バラの芽吹きから冬の休眠期まで、1年をとおしてバラがどんなふうに育つのか追いかける「そだレポ」企画です。今回は「ピルエット」の【新苗編】です。季節ごとに更新していくので、お楽しみに!


「ピルエット」は、こんなバラ


●●●バラ苗【新苗】ピルエット (FL桃) 国産苗[農林水産省 品種登録出願中]《J-RP》2022春新品種【ポイント3倍】

ーブの強いコロンとした花を房咲きする愛らしい「ピルエット」は、2022年ロサオリエンティス(木村卓功)作出のフロリバンダ系統の品種。外弁がやや青みのピンク、中心がソフトピンクの複色の花をコロコロと咲かせます。

 

香りはダマスクにミルラの中香。最近のロサオリエンティスの品種は中香が多いですね。強香品種は花もちが悪くなることが多いので、中香なら香りを楽しみつつ花もちも両立できるという判断なのでしょう。

 

「ピルエット」は、バレエの回転技からつけられた名称。花の雰囲気によく合っています。

 

ブランドは「ロサオリエンティス プログレッシオ」。「プログレッシオ」のサブブランド名がついている品種は、無農薬や低農薬でも育てられる、とくに耐病性に優れたバラです。

 

「バラの家」のスコアは「樹勢/普通」「ウドンコ病耐性/強い」「黒星病耐性/強い」「耐陰性/普通」「耐寒性/普通」「耐暑性/強い」です。耐病性抜群で、初心者でも失敗なく育てやすそうです。

 

今回育てる「ピルエット」の環境DATA

四国の西日の当たらない南東向きの場所(日照5時間程度)

今年の春から育て始めた新苗

今年の目標/新苗の育て方のお勉強

育てる人/アスタルティ

 

*バラの育て方は、育てる場所により、それぞれの木の状態により、また目的や好みによっても人それぞれです。ここで紹介する育て方は、一例として参考になさってください!

 

5月29日の「ピルエット」/新苗の鉢増し

▲樹高40cm。主幹は1本のみ 写真提供/アスタルティ

サ・オリエンティスのバラをお迎えしたい!でも何がいいだろう・・・? という具合に、悩んでいたわたし。

 

防除のための薬剤散布をするせいで耐病性にはあまり興味がなく、”Type0”とか言われても「ふーん」で終わっちゃってました。花の好みとしては「シェエラザード」が一番いい。でも、ほかにイイのないかなーとか言いつつ探していたわたしは「ピルエット」に目が留まりました。

 

一番最初に買うのが「シェエラザード」だとありきたりだし、「ピルエット」を育ててみようか~ とか、適当なことを考えつつ初めてのロサ・オリエンティスのバラをお迎えしました。

 

「ピルエット」の新苗は、主幹は1本だけ、なおかつ鉢増しした時に根はあまり張っていませんでした。この状態でいきなり大きい鉢に植え替えたら根腐れの恐れがあるので、ほかの大苗が入っていた6号相当のプラスチック鉢に入れました。

 

ひとまず、これで様子を見ることにします。土に「バラの培養土」(相原バラ園)を使い、元肥は入れず「フルボ酸活力液アタックT-1」(花ごころ)の希釈液を半分だけ撒いています。

 

▲接ぎ木テープは剥がしました 写真提供/アスタルティ

 

接ぎ木テープは、風などで接合部が外れるのを防ぐため秋口まで巻いたままにしておく、というのが普通のやり方だと思います。

 

でも、わたしは剥がしました。わたしのやり方だと木が成長しやすいので、根本が圧迫されてがん腫が発生する恐れがあるため、リスクは承知で剥がしています。

 

風対策は、強風がさえぎられる場所で育てることで解決するつもりです。・・・うまくいけばね。

 

▲たくさんの出開き。撮影後できるだけ除去しました 写真提供/アスタルティ

 

新苗の上の部分は出開きになっていたので、光合成を確保するため1か所だけ残して除去しました。蕾は全部摘蕾しています。

 

葉の異変などはありませんが、樹勢は強くなさそうです。

 

この時期の手入れ

5/29 「フルボ酸活力液アタックT-1」(花ごころ)の希釈液を大苗の半分ていど使用しました。

 

猛暑日で薬剤を撒くと薬害の恐れがあるので、今日はほぼ何もしていません。肥料は次の鉢増しの時に使うつもりです。経験則上、この気温なら3週間もすれば根が張るでしょうが、さて?

 

6月19日の「ピルエット」/6号→8号へ鉢増し

▲根はあまり回っていなかったけれど、猛暑になる前に鉢増し 写真提供/アスタルティ

回6号プラ鉢に鉢増ししてから3週間たったので、もう一度鉢増しをしていきます。

 

元の6号プラ鉢から抜いてみると、根はあまり伸びておらず根鉢が作り切れていませんでした。幹が1本しかないヒョロヒョロとした新苗なので、3週間では根が伸びきれませんでしたね。あと1週間様子を見るのがベストでしたが、大雨が降っても困るので鉢増しを決行することに。

 

▲8号相当の信楽焼の鉢へ鉢増し完了 写真提供/アスタルティ

 

上の写真は、8号相当の信楽焼の鉢へ鉢増し後です。蕾を摘んだり未熟な葉を取ったりしたものの、バラ苗に大きな変化はありません。葉が少ないので蒸散が乏しく、根から給水をしきれていません。

 

今回わたしは信楽焼の鉢にしたので根腐れの心配はなく、もっと大きな鉢でも大丈夫だったんですが、プラ鉢で鉢増しする場合はセオリー通りに8号鉢にしておくのが無難でしょうね。

 

この時期の手入れ

6/5 「マイローズ殺菌スプレー」(住友化学園芸)を使用。

 

6/12 「ベニカXガード」(住友化学園芸)を10g、鉢の周囲に撒きました。肥料として*「森ぶ源 美育さん」(樹木新理論)を水に溶かして混合液を作り撒いています。

 

6/18  殺菌剤+殺虫剤の散布。STダコニール1000(住友化学園芸)+STサプロール乳剤(住友化学園芸)+コロマイト乳剤(三井化学アグロ)。

 

6/19 8号相当の信楽焼の鉢へ鉢増し。

 

6月18日は気温が低かったので、殺菌殺虫剤を散布しました。6月19日に、猛暑になる前に鉢増しを行っています。

 

*「森ぶ源 美育さん」は、樹木内のエネルギーを作り出すために必要な「モリブデン成分の欠乏」に着目する樹木新理論社の製品。水溶性の樹木用ミネラル栄養・肥料製品です。

 

7月15日の「ピルエット」/ベーサルシュートの発生、肥料焼け

▲下葉4つに肥料焼けの症状が 写真提供/アスタルティ

ルエットに葉先が茶色くなる肥料焼けの症状が出ました。この症状が出ているのは「ピルエット」だけなので、主幹1本だけだと肥料分をもう少し少なくしてあげないといけないみたいですね。

 

ベーサルシュートの邪魔になるので、肥料焼けした葉はぜんぶ切り取りました

 

▲ベーサルシュートが2本発生 写真提供/アスタルティ

 

1本枝だった「ピルエット」にも、ベーサルシュートが2本出てきました。枝が増えるとその分肥料の消費も良くなるので、肥料分を取り除くとかの処置はしていません。むしろ、しばらく考えた後に活力液を与えています。

 

蕾や小さな葉の摘み取り、芽かきも行い、枝に日光が当たるようにしました。土も減ってきたので、園芸用の土を少し足しています。(バラ用の土は袋の封を開けていなかったので温存しました)。

 

この時期の手入れ

6/26 殺菌剤+殺虫剤の散布。「殺菌剤/ジマンダイセンフロアブル(ダウ・アグロサイエンス日本)+プレオフロアブル(住友化学)+展着剤/アビオンE(アビオン)」。

 

7/3 殺菌剤の散布。「ベンレート水和剤 」(住友化学)。「高濃度フルボ酸活力液 アタックT-1」(花ごころ)を規定量の半分使用しました。

 

台風前の涼しくなったタイミングを見計らって、殺菌剤を散布しました。ベーサルシュートが出てきているので、活力液を使用しています。

 

7月17日の「ピルエット」/主幹3本に

▲樹高は55cm。主幹3本に 写真提供/アスタルティ

本足だった「ピルエット」は、ベーサルシュートが2本生えたおかげで葉の枚数が増えました。

 

ちまちまと摘蕾を続けて生育を促しながら、様子を見ています。

 

▲主幹3本になったので、だいぶ生育が安定 写真提供/アスタルティ

 

枝が増えたので肥料焼けの症状はなくなりました。活力剤を与えて耐暑性を上げながら、肥料も少しずつ与えるつもりです。

 

新苗の主幹は3~4本あれば十分なので、今後は葉を落とさないよう気を配りながら育てていきます。もちろん、虫退治もね。

 

この時期の手入れ

7/17 殺菌剤+殺ダニ剤の散布。「殺菌剤/ストロビーフロアブル(日本曹達)」+「殺ダニ剤/バロックフロアブル(協友有アグリ株式会社)」。

 

7/17に活力剤「高濃度フルボ酸活力液 アタックT-1」(花ごころ)を与えました。

7/17にカニガラ石灰を一つかみ撒いています。

 

気温が25度を下回った日があったので、試験的に「ストロビーフロアブル」を使ってみました。バラに薬害が起きる恐れのある殺菌剤ですが、今のところ影響は出ていません。本来は夏には使用しない方がいい殺菌剤ですし、お勧めはできないかな。

 

ハダニが発生しているバラがあったので、葉シャワーで弱らせながらダニに効果のある「バロックフロアブル」をすべてのバラに使用しました。

 

戻り梅雨の模様なので、酸性雨対策で「カニガラ石灰」を撒いています。気温が高いので、薬剤散布や手入れをした後は、必ずシャワーを浴びています。

 

7月31日の「ピルエット」/暑さに強い!

▲猛暑に負けず元気! 写真提供/アスタルティ

さで葉色が黄色くなったり葉焼けするバラが出ている中、「ピルエット」はキレイな葉を維持し続けています。耐暑性については二重丸をあげられるほどの強さですね。

 

蕾は取りながら育てています。

 

▲葉色はこんな感じ 写真提供/アスタルティ

 

ここまで育てた感想ですが、いまだにハダニや芋虫、ハキリバチの被害にあっていません。虫の苦手な人にお勧めできるバラなのかもしれませんね。

 

病気は消毒をこまめに行っているのを除外しても、かかる気配がありません。本来は、月に1回殺菌剤を撒く程度で十分なのでしょう。さすが「プログレッシオ」のサブブランド名がついている品種といったところ。

 

この時期の手入れ

7/24 殺菌剤+殺虫剤の散布。「殺菌剤/フルピカフロアブル(クミアイ化学工業)」+「殺虫剤/プレオフロアブル(住友化学)」。

 

   「ユーキリン(リン酸肥料/相原バラ園)+ミラクル(アミノ酸肥料/相原バラ園)」を1掴み追肥として撒きました。

 

水やりは1日に2回行っています。暑すぎるのか、芋虫などの被害はなくなってきました。

 

殺菌剤ですが、暑い日が続くのでいったん停止。涼しい日があれば散布するというスタイルにします。

 

9月17日の「ピルエット」/猛暑に耐えたピルエットと、台風対策

▲「暑さに強い」は偽りではなかった! 写真提供/アスタルティ

ばらく家を空けていたので、1日1回の水やりしかできなかった「ピルエット」ですが葉を落とすことなく元気でした。

 

まだまだ暑いうえに、強風の吹く日もあったようなのですが実に強い。

 

▲蕾は大きくなって来ましたがピンチを 写真提供/アスタルティ

 

巨大な台風が近づいているので、蕾は全て取ることにしました。「ピルエット」はもともと小さいサイズの花なので、さらに小ぶりになる夏花はお休みさせたほうが秋にキレイな花を見るためにも良いでしょう。

 

液肥と活力剤を与えた後、屋内に移動させています。接ぎ木テープを剥がしているので、接いだ部分が取れてしまう恐れもありますしね。

 

この時期の手入れ

8/7 液肥と活力剤の散布。「さわやかアミちゃん」(ヤサキ)+「高濃度フルボ酸活力液 アタックT-1」(花ごころ)。

 

8/27 コガネムシの幼虫対策で殺虫剤を使用。「家庭園芸用サンケイダイアジノン粒剤3」(住友化学園芸)。

 

9/8 追肥。「RSKバラ園バラの肥料」(松栄産業)+ユーキリン(相原バラ園)+ミラクル(相原バラ園)を混ぜて、二握りほど鉢の周囲に撒きました。

 

9/11 殺菌剤の散布。ベンレート水和剤(住友化学)。

 

9/17 液肥と活力剤の散布。「さわやかアミちゃん」(ヤサキ)+「高濃度フルボ酸活力液 アタックT-1」(花ごころ)。

 

台風への対策ですが

 

①新苗は全て屋内に移動。一部の大苗も。
②大苗は極力風の当たらない軒下などに移動。
③大きな鉢のバラは、風の当たりにくい場所に移し、ガムテープで鉢どうしを縛って倒れにくくする。

 

わたしはこうしてみました。道路に転がっていかないことを意識して、対策をしています。

 

新苗は全て「夏剪定」していません。秋花より、株の体力をつけることを優先したからです。

 

12月4日の「ピルエット」/今の様子と遡って秋花の様子

▲秋花が終わった後の「ピルエット」 写真提供/アスタルティ

ず現在の様子から。12月に入り寒くなってきて、「ピルエット」は完全に新芽が出なくなりました。寒くなると早めに動きが止まるようです。

 

早めに休眠させたい人は、もう葉をむしるのもアリといえばアリでしょうか。この株は新苗なので、わたしは1月になるまで葉を取らずに栄養を蓄えさせようと考えています。

 

▲10月ごろの「ピルエット」 写真提供/アスタルティ

 

遡って秋花の様子をレポートします。「ピルエット」の秋花は、新苗でもカタログ通りの花。生クリーム色の中心部にピンク色の外弁が美しいコロンとしたカップ咲きの花が10輪以上咲きました。

 

花径は6~7cmの小中輪。香りは中香くらいで、軽いダマスク系でしょうか。

 

▲雨に濡れた「ピルエット」 写真提供/アスタルティ

 

「ピルエット」の花の特徴として「雨風に強い」といえます。じつは上の写真を撮影する前日に、強風や大雨が吹き荒れましたが花は散らず、傷みもしません。汚くもなりませんでした。耐病性の高さと相まって、雨に当たる場所に置けるのが強みですね。

 

花保ちは途中で切り花にしたのではっきりしませんが、1週間以上は保ちました。

 

スペースをあまりとらない直立性の木立樹形で、幹の太さはまだ成長途上のためかやや細めです。

 

この時期の手入れ

10/9 殺菌剤+殺虫剤の散布。「STダコニール1000」(住友化学園芸)+「STサプロール乳剤」(住友化学園芸)+「コロマイト乳剤」(三井住友アグロ)。

 

11/5 殺菌剤+殺虫剤の散布。「ジマンダイセンフロアブル」(ダウ・アグロサイエンス)+「コロマイト乳剤」(三井住友アグロ)。

 

11/6 追肥。「RSKバラ園バラの肥料」(松栄産業)+「ユーキリン」(相原バラ園)+「ミラクル」(相原バラ園)を混ぜて、2握りほど鉢の周囲に撒きました。

 

耐病性の確認のために薬剤散布の回数を減らしていますが、病気は発生していません。かなり病気には強い品種です。

 

水やりは花が終わった後くらいから、頻度を減らしました。今は4日に1回程度ですね。

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