バラには大きく、春と秋の2回開花シーズンがあり、それに合わせて各地のバラ園では「バラ祭り」が開催されます。でも秋バラを観に行くなら、初心者ほど少し注意した方がいいことも。今回は、秋バラと春バラの違いから、秋ならではのバラ園の楽しみ方まで紹介します。
最近バラ栽培を始めたお友だちと、10月下旬に秋バラを観に行くことになったの。春バラはとてもキレイだったから、今回もすごい期待しちゃう!お友だちにいいとこ見せたいから、秋バラについて教えて!
春のバラ園を期待して、秋のバラ園に行ってはいけない!
▲ゴージャスに花咲き競う春のバラ園
春バラが素敵だったからと、同じ感覚で秋バラを観に行くのは少し危険です。春バラは株を覆わんばかりにたくさんの花が咲きますが、こんな咲き方をするのは春だけで、秋は花数がぐっと減ります。
上の写真は春のバラ園です。色鮮やかなバラがたっぷり咲いてきれいですね。下の写真は同じ場所を撮影した秋の様子。
▲秋のバラ園の同じ場所
左奥に写っている建物が同じなので同じ場所だと分かりますね。バラはかなりたくさん咲いていますが、どうでしょう? 雰囲気はまったく違いますね。春のバラ園が素敵だったからと、同じ景色を求めて秋のバラ園に行くと、この様子にかなりガッカリしてしまいます。
もう一カ所、別のバラ園でも比較してみましょう。
▲花で溢れた春のバラ花壇
あまり手間がかからず花つきの良いことで知られる「ノックアウト」をメインにした春のバラ花壇。ピンクの濃淡がとてもきれいです。
▲同じ場所の秋のバラ花壇
同じ場所の秋のバラ花壇です。確かに花が咲いていますが、春の景色を期待して行ってこれでは──こちらもかなりガッカリでしょう。
▲5月中旬。花盛りのつるバラのアーチ
ここまでは木立ちバラの春と秋の様子を比較しましたが、続いてつるバラの比較です。無数の花がたわわに咲いて、春のつるバラのアーチは、とびきりロマンティック。この景色はため息ものですね。
▲10月下旬のつるバラのアーチ
続いて秋のつるバラの同じアーチを。ハロウィンの飾りで楽しく演出されていますが、花はまったく咲いていません。少しは咲く品種もありますが、多くのつるバラは秋にほとんど咲きません。
あらら~。木立ちバラなら確かに秋も花が咲いているけど、これは・・・! しかもつるバラはほとんど咲かないのね。これじゃ、せっかく出かけても楽しめないかなぁ? 秋のバラ園は行く価値なし?
春と同じものを求めるなら、正直言って行く価値なしね。でも、秋には秋の良いところがあるのよ。次に秋バラの楽しみ方を紹介するね。
秋の方が花のピークが長い!
▲春バラは花形が崩れやすい
春と秋の違いは気候です。
春は夏に向けどんどん暑くなる季節。しかも近年の温暖化の影響か、春バラの咲く5月中旬はかなり暑い日が続きます。バラは次つぎ咲いてきますが、1輪が咲き終わるペースが早く、花形が崩れやすくなっています。
上の写真は春の「ピース」です。花色はキレイに出ていますが、花形がやや崩れぎみです。花形が整っている期間は意外と短く、バラ園を訪れるタイミングを逃すとだらしなく崩れた花ばかりを観ることになるかもしれません。
▲秋バラは整ったまま長もちする
逆に秋は、晩秋に向かうにつれ涼しくなっていきます。バラはゆっくり咲き、ゆっくり散っていきます。時間をかけて咲くので品種本来の花色が出やすく、花形が崩れるまでの期間も長くなります。
春なら1週間違えば、もう花のピークが終わっている品種もありますが、秋は花のピークが長いので1週間の違いがあまり響きません。とはいえ春バラは圧倒的に花数が多いので、形の崩れた花があっても他の花がカバーしてくれるので、あまり気になりませんが。
黒バラや青バラは秋の方が美しい!
▲日焼けした春の「ブラックバカラ」
一般に黒バラと呼ばれる濃い赤バラは、秋の方が花が美しくなります。花色のせいで日光を集めやすいため、春の黒バラは日焼けで汚くなりがちです。
▲本来の花色が冴える秋の「ブラックバカラ」
秋の黒バラは本来の花色が冴え、ビロード質の花弁もとてもきれいです。とくに黒味の強いバラとして知られる「ブラックバカラ」や「パパメイアン」などは、秋にこそ観たいバラです。
青バラも花びらの質のせいか先端が傷みがちで、秋の方が美しくなりやすいバラです。
なるほど。花数は少ないけど、秋は花1輪を観るのに適しているのね。
そうなの。花いっぱいの景色を観るなら春、花1輪の美しさを観るなら秋ね。秋はバラも周りの木々も葉が減って、紅葉も始まっているから、景色としては華やかとは言えないわ。でもその分、人も少ないからゆっくり散策できるわよ。
そういえば、秋バラの方が香りが強いって聞いたんだけど、そうなの?
秋は、バラの香り長もち!
▲バラの香りの研究者・蓬田勝之さん
秋バラの方が香りが強いとよく言われますが、正確には、これは間違いなのだそうです。
以前、バラの香り研究の第一人者・蓬田勝之さんの講演会で聞いたお話しによると、春バラも秋バラも香りの成分量として差はないとのこと。
ただし、バラの香りは咲いた直後がもっとも強く、太陽が昇り気温が高くなるにつれ香り成分は揮発してしまいます。このため、香水用のバラを栽培しているブルガリアなどでは、日が昇ると同時にバラの花を収穫しています。
▲ブルガリア、バラの谷のバラ祭り(出展:フリー素材屋Hoshinoさま)
でも、観光客が日の出とともにバラ園を訪れることはできません。早くても9時とか10時です。どんどん気温の上がる春バラでは、9時や10時ではもう香りはほとんど飛んでしまっています。
一方、太陽が昇ってからの気温上昇がゆるやかな秋なら、香りの揮発速度もゆっくりで、9時や10時でもかなり香り成分が残っています。このため、秋バラは香りが強いと言われるのです。
つまり、香りが長もちするってことね!
そういうこと。秋ならではのバラの楽しみは他にもあるわよ。
可愛いローズヒップが観られる!
▲伽羅奢(がらしゃ)のローズヒップ
秋のバラ園ならではの楽しみのひとつに、ローズヒップが観られるという点があります。秋はほとんどのつるバラが咲きませんが、原種に近いつるバラの多くは、秋にローズヒップが実ります。
▲「イザヨイバラ」のローズヒップ
ローズヒップは、品種によりさまざまな表情をもちます。赤くて丸いタイプや、オレンジ色で少し細長いタイプ、なかでもイザヨイバラのヒップ(実)はすごく変わっていて、大きくてトゲトゲのついた黄色い実です。
どれも可愛らしいです。
秋のバラ祭りでは、大苗が購入できる!
▲1年以上、畑でしっかり育てられた大苗 写真提供/天女の舞子
春も秋もバラ祭りが開催されるバラ園が多いのですが、出品される苗は大きく違います。春は新苗、秋は大苗が主に出品されます。
春に出回る新苗は、値段は安いけれど初心者には少し栽培ハードルが高い苗。秋に出回る大苗は、値段は少し高いけれど、初心者にも育てやすい苗です。
バラ祭りには、あまりホームセンターで見かけないような人気品種や新しい品種も出品されます。苗を買うだけの目的でも、秋にバラ園を訪れる価値はあります。
庭づくりの参考になる、バラと組み合わせたい植物が探せる!
▲紫の花穂がきれいなアメジストセージ(サルビア・レウカンサ)
近年多くつくられている宿根草との混植ガーデンでは、秋のバラ園を美しく彩る工夫が凝らされています。秋バラと一緒に楽しめる草花を多く取り入れているので、庭のある方にはとても参考になります。
たとえば「アメジストセージ」の名称で販売されている「サルビア・レウカンサ」は花期が長く、8月~11月まできれいな紫色が楽しめます。
▲バラと見まごうダリアの花
一見、バラそっくりなダリアを組み合わせているバラ園も見かけます。バラは木なので秋は葉が少ないけれど、ダリアは葉が瑞々しいところがいいですね。
ほかには、シュウメイギクやコスモスもよく取り入れられています。
秋のバラ園は、何を観たいかで選ぶ!
▲秋のハイブリッド・ティー系統のバラ
じつはハイブリッド・ティー系統のバラは、春も秋も変わらないほど良く咲きます。このため、秋にバラの花を観るならハイブリッド・ティー系統の品種を多く植えているバラ園がオススメです。
ハイブリッド・ティー系統は2000年以前のモダンローズの主流バラで、1輪がとても立派です。古くからあるバラ園は、ハイブリッド・ティー系統を多く植えているので、秋バラを観るならピッタリです。
近年の主流はシュラブ系統のバラで、新しいバラ園ほどシュラブ系統やつるバラを多く使って立体的なデザインを取り入れ、宿根草と混植したイングリッシュガーデン風のバラ園が多くつくられています。
秋バラと一緒に咲かせる植物や、ローズヒップを観るなら新しいバラ園の方が向いています。バラ園選びの参考にしてください。
まとめ
秋になると決まって閲覧数の伸びる記事があります。「春バラ、夏バラ、秋バラの違いは? 咲き方や色、香りの違いを比較してご紹介!」という記事です。古い記事なのでやや見つけにくいところがあるため、YOUちゃんシリーズとして、切り口を少し変えてまとめ直しました。
今回は「秋のバラ園に行く価値があるかどうか?」をメインにまとめましたが、いかがでしょうか。
春と同じ景色を期待して秋のバラ園に訪れると、どうしてもガッカリしてしまいます。でも、秋には秋の楽しみ方があるので、そこを押さえてお出かけくださいね。
秋は秋のバラの楽しみ方かぁ~! いろいろ教えてもらったし、お友だちにも話してあげようっと!
▼元々の記事はこちらからどうぞ!
▼バラ初心者YOUのQ&A一覧は、こちらからどうぞ
こんばんわ
秋には春にはない風情があるので、バラ園まで足を延ばしてみるのはいいですね
もみじの紅葉を遠目で眺めながらバラを鑑賞するのは良いものです
…と、思ってあいびーさんに触発されて近くの小さなバラ園に行ってみましたが
夏剪定されて花がありませんでした~
オチがついてしまいました
もっとも剪定されたバラから出てきた若芽を見るのも意外と楽しかったです
コロナで閉まっているバラ園も多いのですが、10月ごろにまた出かけてみるつもりです
なお、田舎なので買える品種がかなり乏しいから、大苗を購入できるのは羨ましいですね
こちらはかなり選択肢が乏しいですので~
アスタルティさん、こんにちは。
コメントをありがとうございます。
あああああ~!
初心者向けのページで秋バラの季節を正確に書かなかったのは
今が花どきだと勘違いさせてしまう失敗だった~!
──と、一瞬焦ってしまったのですが。
いや、コメントを良く見ればしっかり栽培経験豊富な方のようで
ホッとしました。
「秋には春にない風情がある」
おっしゃる通りですよね。
でも、春のバラ園を想像して行くと、同じようにはいかないので
初心者さんほどガッカリしてしまいがちです。
どちらかというと、秋のバラ園はツウ好みなのかも知れません。
取り扱うバラ苗の種類は、地域差もあるでしょうね。
やはり古くからバラをメインに展開してきた京成バラ園は強くて
古いバラ園や地方のバラ園ほど京成バラ園の品種が多い印象です。
少しずつでいいから、他メーカーの品種も増やしてほしいですね。
ロサ・オリエンティスの木村卓功さん、頑張ってるし、世界的知名度も上げてきてますし!
あいびー