梅雨から晩秋まで、雨が降ると発症し、あっという間に株全体に広がる黒星病。バラの2大疾病のひとつ、黒星病(黒点病)の予防のしかたと治療、さらに黒星病にかかり枝だけになった株を復活させる方法を紹介します。


バラの2大疾病のひとつ「黒星病(黒点病)」の特徴

▲葉に黒い斑点が現れる黒星病(黒点病)

ラには、2大疾病と呼ばれるかかりやすい病気が2つあります。葉が白い粉をふいたようになる「ウドンコ病」と「黒星病」です。「黒星病」(くろほしびょう)は「黒点病」(こくてんびょう)とも呼ばれます。

 

まず、黒星病とはどんな病気なのか、その特徴を見ていきましょう。

 

黒星病が発生する時期と場所

▲黒星病は長雨が続くと発生しやすい

星病は、梅雨や秋の長雨など、雨が続くシーズンに発生します。時期としては6月~10月まで。快晴の続く盛夏や11月以降の寒い時期には、あまり発生しません。

 

黒星病は、雨の当たる環境で発生します。ベランダなどあまり雨の当たらない場所ではほとんど発生しません。わたしはベランダ栽培なので、ほぼ黒星病とは無縁です。

 

黒星病は水の跳ね返りから発生する

▲雨の跳ね返りから発生する

星病を引き起こすのはカビ菌です。雨にカビ菌が含まれているわけではなく、土に常在している菌が水の跳ね返りでバラの葉につくことから発症します。

 

雨の跳ね返りで発生する以外に、あまりに勢いよく水やりすると、軒下で管理しているバラでも発生することがあります。

 

水の跳ね返りが原因なので、株元の葉から順に発症します。

 

わずか1週間で株全体に蔓延

▲蔓延速度はとても速い

星病の怖いところは、その蔓延速度の速さです。一旦、発症すると一気に広がり、1週間もあれば株全体に蔓延します。

 

黒星病が発生した葉には黒い斑点が現れ、やがて黄色くなって落ちます。

 

雨が降っているからと観察を怠り、黒星病の兆候を見逃して株全体に広がると、バラはほとんどの葉を失ってしまいます。葉がなくなれば光合成ができないので、バラの生育は急激に落ちます。

 

じつは黒星病は新芽や若葉には発生しません。このため黒星病が原因で枯れることはあまりありません。しかし害虫の多い梅雨時期、暑さや台風によるトラブルの絶えない夏と、黒星病が発生する時期はバラには厳しい季節です。複合的な要因で、ついにバラが枯れてしまうこともあります。

 

黒星病の予防のしかた

星病は、一旦発生してしまうと厄介な病気です。ほとんどの葉を落としてしまうまで止まらないことも多くあります。そのため重要なのは、治療より予防です。

 

黒星病予防は、発生しやすい梅雨前からスタートします。前年に発生した経験があるなら、必ず予防しましょう。

 

ここでは物理的な予防と薬剤を使った予防、3つの方法を紹介します。

 

1、マルチングで物理的な予防を


≪あす楽対応≫花ごころ バラ専用マルチング 10L

元に何か他のものを敷く(マルチングする)ことで、水の跳ね返りに黒星病の菌が入り込まないようにする物理的な予防がもっとも一般的です。

 

マルチング材には、バークチップやヤシガラ繊維、ヤシガラ繊維をシート状にしたものなど、さまざまなタイプがあります。

 

マルチングは夏の暑さからバラの根を守る効果もあるので、梅雨前から秋まで取り入れると安心です。

 

バラの暑さ対策と同時に、コガネムシの幼虫対策にもなるセダム(多肉植物)のマルチングもオススメです。セダムは2cmほどの厚みがあるので、黒星病菌がバラの葉につくのを予防します。

 

▼セダムのマルチングについて詳しくは、こちらをご覧ください

 

2、定期的な殺菌剤散布で予防


for the ROSE アタックワンAL(1000ml)

期的に殺菌剤を散布するのも黒星病予防の定番です。

 

ハンディスプレーなら「アタックワンAL」や「マイローズ殺菌スプレー」、「ベニカXネクストスプレー」、「ベニカXファインスプレー」などがあります。

 

噴霧器を使った散布なら、「STダコニール1000」、「GFベンレート水和剤」、「トップジンMゾル」「オーソサイド水和剤」などが有効です。

 

殺菌剤はなるべく2~3種類を用意して、ローテーション使いすると効果が高くなります。

 

3、「ベニカXガード」を株元に散布


殺虫 殺菌 病気 ベニカXガード粒剤 お徳用 550g 住友化学園芸

元にばら撒くだけで黒星病やウドンコ病など病気予防ができる「ベニカXガード」は、効果が1ヵ月ていど長続きする使い勝手のいい予防薬です。

 

殺虫効果のあるクロチアニジンという薬剤も混入されているので、害虫駆除効果もあります。夏に注意したいコガネムシの幼虫退治もできます。

 

ただし、クロチアニジンを含んだ商品は多くあり、それらすべての合計使用回数が年間4回までという使いづらさもあるので注意してください。

 

▼「ベニカXガード」について詳しくは、こちらをどうぞ

 

環境整備でそもそも黒星病にかかりにくくする

星病の予防には、そもそも黒星病にかかりにくくする方法もあります。上に挙げたマルチングや薬剤による予防と合わせて、環境整備も考えてみてください。こちらも3つの方法を紹介します。

 

1、屋根のあるところで栽培する

▲ベランダなら、アジサイ咲く梅雨でも黒星病知らず

としと雨続きの梅雨でも、雨のかからない場所で栽培すれば黒星病は発生しません。地植えではムリですが、鉢栽培なら鉢ごと移動してしまうのが、もっとも簡単な黒星病回避の方法です。

 

鉢数が多くて全部を移動することができないなら、黒星病に弱い品種だけでも検討してみては?

 

2、病気耐性の高い品種を選ぶ

▲ピエールドゥロンサールは葉も優秀 写真提供/ハナたろう

るバラの人気品種ピエールドゥロンサールは、病気や害虫被害に遭いにくい品種です。それはひとえに、ピエールドゥロンサールの厚みのある濃い色の照り葉のおかげ。

 

毎年、黒星病被害に悩んでいるなら、新しく迎えるバラは、黒星病耐性の高い品種を。管理がずいぶん楽になります。

 

3、液体肥料の葉面散布で、質の良い葉に改善する


肥料 液肥 原液 ハイポネックス原液 800ml ハイポネックス

で紹介したように、しっかりした質の良い葉のバラは病気にかかりにくいものです。葉を丈夫に保つためには、液体肥料の葉面散布が効果的です。液体肥料だけでなく、活力剤もプラスして散布するのが、近年では主流となっています。

 

葉面散布する場合の液体肥料の濃度は、土にかける場合の倍以上に薄めて使ってください。

 


肥料 微量要素 活力液 リキダス 800ml ハイポネックス

 

今回、紹介するのは「ハイポネックスの液肥+リキダス」の、京阪園芸で紹介している方法です。これは、クロロシス対策にも有効です。

 

ハイポネックス液肥1000倍+リキダス200倍を7~10日に1度、噴霧器で葉面散布し、残った散布液は土にかけます。

 

10リットル(通常のバケツ1杯)の水で調整する場合:ハイポネックス液肥10ml(キャップ1/2杯)+リキダス50ml(キャップ2.5杯)。農薬との混合は避けてください。

 

梅雨前と9月以降が散布適期です。梅雨の合間や、秋の長雨の合間にも散布するとより効果的。

 

初期段階の黒星病の治療方法

▲株元にチラホラ罹患している初期段階なら治療可能

に、予防の甲斐なく黒星病にかかってしまった場合の治療のしかたを紹介します。

 

ここで重要なのは、まだ初期の段階で気づくことです。株元に近い葉が数枚、罹患している程度なら治療は可能です。しかし、全体に蔓延していてはもう手遅れ。治療はムリです。

 

黒星病は、罹患から1週間もあれば株全体に蔓延します。雨だからと庭に出るのを諦めず、きちんと観察し、黒星病の初期段階で気づけるよう心がけましょう。

 

罹患した葉をすべて摘み取り薬剤散布

▲黒斑の出ている葉と周りの葉を取り除く

だ黒星病の初期段階なら、罹患した葉をすべて摘み取ります。黒斑が出ている葉だけでなく、その周りの葉も取り除いた方が安全です。

 

摘んだ葉を、株元に落としたままにしてはいけません。黒星病の病原菌は葉が枯れてもそこに居続け、研究によると数年生きているそうです。株元に残さず、すべてゴミとして処分しましょう。

 


殺菌剤 病気 バラ マイローズSTサプロール乳剤 100ml 住友化学園芸

 

この後、株全体に治療薬をたっぷり散布します。黒星病が発生してからの治療薬はサプロール乳剤ラリー乳剤があります。3日間隔で3~4回、立て続けに薬剤散布を行いましょう。

 

ただしサプロール乳剤もラリー乳剤も、黒斑が出てしまっている葉を治療することはできません。黒星病菌が葉に侵入しているけれどまだ発症していない──というごく初期段階の病原菌を抑える効果があるに留まります。

 

これでしばらく様子を見、再発がなければ通常管理に戻します。

 

黒星病で、ほとんどの葉が落ちてしまったバラの対処方法

▲全体に蔓延したら、治療はムリ

とんどの葉が落ちて枝だけになってしまった場合。もしくは上の図のように、まだ葉はあるけれど、株全体に黒星病が蔓延してしまった場合の対処法です。

 

1、葉をすべて取り除き処分する

うなるともう治療はムリなので、一旦すべての葉や枯れ枝を取り除きます。蕾や花、細枝も取り除きましょう。黒星病は新芽や若葉に発生しないので、新芽や若葉は残しても大丈夫です。

 

取り除いた葉や枝などは、もちろん株元に置きっぱなしにせず、ゴミとして処分します。

 

2、枝を軽く切り戻し薬剤散布+液肥

▲枝先を軽くカットしてから殺菌剤+液肥

に枝先を軽く切り戻し、全体にたっぷり殺菌剤を散布します。枝にも病原菌が付着しているので、洗い流す要領でたっぷりと。ここでの殺菌剤は、できれば予防に使うものではなく、治療薬のサプロール乳剤やラリー乳剤の方が望ましいです。

 

さらに、規定量の2倍に薄めた液肥を潅水がわりに与えます。(1週間に1度×3回ていど)。葉がなくなり弱っている状態なので、通常の濃い肥料は危険です!

 

3、芽吹いたら、殺菌剤散布しながら軒下管理

▲芽吹いたら軒下管理

がて芽吹いてきたら、定期的な予防用殺菌剤の散布で黒星病を防ぎながら管理します。できれば軒下など、雨の当たらない場所に置きましょう。

 

新芽や若葉は黒星病にかかりません。それは特別な膜に覆われているため黒星病の菌が侵入できないためだそうです。しかし発症しないだけで、病原菌が付着している可能性はあります。殺菌剤の散布を怠れば、膜がなくなるまで育った葉から順に罹患してしまいます。

 

こういう事態を防ぐためにも、必ず殺菌剤の散布を忘れずに。

 

「重曹オイルスプレー」は、黒星病にも効果アリ!?

▲重曹+植物性オイル+食器用洗剤でできる!

ラの2大疾病といわれる「黒星病」と「ウドンコ病」。どちらもカビ菌がバラに侵入することで発生する病気です。

 

この春に紹介した「重曹オイルスプレー」は、ウドンコ病の特効薬ともいえるほど、抜群の効果を示しました。既に発症している葉から一瞬でウドンコ病が消えるのは、まるで魔法のようでした。

 

これ、黒星病にも効くんじゃないでしょうか? なにしろどちらもカビ菌が原因ですし。実際に「重曹は黒星病に効く」ということが以前から言われていますし!

 

──が、残念ながら我が家はベランダ栽培のため、黒星病が発生しません。つまり実証実験をすることができないのです。

 

どなたか、有志の方の実験レポートをお待ちします! コメント欄または「お問い合わせ」より、ゼヒご連絡ください!

 

▼重曹オイルスプレーについて詳しくは、こちらをどうぞ

 

晩秋の黒星病は、ほぼ放置でOK!

▲寒くなってからの黒星病は怖くない!

星病とほぼ無縁なベランダ栽培の我が家ですが、じつは晩秋に少し発生します。この時期になると、もうバラの葉が弱っているせいか、一部のバラに黒星病が発生することがあるのです。

 

上の写真は、晩秋に罹患した我が家の黒星病です。黒星病の写真は諦めていたので、大喜びで撮影した覚えがあります(笑)。

 

しかしこの時期の黒星病は、ほぼ放置で構いません。

 

この先、バラはゆるやかに休眠に向かいます。黒星病にかかっている葉もかかっていない葉も、自然に落ちます。自然に落ちない葉は、人間の手で取り除いてしまうほどです。

 

ただし、病原菌は何年も枯れ葉の中で生き続けます。地面に落ちた葉はそのままにせず、少なくとも冬の間に取り除いておきましょう。

 

さらに、来春の芽吹きまでにしっかり殺菌剤の散布を。寒い内に枝についた菌を洗い流しておけば十分です。

 

まとめ

今回は、黒星病の予防と治療のしかたを中心にまとめました。

 

黒星病は、雨のあたる環境でバラを育てている方には、厄介で怖い病気です。蔓延スピードが速く、あっという間に葉が落ちて丸坊主になってしまいます。ただでさえバラが弱りやすい時期に罹る病気なので、これをきっかけにバラが枯れてしまうこともあります。

 

しっかり対策して、元気に秋バラシーズンを迎えたいですね。

 

しかしマルチングや殺菌剤を駆使しても、黒星病が蔓延してしまうことは多いです。もしも、ウドンコ病に劇的効果のあった「重曹オイルスプレー」が黒星病にも効くなら嬉しいですよね! 効きそうな気がするんですが、どうでしょう? わたしは晩秋まで待たなければ検証することができないので、気になる方はゼヒ先行して試してみてください!

 

皆さまの奮闘が、いい結果につながりますように!

 

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