バラの冬剪定は、さまざまなことを考慮した上で枝を切らなければいけない作業です。しかも株により応用力も必要で、初心者には難しく感じてしまいます。今回は冬剪定の実践編として、ノヴァーリスの鉢植えを実際に切っていきます。


冬剪定を多少間違えても枯れるわけじゃない!

▲外芽の5ミリ上を真っ直ぐカット!

剪定の知識をまとめた前回の記事「四季咲きの木立ちバラ。冬剪定の基礎知識5つのポイント!」をもとに、これから実際に我が家のバラで冬剪定を行います。

 

わたしは日照3時間ていどの、半日陰のベランダでバラを栽培しています。そのため、バラの生育はあまり良い方ではありません。冬剪定のセオリー通りに「こんもりとしたドーム型に整える」なんて、まったく無理です。

 

バラを育てる環境や生育状況は人それぞれ株それぞれなので、1株ごとに対応力が求められます。そこが冬剪定の難しいところだと思います。

 

でも、冬剪定を多少間違えたからってバラが枯れるわけではありません。ドーム型に整えられなかったからといって、誰かに叱られるわけでもありません。恐れず行きましょう!

 

今回は、わたしの冬剪定のしかたを実践編として紹介します。冬剪定の一例として参考にしてください。

 

▼冬剪定の基礎知識はこちらから!

鉢バラを冬剪定するためのセッティング

▲体が楽で芽が見やすい、冬剪定セッティング

ラの冬剪定では、ひとつひとつの枝や芽をしっかり観察しなければいけません。そのためわたしは、上の写真のようなセッティングをつくって冬剪定します。

 

素焼きのしっかりした鉢を伏せてその上にバラの鉢を置き、踏み台をイスにして作業するのです。こうすることでバラの枝や芽が見やすく、枝をハサミで切るときにも斜めにならずに真っ直ぐ切りやすくなります。

 

ハサミはクラフトチョキと剪定バサミを用意。ハサミはどちらを使ってもいいのですが、クラフトチョキは細かい作業向きで、剪定バサミは太枝を切るのに役立ちます。あまり使いませんが、一応バラ用の皮グローブも用意しました。

 

「ノヴァーリス」の冬剪定用データ

▲「ノヴァーリス」は、花径10cmの大輪花

回は、四季咲きの木立ちバラ「ノヴァーリス」を冬剪定します。

 

まずこの株の、冬剪定で必要なデータを整理しましょう。

 

花のサイズ 花径10cmの大輪花
1番花の花枝の長さ 30cmていど
枝の伸び方 半直立性
この株の年数 新苗から4年目、大苗から3年目
系統 HT F Sと、表記はさまざま
注意 成株になるとシュートが出にくい
健康状態 良好
希望の花が咲く高さ 狭いベランダなので、高くても株元から80cmまでに抑えたい

 

実際に冬剪定していくときに、このデータが判断を左右します。慣れない内は、あらかじめしっかり整理しておきましょう。

 

冬剪定の作業は、4つのStepで紹介します。冬剪定を一度でスパッとできるのは上級者です。初心者は、何度も確認しながら行いましょう。

 

剪定前は樹高45cm

▲葉摘みと仮剪定を終えたノヴァーリス

剪定前の状態です。葉摘みと枝先の細枝を切る仮剪定を済ませてあります。樹高は45cm。冬の植え替え済みです。

 

主幹は3本。中央に2本の枝が直立(写真では重なって写っています)し、右にも1本あります。左にもう1本あったはずですが、何らかの理由で切り取ったようです。株元に5cmほどの短い枝が残っています。

 

冬の植え替えで確認した根の状態は良く、健康状態は良好です。

 

Step1、不要枝を切りながら、株全体をよく観察する

▲長く切り残したところが枯れている

ず枯れ枝と、細枝を取り除きます。上の写真は、長く切り残した先が枯れています。枯れているところを切り取ります。

 

▲主幹の途中から出ている細枝をカット

 

細枝は、主幹の途中から出ているものをカットします。写真では主幹の途中から出ている細枝で、かつ枯れ枝なので、絶対に不要な枝です。

 

ただしこの段階では、枝先の細枝は放置で構いません。

 

明らかな不要枝である枯れ枝や細枝を切りながら、株全体をよーく観察します。Step1は、不要枝を切る作業というよりも、株全体をよく観察する作業です。

 

Step2、中心になる枝をカットして株の高さを決める

▲枯れ枝、細枝を切り取ったところ

の写真は、枯れ枝、細枝を切り取ったところです。枝先はまだ触っていません。

 

次に中心になる枝をカットして樹高を決めます。この株の中心になる枝は、写真左側奥に写っている枝です。この枝をどこで切るか考えます。

 

ノヴァーリスは花径10cmの大輪花を咲かせる品種なので、セオリーから言えば鉛筆の太さより太い枝でないと花が咲きません。ところが──。

 

▲去年1番花が咲いた枝を確認する

 

鉛筆の太さというと、株元から出ているところの太さです。しかし鉛筆の太さのところに新芽がないので、ここまで切り戻すのは怖い感じです。新芽は出るでしょうが、適切な高さで適切な方向でというのは、難しいかも知れない・・・。

 

よく見ると、去年の1番花が咲いた枝は割り箸の先ていどの太さです。その後2番花、3番花(この株の場合は秋花)まで、ちゃんと咲いた形跡があります。

 

ということは。この品種は割り箸の先ていどの太さでカットして問題ないということですね。去年の1番花の枝で良い芽を探しましょう。(バラの先生のなかでは「冬剪定は去年の1番花の枝で切る」と説明する先生もいます)。

 

▲残す良い芽を確認する

 

去年の1番花を咲かせた枝の付け根付近にABC3つの芽があります。Aは一番大きいけれど、株の内側に向かっている内芽です。Bは外芽。Cは上に向かって伸びそうです。

 

▲上に伸びそうな芽を残してカット

 

Bの外芽でもいいのですが、Cの上向きに伸びそうな芽を頂芽として残すことに決めました。芽の上5ミリのところを真っ直ぐカット。

 

Step3、それ以外の枝をドーム型を意識してカット

▲ドーム型を意識して株全体の高さを整える

側の枝、さらに中央手前の枝も1番花が咲いた枝のなるべく低い位置で良い外芽を探してカットしました。(右側の枝は1番花の枝じゃないかもですが)。

 

株全体の形をなんとなくドーム型を意識して整えました。

 

▲株元から5cmしかない短い枝

 

最後に、株元から5cmだけ残っている太枝です。たしか、強風で枝が折れてしまったんだったかな? 残った短い枝から内芽が2つ、外芽がひとつ芽吹いています。

 

内芽の方がいい芽ですが、樹形を考えて外芽を残します。

 

▲外芽の上5ミリのところをカット

 

外芽の上5ミリのところを真っ直ぐカットしました。

 

こういう短い枝はもうつけ根から切り取り、新しいベイサルシュートを期待した方がいいという判断もアリだと思いましたが、ノヴァーリスは特性上、成株になると新しいベイサルシュートが出にくい品種です。

 

この株は大苗から数えて3年目なので、ベイサルシュートが出てくれるかどうか心配だったため、切り取らず残すことにしました。

 

この短い枝によく日光が当たるように、こちら側を前にして置こうと思います。

 

Step4、全体を見ながら手直しして完了

▲3本の主幹がよく見える角度で撮影

後に、全体を見直して問題なければ完了です。冬剪定後の樹高は36cmになりました。1番花の花枝が30cmほどなので、今年の春花は66cmの高さに咲いてくれそうです。一応、希望範囲内です。

 

もう少し短くしたい気持ちがすごくありますが──少し考えてみます。

 

ノヴァーリスは半直立樹形なので、枝同士あまり間隔を開けずに立ち上がります。こういう樹形の場合、芽の向きが重要で、しっかり外向きの芽を残したいところです。その割に選べる芽が少なくて、思い通りにしにくい感じがしました。

 

追記

結局、翌日に手直ししました。続けてご覧になる方は、次のページをご覧ください。

 

▼冬剪定を手直し!

 

まとめ

今回は、四季咲きの木立ちバラの冬剪定・実践編として、ノヴァーリスの株を冬剪定しました。

 

この品種、メーカーによりHT(ハイブリッド・ティー)に分類されたりF(フロリバンダ)に分類されたり、S(シュラブ)と書かれていたりします。花が大きいのでHTぽいし、房咲きするのでFぽいし、細い枝でも咲きやすいところがSぽいのかなぁ? と、思いながら冬剪定しました。

 

セオリーに準じた冬剪定を行ったのですが、ちゃんと伝わる記事になったでしょうか? 冬剪定は細かい作業なので、分かりやすく伝えるのは難しいです。

 

冬剪定が終わったら、春には答え合わせをしましょう。ちゃんと自分が狙った通りに咲いてくれたか。上手く行かなかったら、どこが問題だったのか? この株の答え合わせも、春になったら紹介したいと思います。

 

冬剪定の記事は次の順番で読み進めてください。

 

▼① 冬剪定する理由

▼② 冬剪定の基礎知識編

▼③ 冬剪定の実践編

▼④ 剪定手直し 枝げんこつ剪定

 

 

▼季節ごとのバラの手入れ一覧は、こちらからどうぞ

 

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