4月に入る前後から本格的に始めたいのが病虫害対策です。今回は、新芽やつぼみについてバラの生長をさまたげるアブラムシの予防と駆除のしかたについて、初心者にわかりやすくまとめています。
アブラムシはこんな虫(アブラムシの生態)
▲バラのつぼみについたアブラムシ
アブラムシ(油虫)は、体長3ミリほどの小さな体で樹液を吸う虫です。世界で3000種以上いるといわれ、日本にも700種ほどのアブラムシがいます。
アブラムシは体内に子どもを宿した状態で生まれ、1週間ほどで成虫になります。ほとんどの成虫はメスで、メスだけで1回につき30匹ほどの幼虫を1ヵ月にわたって産むことができます。1匹や2匹ならたいした被害はありませんが、この爆発的な繁殖力で大量発生するのがアブラムシの厄介なところです。見た目も悪いですしね!
普段は最初から幼虫で生まれるアブラムシですが、晩秋だけは卵で生まれ、卵の状態で越冬します。そして暖かくなると孵化して活動を始めます。ときに翅のある個体が生まれ、新天地に向かって飛んでいきます。
アブラムシの身体は柔らかく、敵に捕食されやすいので、自分の身体から出す甘い汁(甘露)でアリを集めて守ってもらうことがあります。このためアブラムシは「アリマキ」と呼ばれることも。
アブラムシが発生する時期
関東基準で4月~11月がアブラムシ被害がある時期です。
冬は卵で越冬しますが、冬でも暖かい地方だと成虫のまま越冬することがあります。
アブラムシの被害
アブラムシは大量に群がってバラの樹液を吸い、バラを弱らせます。ときに奇形させることもあります。またアブラムシはウイルス病を媒介したり、排泄物からすす病を発生したりと、二次被害ももたらします。
アブラムシの予防のしかた
4月に入ると害虫の活動が活発になります。3月下旬をめどにアブラムシを含む害虫対策を行いましょう。まず、効果的な予防のしかたから紹介します。
農薬を使う予防方法
アブラムシを含む広範囲の害虫予防には、株元にばら撒くだけの「オルトランDX」が手軽に使えて効果的です。
「オルトランDX」は、株元にばら撒いて水やりするだけの簡単な方法で使える農薬です。飛散しないので、使い捨てのビニール手袋をはめるていどの軽装で扱える気軽さがいいですね。「オルトランDX」の有効成分をバラが根から吸収しして木全体に行き渡り、その汁を吸うことでアブラムシを駆除することができます。
アブラムシが発生する頃に「オルトランDX」をまいておけば、まだ人の目につかないほど少数のアブラムシも確実に駆除してくれるので、大量発生を抑えることができます。
アブラムシだけでなく、アザミウマ類、コガネムシ類幼虫、クロケシツブチョッキリ、チュウレンジハバチにも効果があります。ただし、ミツバチに対しても影響があります。
残留効果は1ヵ月続きます。年間4回まで使用することができます。
とても使い勝手の良い農薬ですが、カバーできるのは株元から1m程度までなので、高さ1mほどに管理しているブッシュ樹形のバラならいいのですが、つるバラではあまり効果を期待できません。
▼オルトランDXについて詳しくはこちらのページをご覧ください
▼メーカーの住友化学園芸のサイトも参考にしてください
農薬を使わない予防方法
独特の臭いで害虫を遠ざけたり、卵の孵化を妨げたり、食欲を減退させる働きをもつ「ニームオイル」を使います。よく似た効果があると言われている木酢液を使う方もいますが、発がん物質が含まれていたり、希釈濃度により害を招きかねないところがあるので、初心者には「ニームオイル」をオススメします。
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「ニームオイル」は、インドセンダンの実から作られるもので、アザディラクチンという成分が害虫の忌避効果をもたらします。アブラムシをはじめとする害虫防除には効果がありますが、人や益虫(肉食昆虫)には無害で、使用回数にも制限がないとても使いやすいものです。ゴキブリにも効果があるそうですよ!
バラには原液を水で希釈して噴霧器で噴霧して使います。希釈倍率は商品により異なりますが、300~1000倍に薄めます。ニームオイルの効果の持続期間は5日前後です。あまり害虫のいない時期なら5~7日ごとに、害虫が多い時期は3~4日に1回噴霧するようにします。
ただし「オイル」なので葉焼けを起こす恐れがあります。とても日当たりの良い環境や盛夏に使う場合には希釈倍率に注意が必要です。
アブラムシの駆除のしかた
予防はしていても、どうしても発生してしまったら、広がる前にしっかり駆除しましょう!
農薬を使う駆除方法
アブラムシが発生しているのをみつけたら。あまり多くなる前に先手必勝! 駆除効果の高い農薬を使いましょう。アブラムシをはじめとするさまざまなバラにつく害虫駆除には「ベニカXファインスプレー」や「アタックワンAL」などのハンドスプレー農薬をオススメします。「ベニカXファインスプレー」には、スプレータイプと、エアゾールタイプがありますが、必ずスプレータイプを選んでください。エアゾールタイプは、新芽やつぼみをダメにしてしまう恐れがあります。
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「ベニカXファインスプレー」は速攻効果があり、アブラムシだけでなく、アザミウマ類、クロケシツブチョッキリ、コガネムシ類成虫、コナジラミ類、チュウレンジハバチ、ハダニ類、ハモグリバエ類、ハスモンヨトウなど、多くの害虫に効果があります。
「ベニカXファインスプレー」は、クロチアニジンなどの有効成分で害虫を駆除します。即効性があり、持続効果があるとても優れた農薬ですが、年4回までしか使うことができません。その理由は、アブラムシやハダニは同じ薬剤を使い続けることでその薬剤に抵抗力のある虫に発達してしまう恐れが高いからです。アブラムシで約1ヵ月の残留効果があります。
「ベニカXファインスプレー」の農薬成分に、物理的に害虫を駆除する成分を加えた新商品「ベニカXネクストスプレー」も同じように使えます。
▼ベニカXファインスプレーについて詳しくはこちらをご覧ください
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農薬を使わない駆除方法
農薬を使いたくない方は、物理的に駆除する方法を選んでください。ただし、こちらは発生初期のみ対応できる方法です。完全無農薬でバラを育てるのは大変です。愛情と時間と知識を総動員してください!
1、物理的な駆除剤を使う
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澱粉で害虫をコーティングして死滅させるという、物理的な駆除剤を使います。薬品ではないので、人体にも他の昆虫にも害はなく、くり返し何度も使える安全な駆除剤です。ただし、農薬のようにすっきり一度で駆除できるわけではありません。くり返し根気よく使ってください。
2、牛乳を使った駆除剤を使う
牛乳をそのままアブラムシにかけておけば、やがて乾いたときにアブラムシを窒息させることができます。少し水で薄めて噴霧器に入れて使うこともできます。アブラムシがいなくなるまで、根気よく行ってください。牛乳のついたところは白くなるので、アブラムシが駆除できたらきれいに水で洗い流しておきましょう。
3、ガムテープや歯ブラシ、濡らしたティッシュで取る
ガムテープの先端をとがらせてアブラムシをくっつけて取る、歯ブラシでこすり落とす、ティッシュを濡らしてこすり取るなどして、バラを傷つけずにアブラムシを退治します。数が少ない内なら対応できますが、なかなか大変です。
4、テントウムシに食べてもらう
テントウムシはアブラムシを捕食します。うまくテントウムシがいたら、大事にしてあげてください! いくつかは食べてくれるはずです。
アブラムシの現実的な防除方法
バラはきれいに咲かせたい、でも農薬散布はなるべくしたくないのが、多くの方の本音だと思います。できれば完全無農薬を目指したいと。でも、完全無農薬はわたしにはムリでした。やはり愛情と時間と知識を総動員しなければ難しい。現実にわたしが行っている害虫防除の方法を紹介します。
まず株元にオルトランDXを撒いておきます。残留効果は1ヵ月ていどで、年4回まで使えますから、3月下旬にまず1回目。それ以降はニームオイルの散布を繰り返して病虫害の防除をします。
どうしても発生してしまったアブラムシには、初期段階でその部分だけにハンドスプレー農薬(「ベニカXファインスプレー」や「アタックワンAL」)を吹きかけて駆除します。
害虫被害がひどくなってきたら、オルトランDXの2回目散布。ニームオイルの散布は引き続き。どうしても発生した部分だけに「ベニカXファインスプレー」。この繰り返しです。
害虫被害を受ける葉がいくつか出ますが、すぐ隣のベランダで洗濯物を干すような我が家の環境では、今のところこれがベストかなと思っています。
まとめ
アブラムシの防除について、初心者向けにまとめました。広範囲に農薬散布できる環境の方には物足りない方法だと思いますが、家庭園芸ではこれくらいが現実的なラインかな、と思っています。
ニームオイルは自分的にはかなり有効だと思っています。ここで紹介した以外にも、ニームオイルを使った商品はいろいろあるので、使いやすいものを選んでくださいね!