日本で唯一のバラの専門誌「New Roses」2024年春号(vol.35)の紹介です。今号ではバラの新品種コレクションと、特別企画は「バラ色に染まるアジア」。アジア各国のバラ事情をレポート。内容を少しだけお届けします!
2024年春。注目の新品種コレクション!
▲vol.35は色鮮やかな「ラ・パリジェンヌ」が表紙
バラの世界では、毎年新しい魅力的なバラ品種が登場します。さまざまなナーセリーから発表されるバラの新品種をまとめて分かりやすく紹介してくれる「New Roses」誌。毎年春と秋の年2回発刊される本誌は、日本で唯一のバラの専門誌です。
毎年春号は「新品種コレクション」が特集されます。2024年春号(vol.35)も、もちろん国内外のバラのナーセリー自慢の新品種にスポットをあてた編集。
それにプラスして「バラ色に染まるアジア」と銘打った特別企画が組まれています。基本的にバラは冷涼な気候で楽しむもの──という概念がくつがえされつつあるアジアのバラ事情を、現地ナーセリーからリポート。
ピンクに黄色が混じる色鮮やかな表紙のバラはデルバールの「ラ・パリジェンヌ」。発色の良い華やかな品種が多いデルバールらしいバラです。
気になるバラの新品種を少しだけ!5ナーセリーから紹介します。
1、バラの家(ロサ・オリエンティス)
▲左が「ザ・セレスティアル」、右が「ルクソール」
バラの家の育種家・木村卓功(きむら・たくのり)さんは、「ロサ・オリエンティス」のブランド名で耐病性が高く、かつ新規性のある品種を多く作出しています。
今年は先の尖った花びらのシルバーパープル色のバラというこれまでにない品種「ザ・セレスティアル」や、うっすら赤紫をまとったベージュ色のバラ「ルクソール」など、似た品種が見当たらないような渋い色味で新規性の高いバラが多く発表されました。
▲ひときわ色鮮やかな「昭和の花色」品種も
渋い色味のバラとバランスを取るように、色鮮やかな品種もいくつか発表されています。
右側のページの右上の赤バラは「ピュール」。花びらの裏がクリーム色で表が赤色。その左のバラは「タペストリー」。花の中心がオレンジで外側がピンク色。どちらも複色のバラです。これらは木村卓功さんいわく「昭和の花色」なのだとか。古くて新しい、そんなバラたちです。
右下が「風姿花伝 紅」-ふうしかでん くれない- 「日本風木立ち性ローズペイザージュ」と名付けられたバラ。修景バラの位置づけの品種のようです。文中に「日本風ノックアウト」とあるので、「ノックアウト」と同じくらい耐病性が高く花上りが良い品種なのでしょう。実際に咲いたところが見てみたいですね。
2、メイアン(フランス)
▲銘花「ピース」の名を受けつぐ「エンチャンティッド・ピース」
数々の殿堂入りのバラを排出しているバラの名門ナーセリー・メイアン社からは、メイアンらしい色鮮やかな品種が発表されました。
とくに目を引いたのが「エンチャンティッド・ピース」。花の中央が黄色で外側がピンクという、銘花「ピース」(写真:左下)の名を受け継ぐ品種です。本家ピースをより色鮮やかにした雰囲気で、花径は本家よりやや小ぶりの8~10cm。そしてなんと中~強香をもちます。
「エンチャンティッド」は「魅惑的な」の意味。これはステキなバラが登場しましたね!
3、デルバール(フランス)
▲「マハネ」は、純白の「ナエマ」 写真提供/天女の舞子
個人の庭で薬剤散布が禁止されているフランスでは、耐病性の高いバラが求められています。デルバール社は耐病性が高く、エモーショナルな美しさをもつバラを多く作出しているナーセリー。
写真は、今年5月に開催された「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2024」会場に飾られた「マハネ」。香りの四季咲きバラとして人気の「ナエマ」の枝替わり品種です。性質は同じで素晴らしい香りをもつ純白のバラ。美しいですね!
▲わたしの注目品種は「ルタン デ スリーズ」
今年ではなく2022年発表の品種ですが、わたしは「ルタン デ スリーズ」がとても気に入っています。
「国際香りのばら新品種コンクール」でシュラブローズの金賞を獲得した強香と、深い黒紫色がステキ。まとまりの良い花形と退色の少ないところも、とにかく魅力的です!
4、コルデス(ドイツ)
▲樹高2mまでの小型ランブラーローズは大注目!
環境先進国との異名をもつドイツのコルデス社は、他国に先駆けて耐病性の高い、無農薬でも育てられる品種を生み出し続けてきた名門ナーセリーです。
そのコルデスから、なんと小ぶりのランブラーローズのシリーズ(シルエッタ・コレクション)が発表されました!
ランブラーは、細くしなやかな枝に無数の小花を咲かせるオールドローズのつるバラですが、これまでの品種には大きな欠点がありました。大きくなりすぎるのです。大きいものだと10mちかくも伸びてしまうので、一般家庭では始末に負えません。
シルエッタ・シリーズのランブラーは、枝の長さが1.8mていど。家庭用のアーチにちょうど良いサイズです。品種にもよりますが、返り咲き性のあるものも!
花色は赤(クリムゾン・シルエッタ)、ラベンダー(ラベンダー・シルエッタ)、淡ピンク(スウィート・シルエッタ)、淡黄色(サニー・シルエッタ)。
画期的な品種を定期的に出してくる、コルデスは本当に優秀なナーセリーです。──ただ、ドイツよりずっと温暖な日本でどのていどまで伸びるのか、少し不安ではありますが・・・。
5、河合伸志(かわい・たかし)
▲稀有な斑入り葉が魅力の「ファースト・フロスト」
これまでNew Roses誌で取り上げられてきたバラのナーセリーは、大規模ナーセリーがほとんどでした。が、今回は中堅どころのナーセリーや個人育種家もかなりの数を取り上げ、魅力的な品種が紹介されています。そんな中からひとつ紹介します。
河合伸志(かわい・たかし)さんは、「横浜イングリッシュガーデン」や「中之条ガーデンズ」、「はままつフラワーパーク」のバラ園など、多くのバラ園の植栽デザインや管理に携わるガーデンデザイナー兼育種家です。
ガーデンデザイナーの観点から育種されるバラは、バラ単体ではなくガーデンで魅力が発揮される品種を念頭に作出されています。
「ファーストフロスト」は、半直立性の中型シュラブ品種。大きな特徴は斑入り葉だという点です。数少ない既存の斑入り葉品種よりも樹勢も耐病性も耐暑性も高く、格段に育てやすくなっています。
特別企画「バラ色に染まるアジア」ピックアップ紹介!
▲ロサ・オリエンティスのバラなら東南アジア諸国でも育てられる!
バラの家の育種家・木村卓功さんは、とにかく育てやすい品種の育種に注力しています。ひとつには黒星病やうどんこ病などの「耐病性が高い品種」、そしてもうひとつには「耐暑性が高い品種」の育種です。
日本では毎年夏の暑さが厳しくなりつつあります。さらに「バラの家」実店舗の所在地が暑さ日本一を記録する地域に隣接していることもあり、耐暑性を追求してきたという経緯があります。その結果、これまでバラを楽しむことができなかったアジア諸国でもバラを育てられるようになってきました。
特別企画では、「バラの家」の全面協力のもと、アジア各国でバラを生産・販売するナーセリーや専門店の実情がリポートされています。
ピックアップされているアジア諸国は「台湾」「タイ」「ベトナム」「カンボジア」「韓国」。
日本より冷涼な気候の韓国でバラ栽培は驚きませんが、沖縄より南に位置する台湾、タイ、ベトナム、カンボジアでバラ栽培が実現しているのは驚きです! ほとんどが「ロサ・オリエンティス」の品種が中心。木村卓功さんの偉大な功績ですね!
読者が選ぶバラBEST5
▲艶やかな濃い紫「ルタン デ スリーズ」が第5位 写真提供/天女の舞子
New Roses誌では、毎号「読者が選ぶバラBEST5」の巻末企画があります。前号のNew Roses誌で紹介した品種から読者のお気に入りを募集してランキング形式で発表しているのです。
今号の「読者が選ぶバラBEST5」は、5位が「ルタン デ スリーズ」(デルバール)。4位が「さくらいろ」(京阪園芸)。3位が「アンヌ」(河本バラ園)。2位が「ライオンハート」(バラの家)。
栄えある第1位は──どうぞ本誌をお手に取って確認してください^^
ネット購入はこちらから
New Roses 2024 vol.35 最新・人気品種と香りのバラ
アマゾンなら送料無料で購入できます。
コマツガーデンオンラインショップでも送料無料で購入することができます。後藤みどりさんのサインもお願いできます。ほとんどのナーセリーで送料が必要になってきているなか、とても貴重ですね^^
まとめ
「New Roses」2024年春号(vol.35)から、気になる新品種を5つのナーセリーから。さらに特別企画と読者が選ぶバラBEST5をちょっとだけご紹介しました。
バラの家(ロサ・オリエンティス)の木村卓功さんをはじめ、多くのバラの育種家の努力のおかげで、日本で育てやすい美しいバラが毎年登場してきて、今年のバラ界も目が離せません。
じつはこの春、ロサオリエンティスで2つの新苗を購入しました。これまで2カ月ほど育ててみて、木としてのその素晴らしい育ちっぷりに舌を巻いています。現時点で株元の葉が数枚黄色くなったていど。
ベイサルシュートの上がりも素晴らしく、新苗からたった2カ月でもう樹形ができあがりつつあります。これまでは、新苗から3年ほどたたなければ樹形が整わないのが当たり前と思っていたので、なかなか驚いています。
デルバールも頭ひとつ抜けている印象。樹勢がよく花上りも良く、発色も美しく退色しにくい。樹形のまとまりもいいですね。
毎年魅力的なバラが生み出され続けているバラ界。最新情報にキャッチアップするためにも、「New Roses」誌をどうぞお手元に^^
▼「花の情報便」の記事一覧は、こちらからどうぞ
エンチャンティッドピースだけですが、少し学んでいました。第二次世界大戦云々は置いておきます。当時 生まれたピースは、今の可憐で儚げな色でなく より濃い花色だったそうです。今のピースは本来のピースよりうすくなっていると。この新しいピースは、うすくなった花色を 誕生当時の華麗 鮮やかな色によみがえらせた···そんなバラだと学びました。
ありんぼさん、コメントありがとうございます。
そうなんです!
「作出された当時のピースはもっと色が濃くて輝くばかりに本当に美しかった。今のピースは見る影もない」
と、当時をご存じの方がおっしゃっているのを見たことがあります。
今のピースは間違いなく作出された当時の子孫なんですが、あまりに時間がたちすぎて、当時と同じように咲けなくなってしまった──と。
バラの品種が作出当時とまったく同じように再現されるのは20年だか30年だかが限度とか何とか──うろ覚えですが、そんな話を聞いたことがあります。
でも、今を生きるわたしたちには、元々のピースを観ることができない、もどかしさを感じていました。
そんな現状を憂えて「エンチャンティッドピース」が作られたのだと思っていました。
やはりそうなんですね^^
しかも、現代のニーズに合わせて香りつき!
かつてのピースはこんなに色鮮やかだったのかと、ピース誕生秘話に思いをはせてしまいます。
あいびー
あいびーさん、こちらこそ返信ありがとうございます。
今年やって来たエンチャンティッドピースのことを、たまたま専門家さんから教えてもらっていました。わたし達が知らない戦争が やっと幕を閉じた当時 “世界に平和を” と願いを込める象徴として世界中に贈られたとの話しです。(作出はそれより前だそうですが)
その花の‥わたしの感じでは “作り直し” のようなバラの再登場とでも?そう聞かされて考えてみると、欧米人が好む色合い的に 今のピースのようなうすい色よりインパクト強く目立つバラの方が納得がいくな と感じました。
儚いろうそくの炎のイメージなうす色のピースは、日本人が好む色合いという感じがします。←わたしの勝手な印象です。