バラの芽吹きから冬の休眠期まで、1年をとおしてバラがどんなふうに育つのか追いかける「そだレポ」企画です。今回は「クードゥクール」です。季節ごとに更新していくので、お楽しみに!


「クードゥクール」は、こんなバラ


【大苗】バラ苗 クードゥクール (FL白) 国産苗 6号鉢植え品【即納】《J-IR5》2020春新品種

ードゥクールは、2020年に京成バラ園から発表されたフロリバンダ系統のバラです。先の尖った幅の広い花びら(宝珠弁)を半八重咲きにする花は、どこか蓮を思わせて、今までのバラにはない涼し気な雰囲気があります。

 

さらにこのバラをより印象的にしているのが、花の中央に現れる紅色のアイ(ブロッチともいいます)。これは、西アジア原産のバラ「ロサ・ペルシカ」ゆずりの性質です。

 

もともとの「ロサ・ペルシカ」は、原産地と気候の大きく異なる日本ではとても育てにくいバラでした。が、「ロサ・ペルシカ」の影響を色濃く受け継いでいるのに「クードゥクール」は、「バラの家」での育てやすさを示す項目で「タイプ0」。病気に強く、樹勢が強く、耐暑性にも優れる育てやすいバラです。

 

春はシルバーグレイの花びらが、夏には淡いピンクに、秋には青味を帯びた藤色に変化するところもおもしろく、フロリバンダ系統なのでたくさんの花を房咲きにするのも嬉しいところ。もちろん四季咲きです。

 

ちなみに、クードゥクール(Coup de Coeur)は、フランス語で「一目惚れ」の意味。

 

今回育てる「クードゥクール」の環境DATA

関東の陽当たりの良い庭(南側の道路に面した花壇。南側とはいえ向かいの家の影になり、午後からのみ陽があたります。日照は夏は7時間、冬は5時間ていど)

 

庭植え /昨年、新苗で迎えて1年間鉢で育て、この冬に庭に植えました。

 

今年の目標

新苗から2年目なので、しっかり根を張り健康に育てること。2株並べて植えてあるので、大きなシュラブのように仕立てられたらいいなと思っています。

 

このバラを選んだ理由

クールな印象の他にはない花姿と、春と秋で異なる花色、それに最強クラスの耐病性が両立しているところに惚れこみました。

 

育てる人/とらうさぎ

 

*バラの育て方は、育てる場所により、それぞれの木の状態により、また目的や好みによっても人それぞれです。ここで紹介する育て方は、一例として参考になさってください!

 

3月7日の「クードゥクール」/芽吹き

▲2株そろって萌芽 写真提供/とらうさぎ

2株とも芽吹き始めたところです。「クードゥクール」の枝は棘が少なくしなやか。左の株の方が育ちが良く、昨年の秋にはよく咲きました。右の株は左より樹勢が弱く、秋花が咲きませんでした。

 

どちらも病害虫被害はなかったので原因ははっきりしませんが、右の株は台木からの枝の出方がほぼ水平で樹形が変だったので、その影響かもしれません。

 

バラは、花の咲いた枝が堅く締まるといわれますが、右の株は花を咲かせられなかったためか、左に比べて枝が細くて柔らかいので、支柱を立てて枝を上向きに矯正しています。樹高は左の株が50cm、右の株が40cmです。

 

株周りの波型の丸い囲いは、高植えにするためのもの。我が家の庭土が粘土質で水はけが悪いので、土壌改良した上に地面を少し高くすることで水はけが良くなるよう工夫しています。株元のヤシファイバーは、霜除けのために敷いています。

 

▲ごく細い赤い覆輪の若葉 写真提供/とらうさぎ

 

「クードゥクール」の若葉は黄緑色で、ごく細い赤い覆輪があり、葉脈が透けてきれいです。

 

4月3日の「クードゥクール」/発蕾

▲つやつやの若葉が茂って元気そう 写真提供/とらうさぎ

やつやの若葉が茂ってきました。現在の樹高は左が60cm、右が50cmです。2株とも病気は出ていません。

 

▲フロリバンダらしく側蕾つき 写真提供/とらうさぎ

 

今年は蕾がつくのが早いです。ほっそりした緑色の蕾が見えています。

 

やはり左の株の方が樹勢がよく、蕾の数も多いです。右の株にも少ないながら蕾があるので、咲いて枝をしっかりさせてほしいと思っています。

 

この時期の手入れ

ゾウムシとアブラムシが出ているので、「トウガラシ+ハーブスプレー」を散布しています。アブラムシは、テントウムシがたくさん来て食べてくれています。

 

施肥はしていません。

 

4月25日の「クードゥクール」/開花・ベーサルシュートの発生

▲春の一番花が開花! 写真提供/とらうさぎ

ードゥクールが咲きだしました。今、近所のモッコウバラが花盛りで、それと同時ということは、かなり早咲きに感じます。これまで我が家で一番の早咲きはオールドローズの「ゼフィリン ドルーアン」だったのですが、交代は確実ですね。

 

▲弁底に濃いピンクのアイライン 写真提供/とらうさぎ

 

カタログによると、クードゥクールの春花は「グレーがかった白に咲く」と書かれていますが、今回咲いた花はグレイッシュなピンクでした。日陰で撮影すると、さらにモーヴがかった色に写ります。花びらの底には、くっきり濃いピンクのアイラインが見えます。

 

花径は6cmで、「小中輪」としては大きめです。昼は平たく開いて咲きますが、夜は花びらを閉じます。

 

▲たっぷりの蕾が房状に 写真提供/とらうさぎ

 

蕾はまだたくさんあるので、順番に咲いてくると思います。まだ株が小さいせいかも知れませんが、地際の低い位置からも蕾を上げています。

 

▲樹高は60cm 写真提供/とらうさぎ

 

現在の樹高は変わらず60cm。株の間にもしゃもしゃ茂っているのは、宿根草のアスチルベです。

 

▲ベーサルシュートが発生 写真提供/とらうさぎ

 

左右どちらの株からもベーサルシュートが発生しました。左の株のベーサルシュートはもう30cmを越えそうだったので、すぐにピンチしました。

 

この時期の手入れ

イモムシ、ゾウムシ、アブラムシが出ているので「トウガラシ+ハーブスプレー」を散布。アブラムシには「カダンセーフスプレー」も散布しています。

 

追肥はしていません。病気も発生していません。

 

5月1日の「クードゥクール」/満開

▲後続の花はグレーや藤色がかった淡いピンクに 写真提供/とらうさぎ

ードゥクールがたくさん咲きました。前回はかなりピンク色でしたが、後続の花はだんだん白に近くなってきました。大きいものは花径10cmにもなり、「小中輪」の看板に偽りありじゃないかと!? 株の状態にもよるのかも知れませんが。

 

▲葉の間に埋もれるようにたくさんの花 写真提供/とらうさぎ

 

花枝があまり長くないので、葉の間に埋もれるように咲いています。花色は、グレーか藤色がかった微妙なニュアンスのある淡いピンク色。夕方には薄紫色にも見えます。

 

思ったより花びらの質が繊細で、雨風にはあまり強くありません。とくにガクが下りたタイミングで雨にあたると、花弁数がそんなに多くないのにボーリングして開かないときがあります。

 

▲とにかく早咲きなのが目立つ 写真提供/とらうさぎ

 

花もちは、晴れていれば5日くらいありますが、雨が降ると一気に傷みが目立ってしまいます。透明感のある花弁の宿命かもしれません。

 

香りは顔を寄せれば少し香るていど。駅にある花屋の店先のような、グリーン&フローラル系の香りだと思いました。

 

我が家で咲いているバラはクードゥクールと早咲きのゼフィリンドルーアン、ほかはボレロが1輪だけです。クードゥクールの気の早い咲きっぷりが目立っています。

 

5月15日の「クードゥクール」

▲つぎつぎ花を咲かせ続ける 写真提供/とらうさぎ

ードゥクールは、満開を迎えてからも入れ替わり立ち替わり咲き続けています。

 

▲枝先にびっしり房状に花を咲かせて 写真提供/とらうさぎ

 

後から伸びた枝にたくさんついた蕾が開いて、房咲きになっています。5月も中旬になり、さすがに花数がやや減ったかなと思い始めていましたが、もう新しい枝が伸びてその先に蕾がつきそうです。

 

花を咲かせるのにエネルギーを使っているようで、なかなか樹高が高くなりません。樹高は以前と変わらず60cmほどです。

 

▲雨がかかったクードゥクールはハッとするほど綺麗 写真提供/とらうさぎ

 

以前、クードゥクールの花は風雨に弱いとレポートしましたが、雨が降り始めた瞬間のクードゥクールはとても美しいと思います。晴天の日よりも曇りや雨の日の方が花弁の透明感と、弁底のアイラインによる陰影が強調されてとても綺麗です。上の写真は4月29日の様子です。

 

この時期の手入れ

防虫のため、トウガラシ+ハーブスプレーを散布しています。

 

6月5日の「クードゥクール」

▲シュートの先に房状の蕾 写真提供/とらうさぎ

番花がひと段落したあたりで*サイドシュートがぐんぐん伸び始め、今は樹高90cmになっています。ピンチせずにそのまま伸ばしたところ、今の高さで房咲きに蕾をつけたので、このまま咲かせるつもりです。

 

左右二つの株の間に、ちょうど「アスチルベ」が咲いています。

 

*訂正

よく確認したらサイドシュートではなく、一度ピンチした後のベーサルシュートでした。

 

この時期の手入れ

虫が出ているようなので、「トウガラシ+ハーブスプレー」を散布しています。病気は出ていません。施肥もしていません。

 

「クードゥクール」は葉がツヤツヤで硬いのか、イモムシもつきにくいような気がします。

 

7月11日・13日の「クードゥクール」/後続の花がチラホラ開花

▲樹高は左が90cm、右が105cm 写真提供/とらうさぎ

雨のこの時期、クードゥクールは他の追随を許さない耐病性の高さをみせています。他の庭植えのバラにはウドンコ病がチラホラあるのですが、クードゥクールにはまったく出ません。丈夫な照り葉がツヤツヤしていて、安心して観ていられます。

 

写真右側に長く伸びているのは2度ピンチした後に伸びてきたベーサルシュートです。先端にまた蕾をつけています。

 

▲暑くなってきても、しっかり房咲き 写真提供/とらうさぎ

 

クードゥクールはフロリバンダ系なので房になりやすく、花枝の先端だけでなく2段目、3段目からも蕾を上げることが多いです。そのため咲いた後の切り戻しはどうしても深くなってしまい、なかなか枝を伸ばせません。

 

▲今の花がカタログに一番近いかも! 写真提供/とらうさぎ

 

上の写真から2日後(7月13日)のクードゥクールです。暑くなってきたせいか花径5cmの小ぶりな花ですが、1輪、2輪といつもどこかで咲き続けています。今の花姿が一番カタログに近いように思います。

 

切り戻しからの回転が速いので、3番花、もしかしたらもう4番花も咲いているかもしれません。

 

この時期の手入れ

害虫が出ているので、トウガラシ+ハーブスプレーを散布しています。

 

隣のバラにウドンコ病が出ていたので一緒にカリグリーンをかけましたが、クードゥクールにウドンコ病は出ていません。

 

施肥はナシです。

 

8月22日の「クードゥクール」/継続開花

▲夏も途切れず開花 写真提供/とらうさぎ

ードゥクールは、花数を増減しながらずっと咲き続けています。夏の間はあまり咲かせないようにと思っているのですが、どんどん蕾が上がるので、少し目を離した隙にすぐ開花しているという感じです。

 

前回のレポートで長く飛び出していた右の株の枝は、花が咲いた後に切り戻しました。現在の樹高は90cm。病気はナシ、施肥もナシです。

 

▲白い星のような夏花 写真提供/とらうさぎ

 

花は花径5cmほどで小さいめ。暑さのせいか弁底の赤いアイラインがほとんど入らず、白い星のように見えます。この時期の花もちは2日あればいい方で、雨が降ると1日花です。

 

花がら摘みをしないと汚くなってしまうので、花穂に3~4輪咲いたら残りの蕾ごと切り取っています。

 

9月30日の「クードゥクール」/継続開花

▲涼しくなり、旺盛に新芽が伸びて 写真提供/とらうさぎ

ードゥクールは、びっくりするほど咲き続けています。バラの家のデータに「完全四季咲き」が追記されていましたが、ほんとうにその通りだと思います。

 

しかも元気です! 9月に入り暑さがやわらいだら、またにょきにょきと枝を伸ばしてきています。

 

▲アイラインが戻り、カタログに近い花に 写真提供/とらうさぎ

 

前回のレポートでは、弁底のアイラインがなく白い花でしたが、またアイラインが戻ってきました。花径は5cmくらい。これから咲く蕾もたくさんあるので、今後、秋が深まるにつれて花色が変化していくかどうか観察したいと思います。

 

▲オレンジ色のよく目立つヒップ 写真提供/とらうさぎ

 

花がらをこまめに取り除いていたつもりですが取り残しがあったようで、ぷっくりしたオレンジ色のローズヒップがついていました。直径1.5~2cmくらいで目立ちます。

 

人工授粉は行っていないので、実がつきやすい品種なのかもしれません。夏に咲いた花を残しておけば、秋にかわいいローズヒップが観られて、花と実の両方を楽しめそうです。

 

この時期の手入れ

現在の樹高は120cm。病気はまったく出ていません。

 

「トウガラシ+ハーブスプレー」で害虫対策していますが、ほかのバラに比べてイモムシ被害が少ないのは、おそらくカマキリのおかげだろうと思います。

 

施肥はしていません。新芽が伸びずに葉が傷んできている弱小枝を一部、剪定しました。

 

10月31日・11月3日の「クードゥクール」/夏花から継続して秋花開花

▲10月31日の花 写真提供/とらうさぎ

より花数が減ったものの「クードゥクール」は咲き続けています。

 

▲ピンクが濃くなってきた11月3日の花 写真提供/とらうさぎ

 

11月に入ると、花色が少しずつ濃くなってきました。天気予報を見ていての感覚ですが、最高気温20度以下で、最低気温が10度を切り始めたあたりから花色が濃くなり始めた気がします。

 

花もちは3~4日です。樹高は120cm。施肥なし、薬剤散布もなし。

 

11月21日の「クードゥクール」/さび病が発生

▲数は減ったけれど、まだ蕾が上がる 写真提供/とらうさぎ

続開花し続けてきた「クードゥクール」ですが、11月中旬過ぎからさすがに蕾の数がぐっと減りました。それでも常に1株に1~2個の蕾がついています。

 

▲さび病が発生したので、感染枝をカット 写真提供/とらうさぎ 

 

隣に植えてあるバラ(バレリーナ)からさび病が感染したらしく、症状の出ている枝を何本か切りました。「バレリーナ」の方は、太い枝を株元から切って処分しなければいけませんでしたが、「クードゥクール」は症状の出ている枝を少し切ってスプレー農薬を散布しただけで治ったので、さび病にも一定の強さがあるようです。

 

樹高110cm。施肥なし。アタックワンAL散布(1週間あけて計2回)。

 

 

12月5日・12日の「クードゥクール」/冬の花

▲冬の花ちらほらと 写真提供/とらうさぎ

12月に入ると、ほとんど蕾がつかなくなってきました。枝も伸びないので、樹高も変わりません。そのかわり、花は一輪ずつゆっくり咲くようになりました。

 

▲冬花は、モーヴがかったピンクの花 写真提供/とらうさぎ

 

春・夏と違ってなかなか平咲きまでいかず、開き始めてから5日かけてようやく弁底のアイラインが見えてきました。花色は、今年最初に咲いた花に近いモーヴがかったピンク色で艶やかです。この花は1週間以上もちましたが、最後は枝先についたまま寒さで縮れてきたのでカットしました。

 

我が家の環境では、気温が下がった段階での花数はかなり少なくなったので、ピンクの秋花が咲き乱れる──といった風にはなりませんでした。来年は、夏の終わりに少し追肥してみようかな? と、考えています。

 

樹高は変わらず110cm。施肥なし。さび病は完治したので薬剤散布もなし。

 

1月30日の「クードゥクール」/冬剪定、寒肥

▲旧枝を切り取り冬剪定 写真提供/とらうさぎ

が家の環境では、このバラは全然紅葉しませんでした。葉が緑色のまま、寒さと乾燥でカラカラになっていく感じです。

 

1月30日に冬剪定と寒肥の施肥をしました。

 

昨年の枝はどれも弱くなり、新しい枝の方が優勢になったので、旧枝は切り取りました。あまり横に広がらない、すっとした樹形でコンパクトな品種なので、弱小枝を切り、フェンスの高さに切りそろえるていどに留めました。

 

株の周囲に穴堀り機で5か所ほど穴を開け(直径7~8cm、深さ30cmていど)、プレミアムオーガニック肥料(バラの家)を規定量、寒肥として施肥しました。掘り出した土には、近所のホームセンターで購入した土壌改良剤とたい肥(バーク主体)を混ぜて埋め戻しました。

 

花壇には宿根草を混植しているので、今年から大きな穴は開けず、小さい穴を複数開ける方法に変更しました。育ちに影響が出るかどうか、春以降観察するつもりです。

 

今回の「そだレポ」の感想

▲丈夫で房咲きにたくさん咲いてくれた 写真提供/とらうさぎ

 

今年の目標は「しっかり根を張り、健康に育てること」と「2株植えで、大きなシュラブのように育てること」でした。

 

地植えにして1年目でしたが、シュートがよく出て花もとてもよく咲いたので、思った以上に期待に応えてくれました。

 

樹のサイズは小さいですが、とても丈夫で黒点病もウドンコ病も出なかったのはさすがです。来年以降も、春から秋まで連続して咲いてくれるように、肥料やりとお手入れを頑張ろうと思っています。

 

 

 

育てた人紹介/とらうさぎ

ポタジェに憧れている庭仕事4年目のロザリアンです。庭のある家に越したのを契機にガーデニングにハマりました。狭い庭のうち一番日当たりの良い場所は家庭菜園に譲っているので、バラ栽培はそれ以外の場所を開拓しながら行っています。家庭菜園があるので、バラの栽培スタンスは減農薬です。東京都の郊外在住。

 

▼そだレポ検索は、こちらのページを利用してください

 

cropped-rose1.png
スポンサーリンク