フリマサイトでバラの挿し木苗を売っていた女性が書類送検されました!このニュースの内容と、付随する情報を詳しく紹介しています!ロザリアン全員に目を通してほしい内容です。


バラの挿し木苗のフリマ販売で40代女性が書類送検!

▲画像はABCテレビニュースより引用

ザリアンには興味深いニュースが2024年9月18日付で報道されました。内容は以下の通り。

 

イギリスの会社が開発し、日本で品種登録された希少なバラの苗木をインターネットのフリマサイトで無許可で販売したとして、都内のアルバイト従業員が種苗法違反の疑いで書類送検されました。

自宅マンションの庭でみずから栽培していたということです。

書類送検されたのは、東京・小金井市に住む46歳のアルバイト従業員です。

警察によりますと、去年(2023年)9月から今年1月にかけて、「コンスタンス」と呼ばれる希少なバラの苗木3本をフリマサイトで無許可で販売したとして、種苗法違反の疑いが持たれています。

この品種は大阪に日本事務所があるイギリスの会社が7年前に農林水産省に品種登録していて、苗木を無許可で販売したり、譲り渡したりすることは禁止されています。

従業員はフリマサイトで苗木を購入したうえで自宅マンションの庭でみずから栽培し、増えた分について高いものでは1本およそ1万3000円で販売していたということです。

これまでに販売したのはあわせて41件に上るということで、任意の事情聴取に対し容疑を認め「違法と知っていたが、金と手間をかけた苗木を捨てるのはもったいないと思った」と話しているということです。

イギリスの会社の日本事務所は「日本で登録品種が自家栽培され、商品化されていることを把握している。種苗法は品種を保護する最善の方法で、このシステムがあるからこそ新たな品種の開発につながっている」とコメントしています。

▲NHKウエブニュースより引用

 

メルカリやヤフーオークションなどのフリマサイトでは、以前からバラの挿し木苗や挿し木をするための挿し穂が違法販売されているとして問題になっていました。今回、ついに書類送検されたというのです。

 

上記NHKのほか、「産経ニュース」「毎日放送」「TBSニュース」「ABCテレビニュース」「読売新聞オンライン」「yahooニュース」などさまざまなメディアで全国報道されています。

 

違法販売されたのはイングリッシュローズの「コンスタンス」

▲イングリッシュローズの切り花(カットローズ)を販売するサイトより

の小金井市在住の女性が販売していたのはデビッド・オースチン・ロージズ社の「コンスタンス」(CONSTANCE)という品種です。

 

「コンスタンス」は濃いピンク色の外弁の内側がクリーム色になるカップロゼット咲きのとても愛らしい品種です。しかしこのバラ、日本で苗を販売していません。探したところ、切り花としてのみ販売されているようです。そのため、欲しいと思うロザリアンが多かったのかも知れません。

 

この女性は、もともとフリマサイトで違法に入手したコンスタンスの苗を自宅で育て、挿し木にしてまた違法販売したという経緯のようです。しかも違法と知っていたというからもう真っ黒です。

 

種苗法の正しい知識のない人がチラホラ!

▲種苗法登録をハッキリ表記した京成バラ園芸のタグ

のニュースは「ABCテレビニュース」と「MBS NEWS」がyou tubeで投稿されています。どちらもコメント欄が解放されているのですが、多くの人が種苗法の必要性が分かっているなか、驚くようなコメントも見られました。

 

H氏:種苗法なんて初めて聞いたわ イイネ×4

 

U氏:種苗法ってコロナのゴタゴタの時にしれっと可決させた奴だよね。農家の人達の猛反対を無視して長年続いてきた慣習を取り締まるとか悪法って言われてなかったっけ? 海外流出を防止するとか言ってたけど何の抑止力にもなってなくて農家さんに嫌がらせしてるだけの無駄な法律って言われてるんだっけね。イイネ×16

 

2020年12月、育種者の権利を守るため従来の種苗法が改正されました。改正前と改正後の大きな違いは、主に4点。

 

1. 海外への種苗の持ち出しが制限される
2. 国内の栽培地域が指定される
3. 登録品種の自家増殖は許諾が必要になる
4. 登録品種の表示が義務化される

 

2020年当時、女優の柴咲コウさんが、この改正に対してネガティブな発言をしたことから話題になったのを覚えている方もいるでしょう。

 

それまで野菜や果物の苗を農家が自由に自家増殖できていたものが、許可が必要になるというのが農家の足かせになることを懸念しての発言でした。上記U氏のコメントも、それを覚えていての発言のようです。

 

実際は、この改正が必要だと農家の理解を得ているし、海外流出の抑止力にもなっています。必要な改正だったとわたしは思っています。

 

それでも、なんとなく当時のゴタゴタを覚えている方にはダメな改正というイメージが残っているようですね。

 

改正種苗法の簡単な紹介

▲「PVP」は、登録品種を示すマーク

苗法については詳しく紹介したページがあるのでそちらをご覧いただくとして、ここでは今回のニュースに関連する内容を簡単に説明します。

 

バラには、育種者が農林水産省に品種登録することで「育成者権」が認められている品種、いわゆる「ブランドバラ」と、育成者権が存在しないいわゆる「ノーブランドバラ」の2種類に分けることができます。

 

今回問題になった「イングリッシュローズ」は、イギリスのデビッド・オースチン・ロージズ社が育成者権をもつ「ブランドバラ」です。育種者の許可なく自家増殖して販売することはできません。

 

海外のバラだけでなく日本のバラのブランド「ロサ・オリエンティス」「河本バラ園」「京成バラ園芸」「京阪園芸」なども多くのブランドバラを発表しています。もちろんこれらのブランドバラも、育種者の許可なく自家増殖して販売することはできません。

 

▼種苗法について詳しくは、こちらをご覧ください

 

ブランドバラかどうかの見分け方

▲ロサ・オリエンティスの「シェエラザード」は「2013キムラ02」

1、品種登録データで確認

のバラがブランドバラかどうかを判断するには、農林水産省の品種登録データで確認するのが確実です。が、このデータがとても分かりにくいのです。理由は、品種登録された段階で、まだ商品名が決まっていないことが多いため、品種名から確認できないというケースがほとんどだからです。

 

以前ロサ・オリエンティスの「シェエラザード」の品種登録を確認したところ、「2013キムラ02」という名称でした。これでは一般人には分かりません。

 

2、品種タグを確認

ラ苗についている品種タグから確認することもできます。

 

左の京成バラ園のタグにはしっかり「品種登録第25010号」と記入されています。右のデルバールのタグには「PVP」マークがあります。「PVP」マークは、この植物が登録品種であると表示するものとして省令で定められているマークです。

 

品種登録が認められるまでには時間がかかるため、新品種は「特許出願中」「出願済」などの記載になっているケースもあります。

 

しかし品種タグに何の記載もないブランドバラもあります。

 

3、苗の値段から判断する

っとも分かりやすい方法としてオススメなのが、値段からの判断です。当然ですがブランドバラは高値で、ノーブランドバラは安値です。値段の目安を紹介します。

 

  大苗の値段の目安 新苗の値段の目安
ブランドバラ 5000~6000円 3000円ていど
ノーブランドバラ 2000~3000円 1000~2000円

 

育成者権の保護期間は、品種登録から30年間です。

 

ノーブランドバラとは、育成者権の保護期間が過ぎてしまった品種、種苗法のない古い時代の品種、育成者の存在しない原種などです。

 

ブランドバラを増やして販売・譲渡してはダメ!

▲我が家で挿し木したバラ苗

ラは挿し木で簡単に増やすことができる植物です。実際わたしも挿し木で増やしたバラがあります。

 

勘違いされやすいのですが、バラを増やすことが問題なのではありません。「ブランドバラ」を増やして「販売」または「譲渡」することが問題なのです。

 

どんなケースが問題となるのか、分かりやすく表にしました。

 

  挿し木苗の販売 挿し木苗を無償譲渡 挿し木苗を自宅管理
ブランドバラ × ×
ノーブランドバラ

 

つまり今回のニュースでは、ブランドバラの挿し木をフリマサイトで販売したので、問題になったということです。

 

ブランドバラは、いわば著作権のあるCDやビデオのようなものです。CDやビデオをそのままコピーしてyou tubeなどにアップロードするのは違法行為です。

 

たとえアップロードした人に広告料の入らない無償譲渡の状態だとしても、その動画がなければ著作者に入るはずだった著作権料が、動画のせいで正当な著作権者にわたらなくなってしまうのだから、これは犯罪に加担する行為とみなされます。

 

なので挿し木苗の無償譲渡、つまりお友達にあげるという行為も違法となるのです。

 

ただし自宅で楽しむ限りは、今のところOKとされています。たとえばスペアとしてコピーを保存するようなものなので、問題視されないようです。

 

違法出品を見つけたら!

の画像は、フリマサイト大手メルカリのバラ苗のページから、違法出品を抽出したものです。

 

ここに掲載されているのは、デルバールの「クロードモネ」、ガーデンナーセリーYOSHIIKEの「真宙」、デビッド・オースチン・ロージズ社の「ザミルオンザフロス」「アンブリッジローズ」、コルデスの「ディープボルドー」。

 

ほかに品種名の書かれていない出品もたくさんあり、ほとんど闇市のようなありさまです。こういう問題の多いフリマサイトでのバラ苗の入手は控えてください!

 

バラの育種には長い時間と莫大なお金がかかります。種苗法の目的は、これらの出費をして新品種を生み出した育種家の保護です。育種家に正当な対価が支払われることで、また新しい品種を生み出す原資としてもらうことができます。

 

なんの保護もなく、育種家が対価を得ることができなければ、だれも新品種を生み出そうと思わなくなるでしょう。その結果ステキなバラの新品種が生まれなくなったら──これは、とりもなおさず、わたちたちロザリアンの楽しみがなくなるということです。

 

自分で自分の首を絞めるような行為は避けたいもの!

 

違反報告のしかた

▲違反出品を見つけたら積極的に違反報告を!

つはこの問題、ロザリアンの間では数年前から問題視されていました。が、権利者からフリマサイト側にいくら苦情を言っても改善されないまま今に至っています。

 

フリマサイト側では取締りようがないのでしょうか? フリマサイトの内情は分かりませんが、今回のニュースにより、少しでも違反出品者の撲滅につながってほしいと思います。

 

わたしたち善良なロザリアンのできることは2つです。

 

ひとつは、フリマサイトで挿し木のブランドバラ苗を購入しないこと。もうひとつは、違反出品を見つけたら「違反報告」することです。

 

上は、メルカリの違反出品ページです。「クロードモネ」としっかりブランドバラの品種名が書かれていて、画像を見る限り明らかに挿し木苗なので、違反出品と分かります。

 

見出しの下のピンクの〇で囲った部分、縦に点が3つ並んでいるところをクリックすると、違反報告をすることができます。違反内容には次のように記入してください。

 

「この出品は種苗法違反なので削除してください。」

 

ただし、この報告をしたとしても、すぐに出品が取り消されることはないそうです。おそらくメルカリ側は、これが本当に違反なのかどうかを見極めるのが難しいのでしょう。とはいえ、同じ出品者が何度も違反報告を受けていたら、さすがに取り締まり対象としてマークするでしょう。

 

今回のニュースがフリマサイト側にも良く作用して、取り締まりを強化してくれることを願って、気づいたら積極的に違反報告をしましょう!

 

個人の違反は10年以下の懲役または1千万円以下の罰金

ころで、種苗法違反の罰則はけっこう重いです。

 

「法人なら3億円以下の罰金、個人なら10年以下の懲役または1千万円以下の罰金、またはこれらの併科」

 

つまり今回は「書類送検」だけで済んだようですが、実刑が科せられれば個人でも「10年以下の懲役または1千万円以下の罰金」になったということ。

 

今回の報道は違反者への見せしめの意味合いもあったでしょうが、次回は実刑となるかもしれません。出来心でやるには割が合わないので、やめた方がよさそうです。

 

まとめ

今回は「バラの挿し木苗をフリマサイトに出品した女性が種苗法違反の疑いで書類送検された」というニュースの内容と、それを補足する情報をまとめて紹介しました。

 

種苗法違反は意外と罰則が厳しく、軽い気持ちで手を出すにはわりに合いません。ぜったいに手を出さないでください。さらにフリマサイトで違反者を見つけたら積極的に違反報告することで、違反出品を減らしていきましょう!

 

今回はバラの挿し木苗だけを取り上げましたが、バラ以外にもアジサイやペチュニアなど、さまざまなブランド苗がフリマサイトに違法出品されているようです。残念なことですね。正規店で購入できるものは、ぜひ正規店を利用しましょう!

 

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