バラの蕾がガク割れしてきたら、スリップス(アザミウマ)対策を考えてください! 土に撒く粒剤を使っていない方はとくに要注意です!
蕾がガク割れして花びらが見えてきたら!
▲蕾がガク割れして、もうすぐ咲きそう♪
バラの蕾がまるく膨らみ、ガクの間から花びらがのぞいてくると開花間近! ロザリアンには嬉しくてたまらないのですが、この時期に対策したい害虫がいます。それがスリップス(アザミウマ)です。
スリップス(Thrips)は英語名で、アザミウマ(薊馬)は和名。どちらも同じ虫をさします。
スリップスは1~2mmの細長い虫
▲スリップスは細長い小さい虫 写真提供/天女の舞子
スリップスは1~2mmほどの小さな細長い虫です。5月~10月によく見かけます。とくに白っぽい花が好きで、白や淡い色のバラは狙われやすいので注意が必要です。上の写真はボレロ。白い花だから狙われたんですね。
スリップスが発生すると、せっかくの花に虫がうじゃうじゃいて気持ちが悪いです。しかもこの虫、小さいのに黒いからよく目立ちます。
そしてスリップスは、花びらを吸汁するので花弁の端が茶色く傷んでしまいます。上の写真でも、もう咲き終わりのように花びらが傷んでいますね。でもこれ、まだ咲いたばかりなんです。これではガッカリですね。
スリップスはガク割れした花びらに産卵する!
▲ガク割れした花びら部分に産卵
じつはこのスリップス、すでに蕾のうちから侵入しています。ガク割れした花びらのところに産卵するんです。
卵は蕾のなかで孵化し、幼虫になります。つまり開花したとき見かけるのはスリップスの幼虫なのです。咲いたばかりの花びらが汚く傷んでしまっているのは、蕾の間にスリップスの幼虫が吸汁していたためです。ひどいときには蕾のまま咲くことができない花もあります。
つまりスリップスが原因でボーリング(蕾のまま咲かない状態)してしまうこともあるのです。さらにウイルス病を媒介することもあります。
スリップスを農薬で駆除する2つの方法
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スリップス対策に有効な園芸用農薬は土に撒く粒剤の「ベニカXガード」「オルトランDX」、ハンドスプレーの「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」です。それぞれの使い方を紹介します。
「ベニカXガード」「オルトランDX」で対策する
▲バラの株元に散布する
土に撒くタイプの粒剤農薬「ベニカXガード」や「オルトランDX」は、バラの株元に適量(5~10g)を散布します。バラは根から農薬成分を吸い上げ、株のすみずみまで農薬が効いた状態になります。
この株に産卵されたスリップスは、卵から孵ったごく小さい幼虫のうちに農薬入りの樹液を吸って駆除されます。
「ベニカXガード」や「オルトランDX」は、スリップス以外にも多くの害虫に効果があります。「オルトランDX」はアブラムシ、スリップス(アザミウマ)、コガネムシ幼虫、クロケシツブチョッキリ、チュウレンジハバチに効果があります。「ベニカXガード」はコガネムシ幼虫、スリップス(アザミウマ)、クロケシツブチョッキリ、チュウレンジハバチ、バラシロカイガラムシに効果があります。
土に撒いておくだけでいいので、とても使い勝手の良い農薬です。
さらに「ベニカXガード」は、ウドンコ病や黒星病の予防効果もあるので、3月中旬ごろから使っておくといいですね^^ もちろん、ガク割れが始まってから使っても問題ありません。スリップスだけでなく、多くの害虫対策になります。
ただし、樹高1mちょっとまで(1.2mくらいまでと言われています)しか農薬成分を吸い上げることができないので、それよりも樹高の高い仕立てのバラでは効果がでません。
「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」で対策する
▲蕾のうちに薬剤散布して予防する
「ベニカXファインスプレー」(住友化学園芸)「ベニカXネクストスプレー」(住友化学園芸)は、目に見える害虫を速攻で駆除できるハンドスプレー農薬です。浸透性・持続性(アブラムシで約1か月)があるので、スリップスが発生する時期に合わせて蕾にかけておけば、被害を最小限に抑えてくれます。
土に撒くタイプの粒剤を使いたくない方は、こちらの方法でどうぞ。
大型シュラブ樹形のバラやつるバラなら、「オルトラン水和剤」(住友化学園芸)を散布しましょう。
ただし花びらにかけるとシミになりやすいので、もうすぐ咲きそうな膨らんだ蕾のうちにかけるといいです。
ハンドスプレー農薬の「アタックワンAL」では、スリップスに効果がありません。くわしくは、「【保存版】バラ用ハンドスプレー農薬と土に撒く農薬のデータベース」のページをご覧ください。
▼効果や使われている薬剤の系統がわかる、便利な保存版
スリップスは薬剤耐性のつきやすい害虫
スリップスはバラ以外にも多くの農作物につき収穫量を減少させる害虫で、数十年前から対策が取られてきました。そのため、薬剤抵抗をもつ個体が増えていて、既存の農薬が効きにくくなっています。
さらに成虫は翅があるので飛来を防ぎようがなく、そのうえ15~45日という短期間にどんどん世代交代していくので薬剤耐性がつきやすい厄介な虫です。
そのため、上で紹介した農薬も、思うような効果が得られないかもしれません。一番確実なのは、物理駆除です。
スリップスを物理駆除する方法
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【誘引 粘着板】 ホリバーブルー 10枚 害虫モニタリング ヒラズハナアザミウマ ミナミキイロアザミウマ ミカンキイロアザミウマ |
▲左は黄色と青の2色入り。右は青一色入り
スリップスは、バラでは白や淡い色につきやすい害虫ですが、じつは一番好きな色は青です。上に紹介した「ホリバー」(アリスタ)は、黄色や青に着色したベタベタした粘着性の害虫トラップです。
黄色はコナジラミ類、アブラムシ類、ハモグリバエ類、ミナミキイロアザミウマ、ネギアザミウマなどのアザミウマ類と、多くの害虫を引き寄せくっつけて捕獲します。
青色はとくにアザミウマ類を強く引き寄せ捕獲します。
効果は高いのですが、せっかくのバラの隣にこのケバケバしい粘着シートがぶら下がっている光景は・・・果たしてどうなんでしょう。
キラキラ光るものも苦手なようなので、光るテープなんかも成虫を寄せ付けない忌避効果があるそうですが・・・。畑ならいざしらず、庭に取り入れるには景観として厳しいものがありますね。
花についたスリップスはきちんと捕殺しよう!
Thrips in strawberry flower / gcchang
次に、スリップスの生態を簡単に紹介します。
どこからか飛来したスリップスの成虫は、バラの蕾のガクの間から蕾の中に産卵します。蕾の中で孵化した幼虫は、バラが開花したところで人の目に留まります。
やがて幼虫は土に落ちて潜り、蛹を経て成虫となり地上に出てきます。そしてまたバラの蕾に産卵するのです。
この悪循環を止めるため、花にいる幼虫をしっかり捕殺することが大事です。薬剤が効きにくいからこそ、こういう物理駆除が大切です。
スリップスの被害に遭っている花を見つけたら、花を切り取り、ビニール袋に入れて薬剤を吹き付けてからしっかり口を閉じて廃棄しましょう。花をそのまま付けっぱなしにしたり、切り取った花を株元に放置しないように注意してください。
追記
花についたスリップスを捕殺するには、水を張ったバケツに花ごと沈めて窒息させるのも良い方法です。食器用洗剤を少し入れておけば、より効果的。
アスタルティさんからアドバイスいただきました。
アザミウマ(薊馬)の名前の由来は?
ところで、和名の「アザミウマ」(薊馬)って不思議な名前だと思いませんか? その由来はなんだろうと調べてみました。レファレンス協同データベース(https://crd.ndl.go.jp/reference/)に、こんな記述を見つけました。
『日本動物大百科 8 昆虫』(日高敏隆/監修 平凡社 1996.9)
p.127「アザミウマ類」(アザミの花から出てくる馬)
「由来は、関西から中国地方にあった子どもの遊び(中略)。数人の子どもが集まって、アザミの花を手のひらの上で軽くたたき、そこから出てくる小さな虫の数を競いあったという。(中略)そのときに「ウマ出ー! ウシ出ー!」とかけ声を唱えたという。」
子どもたちの遊びが名前の由来のようです。ロザリアンにはにっくきアザミウマも、昔の子どもたちには小さい馬に見えていたんですね。
まとめ
今回は、バラの蕾がガク割れしてきたら思い出してほしいスリップス(アザミウマ)の防除について紹介しました。花を汚く傷つけ、花の中でうごめくにっくき小さな虫。農薬が効きにくくなっているので、農薬と同時に物理駆除も考えたい害虫です。
本文では触れませんでしたが、花だとバラのほかにマリーゴールドやカーネーションにも集まりやすいそうです。近くに咲かせている方は、しっかり防除してください!
▼病気と害虫対策の記事一覧は、こちらからどうぞ
たぶん、これかなぁ・・・最近はバイトを初めて。あまりバラをきちんと見てないから。。。お!咲きそう!と思ったら。成長がほとんど止まってしまい。終わり。。。今年はとくに多いんです。
今回は春のバラより株を優先なので。ビシバシカットしちゃいます(笑 事故にあったミニバラの方が先に1輪だけ夕方に開花していました。
ORCAさん、こんにちは。
ん~。
それってもしかしてボーリングですかね?
花が開かず止まってしまう感じ?
ボーリングは品種によりなりやすいものや
寒暖差の多い気候でもなりやすいです。
今年はなりやすい気候かもですね。
あと、蕾に雨が入ると花びらが中でくっついて開きにくいとかも
言われますね。
ボーリングしてもいいので、そのままそだレポしてください^^
あいびー
こんばんわ。
スリップスに侵された花を捨てる時は、バケツに水を入れて沈めておけば
窒息死しますよ。
洗剤を少し入れておけば、なおよし。
アザミウマ対策は、ガブリエルを実験台にして色々やってたりします。
完全にいなくすることは無理だけど、対策自体は可能かな~って感じ。
そのうち、そだレポでいくつか紹介してみます。
ボーリングはわたしも起こってますね~。
これだけ寒暖差が大きいと、どうしても発生してしまいます。
なぜかレディオブシャーロットだけボーリングしないけど。
アスタルティさん、こんにちは。
スリップスの捕殺、水に沈めるのは良さそうですね。
追記させていただきます。
いつもありがとうございます。
ボーリングやっぱり起こっているんですね。
我が家はほぼ起きないのですよね。
今年はまだ咲いていないので分かりませんが。
以前、11月に咲いたノヴァーリスが
3cmほどのサイズから開かなくて、
中にぎゅう~っと花びらが詰まった感じになったのが唯一です。
やっぱり花びらが多いとなりやすいですよね。
花弁が薄いのもなりやすいし。
レディオブシャーロットはなりにくい品種なんでしょうね^^
あいびー