがないけど、育ててみたい!」という気分に駆られたわたしは、新苗売り場をウロウロしていました。でも、何を買うか決めていなかったので、迷っていたところに現れたのが「アンナプルナ」でした。

 

「白バラは汚れやすいから面倒なんだよね~。・・・でも、タグの花はキレイだなぁ」とか思いながら見ていると、主幹が3本ある生育のよさげな株に目が留まりました。

 

「どうしよ・・・ま、いっか。主幹が3本あれば2本くらい枯れても大丈夫でしょ♪」ってことで、お気楽に「アンナプルナ」の新苗を育ててみることにしました。

 

▲株元からベーサルシュートが発生 写真提供/アスタルティ

 

新苗でお迎えした「アンナプルナ」は根がよく張っていました。これなら最初から大きな鉢に植えても大丈夫と考え、9号相当のプラスチック鉢に鉢増ししました。土に「バラの培養土」(相原バラ園)を使い、元肥なしで植え付けています。

 

蕾はいくつか付いていましたが、元気そうな新苗だったのでひとつだけ咲かせることにして、残りは摘蕾しました。西日の当たらない場所に置き、管理し始めてから1カ月ほど経過したところです。

 

最初の1週間、様子を見たところ、枝枯れを起こす気配がなかったので、未熟な葉や内側に茂っていた葉を取り除きました。

 

やがて株元からベーサルシュートが出てきましたが、すでに主幹が3本あるので出開きになるかもしれません。肥料をあげたり日光に当てたりして様子を見ています。

 

▲清楚に咲いた新苗の花 写真提供/アスタルティ

 

1輪だけ咲かせた新苗の花は、まだ本領発揮できているとは言いがたいですが、タグに近いキレイな花でした。うろ覚えですが、強香かつ爽やかなダマスクの香りだったような・・・。

 

咲いたら早めに切って、木に負担がかからないようにしています。その後もいくつか蕾を上げましたが、すべて摘蕾しました。

 

この時期の手入れ

5/22 「殺菌剤+殺虫剤」の散布。「殺菌剤/フルピカフロアブル(クミアイ化学工業)」+「殺虫剤/プレオフロアブル(住友化学)」+「展着剤/アビオンE(アビオン)」。

 

ユーキリン(リン酸肥料/相原バラ園)+ミラクル(アミノ酸肥料/相原バラ園)を大苗の半分ほど投入。

 

5/29 フルボ酸活力液アタックT-1(花ごころ)の希釈液を大苗の半分程度使用しました。

 

6月19日の「アンナプルナ」/害虫被害(ハキリバチ、チュウレンジハバチ、ホソオビアシブトクチバ)

▲ハキリバチに切り取られた葉 写真提供/アスタルティ

キリバチさん、なぜ貴方はアンナプルナばかり狙うのですか? と、問いたくなるくらいアンナプルナの葉を切り取るハキリバチ。場所を移動してみましたが、やっぱり切り取られる・・・執念深いですね。

 

一度ハキリバチの犯行現場を見つけて、思わず「テデトール」したところ刺されてしまいました。ミツバチよりは毒性が弱かったのですが、刺された瞬間の痛みは大して変わりなかったですね。

 

ハキリバチの周回パターンから外さないと意味がないようなので、最終的に西日の当たる西側に移動することで、解決しました。

 

▲チュウレンジハバチの産卵跡 写真提供/アスタルティ

 

この1~2週間で虫が一気に増えました。チュウレンジハバチの幼虫は早期に退治しましたが、ホソオビアシブトクチバの幼虫が増えてきたので剪定や不要な葉を取ったりしつつ撃退。

 

わたしは虫は平気なので、テデトールでサクサクっとね。

 

スズメバチくらいなら掴めるけど、ムカデはウーン、ドコツカモウ・・・となっちゃいますけど。ゴキブリ? アレは素早くテデトールする暇がありませんので、素直にスプレーで倒します。

 

この時期の手入れ

6/5 「マイローズ殺菌スプレー」(住友化学園芸)を使用。

 

6/12 「ベニカXガード」(住友化学園芸)を10g、鉢の周囲に撒きました。肥料として*「森ぶ源 美育さん」(樹木新理論)を水に溶かして混合液を作り撒いています。

 

6/18  殺菌剤+殺虫剤の散布。STダコニール1000(住友化学園芸)+STサプロール乳剤(住友化学園芸)+コロマイト乳剤(三井化学アグロ)。

 

ホソオビアシブトクチバ退治は夜にチマチマと行っていて、確認できる範囲ではいなくなりました。ハキリバチは・・・俊敏なのでスプレー剤を片手に持っておかないと退治は難しいです。

 

*「森ぶ源 美育さん」は、樹木内のエネルギーを作り出すために必要な「モリブデン成分の欠乏」に着目する樹木新理論社の製品。水溶性の樹木用ミネラル栄養・肥料製品です。

 

7月5日の「アンナプルナ」/ベーサルシュートがわさわさ発生

▲主幹4本+ベーサルシュートたっぷり 写真提供/アスタルティ

雨があっという間に去っていき、入れ替わりとばかりに猛暑がやってきた今日この頃。ハキリバチも涼しい場所に逃げ出したようなので、西日の当たらない場所に「アンアプルナ」を再移動させました。

 

「アンアプルナ」はもともと主幹が3本ありましたが、しばらくするとベーサルシュートが出てきて4本に。そして、この猛暑でベーサルシュートになりそうな芽がどんどん出てきました。

 

ただこのままにしておくと、どれも細い枝になってしまうので少し手間をかけることに。

 

▲出開きになりかけのベーサルシュートを摘み取り 写真提供/アスタルティ

 

新苗でこれだけの新芽が出てきても共倒れになるだけなので、弱々しいベーサルシュートはさっさと摘み取りました。内側に生えてきたサイドシュートも1本摘んでいます。

 

残ったベーサルシュートは4本で、順調に育てば主幹8本になりそうです。蕾は見つけ次第ピンチして、枝の内側の余分な葉や枝も切り取りました。

 

この時期の手入れ

6/26 殺菌剤+殺虫剤の散布。「殺菌剤/ジマンダイセンフロアブル(ダウ・アグロサイエンス日本)+プレオフロアブル(住友化学)+展着剤/アビオンE(アビオン)」。

 

7/3 殺菌剤の散布。「ベンレート水和剤 」(住友化学)。「高濃度フルボ酸活力液 アタックT-1」(花ごころ)を規定量の半分使用しました。

 

台風前の涼しくなったタイミングを見計らって、殺菌剤を散布しました。ベーサルシュートが出てきているので、活力液を使用しています。

 

7月17日の「アンナプルナ」/暑さに負けず好調キープ

▲樹高は70cm。主幹は7本に 写真提供/アスタルティ

の暑さで高温障害が発生しているバラが多い中、「アンナプルナ」は比較的キレイな葉を維持しています。耐暑性はかなり高いみたいですね。

 

主幹は7本まで増えましたが、新苗なのでどこまで幹が太くなるかは怪しい感じ。樹高は新苗の中では1.2を争うくらい高くなっています。

 

▲せっせと摘蕾。この生長ぶりなら鉢増しもアリ? 写真提供/アスタルティ

 

ハキリバチの被害は、場所を大きく変えたらなくなりました。そろそろ鉢に根が回りそうなので、鉢増しもアリかなーと考えています。もちろん、涼しい日にね!

 

この時期の手入れ

7/17 殺菌剤+殺ダニ剤の散布。「殺菌剤/ストロビーフロアブル(日本曹達)」+「殺ダニ剤/バロックフロアブル(協友有アグリ株式会社)」。

 

7/17に活力剤「高濃度フルボ酸活力液 アタックT-1」(花ごころ)を与えました。

7/17にカニガラ石灰を一つかみ撒いています。

 

気温が25度を下回った日があったので、試験的に「ストロビーフロアブル」を使ってみました。バラに薬害が起きる恐れのある殺菌剤ですが、今のところ影響は出ていません。本来は夏には使用しない方がいい殺菌剤ですし、お勧めはできないかな。

 

ハダニが発生しているバラがあったので、葉シャワーで弱らせながらダニに効果のあるバロックフロアブルをすべてのバラに使用しました。

 

戻り梅雨の模様なので、酸性雨対策でカニガラ石灰を撒いています。気温が高いので、薬剤散布や手入れをした後は、必ずシャワーを浴びています。

 

7月31日の「アンナプルナ」/2度目の鉢増し

▲5月初めの鉢増し後、約3カ月でこれくらいの根張りに 写真提供/アスタルティ

が軽くなっているのが気になっていたので、涼しい日に鉢増しを行いました。リッチェル10号鉢にしましたが、鉢自体の大きさは若干大きくなった程度です。

 

培養土はバラ専用土ではなく、幅広い花と野菜に使える「花咲き物語」(秋本天産物)を使用しました。使用してみた感想として、別にバラ専用土じゃなくてもこれで十分な感じがするんですよね。

 

▲鉢増し後。高温障害ほぼナシ 写真提供/アスタルティ

 

このところの暑さで高温障害がいろんなバラに出始めているのですが、「アンナプルナ」は比較的小康状態を保っています。

 

ただ、これ以上暑くなると下葉が黄色くなったり落ちたりしてくるでしょう。雨が降るとどのバラも元気になってくるので、降雨があればいいのですが。

 

この時期の手入れ

7/24 殺菌剤+殺虫剤の散布。「殺菌剤/フルピカフロアブルクミアイ化学工業)」+「殺虫剤/プレオフロアブル(住友化学)」。

 

   「ユーキリン(リン酸肥料/相原バラ園)+ミラクル(アミノ酸肥料/相原バラ園)」を1掴み追肥として撒きました。

 

水やりは1日に2回行っています。暑すぎるのか、芋虫などの被害はなくなってきました。

 

殺菌剤ですが、暑い日が続くのでいったん停止。涼しい日があれば散布するというスタイルにします。

 

9月17日の「アンナプルナ」/夏花と台風対策

▲家を空けている間に咲いた夏花 写真提供/アスタルティ

たしの事情でしばらく家を空けていたのですが、帰ってくると「アンナプルナ」が咲いていました。台風がやってくることを知ったので、しばし鑑賞した後に切り戻しています。

 

ひとまず液肥と活力剤を与えた後、強風が吹き荒れそうなので屋内に入れました。

 

▲夏花の花径は5~6cm 写真提供/アスタルティ

 

「アンナプルナ」の夏の花は観賞価値はありますね。香りは中香くらいで、質の良い香りがします。

 

ただ、夏の疲れも見えるので無理に咲かせずに摘んでしまったほうが無難でしょうか。

 

この時期の手入れ

8/7 液肥と活力剤の散布。「さわやかアミちゃん」(ヤサキ)+「高濃度フルボ酸活力液 アタックT-1」(花ごころ)。

 

8/27 コガネムシの幼虫対策で殺虫剤を使用。「家庭園芸用サンケイダイアジノン粒剤3」(住友化学園芸)。

 

9/8 追肥。「RSKバラ園バラの肥料」(松栄産業)+ユーキリン(相原バラ園)+ミラクル(相原バラ園)を混ぜて、二握りほど鉢の周囲に撒きました。

 

9/11 殺菌剤の散布。ベンレート水和剤(住友化学)。

 

9/17 液肥と活力剤の散布。「さわやかアミちゃん」(ヤサキ)+「高濃度フルボ酸活力液 アタックT-1」(花ごころ)。

 

台風への対策ですが

 

①新苗は全て屋内に移動。一部の大苗も。
②大苗は極力風の当たらない軒下などに移動。
③大きな鉢のバラは、風の当たりにくい場所に移し、ガムテープで鉢どうしを縛って倒れにくくする。

 

わたしはこうしてみました。道路に転がっていかないことを意識して、対策をしています。

 

新苗は全て「夏剪定」していません。秋花より、株の体力をつけることを優先したからです。

 

秋花~12月4日の「アンナプルナ」/花保ちよく、寒くてもよく咲く

▲12月4日の「アンナプルナ」 写真提供/アスタルティ

温が下がり動きの止まったバラが増える中で、12月に入っても咲き続けている「アンナプルナ」。10月~12月まで、とても花期が長いです。新芽の動きは止まりましたが、思ったより寒さには強い印象を受けました。

 

花保ちは2週間以上で、風や雨でも散りません。定期的に花ガラを取ってあげましょう。

 

▲花径7~8cm。素晴らしい香り 写真提供/アスタルティ

 

じつは秋の1番花、10月の「アンナプルナ」はスリップスにやられて、薬剤を撒いても次から次へと発生する有様でした。

 

▲咲いたばかりの秋花。雨に当たると傷みやすいのが難点 写真提供/アスタルティ

 

さらに白バラの宿命でしょうか、雨に打たれて花びらが茶色く傷みます。花の時期はなるべく軒下に置くのがベストでしょう。白バラに多い灰色カビ病は発生しませんでしたが、薬剤で抑えられているのかもしれません。

 

わたしは樹を育てるため、今年はあえて雨に当たっても日照量の多い場所に置き続けていました。まだ新苗ですし、キレイな白バラは来年楽しむことにします。

 

香りは強香。爽やかなダマスク系で素晴らしい香りといえるでしょう。

 

この時期の手入れ

10/9 殺菌剤+殺虫剤の散布。STダコニール1000(住友化学園芸)+STサプロール乳剤(住友化学園芸)+コロマイト乳剤(三井住友アグロ)。

 

11/5 殺菌剤+殺虫剤の散布。ジマンダイセンフロアブル(ダウ・アグロサイエンス)+コロマイト乳剤(三井住友アグロ)。

 

11/6 追肥。「RSKバラ園バラの肥料」(松栄産業)+ユーキリン(相原バラ園)+ミラクル(相原バラ園)を混ぜて、2握りほど鉢の周囲に撒きました。

 

耐病性の確認のために薬剤散布の回数を減らしていますが、病気はあまり発生していません。古めのバラですが病気には強いです。

 

水やりは3日に1回ほど。花が咲いている間は水を欲しがります。

 

>>次のページでは「紫変色枝枯れ症(凍害)・冬剪定」から紹介しています。