バラの株数が増えてきたら、ハンドスプレー農薬ではコスパが悪く感じます。薄めて使う農薬を使ってみたいけれど、やったことがないという方向けに、薬液の作り方と使い方、さらにさまざまなアドバイスを分かりやすく盛り込みました。
バラの株数が増えてきたら、薄めて使うタイプの農薬を!
▲庭が小さなバラ園のようになっている家も!
バラは品種ごとにそれぞれ違った魅力があり、いつの間にかコレクションするように増えてしまいがちな植物ですよね。こうなると市販のハンドスプレー農薬ではコスパが悪く、薄めて使うタイプの農薬使用を考える時期です。(もちろん、薄めて使うタイプの農薬でも高価なものはありますが)。
でも薄めて使うタイプの農薬って、バラ園やバラ農家が使うような本格的なものに思えて初心者にはとっつきにくく感じます。そこで今回は、実際に薄めて使うタイプの農薬を利用してバラを育てている応援レポーターのアスタルティさんに、薬液の作り方から使い方、さらに注意点まで詳しく教えてもらいました。
今回は初心者でも農薬散布ができるよう、ハンドスプレーを用いた方法を紹介します。シュラブやブッシュ、ミニバラといった比較的小さなバラを防除する際に参考にしてください。
薄めて使うタイプの農薬を買うときの注意とオススメ農薬
殺菌剤 住友化学園芸 STダコニール1000 30ml |
住友化学園芸 サプロール乳剤 30ml |
▲家庭園芸では小さいボトルで十分
まず最初は「園芸用」の「殺菌剤」を1~2種類買ってください。
殺虫剤については、実は市販のバラ用ハンドスプレーのほうが便利で効果も高かったりします。薄めて使う殺虫剤を使うなら、主にハンドスプレーでは対処できないつるバラ用や広範囲に散布する場合になりますね。
農薬には、粉剤・水和剤(微粉状の粉末)・液剤・乳剤・フロアブル剤(液状)・顆粒水和剤(ドライフロアブル剤)と、さまざまな形状の商品があります。粉剤や水和剤は風で飛びやすく吸い込んでしまう恐れがあるので、最初から液状になっているタイプが使いやすいです。
さらに薬剤の量が少ない商品を選びましょう。
たとえば「フルピカフロアブル」(クミアイ化学工業)の有効期限は4年です。有効期限が長いとはいえ大型のものを買っても使いきれなくて余らせてしまうことにもなりかねません。家庭園芸なら、必ず使い切れる小型の商品を買いましょう。
これらをふまえて初心者が最初に購入する農薬のオススメは、「STダコニール1000/30mℓボトル」(住友化学園芸)、「STサプロール乳剤/30mℓボトル」(住友化学園芸)です。
理由はどちらも希釈倍率1000倍なので希釈するとき間違いにくく、黒星病・ウドンコ病はじめ各種病気に効くし、展着剤も必要ないからです。それに量が少ないので使い切るのはたやすいし、スポイトも付属でついてます。両方を合わせてより強力な散布液をつくることもできます。
農薬以外にあらかじめ準備しておくもの
▲農薬はカギのかかるストッカーに保管 写真提供/アスタルティ
農薬の管理には、必ずストッカーもしくは、それに準じた鍵のかかるものを用意してください。何かの拍子に農薬が漏れ出したり、子どもが触ったりすると厄介なことになります。
また防護装備ですが、わたしの場合だと以下のものを使っています。
1、ゴーグル=必須
2、農薬用マスク=必須。わたしは農薬用マスクが顔に付かないよう、内側に普通のマスクをつけて2重にしています
3、厚手のビニール手袋=必須
4、防護服=長袖の作業着でも代用できますが、あればOK。大型の噴霧器を使うなら必須。ハンドスプレーでも、なるべく着用しましょう。皮膚が敏感な人もいるでしょうから、使い捨てまたは洗える長袖の服は必須といえます。
5、長靴=わたしは念のため着用しています
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▲防護服は、使い捨てレインコートでもOK
長袖作業着などを防護服として使う場合は、使用後にほかの洗濯物と混ぜずそれ単体で洗濯を。
計量カップやスポイトなどの実際に薬液をつくる際に必要な道具は、次の「薬液の作り方手順」の項目をご覧ください。
薬液の作り方手順
薬液の作り方を紹介する前に注意があります。
水に希釈した薬液(散布液)は、保存がききません。約3時間で効果が落ちてしまうので、散布のたびにつくる必要があります。
それと──外水道のない方は、ついキッチンで作りたくなるかも知れませんが、危険なので必ず屋外で作ってください!
▲左から「フルピカフロアブル」「プレオフロアブル」「アビオンE」 写真提供/アスタルティ
では、実際に薬液を作る手順を紹介していきます。
今回つくるのは、ウドンコ病の予防効果とイモムシなどの害虫駆除効果がある殺菌殺虫剤です。初心者でも使いやすいように、500mℓのスプレーボトルで散布する薬液をつくります。
使うのは以下の3種類の薬剤。
1、殺菌剤/フルピカフロアブル(ウドンコ病・灰色カビ病などの予防薬/日本曹達株式会社)
2、殺虫剤/プレオフロアブル(オオタバコガ・ハスモンヨトウの駆除薬/住友化学)
3、展着剤/アビオンE(アビオン株)
ここでのポイントは ①説明書はあらかじめしっかり読んでおく ②フタがちゃんとしまっているか確認 です。フタがちゃんと閉まっていないと、振った際にこぼれて自分にかかってしまう恐れがあります。
手順1、農薬と必要な道具の準備
▲薬液づくりに使う道具と防護装備 写真提供/アスタルティ
使用する農薬(+展着剤)と、それ以外に必要なものを準備します。
薬液をつくるために必要なもの
1、計量カップ(最低1ℓ以上)
2、スポイト(使う薬剤の数を用意。今回は3本)
3、泡だて器
4、スプレーボトル(今回は500mℓ)
5、じょうご
防護装備
防護服・厚手のビニール手袋(2重にしています)・ゴーグル・防毒マスク・長靴(履いているので写真にはナシ)
今回は、スプレーボトル1本分の500mℓしか作りません。ちなみに、注射器のようなスポイトはダイソーの商品で、5mℓはかれます。
手順2、希釈倍率を再確認する
▲希釈倍率をしっかり確認! 写真提供/アスタルティ
作る前に希釈倍率を再確認しておきましょう。今回つかう薬剤の希釈倍率は以下の通りです。
フルピカフロアブルは、バラ(花き類)への散布は2000~3000倍に希釈。
プレオフロアブルは、バラ(花き類)への散布は1000倍に希釈。
アビオンEは、バラ(花き類)への散布は500~1000倍に希釈。
希釈倍率は、記載されているとおりに作りましょう。濃すぎれば薬害が出る恐れがあるし、薄すぎれば効果が出ない恐れがあります。
例えば1000倍~2000倍と希釈倍率に幅がある場合、1000倍までは薬害が出ないことは保証するという意味で、2000倍までは効果は通常通り出るという意味です。わたしの場合は、盛夏に散布する場合のみ2000倍にしています。
希釈に便利な早見表をつくったので、参考にしてください。
希釈倍率の早見表
噴霧器のタンク容量 | 500倍 | 1000倍 | 1500倍 | 2000倍 |
500mℓ | 液剤/1mℓ | 液剤/0.5mℓ |
液剤/0.33mℓ |
液剤/0.25mℓ |
粉剤/1g | 粉剤/0.5g |
粉剤/0.33g |
粉剤/0.25g |
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1ℓ | 液剤/2mℓ | 液剤1mℓ | 液剤0.67mℓ | 液剤/0.5mℓ |
粉剤/2g | 粉剤/1g | 粉剤/0.67g | 粉剤/0.5g | |
3ℓ | 液剤/6mℓ | 液剤/3mℓ | 液剤/2mℓ | 液剤/1.5mℓ |
粉剤/6g | 粉剤/3g | 粉剤/2g | 粉剤/1.5g |
手順3、計量カップに水を入れる
▲最初に水を入れる 写真提供/アスタルティ
まず計量カップに水を入れます。今回は500mℓ分の薬液を作るので、1ℓの計量カップの半分まで入れます。
薬剤を先に入れると混ざりにくいので、注意してください。
手順4、フロアブル剤を振り混ぜる
▲フロアブル剤を逆さにして振り混ぜる 写真提供/アスタルティ
フロアブル剤を使うさいには、まずしっかり混ぜることが必要です。フロアブル剤を逆さに持ち、上下左右にしっかり振ります。こうすることで沈殿していた成分を攪拌させるのです。
ちなみに逆さにして振らないと効果は薄くなるので注意。
手順5、スポイトで農薬を吸って水に入れる
▲スポイトで希釈倍率分の農薬を吸わせて計量カップに入れる 写真提供/アスタルティ
スポイトでフルピカフロアブルを吸わせて(今回は2000倍液をつくるので0.25mℓ)水の中に入れました。スポイトの中に残っている分は、再度計量カップの水を吸わせてしっかり出していきます。
同じ要領でプレオフロアブル(バラには1000倍なので0.5mℓ)、アビオンE(今回は1000倍液をつくるので0.5mℓ)も入れていきます。(スポイトはそれぞれ別のものを使います)。
手順6、泡だて器で攪拌する
▲泡だて器で混ぜる 写真提供/アスタルティ
薬剤をすべて入れ終わったら、泡だて器で攪拌します。
ちなみに薬剤を入れるには順番があります。
1、展着剤(テ)
2、液剤(エ)
3、乳剤(ニ)
4、水溶剤(ス)
5、ドライフロアブル(ド)
6、フロアブル(フ)
7、水和剤(ス)
この順番で混ぜると、農薬成分が水に溶けやすく散布跡も残りにくいです。さらに効果も上がります。農業では、それぞれの頭文字を合わせてテエニスドフス」と覚えたりします。
ただし、今回は展着剤で「アビオンE」を使っているので最後に入れています。「アビオンE」や「まくぴか」を展着剤に使用する場合は、泡立つので最後のほうが便利なのです。
建前的にはフロアブル剤に展着剤は不要ですが、展着剤を入れた方が効果が上がる場合も多いです。「アビオンE」だと、雨に強くなるという効果が追加されるので、わたしは入れています。
手順7、スプレーボトルに詰め替える
▲じょうごを使ってスプレーボトルに 写真提供/アスタルティ
こぼさないように、じょうごを使ってハンドスプレーボトルに入れましょう。
500mlで足りない場合はどうするか──ですか? 再度作ればいいのですよ。わたしは必要最小限をつくって散布し、足りなくなったらまたつくっています。
農薬散布するさいの3つの注意点
▲周りの環境に配慮して散布 写真提供/アスタルティ
周囲の状況を確認して、安全な場所でバラに散布しましょう。今回、散布のために用意したのは、「ルシファー」(河本バラ園)の大苗です。
1、散布時間に注意
農薬散布は、早朝や夕方に行うのが一般的です。理由は、昼に散布すると、日差しで散布液の水分が蒸発してしまって濃度が高くなり、薬害が出るおそれがあるからです。
わたしは人があまり外にいない早朝に散布することが多いのですが、都市部ではヒートアイランド現象で早朝でも気温が高いままのことがあるので夕方の方が安全だったりします。
農業関連だと意外なことに早朝と夕方、半々です。どっちかというと、翌日の天気を確認して暑くならない日を選んでいるとか。
小さい子どもやペットのいる方は、散布してから半日ほどその場所に立ち入らないよう注意してください。
2、周りの環境に注意
1、車にかかると塗装がはがれることがあるので近くで散布しない
2、周囲に人や動物がいないか確認する
3、周囲の洗濯物には気を払おう
4、必ず防護装備を着用する
これらはどれも、農業用語でいうドリフト(飛散)に注意ってことですね。鉢植えに散布するなら上の写真のように、適した場所に鉢を移動してから散布するのもアリです。
3、風に注意
強風の日は散布しない。また、風がある日の散布は、必ず自分が風上に立つようにしましょう。いくら防護服を着ていても、自分にかかるのはあまり良くないですから。
効果的な薬液のかけ方
▲葉の表裏に細かい水滴がつくていど散布 写真提供/アスタルティ
薬液のかけ方には2つの考え方があります。
1、葉の表裏に水滴がかかるくらいかける
2、葉の表裏に葉から滴り落ちるくらいかける
1、は薬害発生のリスクを減らすかけ方で、2、は効果重視のかけ方です。わたしは薬害が発生するのは嫌なので、1、のかけ方をしています。1、の場合は、バラの葉に細かい水滴の粒がつくくらいかければOK。
散布後の片づけ
▲底に残った薬液を薄めて再散布 写真提供/アスタルティ
散布し終わったら片づけましょう。計量カップやハンドスプレーボトルに水を入れ、庭木にかけたり葉水したりして、薬液を残らず使い切ります。魚類に影響がある農薬もあるので、洗浄液を排水路や河川に流してはいけません。
もし農薬が余ってしまったら。余った農薬を農協に持っていけばお金を払って処理して貰うことができます。農薬をむやみに廃棄すると、環境に問題が起きる恐れがあるだけでなく、法律で罰せられることもあります。注意しましょう。
肌に薬液がかかった場合はすぐに水で洗い落しましょうね。
▲農薬専用ストッカーは絶対必要 写真提供/アスタルティ
使った薬剤は専用ケースに入れて、物置などのカギがかかる場所にGO! 整理整頓は大切です。薬剤のフタが締まっているか再度確認を。
最後に服やらなんやらを洗濯機の中に入れて、シャワーでも浴びましょう。はっきりいって、暑いのです(><
まとめ
今回は、希釈するタイプの農薬の使い方を順を追って紹介しました。我が家はベランダ栽培のため、こういう記事はどうしても作れなかったんですが、アスタルティさんに協力していただき、ようやく記事にまとめることができました。
希釈するタイプの農薬を使うには、さまざまな注意点があります。それと同時に「慣れ」が必要だと思いました。逆に言うと、慣れてしまえばいいんです。薬液を作ってかけて片付ける。この一連の作業に慣れてしまえば、バラの葉を一年中美しく保つことができます。バラの葉が美しく保てれば、バラの健康は約束されたようなもの。
最初は面倒に感じるでしょうが、いずれ慣れます。この記事が最初の一歩を踏み出すための良い道しるべとなりますように!
農薬を作るのは難しいという人は多いと思います。でも、やってみたいという人のために、あいびーさんに協力させていただきました。最初は30mℓの園芸用農薬を1つか2つ購入して、試してみてはいかがでしょう。でも、安全にはくれぐれご注意を。特にゴーグルはしっかり着用しましょう!
参考文献
神奈川県公式「あっ!!残った農薬捨てないで -農薬使用のルールを守りましょう-」 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/f6k/cnt/f6554/p27225.html
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ジマンダイセン 希釈量教えていただきありがとうございます。 500g使い切る事はないでしょうね~(笑 もう、届いて。無人航空機を使用するさい。。。 そんな事も書かれて正直ビビりました(笑 ハンドスプレーは3鉢の頃は使用していましたが。今はどえらい鉢の数なので。ホームセンターで安い500円くらいの圧縮タイプのを薬品ごとに全て変えて使用しています。洗っても綺麗に落ちるとは思えないし。解体して洗浄出来れば、一番なんですけどね。 薬品は微量でも残って。万が一。他のと混ざり。化学反応をおこすと怖いので・・・ 圧縮タイプのは隣町のホームセンターでしかおいてなくて。。。 田舎なので往復で約40Km。。。 先日20Kmと書いた記憶ありますが片道なんです(笑 田舎なので信号も少ないので時間的にはすぐなんですけどね。 ガソリン代も高いままだし・・・ 仕事はようやく決まったけど。保健無しのバイト。。。 隣町のホームセンターへ行くには買うのを色々と決めてから行くようにしてるので・・・ ま。今回の高温にガンガンの日当たりには今のバラたちの大半は苦手のようなので、ミニドッグランに棚を増やさないと。ま、レンガを組み立てて。上に木の板だと水はけもよくないので、太めの角材で棚を作る感じですかね~ 今日は休みでしたが。やはり久しぶりの接客業。楽しいけど無職が続いていたので(外出したらお金を使うので引きこもりでした) 体重はまだまだ元には戻ってないので体力が完全に落ちてますね。あと10kg戻れば元の体重ですが。53歳。。。小さくなった胃はなかなか大きくならないようです。 でも通院の間隔はあいてきてるので。もうすぐ終わりかな? ま。完治の無い病気なのであとは気長に・・・ さ~て。夕方になったのでわんこを連れて公園とホームセンターへ出かけましょうかね~
ORCAさん、こんにちは。
農薬が化学反応起こすというのは、今のところわたしは聞いたことないです。
もしそういうのがあるなら、必ず大きく注意書きされていると思います。
農薬は、1種類だけで散布することは稀で、
数種類を混ぜて散布することが多いです。
殺菌剤+殺虫剤+展着剤 が、多いですね。
相性の良しあしがあるようなので、信頼のおける先生の散布スケジュールを
その内ピックアップして記事にしたいと思っています。
そうそう。圧縮タイプのスプレー楽ちんですよね^^
最初に使ったとき、感激しましたもん^^
いいですよね! そんな高くないし!
ミニドッグランは、しばらくバラ専用で、
ワンコちゃんは、ORCAさんの体力増進のためにも一緒にお散歩してもらいましょ^^
あいびー