次亜塩素酸水を使って根頭癌腫病を治療する、具体的なやり方を紹介します。バラの根頭癌腫病がとても増えているので、次亜塩素酸水をつくる「ピキャットクリア」は今後、冬の植え替えの必需品になるかもしれません。参考にしてください。
バラの「根頭癌腫病」が猛烈に増えています!
▲株元にできたグロテスクな癌腫コブ
バラがかかる2大疾病は「ウドンコ病」と「黒星病」だ! なんて良く言われます。確かに昭和の時代なら、そうだったでしょう。でも、現代ではその2大疾病の上を行く怖い病気があります。それが「根頭癌腫病」(こんとうがんしゅびょう)です。
「癌」なんてついているから恐ろしげに見えますが、じつは名前だけでなく実際に怖い病気なんです!
ひと昔前は「1000株に1本出るかどうかの感染力の弱い稀な病気で、ガーデナーが一生に一度出会うかどうかというくらい珍しい病気」と言われていました。だから、あまり問題視されなかったんですね。でもこれが近年、爆発的に増えているんです!
根頭癌腫病が怖い5つの理由
▲根頭癌腫病のコブは若いうちは白っぽい
では「根頭癌腫病」のなにがどう怖いのか、5つの理由を簡単に紹介します。
1、近年のバラ苗には、感染株がとても多い。
2、予防薬・治療薬がほとんどない。
3、根頭癌腫病は、根治することができない。
4、二次感染力が強く、罹患株から簡単にほかの株に感染してしまう。
5、庭に感染株を植えると、庭土が広範囲に汚染されてしまう。
つまりこれをまとめると。
近年のバラ苗に感染株がとても多いうえに、薬がほとんどなく、一度かかったら根治することができず、他のバラに簡単にうつしてしまう。さらに庭土を広範囲に汚染してしまうという・・・とんでもなく厄介な病気なのです。
最初の項目で「感染力の弱い病気」と書いているのに、ここでは「感染力が強い」となっているのに気づいた方もいるでしょう。矛盾しているように見えますが──。
じつは根頭癌腫病は最初は根から感染するのですが、この場合の感染力は弱いです。根頭癌腫病の菌がいる土壌に植えれば、もれなく感染するわけではありません。また、感染しても発症まで潜伏期間があるので、すぐに発症するわけでもありません。
しかし、感染株からほかの株への二次感染力は強いのです。とくに剪定バサミを介して感染しやすいので、厳密なことを言えば、1株剪定するたび剪定バサミを殺菌するのが理想です。枝がこすれて感染するケースもあるので、感染株は隔離栽培が必要です。
とても面倒ですよね。だから、初心者さんには感染株は迷わず廃棄をオススメしています。
根頭癌腫病については、これまでも何度か切り口を変えて記事にしているので、より詳しく知りたい方は次のページをご覧ください。
▼「根頭癌腫病」の基本的な知識はこちらからどうぞ
▼「根頭癌腫病」の対処のしかたと治療法
バラの「根頭癌腫病」に立ち向かう「ゆうきの園芸ショップ・ピーキャット」!
ロザリアンには頭の痛い「根頭癌腫病」ですが──これはバラの専門家やバラのナーセリーなど、バラに関わる事業を行うバラ業界全体にとって、それこそ死活問題に等しいほどの大問題です。(実際、廃業しているところも、たくさんあると聞きます。)
でも一愛好家としての感想は、これまで購入者に対してあまり良い対応がされてこなかったように思うのです・・・。
「削っておけば大丈夫ですから!」
「癌腫菌はどこにでもいる細菌ですから!」
「夏に西日の当たるところで管理すると出やすいんです。そうしてませんでしたか?」
こんな言葉で、責任逃れしようとする販売店が多かったです。こんな不誠実な対応じゃどんなに熱心なバラ愛好家でも、一気にさめてバラ栽培をやめてしまうかもしれません。そのほうがバラ業界にとって大きなマイナスだと思うのですが・・・。
そんななか、この問題に真っ向勝負をかけている企業があります。それが「ゆうきの園芸ショップ・ピーキャット」です。「ゆうきの園芸ショップ・ピーキャット」では、園芸に「次亜塩素酸水」を利用することで、バラの減農薬・無農薬栽培を提案しています。
次亜塩素酸水とは?
▲次亜塩素酸水は、歯科で利用されるほど安全性が高く殺菌力も強い
次亜塩素酸水──あまり馴染みのない名称かもしれません。「あ、それってハイターだよね?」と思ったかた、惜しいけど間違いです。ハイターは「次亜塩素酸ナトリウム6%溶液」で、「次亜塩素酸水」とはまったく別ものです。
次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性の塩素系漂白剤です。強い殺菌効果があるので、コロナウィルスが流行していたころ、これを薄めてドアノブなどの殺菌に利用したという方も多いでしょう。しかし濃度の高いものだと皮膚を溶かしたり、金属を腐食させたり、酸性のものと混ぜると有毒ガスを発生するなど、取り扱いには注意が必要なものです。
一方「次亜塩素酸水」は、塩酸または食塩水を電解することで得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液です。次亜塩素酸ナトリウムや希塩酸を希釈・混合してつくられるものもあります。これら「次亜塩素酸水」は酸性です。
電解して得られる「次亜塩素酸水」は、その安全性と殺菌力の高さから食品添加物として認可されています。さらに歯科での口腔内洗浄に利用しているクリニックもあります。
次亜塩素酸ナトリウムから得られる「次亜塩素酸水」に、根頭癌腫病に効果のある「有機酸」を組み合わせたものが「ゆうきの園芸ショップ・ピーキャット」の「ピキャットクリア」という商品です。
同店では「ピキャットクリア」を適切に使いながら育てたバラ苗を販売していて、もう10年以上根頭癌腫病を出していないというから頼もしいじゃないですか!
我が家で過去2年間に購入したバラ苗の罹患率100%!
▲太い根の途中にできた癌腫コブ
とてもラッキーなことに、長らく我が家では根頭癌腫病が発生しなかったのですが、一昨年から様子が変わりました。
一昨年に購入した2株のうち、1株が根頭癌腫病でした。これは販売店に連絡して健康な代品を送付していただきました。
昨年に購入した2株は、どちらも根頭癌腫病でした。これも代品をいただきましたが・・・残念ながら代品も2株とも根頭癌腫病に罹患していました。苗が到着した時点で5mm~1cm大のコブがいくつもあったので、生産者の圃場が汚染されているのでしょう。
一昨年に購入した株のうち根頭癌腫病が発症していなかった株が、この冬の植え替えで罹患していることが発覚しました。まわりの状況からして、これまで未発症だったキャリア株と思われます。
つまり。
ここ2年間に購入した4株すべて、代品を含めると6株すべてが根頭癌腫病だったということです・・・。
罹患率、脅威の100%!
ただごとじゃありません!
「ピキャットクリア」でバラの根頭癌腫病を治療する方法
▲ピーキャット流の根頭癌腫病対策は、次亜塩素酸水を使った体内洗浄
なにしろ根頭癌腫病は二次感染力の強い病気です。このままでは我が家のバラが全滅してしまうかも! という恐れから、「ゆうきの園芸・ピーキャット」の次亜塩素酸水を使って根頭癌腫病対策をすることにしました。
ピーキャット流の根頭癌腫病対策は、罹患した株を次亜塩素酸水に浸け置きすることで根から吸わせ、体内から除菌しようというものです。根頭癌腫病の菌は、バラの導管を伝って株全体にいきわたっているので、これはとても理にかなった治療法だと思います。
今回は、実際の使い方を手順を追って紹介します。
1、癌腫コブを見つけたら根洗いする
▲たくさん花を咲かせたけれど、キャリア株だった「リュシオール」
今回、根頭癌腫病が見つかったのは、ロサ・オリエンティスの「リュシオール」です。
一昨年に購入した株で、去年の冬の植え替えではコブがなかったものですが、今年の植え替えでコブが見つかってしまいました。我が家に根頭癌腫病の株はないので、もともとキャリア株だった可能性が濃厚です。
▲癌腫コブと、放射状に生える毛根病の白根
冬の植え替えで鉢から根を抜いたとき、まばらな感じで白根が発達していました。イヤな予感です。
白根が横や上などおかしな方向に伸びる病気を「毛根病」というそうですが、これがあるとほぼ「根頭癌腫病」も併発しているのです。
土を落として根の中央を探ると、大きなコブが隠れていました。ほかにもコブがないか調べるため根洗いをします。
▲しっかり土を落としきる
この後、次亜塩素酸水に漬け込むのですが、次亜塩素酸水は土がついているとすぐに効力が落ちてしまうので、なるべくしっかり土を落とし切ります。強めのシャワー水で流してもいいと思います。
2、癌腫のコブを取り除く
▲根の途中のコブは剪定バサミで根ごとカット
根洗いをしたところ、太い根の途中に大きなコブがひとつ。これは剪定バサミで根ごと切り取ります。
▲太根や幹にできたコブはナイフで削り取る
株元に近い太根に、コブになりかけているブツブツがありました。これはカッターで、やや大きく削り取ります。
古土と癌腫のコブは、しっかりビニール袋に入れて廃棄します。
3、「ピキャットクリア」で次亜塩素酸水をつくる
▲ピーキャットの次亜塩素酸水生成キット
ピーキャットの次亜塩素酸水は、2剤を混ぜてつくります。右側(A剤)が次亜塩素酸ナトリウム6%で、これに左側(B剤)の「ピキャットクリア」を混ぜることで次亜塩素酸水がつくれます。
A剤は「次亜塩素酸ナトリウム6%液」なので、これは「キッチンハイター」と同じものです。キッチンハイターで代用しても構いません。
B剤の「ピキャットクリア」を混ぜることで強アルカリ性の「次亜塩素酸ナトリウム液」を弱酸性の人体にもバラにも安全な液体「次亜塩素酸水」にすることができます。
5ℓの「100ppm次亜塩素酸水」をつくる3手順
バラの体内洗浄につかう溶液は、100ppmの次亜塩素酸水です。
今回は、家庭でよく使われている10ℓのバケツの半量、つまり5ℓの「100ppm次亜塩素酸水」をつくっていきます。
5ℓの次亜塩素酸水でバラの株1本を漬け込むことができます。バラの株数が増えるほど、多くの次亜塩素酸水が必要になります。
ピーキャットの公式サイトでは、バラ1~2本で10ℓのバケツ、5本前後までなら20ℓのバケツを使うことをオススメしています。
手順1、バケツにA剤(次亜塩素酸ナトリウム6%液)を10mℓ入れる
▲①まず最初に次亜塩素酸ナトリウム6%液を投入
バケツにA剤(次亜塩素酸ナトリウム6%液)を10mℓ入れます。5mℓは、ペットボトルのキャップの内側にあるスクリューラインの一番上の線までです。これを2杯で10mℓです。
手順2、水を5ℓ入れる
▲②5ℓ分の水を入れる
水をバケツの半分まで入れます。10ℓのバケツなので、これで5ℓになります。バケツの目盛りを良く見て水を入れてださい。
手順3、「ピキャットクリア」を10mℓ入れて攪拌する
▲③最後にピキャットクリアを入れて混ぜる
さらにB剤(ピキャットクリア)10mℓを入れ、棒やひしゃくなどで攪拌して5ℓの100ppm次亜塩素酸水が完成です。
4、バラを3~4時間漬け込み体内洗浄する
▲バラを漬け込んで3~4時間放置
次亜塩素酸水にバラを漬け込みます。放置時間の目安は3~4時間ですが、1日浸けておいても問題ないそうです。わたしは一晩、漬け置きました。
*今回は1株だけだし株元にコブがなかったので5ℓで漬け込みしましたが、株元にコブができていたのなら、しっかりコブができていた部分までつかるように10ℓで漬け込んだ方がいいと思います!
最後に200倍の木酢液に5分間漬け込むと、さらに効果がアップします!
ちなみに、次亜塩素酸水の使いまわしはできません。放置時間が過ぎたら捨てましょう。
追記
以前、5ℓの水にAB剤各5mℓを入れると表記していました。ですが、これでは50ppmになってしまいます!「各10mℓ入れる」ことで正しく100ppmになります。訂正してお詫びします。
ご指摘いただいた読者さまに感謝です!算数苦手なんですよ・・・ごめんなさい。被害がなければいいのですが。
5、鉢や剪定バサミ、ナイフなどを殺菌する!
▲わたしは泡キッチンハイターを愛用
バラを体内洗浄している間に、鉢や器具を殺菌します。わたしは泡キッチンハイターを利用しています。
殺菌にかかる時間は20秒ほどで大丈夫ですが、1分くらい置いてから水洗いすると安心です。
▲剪定バサミを殺菌後はしっかり水洗い
次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイター)は金属を腐食させるので、剪定バサミに使う場合はしっかり水洗いして乾かします。
6、バラの漬け込み後、根を軽く水洗いしてから植え付ける
▲割り箸を差してグリグリすると根のなかに土が入る
漬け込み時間が終わったら、バラの根を軽く水洗いしてから、清潔な鉢と土で植え込みます。
根洗いしているので、普通に土をかけただけでは根の中に土が入りにくい状態です。根のあたりに割り箸を差して、左右に穴を広げるようにすると根の中に土が入ります。何か所か割り箸を差してグリグリやります。
▲最後にたっぷり水やりを
たっぷり水やりして植え込みは完了です。
次亜塩素酸水の体内洗浄にデメリットはある?
▲*これは体内洗浄前の花です
ピキャットクリアのメーカー「ゆうきの園芸ショップ・ピーキャット」によると、次亜塩素酸水の体内洗浄でバラに悪影響はまったくないそうです。
このため、もし根頭癌腫病が疑わしい株(キャリア株)があれば、コブができていなくても次亜塩素酸水で体内洗浄することをオススメしています。毎年、体内洗浄しても問題ないそうです。
つまりデメリットは、少し面倒なことくらいです。
「ゆうきの園芸ショップ・ピーキャット」公式サイト
次亜塩素酸水をバラ栽培に取り入れ、10年以上も根頭癌腫病苗を出していない「ゆうきの園芸ショップ・ピーキャット」公式サイトには、バラの根頭癌腫病への取り組みや、根頭癌腫病対策以外のピキャットクリアの便利な使い方など、さまざまなコンテンツが豊富です。
猫をマスコットキャラクターに、楽しく分かりやすく解説されているので、一度のぞいてみては? 品種や数は限られますが、バラ苗の取り扱いもありますよ^^
追記
「ゆうきの園芸ショップ・ピーキャット」のてんちょーさまより、追加情報をいただきました。参考にしてください!
体内洗浄でバラ体内の癌種菌はいなくなりますが、癌化細胞はなくならないので、コブはまた出来る可能性はあります。
コブができても、致命的な場所にできない限り感染力のない怖くないコブです。 取って、また念の為の体内洗浄でOKです。
まとめ
今回は、次亜塩素酸水をバラ栽培に取り入れる「ゆうきの園芸ショップ・ピーキャット」流のバラの根頭癌腫病治療法、ピキャットクリアでの体内洗浄のやり方を紹介しました。
少し面倒ではあるのですが──これ、冬の植え替えの定番作業にしようかと思っています。
もし根頭癌腫病株が出ても、体内洗浄することでかなりの確率で治療できるなら、ものすごく安心です! しかも根頭癌腫病ではない株を体内洗浄しても問題ないのだから、可能なら毎冬にすべての株を体内洗浄したいくらいです。
いや可能なら、苗を入手してすぐに体内洗浄したい。・・・ということは、バラの芽が動く前に苗木を入手したい。けれど近年の苗木はほぼ新芽が展開してからの発送が多い・・・ジレンマですね。
現在では根頭癌腫病の唯一の確実性の高い治療法とも思えるバラの体内洗浄。気になる方は試してみてください!
(──というか生産者さま、ゼヒ使ってください・・・)
▼病気と害虫対策の記事一覧はこちらです
こんばんは、お久し振りです。
うちでも、癌腫病出まくってますね。とは言っても今の所バラではなく、
去年はさくらんぼのナポレオンが癌腫病になり(樹脂細菌病に侵された上に癌腫なのでダブルパンチ)、該当部分含む9割根を落とし赤玉土100%に植えましたが、今年はまだ確認してないのでどうなったことやら。
更に今年は同じさくらんぼの高砂も植え替え時に熊手でゴリゴリ解してたら癌腫がボロボロ落ちてきた。
この子は大きいので何とか生かしてやりたいので、この方法知ってれば…………と思いました。
まあ今年は養生して、次回の植え替え時にピキャットクリアを試してみようと思います。
これだけ出てくるとバラの方も怖いですね、たった3本のバラですがビブラマリエ!さんがかかってたらショックですよ……。
あとりんごも育ててますがこちらは大丈夫な様です今の所。
もう怖すぎるので、今までは一グループ(りんごならりんご、さくらんぼならさくらんぼのように)毎にハサミを消毒していましたが、これからは一本毎に消毒しないとならないです。
一本やるごとに、道具一式オスバンにドブ漬けなので作業効率が下がりまくりです。
佐藤錦はこれからですがこの子も癌腫になってたら………
成瀬川ゆうきさん、こんにちは。
お久しぶりです^^
さくらんぼ、そんなにたくさん育ててらっしゃるんですね!
そして、やはり根頭癌腫病ですか・・・。
まぁ、バラ科ですからねぇ。
そういえば、りんごもバラ科ですね。
バラ科って、けっこういろんな果物があるから、困っている果物農家さんは多いでしょうね。
赤玉土で発生が抑えられるという情報ありますよね。
でも、赤玉はリン酸固定しちゃうから、腐食酸やたい肥をしっかり効かせて
く溶性リン酸肥料(熔りんとかマグァンプ)を混ぜるなど、対策も必要ですよね。
土のことはいずれ記事にしたいので、また調べてみます^^
根頭癌腫病へのさまざまな取り組みがされているなかで、
今のところ最も有効なのが、この次亜塩素酸水の浸け置きじゃないかと思います。
地植えの株には使えませんが、鉢植えなら、ぜひ試してみてください。
そうそう。バラの方も怖いです。
今年なんとか元気で過ごせたら、次の冬にはしっかり次亜塩素酸水使ってみてください。
樹勢の弱いものほど、弱りやすいです。
ビブラマリエ、なかなか素敵な白バラですね^^
ちょっと調べたところ、
樹勢は強いようなので、罹患してもすぐに枯れることはなさそうです。
たとえ罹患していても、していなくても、毎冬の健康チェック&次亜塩素酸水沐浴で
安心して育てたいものです^^
あいびー