9月になると気になる、バラの夏剪定。「やらないと秋バラが咲かないの?」と迷う人も多いですよね。 でも、夏剪定は必ずしなければならない作業ではありません。 大切なのは、秋にどんなふうにバラを楽しみたいかを決めること。 夏剪定の目的やメリット・デメリット、向いている株、時期、基本の切り方まで、初心者にも分かりやすく解説します。


夏剪定とは?──秋バラの開花をそろえるための剪定

夏剪定は、必ずやらなければいけない作業ではない

9月を迎えると、バラ関連の動画は一気に「夏剪定」一色になります。秋に行うので「秋剪定」という場合もあります。

 

これを見ると初心者さんは、「9月になったら夏剪定をしなければいけない」と思ってしまうかもしれません。

 

でも、夏剪定は、必ずやらなければいけない作業ではありません。

 

夏剪定をしないことで、バラが弱ったり枯れたりするわけではありません。もちろん、花も楽しめます。

 

一方で、夏剪定にはメリットがあります。

 

夏剪定をすることで、秋花が咲くのに適した気温になる10月中旬ごろに、状態の良い花をいっせいに揃って咲かせられます。

 

つまり夏剪定とは、秋花を狙った時期に咲かせるための開花調整技術なのです。

なぜ秋バラをそろえて咲かせたいの?

秋のバラ園

▲秋花が一斉に咲いた大型バラ園

夏剪定は、もともと大型バラ園の手入れとして日本で考案されたものです。

 

日本では春なら5月下旬、秋なら10月中旬ごろが、バラの開花に適した気温になります。

 

春は特別なことをしなくても、ほとんどのバラが揃って花を咲かせますが、秋は、何もしなければバラバラに咲いてしまいます。

 

そこで、秋の一番良い季節に多くの花が揃って咲くように開花調整しようという意図で考え出されたのが夏剪定です。

 

つまり、もともとは秋のバラ祭りに合わせて、大型バラ園がいっせいに花を咲かせるためのテクニックなのです。

 

考案者はミスターローズと呼ばれた育種家・鈴木省三さんです。

 

鈴木省三さんが生きた昭和の時代、バラといえば大輪四季咲きのハイブリッドティー(HT)系統のバラが主流でした。大きく立派な花を咲かせることが求められた時代です。

 

そのため、秋バラを咲かせるなら「秋のいい時期に大輪一発!」という考えです。

 

ちょうど上の写真のように、大輪のハイブリッドティー系統のバラをそろって咲かせるために、夏剪定という技術は考案されたのです。

でも、家庭のバラでは「秋に一斉開花」が正解とは限らない

昔のバラ園と、今の家庭のバラは違う

ピースの秋花

▲超大輪品種「ピース」の秋花

鈴木省三さんの生きた昭和の時代と、令和の現代では、バラも様変わりしました。

 

かつてバラといえば、ほぼハイブリッドティー系統の品種をさしました。花径10cm以上の豪華な1輪を楽しむものでした。バラ園に観に行くか、特別な愛好家だけが育てられる難しい植物でした。

 

でも、今は違います。家庭の庭で、庭すらないベランダでも、昭和の時代に比べれば、格段に育てやすい植物になりました。

 

その大きな理由のひとつが、シュラブ系統のバラが主流になったからです。しかしこのシュラブ系統のバラ、夏剪定とは少々相性が悪い。

 

この時期にこう切れば必ず〇日後に咲くという計算が成立しにくく、夏剪定しても効果が出にくいのです。

 

さらに近年、気候が温暖化しています。夏が暑いのはもちろん、9月を過ぎてもいつまでも暑い日が続く年も多くなっています。暑い秋も、夏剪定と相性が悪いです。

 

そもそも、家庭の庭で「秋のいい時期に大輪一発!」という咲かせ方が正解とは限りません。そこまで大輪でなくていいし、いっせいに咲かなくてもいいという考え方もあります。

秋バラ、あなたはどう楽しみたい?

夏剪定して咲かせるだけが秋バラの楽しみ方ではありません。秋剪定しないで楽しむ方法もあります。

 

今年、我が家のバラはどう楽しむか?まず、そこを決めることから始めましょう。

10月中旬に大輪花をそろって咲かせたい

大型バラ園のように、そろって咲くようにしたい方は、従来の夏剪定を行います。

 

昭和の時代に作出されたハイブリッドティー系統のバラを多く育てているなら、こちらの楽しみ方が合っていると思います。

 

近年作出されたバラでもできますが、思い通りに行かないこともあります。それも含めて楽しめる方に向く方法です。

そろって咲かなくてもいいから、長期間咲かせたい

いっせいに咲きそろわなくてもいい、多少、小ぶりの花でもいい。9月~晩秋まで長い期間をパラパラ咲く花を楽しみたいなら、夏剪定しない方法で秋花を楽しみます。

 

株の状態に合わせて柔軟に管理したい方もこちらです。

 

令和の現代に作出された新しいバラが多い、新苗や、大苗でもあまり状態の良くない株なら、こちらの楽しみ方が合っていると思います。

夏剪定するメリット・デメリットは?

秋バラの楽しみ方を決めるさいの参考に、それぞれのメリット・デメリットを整理しました。

 

まず夏剪定するメリットから。

 

いっせいに咲いた秋バラはとにかく見事です。

 

夏剪定するメリット

・バラの開花に適した時期に、揃って花を咲かせられる

・人が見やすい位置に花を咲かせられる

・樹形を整えられる

 

デメリットは、タイミングをはかるのが難しい点です。

 

その年の気候や、住んでいる地域、品種の違いなどなど。さまざまな要因が絡むので、狙い通りにいくとは限りません。

 

夏剪定するデメリット

・タイミングをはかるのが難しい

・一斉に咲いて一斉に散るので、花を見られる時期が短い

・品種や切る時期、地域、天候によっては、夏剪定したことで、秋の花が咲かないリスクがある

・調子を崩している株に夏剪定することで、回復が遅れがちになる

夏剪定しないとどうなる?

カレスの秋花

▲バラバラなタイミングで咲く「カレス」の秋花 写真提供/アスタルティ

夏剪定しないと、バラはそれぞれの枝のタイミングで花を咲かせます。9月中旬に咲く枝もあれば、10月初旬に咲く枝もあります。

 

いっせいに揃って咲くわけではないので、景色としてみれば、少し寂しく感じるかもしれません。

 

でも、あちらに1輪、こちらに1輪と、9月から晩秋まで長く花が楽しめます。

 

家庭園芸なら、こちらの方が向いているかも知れません。

 

夏剪定しないメリット

・9月から晩秋まで長く、ポツリポツリと咲く花を楽しめる

・株の状態を見ながら、咲かせる時期や量を調整しやすい

 

ここまでの情報で、まず、我が家のバラに夏剪定するか、しないかを考えてください。

 

この記事では、それでも夏剪定に挑戦してみたい!という方に向けて、初心者向けの夏剪定のしかたを紹介します。

 

夏剪定しない場合に、秋花をどう咲かせるかは、新しく記事をつくります。少しお待ちください。

→リンク準備中

この株は夏剪定して大丈夫?

夏剪定できる株の目安

緑の葉たっぷりの8月の新苗(ベルロマンチカ)

▲猛暑をしっかり乗り切り、葉をたくさん残した健康な株

夏剪定に向いている株は、品種と株の状態から判断します。

 

まず夏剪定に適した品種は、四季咲きのコンパクトな木立ち樹形のバラです。コンパクトなバラとは、樹高120cmていどまでの品種という意味です。

 

シュラブ系統のバラは適した品種と適さない品種があります。切り方も木立ち樹形のバラとは違うので、詳しくは、「シュラブ系統のバラの夏剪定のしかた」の記事をご覧ください。

 

1季咲きのつるバラには夏剪定しません。

 

株の状態は、病気や害虫被害の少ない、葉を多く残した健康な株が夏剪定に適しています

 

上の写真のように、夏の間もあまり葉を落とさず、状態良く夏越しできた健康な株なら、夏剪定向きです。

 

目安になるのは葉の量です。

 

この後に詳しく説明しますが、基本の夏剪定では上から1/3の高さで枝を切ります。切り取った後に残った下2/3に当たる部分に、ある程度、葉が残っているかどうか、そこが夏剪定するかしないかのおおまかな目安になります。

シュラブ系統のバラの夏剪定のしかたは、こちらの専門記事をご覧ください

バラと小さなガーデンづくり

バラの夏剪定のしかた2、【シュラブ系統のバラ編】

バラの夏剪定のしかた2、【シュラブ系統のバラ編】

こんな株は、無理に夏剪定しない

葉が落ちた新苗ドルンブルガーシュロスローズ

▲水切れで、多くの葉を落としてしまった株

病気や害虫被害で調子を崩している株、上手く夏越しできず葉を落としてしまった株などは、夏剪定は控えた方が良さそうです。

 

上の写真は、水切れで多くの葉を落としてしまった株です。もしこの株の上1/3を切り取ったらどうでしょう?ほとんど葉が残りませんよね。こんな場合は、無理に夏剪定しません。

 

全体に調子が悪く、枝も細くて弱々しい株も夏剪定をしません。

 

夏剪定できる株が良い株で、夏剪定しない株は失敗というわけではありません。

 

夏剪定できる株は、9月初旬の段階で大きな問題のない株。

 

夏剪定しない株は、9月初旬の段階で夏剪定より優先事項がある株という違いです。上の写真の株は、今は葉を増やす方が大切です。

夏剪定はいつやる?

剪定を行う時期は、9月10日ごろがひとつの目安です。 ただし、地域やその年の気候、品種によって変わります。

たとえば京都のまつおえんげいでは、9月10日ごろを目安としています。

 

一方、京都に近い大阪にある京阪園芸では、暑さが長引く場合は9月中旬~下旬ごろを適期としています。

 

夏剪定をする時期の目安

・関東以西の暖地で9月10日ごろ(京都のまつおえんげい)

・暑さが長引く年は9月中旬~下旬ごろ(大阪の京阪園芸)

地域や気候、品種による夏剪定の時期について、詳しくはこちらをご覧ください

バラと小さなガーデンづくり

夏剪定はいつやる?時期が超重要!残暑厳しい夏と冷夏では、タイミングが変わってくる!

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夏剪定の基本は「株の上1/3」を切り取る

夏剪定のしかたベルロマンチカ

▲樹高の上1/3の場所でカット

では、実際にハサミを持って切っていきましょう。

 

夏剪定の基本は「株の上1/3」でカットします。上の写真でいうと、赤いラインです。株元からいうと2/3の高さでカットします。

 

切る場所は、外芽の上、約5mmの場所です。

 

全体が、だいたい同じ高さになるように調整します。

ポイント1、「すべての枝にハサミを入れる」3つの意味

1、揃って咲かせるために、同じ条件で枝を切る

夏剪定のしかたを紹介する動画では、「必ずすべての枝にハサミを入れましょう」と説明されます。

 

もう少し説明を加えると「揃って花を咲かせたい枝には、必ずすべての枝にハサミを入れましょう」という意味です。

 

同じ太さの枝を同じ高さで切りそろえると、そこから新しく伸びてくる枝は、どれも似た速度で育ちます。そして、ほぼ同じ時期に花を咲かせます。

 

この状態を狙って開花調整するために「必ずすべての枝にハサミを入れましょう」と言われるのです。

2、花や蕾がついていても切る

もし夏剪定するタイミングで、キレイに咲いている花や、もうすぐ咲きそうな蕾があったら・・・。

 

つい、この花は残そうとか、この蕾はもったいないから切るのはやめようと思ってしまいますよね。

 

「必ずすべての枝にハサミを入れましょう」は、「花や蕾があっても残さずに、すべての枝を同じくらいの長さにカットしましょう」。と、いう意味が含まれています。

 

夏剪定の目的が「狙った時期にいっせいに花が咲くこと」なので、例外の枝を作らないのが大切なのです。

3、元気な枝を切り残さない

1本の枝を残して夏剪定

▲1本だけ残して夏剪定するのはNG

これは初心者さんに多いのですが、元気に大きく育っている枝を切るのがもったいなくて、つい、背の高い枝を1本だけ残してしまいがちです。

 

上の写真でいうと、中央の枝が他より背が高く育っています。この枝を残して他を切って夏剪定してしまうことがあります。

 

すると、どうなるでしょう?

 

じつは切り残した背の高い枝が優先的に伸び、ほかの枝の生育が弱くなりがちです。その結果、背の高い枝だけに花が咲き、ほかの枝には蕾がつかないということになるかも知れません。

 

バラは、株の中で勢いのある枝に養分が集中しやすい性質があるからです。

 

こういうことを防ぐためにも「必ずすべての枝にハサミを」と言われるのです。

ポイント2、良い花が咲く枝の太さを確保する

状態の良い花を咲かせられる枝の太さを確保するのも大切です。

 

割り箸ていどの太さがあれば、中大輪の花が咲かせられます。もっと小輪の花なら、もっと細い枝でも大丈夫です。

 

極端に細い枝は、無理に花を狙わず、株に十分な葉があるなら付け根から切り取って構いません。

 

葉があまりない株なら、光合成のために1枚でも多く葉を残しましょう。

ポイント3、冬剪定のように、バッサリ切らない

新苗の夏剪定

▲夏剪定後のバラ

バラに行う剪定には大きく2つの作業があります。「冬剪定」と「夏剪定」です。同じ「剪定」でも、「冬剪定」はかなり短く切り詰めますが、「夏剪定」はそんなにバッサリ切り詰めてはいけません。

 

夏剪定の時期に冬剪定と同じくらい枝を短くカットしてしまうと、秋花が咲くころには寒くなってしまい、上手く咲けないことがあります。または、蕾じたい上がらないこともあります。

 

切りすぎには注意してください。

剪定後は、新しい芽が伸びる

夏剪定のイメージ

▲夏剪定すると、切った下の節から芽が伸びる

夏剪定すると、切ったところの下の芽が動き出し、芽が伸びてきます。

 

品種や環境により前後しますが、だいたい30日~40日後に花が咲きます。

 

狙い通り10月中旬~下旬に秋花が咲けば、大成功です。

 

でも、いつまでも暑い夏は9月中に咲いてしまうかもしれません。

 

逆に、急に寒くなったり、深く切りすぎてしまった場合は、11月以降に開花するかもしれません。11月中旬以降にずれこむと、せっかく蕾がついても、寒さで咲けないかもしれません。

 

とくにシュラブ系統のバラでは、品種によって枝の伸び方や開花までの期間が大きく異なります。

 

このあたりが、狙い通りに咲かせるのが難しい原因で、夏剪定が初心者さん向けというよりは中級者以上の方向けだとわたしが考える理由です。

シュラブ系統のバラの夏剪定は、別の記事で詳しく解説しています

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バラの夏剪定のしかた2、【シュラブ系統のバラ編】

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まとめ│秋花をどう楽しむか?夏剪定してもいいし、しなくてもOK!

今回は、夏剪定について解説しました。

 

夏剪定は、10月中旬ごろにいっせいに開花するように行う開花調整です。大型バラ園の管理として考案された技術なので、必ずしもやらなければいけない手入れとは違います。

 

夏剪定をして秋花を楽しんでもいいし、夏剪定せずに秋花を楽しんでも、どちらでも構いません。

 

夏剪定は、シュラブ系統のバラと相性が悪かったり、近年のいつまでも暑い秋とも相性が悪かったり、いつ剪定するかのタイミングが難しいので、わたしは初心者向けの手入れではないと思っています。

 

それでも夏剪定をするなら、狙い通りに上手くいかなくても、その結果も楽しもうという気持ちで取り組んでください。

 

夏剪定関連の記事は、この記事が木立ちバラの基本の切り方で、ほかに、近年多いシュラブローズの切り方を解説した記事もあります。ご自分のバラに合わせて剪定のしかたをチェックしてください。

 

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シュラブ系統のバラの夏剪定はこちらで解説しています

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