バラの土を自分でブレンドするとき、必ず必要になる「たい肥」。さまざまな種類があり分かりにくい「たい肥」などの土壌改良材について、数回に分けて紹介します。今回は、全体像が把握できるよう「たい肥」の概要を初心者目線で分かりやすく説明しています。


たい肥とは?

YOUYOU

初心者ロザリアンYOUです。バラの鉢も増えてきたので、そろそろいろんな土をブレンドして自分で培養土をつくりたいと思ってるの。そこで質問なんだけど、土をブレンドするときに使う「たい肥」って何?詳しく教えて!

あいびーあいびー

「たい肥」って、腐葉土なんて「土」のような名前がついていたり、有機質肥料扱いされたり、土壌改良材と言われたり・・・一言で説明するのが難しいものなのよね。まず、たい肥の全体像が把握できるように概要を分かりやすく説明するね。

い肥(堆肥・たいひ)とは、落ち葉や動物のふんなどの有機物を微生物の力で分解(発酵)してつくられたものです。

 

肥料分も含みますが、保水性や保肥力を高め、フカフカの土にするための「土壌改良材」としての効果がとくに優れています。

 

たい肥の種類(植物性たい肥・動物性たい肥)

い肥には「植物性たい肥」と「動物性たい肥」があります。具体的にどんなものがあるかと、それぞれの特徴を紹介します。

 

植物性たい肥の種類と特徴

▲腐葉土(植物性たい肥)

物性たい肥は、「腐葉土」(広葉樹の落ち葉を原料にしたたい肥)または「バークたい肥」(樹皮を原料にしたたい肥)が一般的によく使われます。ほかには「籾殻たい肥」や「稲わらたい肥」などがあります。

 

植物性たい肥は物理的に土をやわらかくする効果が高く、土壌改良効果に優れています。その反面、とくに「バークたい肥」をあまり多く入れすぎると土壌の窒素不足を招くので、窒素肥料や動物性たい肥と併用して使います。

 

動物性たい肥の種類と特徴

▲牛ふんたい肥(動物性たい肥)

物性たい肥には、牛ふんたい肥、豚(とん)ぷんたい肥、鶏ふんたい肥、馬ふんたい肥などがあります。バラ栽培では、牛ふんたい肥または馬ふんたい肥がよく使われます。

 

動物性たい肥は、植物性たい肥よりも肥料分を多く含みます。とくに豚ぷんたい肥や鶏糞たい肥は肥料分が多いので、「有機質肥料」代わりに使う方もいます。

 

基本的なたい肥の使い方

▲基本用土にたい肥を混ぜて培養土をつくる

ラに限らず、園芸用の土(培養土)を自分でブレンドしてつくるときは、赤玉土などの基本用土にたい肥を混ぜてつくります。

 

また、鉢の古土をリサイクルして園芸に適した培養土にするときにも、たい肥を混ぜます。花壇にも土にたい肥を混ぜて植物に適した土にします。

 

つまりたい肥はそれ単体で使うものではなく、基本用土や古土、または花壇の土と混ぜて、より良い土をつくるために使われるのです。

 

▼基本用土にたい肥などをブレンドしてオリジナル培養土をつくる方法はこちらをどうぞ

たい肥の肥料分だけでは不十分。元肥または追肥して!

▲たい肥を入れても、さらに元肥または追肥をして植物を育てる

本用土にたい肥を混ぜただけの培養土では、肥料分が不十分です。植物を植えるさいには、元肥を入れてから植えつけます。

 

バラの場合は、冬の植え替えに使う土に元肥を入れず、芽が出るころに最初の固形肥料を入れて育てる方法をオススメする先生が多いです。この育て方をするなら、元肥なしで植え付けます。

 

たい肥のすごい効果。4つのメリット

▲小さな土の粒が団子状に集まった団粒構造(左)

い肥を土に混ぜると、さまざまな効果を発揮します。たい肥のもつ優れたメリットを4つ紹介します。

 

メリット1、幅広い肥料分を含んでいる

たい肥は、「N・P・K」(窒素・リン酸・カリ)の基本的な肥料成分に加えて、マグネシウムやカルシウム、ホウ酸、鉄などの幅広い肥料成分を含んでいます。

 

メリット2、土をふかふかにする

とくに「植物性たい肥」は繊維質が多いので、物理的に土をふかふかにする効果が高いです。

 

メリット3、幅広い種類の微生物がいることで、病気抑制につながる

たい肥には微生物が多く含まれているので、これを混ぜることで土に豊富な種類の菌が増え、特定の病原菌だけが増えすぎるのを相対的に抑えることができます。これにより、病気の抑制につながります。

 

メリット4、腐植酸の働きで土を団粒構造にする

また、たい肥に含まれる腐植酸の働きにより、植物を育てるのに適した団粒構造の土をつくるのに役立ちます。

 

意外と怖い、たい肥の4つのデメリット

▲葉に止まるコバエ

まざまな効果をもつたい肥にも、もちろんデメリットはあります。こちらも4つ紹介します。

 

デメリット1、臭い

動物のフンを原料にしたたい肥は、多かれ少なかれ臭いがします。なかでも鶏ふんたい肥がとくに臭い。さらに発酵が未熟なたい肥は臭いが強く、デメリットだらけです。

 

デメリット2、害虫を呼ぶ

たい肥の臭いは人間が不快なだけでなく、害虫を呼ぶデメリットもあります。コバエを筆頭に、土に群がります。我が家はベランダ栽培なので、コバエが室内に侵入してとても困ります。

 

デメリット3、「バークたい肥」は窒素不足を招く恐れがある


バーク堆肥 送料無料 土乃素1号 40L 針葉樹皮 土壌改良材 ふかふか 土 美味しい野菜 放射能測定 農業資材 腐食 ふたばの土 プロ仕様 3月1日より15%の値上げしました

たい肥に含まれる微生物が活動するとき、窒素と炭素を消費します。とくに「バークたい肥」は窒素をたくさん消費するので、あまり多く入れすぎると土が窒素不足を起こしてしまいます。

 

「バークたい肥」を使うときには、多く入れすぎないよう注意し、窒素不足を補うため窒素肥料や動物性たい肥(窒素を多く含みます)を追加するという対策が必要です。

 

こう書くと「バークたい肥」が良くないように思われがちですが、そんなデメリットがあっても使いたくなる優れたメリットがあります。これについては、別の記事で紹介します。

 

腐葉土は完熟している製品なら大丈夫ですが、未熟な腐葉土はやはり窒素を大量に消費します。

 

デメリット4、「未熟たい肥」は百害あって一利なし

たい肥は、有機物(落ち葉や動物のふん)を原料に、微生物の力で分解(発酵)したものです。たい肥を選ぶさいには注意が必要。微生物による分解が不十分な「未熟たい肥」を使わないことが重要です。

 

「未熟たい肥」を使って植物を植えると、鉢や花壇のなかでたい肥の分解が進みます。たい肥は分解過程で有毒なアンモニアガスや亜硝酸ガスを発生するので、その影響で植物の根を傷め、植物を枯らしてしまうおそれがあります。

 

また「未熟たい肥」は、分解過程でときに80度以上の高温になることがあります。こんな高温では根がダメになり、植物が枯れてしまいます。さらに「未熟たい肥」のなかの微生物は大量の窒素を使うので、土壌が窒素不足になってしまいます。

 

購入するときには必ず「完熟たい肥」を選びましょう。「未熟たい肥」は百害あって一利なしです。

 

たい肥と肥料の違いは?

YOUYOU

ここまでがたい肥の概要ね。どうもありがとう。さて、いろいろ聞きたいことがあるんだけど──。まず、たい肥には肥料分が含まれているようだけど、それじゃたい肥と肥料はどう違うの?

い肥には、肥料の基本3要素「N・P・K」(窒素・リン酸・カリ)が含まれています。そのため、肥料と同じものと考えられがちです。

 

じつは「肥料」と名乗れるのは肥料取締法の定める基準をクリアしたものだけです。たい肥は肥料取締法の基準をクリアしていないので「肥料」として販売することができないものです。

 

たい肥に含まれる肥料分は多くありません。下は、さまざまなたい肥に含まれる肥料分を表にしたものです。

 

  N(窒素)% P(リン酸)% K(カリ/カリウム)%

Ca(カルシウム)%

Mg(マグネシウム)%
腐葉土 1 0.2 0.1    
バークたい肥 1.2 o.5 0.3    
牛ふんたい肥 1.72 1.75 2.95 2.81 1.12
豚(とん)ぷんたい肥 3.0 5.3 2.3 5.4 1.8
鶏ふんたい肥 2.5 6.6 3.6 16.6 1.4
馬ふんたい肥 0.6 0.6 0.6 0.8 0.3

▲出展/千葉県「畜種別堆肥の特徴」

 

これを見れば一目瞭然。たい肥の肥料分はとても少ないのです。

 

でも、豚(とん)ぷんたい肥と鶏糞たい肥は、他に比べて肥料分が多いですよね。これらは有機質肥料と同じように使うことができます。が、家庭で使うには臭いなどのデメリットが大きいので、通常は使いません。畑で使われることが一般的です。

 

YOUYOU

肥料分0.1%とかっていうのもあるわね。これじゃ肥料代わりに使うのはムリね。つまり、たい肥を使っても、結局、肥料をプラスしなきゃいけないってこと?

あいびーあいびー

その通り。園芸植物でも野菜でも、たい肥だけでは養分が足りないから、必ず肥料を足す必要があるの。たい肥だけで肥料分を補おうとすると大量のたい肥が必要。すると土はふわふわしすぎるし、臭いも気になるし、害虫も寄ってくるし・・・あまりいいことないわ。

たい肥には「二次要素」や「微量要素」が含まれている

方、たい肥に含まれる肥料の基本要素(窒素N・リン酸P・カリK)の量は少ないけれど、それ以外にCa(カルシウム)やMg(マグネシウム)が含まれていることに注目してください。表にはありませんが、ホウ酸や鉄なども含まれています。

 

これらも植物を育てるために必要な成分ですが、基本要素(窒素N・リン酸P・カリK)ほどたくさんいりません。そのためCa・Mg・硫黄は「二次要素」、それ以外のホウ酸・マンガン・鉄などは微量で構わないので「微量要素」と呼ばれます。

 

多くの化成肥料は、基本要素(窒素N・リン酸P・カリK)は含むけれど、二次要素や微量要素は含みません。化成肥料の足りない肥料成分を、たい肥で補うことができるのです。

 

あいびーあいびー

有機質肥料にも、これら二次要素や微量要素が入っています。近年は、化成肥料でも二次要素や微量要素を含む商品も、いろいろありますね^^

YOUYOU

有機質肥料にもたい肥にも二次要素や微量要素が入っているのね。それじゃ「有機質肥料」と「たい肥」の違いは、法律で定める基準をクリアしてるかどうかだけ?

あいびーあいびー

そういう面もあるけれど、肥料とたい肥は、それぞれ期待する効果が違うの。肥料は肥料効果を期待して施肥するし、たい肥は土壌改良効果を期待して使われるの。

たい肥は土壌改良効果がすごい!

▲これから畑に漉き込まれるたい肥

つはたい肥のもっともすぐれた効果は、土壌改良効果です。だからたい肥は、肥料でも土でもなく「土壌改良材」のカテゴリーに入れられます。

 

つぎに、たい肥のもつ優れた「土壌改良効果」について、詳しく紹介します。

 

たい肥を入れれば、物理性・化学性・生物性が優れた土に改良できる

い土とは「物理性・化学性・生物性が優れた土」という表現がよくされます。じつはたい肥は、土の物理性も化学性も生物性も向上させる効果があります。

 

順に説明しましょう。

 

物理性が良い土とは

物理性が良い土とは、よく水を通し、よく空気を含む、ふかふかの土です。繊維質の多いたい肥を入れれば、ガチガチの硬い土もふかふかにすることができます。

 

植物性のたい肥(腐葉土・バークたい肥など)は繊維質が豊富で、とくに土の物理性を改善する効果があります。動物性のたい肥では「馬ふんたい肥」に繊維質が多く含まれています。

 

さらに、小さい土の粒が団子状に集まった団粒構造をもつ土も物理性のよい土です。団粒構造の土は、通水性・通気性・保水力・保肥力にすぐれています。たい肥の力で土を団粒構造にすることができます。詳しくは、生物性の項目をご覧ください。

 

化学性が良い土とは

化学性が良い土とは、植物に適したpHで、肥料成分が豊かな土です。たい肥を入れることで、肥料成分の基本要素、二次要素、微量要素と、幅広い種類の肥料成分を補うことができます。

 

「たい肥と肥料の違いは?」の項目で紹介した表を見れば分かるとおり、植物性たい肥は肥料成分に乏しく、ほとんど含んでいません。動物性たい肥は二次要素や微量要素を含む幅広い肥料成分を含んでいます。

 

ただし、たい肥だけでは肥料分が不十分です。必ず肥料をプラスして使います。元肥として入れるか、定期的に追肥するか、どちらの方法でも構いません。

 

生物性が良い土とは

生物性が良い土とは、有機物や微生物が豊富な土です。じつは「肥えた土」「肥沃な土」というのは、肥料を多く含んだ土ではなく有機物や微生物、さらにミミズなどの小動物を多く含む土をさします。

 

土にたい肥を入れることで、有機物と微生物が豊富な土にすることができます。庭や畑なら、ミミズなどの土づくりに役立つ小動物もやってきます。

 

さまざまな微生物がいる土は、特定の菌が大増殖するのを相対的に防ぎます。この効果から、病気の抑制につながります。根頭がん腫病の抑制も期待できますよ!

 

物理性が良い土のところで触れた「団粒構造の土」は、腐植物質が糊のような働きをして小さな土の粒をくっつけることで生成されます。腐植物質は、たい肥にいる微生物によりつくられる高分子化合物です。

 

つまり土にたい肥を入れることで、有機物も微生物も多く含む肥沃な土になり、この微生物の働きでつくられる腐植物質の作用で土の団粒構造が促進されます。団粒構造が促進されれば、物理性もさらに向上します。

 

YOUYOU

すごい!たい肥を入れるだけで、物理性・化学性・生物性に優れた土にできるってことね!つまり、ふかふかで、幅広い肥料を含んだ、有機物や微生物がたくさんいる土になるってことね。

あいびーあいびー

そう。そして、細かく散らばってしまった土の粒をまとめあげ、団粒構造にする作用もあるの。たい肥を入れることで、植物が育ちやすい肥沃な土になるのよ!たい肥は、何よりこの土壌改良効果が優れているの。

YOUYOU

だからたい肥は肥料でも土でもなく「土壌改良材」と言われるのね。よく分かったわ。

 

まとめ

今回は、たい肥について概要をつかめるよう全体的な紹介をしました。

 

たい肥にはさまざまな効果がありますが、とくに土壌改良効果が優れています。ふかふかの土にして物理性を改善し、幅広い肥料成分を補うことで土の化学性を改善し、多くの微生物を含むので土の生物性も改善します。

 

大きなメリットがある反面、臭いや害虫を呼ぶなどデメリットもあります。そこを理解して、上手に利用したいところですね。

 

次回は、それぞれのたい肥の特徴と、あいびーオススメのたい肥を紹介します。

 

参考文献

日本バークたい肥協会/https://www.bark-compost.com/

千葉県「畜種別堆肥の特徴」/https://www.pref.chiba.lg.jp/chikusan/taihiriyou/tokuchou.html

ホーネンアグリQ&A/https://www.honenagri.com/2020/01/04/424/

腐葉土の判定/https://www.customs.go.jp/ccl_search/info_search/inorganicss/r_44_04_j.pdf

アグリウエブ「土づくりと土壌診断⑫  土壌改良資材の特性と使い方ーその2ー」/https://www.agriweb.jp/column/1050.html#:~:text=%EF%BC%A3%EF%BC%8F%EF%BC%AE%E6%AF%94%E3%81%8C30%E3%80%9C70%E3%81%AE%E7%A8%B2%E3%82%8F%E3%82%89%E3%82%84,%EF%BC%85%E7%A8%8B%E5%BA%A6%E3%81%8C%E5%A5%BD%E9%81%A9%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

 

▼「土と肥料・園芸資材」の記事一覧はこちらからどうぞ

 

 

cropped-rose1.png
スポンサーリンク