アメリカで開催されているAARS賞は、アメリカ国内はもちろん、世界的にも評価の高いバラのコンテストです。多くの受賞品種は日本でも買うことができます。今回は、AARSとはどんなコンテストなのか、そして受賞したバラはどんなバラの品種なのかを詳しく紹介します。
AARS賞は、アメリカでもっとも権威あるバラのコンテスト
世界にはさまざまなバラのコンテストがあります。シカゴに本部を置くAARS(All-America Rose Selections)は、アメリカのバラ産業によって創設された、庭で育てやすく美しいバラを選び、広めるための非営利団体です。AARS賞は、AARSにより優れたバラを選出する賞で、アメリカでもっとも権威あるバラのコンテストとして知られています。
AARS賞は、全米の試験園で2~3年の試験栽培を経て厳格に審査される
1930年代までのアメリカには、数千というバラが販売されていましたが、その多くは品質の悪いものでした。それぞれの品種を比較する基準がなかったため、庭で育てるバラをどう選んでいいのか分からず、一般のガーデナーたちはとても混乱していたそうです。当時のアメリカの大規模なバラのナーセリー各社も、これをどうにかしなければならないと考えを巡らせていました。そんな折のこと。
1932年、アメリカ種子貿易協会(American Seed Trade Association)は、花や野菜の優良新品種の選定や普及、育成者の権利保護を目的としてAAS(All -America Selections)を創設。AASでは、全米各地でさまざまな植物の試験栽培を実施し、その結果をふまえて、優れた花や野菜をAAS WINNERとして選定するというコンテストを開催しました。
1938年AAS主催者のW. Ray Hastingsは、ジャクソン&パーキンス社(Jackson & Perkins)のチャールズ・パーキンス社長に、バラについてのテスト・プログラムを作成するよう要請します。これがきっかけとなり、AASの中でのバラ部門、つまりAARSが創設されます。AARSが選定した全米のテストガーデンでバラの試験栽培が行われ、1940年に初めて4つのバラが受賞品種として選ばれました。
こうしてAARS賞は、協会創設以来70年以上にわたり、全米のガーデナーにバラの高い品質保証を提供し続けているのです。
AARS賞は、個人の庭で育てやすい品種選びの目安になる!
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▲2000年のAARS受賞品種「Crimson Bouquet」
AARS賞にエントリーされた新しい品種はまず、AARS認定園で2~3年の試験栽培がされます。経験豊富な審査員により、つぼみと花の色と形、香り、花の経過、樹勢、葉、耐病性、返り咲き性、オリジナリティなどが評価され、ここに加えて審査員の個人的意見も反映されます。
アメリカの国土は広大です。カリフォルニアやニューイングランド、中西部、北西部、南部など、それぞれに異なった気候をもっています。AARS賞にふさわしいバラは、アメリカ全土のどこでも良く育つバラでなければいけません。このため、AARS受賞のバラは、どんな環境でも育てやすいという特徴があります。
こうして選び出されたバラは、とても希少で特別なバラです。AARS賞を受賞したバラは、アメリカ国内はもちろん、世界じゅうでその品質の高さが認められています。
日本で入手できるAARS賞を受賞したバラの品種リスト
AARS賞では、アメリカの広い国土のどこでも(といっても、アラスカやハワイなどは除外されているようですが)育てられるバラが選ばれています。育てやすいバラを探したいならAARS賞受賞のバラは、とても参考になるはずです。
日本で販売されているAARS賞受賞のバラを一覧にしました。すべて網羅しているわけではありませんが、なるべく多く紹介しています。
*下に行くほど古い受賞品種になっています。
*写真は少しずつ埋めていきたいと思います!
*系統の略記号は以下の通りです。
HT/ハイブリッド・ティー系統
Gr/グランディフロラ系統
F/フロリバンダ系統
S/シュラブ系統
R/ランブラー系統
Cl/クライミング系統
▼AARS賞を受賞したバラの全リストは、こちらのサイト(pdf)で見られます
育てやすさにこだわるなら、比較的新しい受賞品種から選んで!
▲2000年にAARS賞を受賞した「ノックアウト」と、枝替わりの「ピンクノックアウト」
調べてみると、意外とたくさんのAARS受賞のバラが日本で販売されていることが分かりました。なかには「ピース」、「ダブルデライト」、「クイーンエリザベス」、「ボニカ」など、世界バラ会議で殿堂入りしたバラもありますね。いくつもの賞を受賞しているバラは、やはりそれだけ、どんな厳しい審査にかけても光ってしまうほど素晴らしいものをいくつももっている品種だという証拠です。
ここに挙げた品種は、受賞当時としては画期的に強健で育てやすいバラばかりです。でも、バラの品種改良は日進月歩で進んでいます。古い時代の受賞品種は、やはり今から見れば物足りないところがあります。もっとも、ほとんどのバラが、物足りないところを差し引いてもなお魅力的なバラであることは当時も今も変わりませんが──。
このなかでもさらに育てやすいバラを選びたいなら、比較的新しい受賞品種を選ぶと失敗がありません。たとえば2000年にAARS賞を受賞している「ノックアウト」や、その枝替わりで2007年に受賞している「レインボーノックアウト」は、現在でもなおトップレベルに病気に強く育てやすい品種として知られています。
まとめ
アメリカの権威あるバラのコンテストAARS賞について調べてみました。アメリカのジャクソン&パーキング社のサイトに設立までの経緯が詳しく掲載されていたので、参考にさせていただきました。日本語に翻訳するところで間違いがなければいいのですが──。
どうやら1930年代まで、アメリカにはたくさんのバラの品種が出回っていたけれど、その多くは品質が悪く、統一された基準がなかったために、ガーデナーたちはどのバラを買っていいのかとても困っていたようです。ここでいう「ガーデナー」は、庭いじりが好きな一般家庭の庭主たちです。十分な薬剤散布がされないこともありますし、専門的なバラの知識があまりないこともあります。そういう一般人が自宅の庭で楽しむためのバラの基準を作ろうというコンセプトからAARS賞は始まっています。
アメリカのAARSのサイトを見ると、なんと審査を受けるバラを試験栽培する庭を募集していたりします。AARS賞を受賞したバラが見られる、一般公開できる庭も募集していました。実際の生活にとても根差したコンテストなのだと分かりますね!
もちろん日本とアメリカは気候が違います。アメリカで良い結果が出たからといって、日本でも同じように良い結果が出るとは限りません。でも、アメリカの広い国土のあちこちで試験栽培がされ、その結果をふまえての審査であることを思えば、AARS賞は「さまざまな環境でよく耐え、育てやすいバラ」が選ばれているのは確かですね。
日本ではあまり知られていない品種もありますが、いずれ劣らぬ優れたバラばかりです!
参考
「What is the AARS? 」 https://www.jacksonandperkins.com/jp-aars-roses/a/517/
▼世界バラ会議と殿堂入りのバラはこちらをご覧ください。
▼ドイツのADR賞についてはこちらをご覧ください。