1年をとおしてバラがどんなふうに育つのか、品種ごとの生長のしかたを追いかける「そだレポ」企画です。今回はフロリバンダ系統のバラ「イントゥリーグ」です。季節ごとに更新していくので、お楽しみに!
「イントゥリーグ」は、こんなバラ
▲房咲きする「イントゥリーグ」 写真提供/ハナたろう
深いボルドーカラー(赤ワイン色)のバラ「イントゥリーグ」は、一度見たら忘れられない印象深い品種です。まずコクのあるシックな花色が魅力的です。低温期はさらに濃厚な色あいに、高温期は赤みが強くなります。
花径は10cm前後の大輪で、しっかりした丸弁(半剣弁と表記されることも多い)でまとまり過ぎないおおらかさを感じさせる咲き方をします。フロリバンダ系統なので数輪の房咲きになり、とても華やかです。
ブルー系の強香もすばらしい。
樹形は直立性の木立ち樹形。枝ぶりはやや粗いが、高さ1mほどにコンパクトに仕立てることもできます。花名「Intrigue」は「陰謀」の意味。人を罠にかけるような、そんな魔力を秘めたバラにピッタリの命名ですね。
花は美しく香りも素晴らしいのですが、病気にかかりやすく育てにくいところがあります。バラの家の評価で「樹勢2、ウドンコ病耐性2、黒星病耐性1、耐陰性1、耐寒性1、耐暑性2」と、どれも低い点数が並びます。
木立ち樹形、四季咲き。
1982年ワーナー(アメリカ)作出。1984年AARS受賞。
今回育てる「イントゥリーグ」の環境DATA
関東の南向きの庭(陽当たり良好)
休眠期の剪定枝を挿した3年目の株
今年の目標/今回は挿し木苗なので、挿し木でもしっかり育つということを確信出来るレポートにした
育てる人/ハナたろう
*バラの育て方は、育てる場所により、それぞれの木の状態により、また目的や好みによっても人それぞれです。ここで紹介する育て方は、一例として参考になさってください!
5月中旬の「イントゥリーグ」
▲たっぷり咲いた「イントゥリーグ」 写真提供/ハナたろう
休眠期に剪定した枝を挿し木してから2年半。「イントゥリーグ」がたっぷり花を咲かせました──といっても、じつはこれは主蕾(房咲きの真ん中の蕾)のみを咲かせたもの。まだ房咲きさせるだけの体力がないと判断して、主蕾のみにしました。そのため花径は10cmをゆうに越えています。「イントゥリーグ」はフロリバンダですが大輪種です。房咲きにさせても、花径10cm近くになります。
「イントゥリーグ」は、ハナたろうがバラ栽培にはまってしまった思い出のバラです。花容の美しさ、芳香の素晴らしさに惚れました! 今回は、この株の花を剪定した後から「そだレポ」します。
6月1日の「イントゥリーグ」
▲挿し木から2年半 写真提供/ハナたろう
挿し木から2年半が経過している株です。春花を咲かせた後に、花を剪定してあります。鉢は10号テラコッタ鉢。樹高は90cmです。花後のお礼肥えはしません。樹の力でどれだけ咲くのか、楽しみにしたいと思います。
「イントゥリーグ」は、黒星病にかかりやすく、育てづらいようです。我が家でも1・2位を争う黒星病患者です。ただ樹勢は良く、日向で育てているかいあって、病気で葉を失っても
病虫害対策
黒星病にかかっているので、オーソサイド・サンヨール・ゼンターリの混合液を散布しました。
6月15日の「イントゥリーグ」/2番花開花・ヒコバエ発生
▲2番花開花! 花径は7cm 写真提供/ハナたろう
イントゥリーグの2番花が咲きました。花径7cmと1番花より小ぶりですが、1輪でもあたりに漂うダマスク香はさすがです。
▲2輪目以降のつぼみ多数! 写真提供/ハナたろう
2番花の2輪目以降のつぼみが房で待ち構えています。今回は中・小輪咲きのようなので、このまま房咲きで咲いてもらいます。枝葉を増やしたいので、低い方の枝はつぼみをピンチしています。
▲土の中からヒコバエが発生! 写真提供/ハナたろう
これは少し前6月10日の写真ですが、土の中からヒコバエが発生しました。接ぎ木苗の場合は、土の中から出てきたヒコバエはノイバラなど台木の芽です。台木の芽は「サッカー」と呼ばれ、すぐに折り取られます。
が、今回の苗は「挿し木苗」なので、台木が存在しません。このヒコバエは立派なベイサルシュートです。挿し木苗の楽しみは、このヒコバエが発生するところなんですよ。写真のヒコバエの後ろに写っている古枝が元の挿し木の枝で、それ以外はすべて地中より発生した「イントゥリーグ」自身の枝なのです。
病虫害対策
黒星病、害虫防除のためにオーソサイド水和剤・サプロール乳剤・ベニカS乳剤混合液散布をしました。
6月21日の「イントゥリーグ」
▲2番花が次々開花 写真提供/ハナたろう
最初に咲いた2番花は、猛暑で花びらがチリチリになってしまいました。が、その後少し涼しくなったので、後続の花はチリチリにならずに済んでいます。
▲全体を写したところ 写真提供/ハナたろう
全体像はこんな感じです。低い枝はつぼみをピンチしてあります。連続して薬剤散布したので、黒星病は快方に向かっています。
6月25日の「イントゥリーグ」/2番花満開
▲2番花満開! 写真提供/ハナたろう
イントゥリーグの2番花が満開になりました。花径7~8cm。芳香もgoodです。この花が終わったら、秋まで蕾をピンチして咲かせません。夏場に枝葉をしっかり増やして、秋花をしっかり咲かせたいです。
当初はお礼肥をしないつもりでしたが、秋に房咲きさせたいので、花後に施肥することにしました。
▲小さいながらも「インントゥリーグ」らしい花容 写真提供/ハナたろう
夏花なので、花持ちは2・3日程度。香りは、朝涼しい時はしっかり香ります。30°c超えの暑い日は1日で花びらがチリチリになってしまい、香りはありません。
花色は、開花直後は赤味掛かったワインレッド。2・3日経つと色褪
7月30日の「イントゥリーグ」
▲黒星病はあるが、進行は抑えられている 写真提供/ハナたろう
樹高120cm。黒星病の症状はあるが、薬剤散布をこまめに行っているので、進行がスローになってきました。今後も継続です。6月15日に発生を紹介したヒコバエは生長がイマイチで、頂芽の方が生長しています。ツボミは、見つけ次第ピンチして取り除いています。
9月3日の「イントゥリーグ」/夏剪定
▲1ヵ月以上、目立った変化なし 写真提供/ハナたろう
猛暑のため生長を止めてしまっているらしく、目立った変化はありません。そんななか、ベイサルシュートが伸びてきているので、そろそろ目覚めてくれそうです。樹高は、全回と変わらず120cm。
▲割りばしの太さの枝まで軽く剪定 写真提供/ハナたろう
2番花後、ツボミのピンチしかしてこなかったので、割りばしていどの太さまで切り戻しました。花を望めない細い枝も、光合成用として残しています。施肥はしていません。
この品種は早咲きなので、今後の陽気によっては秋になる前に咲いてしまうかもしれません。
追肥をしない理由
これまでの経験から、冬の元肥(地植えなら寒肥)だけで十分ではないかと思い始めています。そのため、他の品種も合わせて追肥はしていません。とくに地植えは、寒肥のみでしっかり育ちます。
花数は少なくなりますが「樹の体力で咲く」のが自然な姿だと思えます。微量要素は症状が出てから与えればいいかな? という持論に固まりつつあります。
それに、肥料を控えれば、ウドンコ病にもかかりにくいです。
9月30日の「イントゥリーグ」/黒星病再発
▲ようやく芽吹き始めたところ 写真提供/ハナたろう
夏剪定の後、ようやく新芽が吹き始めました。地植えしてある親株はもう蕾を上げているというのに、こちらの生長は緩慢です。樹高は90cm。
▲夏剪定の後に芽吹いた新芽 写真提供/ハナたろう
枝先から新芽が伸びていますが、蕾はまだです。先月の予想では9月中にも咲くかと思っていましたが、今年の秋花は10月後半から11月の花になりそうです。
▲黒星病が再発 写真提供/ハナたろう
6月に発生したベイサルシュートは生長し始めたのですが、同時に黒星病も生長し始めました(==
薬剤散布
オーソサイド水和剤・サプロール乳剤・アファーム乳剤の混合液を散布しました。
>>次のページでは「秋花の発蕾」から紹介しています。