庭のあちこちに生えてくる、臭い雑草ドクダミ。ガーデナーの嫌われ者と思われがちなドクダミは、じつは日本三大民間薬と言われるほど豊富な薬効を持ちます。ドクダミを使った化粧水と虫よけの作り方を紹介します。
ドクダミは庭の嫌われ者
▲梅雨前後に咲く白いドクダミの花
ドクダミは、5月末~梅雨にかけて4弁の白い花を咲かせる植物です。庭や道端、荒れ地など、日本じゅうのいたるところに生えてきて、しかも独特の悪臭があるので、厄介な雑草と思われがちです。
インパクトのある名前と悪臭から「もしや毒草?」と思われがちですが、じつはまったく逆です。
一説では「ドクダミ」は「毒矯み」に由来していると言われます。「矯」の字は「歯列矯正」で使われるように、「正しく治す」という意味があるので、「毒矯み」は「毒を正しく治す」、つまり「毒消しの効果がある」という意味をもちます。
ドクダミは、日本の三大民間薬のひとつ!
▲ドクダミ茶は利尿作用、便通改善、動脈硬化予防などに!
ドクダミは、日本三大民間薬に数えられるほど優れた効能をもつ薬草として古くから利用されてきました。(ちなみに、日本三大民間薬のほかの二つはセンブリとゲンノショウコ)。
とくに殺菌作用に優れていて、擦り傷や虫刺さされ、皮膚炎、水虫などには生の葉をもんで貼る、絞り汁を鼻炎や中耳炎に塗るといった使われ方をしてきました。
ドクダミを乾燥させて煎じたドクダミ茶は、利尿作用や便秘改善、動脈硬化の予防、解熱、解毒効果があると言われています。
ドクダミ化粧品が人気!
美容に熱心な韓国アイドルが愛用しているとして、日本でもドクダミ化粧品が人気になっています。ドラッグストアではさまざまなドクダミエキス配合の基礎化粧品を見かけるようになりました。
ドクダミ化粧品でとくに優れているのが、あの独特なニオイ由来の強い抗菌作用です。
この作用でニキビや吹き出物を予防したり、早く治療したり、肌を清潔に保つので肌荒れしにくくなったりといった効果が期待できます。ほかにもさまざまな効果が期待できますが、前置きが長くなるので、こちらは記事の下の方で紹介しましょう。
このようにさまざまな効果が期待できるドクダミ化粧水は、なんと簡単に手作りすることができます!
庭の厄介者と思われていたドクダミからすぐれた効果の化粧水がつくれると話題を呼び、今では手作りする人が増えています! 今回は、ドクダミ化粧水の作り方を紹介します。
ドクダミチンキの作り方
1、ドクダミを採取する(花も葉も一緒に)
▲花の咲くころがもっとも有効成分が多いといわれる
チンキとは植物をアルコールに浸けて、成分を濃縮したものです。ドクダミ化粧水をつくるには、まずドクダミチンキをつくります。
ドクダミの有効成分がもっとも多く含まれるのは、花の咲くころと言われます。白い花を見かけるようになったら、採取のしごろです。
ドクダミは庭の隅や道端などあらゆる場所で見かけますが、肌につける化粧水をつくるのだし、やはり排気ガスや犬のオシッコの心配のない場所で採取しましょう。
特有の悪臭はデカノイルアセトアルデヒド(decanoylacetaldehyde)やラウリルアルデヒド(laurylaldehyde )で、ドクダミの葉に多く含まれています。デカノイルアセトアルデヒドやラウリルアルデヒドは、ペニシリンを越えるほどの強力な殺菌作用をもち、この効果でニキビ予防や吹き出物を早く治す効果などが期待できます。
悪臭が気になる方は花だけで化粧水をつくる場合もあります。花だけでつくると見た目が可愛らしいし、甘い上品な香りなのですが、効能としては葉より劣ります。
葉の悪臭は浸け置き時間を長くすることで薄れていきます。なので、花も葉も一緒に摘んで使うことをオススメします。
2、さっと洗ったら水分を乾かす
▲カサカサになるまで乾かさないこと!
摘んできたドクダミは、泥汚れや虫がついているかもしれません。さっと水洗いしたら水分をふき取り、キッチンペーパーに広げて乾かします。
葉がカサカサになるまで乾かすと、強い殺菌効果のあるデカノイルアセトアルデヒドやラウリルアルデヒドが飛んでしまうので、あくまで水洗いした水分を乾かすていどで。
3、ホワイトリカーに浸す
▲アルコール度数の高いお酒に漬け込み
乾いた清潔なビンにドクダミを入れたら、ホワイトリカーやウオッカなどアルコール度数の高いお酒をドクダミが全部浸るまで注ぎます。
蓋をする前に、内側をお酒で消毒してから閉めます。
エキスを効率的に浸出させるため、また長期間浸け置きすることも考えて、アルコール度数の高いお酒を使ってください。日本酒でも構いませんが、アルコール度数20以上のお酒を選んでください。
お酒からドクダミがはみ出していると、そこにカビが生えてしまう恐れがあるので、はみだし注意!雑菌が入らないよう、蓋の開け閉めは控えましょう。
4、2週間~1年、浸け置く
▲2週間後から使えるけれど1年後~が使い時
ひたひたにお酒を注いだら、そのまま浸け置きます。2週間後くらいから使えますが、できれば1年間そのままで。
花を入れた方は甘い香りに、葉だけの方はやや青臭い香りに仕上がります。薬効と香りを考えると、花と葉を一緒に浸けた方がいいように思います。
ドクダミ化粧水のつくりかた
1、用意するもの
ドクダミを漬け込んで1年たったので、ドクダミチンキを化粧水に仕上げます。
用意するものは、左からスプレーボトル、ドクダミチンキ、精製水、グリセリン。
今回は50mℓ分を作るので、スプレーボトルの50mℓのところに白いシールで目印をつけています。精製水は薬局で500mℓ100円ていど。グリセリンは保湿成分で、薬局で500mℓ1000円ていどで購入できます。
2、チンキを精製水で3~4倍に希釈する
スプレーボトルにチンキを1/3~1/4ていど入れたら、50mℓのラインまで精製水を入れて希釈します。
3、グリセリンを5%入れて混ぜる
保湿効果のあるグリセリンを5%入れます。50mℓの5%なので、2.5mℓです。スポイトで計量して、または小さじ1/2分を入れます。
これでドクダミ化粧水の完成。
4、保管は冷蔵庫で
完成したドクダミ化粧水は冷蔵庫で保管して、半月をメドに使い切ります。大量に作ると使いきれないので、使い切れる分量ずつ作りましょう。
ドクダミはアレルギーを起こしにくい植物ですが、心配な方はパッチテストをしてから使ってください。
ドクダミチンキは、1年を目安に使い切りましょう。
化粧品メーカーの分析から効能をさらに深堀り
上で紹介したように、ドクダミの葉に多く含まれるデカノイルアセトアルデヒドやラウリルアルデヒドは強力な殺菌作用をもち、この成分からニキビ予防や吹き出物を早く治す効果などが期待できます。
化粧品メーカー各社では、ドクダミに秘められたさらなる効果を探るための研究・検証がされています。ここでは、その一部を紹介します。
1、皮脂抑制作用/化粧崩れ防止
ポーラ化成工業が1988年に報告した実験報告によると、エタノール抽出したドクダミエキス1%を配合した化粧水で実験した結果、パウダーファンデーションの化粧崩れ防止に対して優れた効果があるとしています。
2、アトピー性皮膚炎の症状改善
ノエビアが1998年に報告した検証によると、0.5%ドクダミエキス配合軟膏を1日2回、2週間にわたって塗布したところ、アトピー性皮膚炎の良好な改善結果が確認されました。
3、シワ、皮膚の弾力性改善
ノエビアが2001年に報告した検証によると、0.5%ドクダミエキス配合化粧水を1日2回6カ月にわたって塗布したところ、シワおよび皮膚の弾力性の改善傾向が確認されました。
4、肌のツヤ・ハリを改善
一丸ファルコスによって2003年に報告された検証によると、5%ドクダミエキス配合乳液を1日2回3カ月にわたって塗布したところ、肌のツヤ・ハリが改善されることが確認されました。
ドクダミには化粧崩れ防止やアトピー性皮膚炎の改善、アンチエイジング効果など、殺菌作用以外にもさまざまな効果が確認されています。さらに実際に使った方からは、美白効果やシミ消し効果もあるのでは!? と噂されています。
ドクダミチンキは、そのまま虫よけ&かゆみ止めスプレーに!
▲ドクダミチンキ+ハッカ油で最強の天然虫よけに!
ドクダミには強い害虫忌避効果があります。ドクダミチンキをそのまま、もしくは適当に倍くらいに薄めて服や帽子にスプレーすれば、天然の虫よけになります。
強い殺菌作用があるので、虫刺されにスプレーすればスッとかゆみが引いていきます。
ドクダミチンキだけでもいいのですが、同じくブヨや蚊の強い忌避効果で知られるハッカ油を少々混ぜることで、最強の害虫忌避スプレーが完成します。試してみてくださいね!
ドクダミチンキはバラの病虫害防除に役立つカモ!?
▲害虫がつきやすいバラの忌避資材として効果的かも!?
近年、研究されている天然の病虫害防除資材に「アルコール」があります。
アルコールには害虫の忌避効果があり、さらにアルコールは害虫の体から水分を奪うので、これにより駆除することもできます。アルコールには殺菌作用もあるため、病気予防にも役立ちます。
これらのことから、近年、アルコールを植物に散布して病虫害を防除するアプローチが研究されているのです。
もちろんアルコール100%原液では植物に害を与えてしまうので、適度な希釈が必要です。バラは比較的アルコールに耐えるので、エタノール70~80%濃度で散布しても大丈夫との報告もあります。
これはまだ仮説の域を出ませんが、もしかしたらドクダミチンキは、とても優秀な害虫防除資材になり得るかも知れませんね!
まとめ
今回は、庭にはびこる雑草ドクダミを有効利用する方法について、化粧水と虫よけをつくる方法を紹介しました。
自然の恵みをふんだんに取り入れた化粧水を手作りする方法は、女性にとって嬉しい情報です。が、じつはわたし、最初にドクダミに注目したのは、最後に書いたバラの防虫資材として使えないかと考えたからです。
バラの無農薬・低農薬栽培をしている人に定番のニームオイルは、ニームの木が大量のイナゴの襲来にもまったく食害されていないことから天然の害虫忌避剤として注目されました。同じようにドクダミも、庭や道路脇、日のほとんど差さない場所でも花をつける丈夫さとほぼ害虫のつかないタフさから、ニームのように天然の害虫忌避剤として使えるのではないかと思ったのです。
お湯で煮出した液を散布することで害虫忌避効果があるという情報はあったのですが、チンキの方が使い勝手がいいです。アルコールにも害虫の防除効果があるそうなので、ドクダミチンキも使えそうな気がしています。もちろん、まだ試していませんが・・・。
どなたか試したら、ゼヒ結果を教えてください!
参考文献
熊本大学薬学部薬用植物園 植物データベース「ドクダミ」 https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003405.php
化粧品成分オンライン「ドクダミエキス」 https://cosmetic-ingredients.org/skin-conditioning-miscellaneous/9664/
チバニアン兼業農学校「植物にアルコールをかけると-影響と対策 https://chibanian.info/20240422-1059/#:~:text=%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%8C%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%81%AB%E4%B8%8E%E3%81%88%E3%82%8B,%E3%81%AB%E6%82%AA%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E3%82%92%E4%B8%8E%E3%81%88%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
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